Kanon やがて春を迎える
作者 十七式
※栞END後のお話です。ジャンルは・・・・ほのラブかな?
「名雪〜、そろそろ起きろ〜!!」
「うにゅ、にんじんたべられるお〜」
今日も学校があるのにコイツはいつも起きない
あまりにぐっすりと眠っているからこの一言で起こしてやるか
「名雪・・・・・・・・オレンジの」
「!! い、いらないよ!!」
オレンジのというところで目を覚ました従妹であった
まあこれは罰ゲームよりもたちが悪い代物だけどな
「朝御飯出来てるから早く降りて来いよ」
「・・・・・うにゅ」
俺が部屋を出ようとした時にまた寝ようとしたから・・・・・
「本当にオレンジの・・・・食わせるぞ?」
「ゆ、祐一!! 起きてる、起きてるから!!」
今度こそ完璧に起こした(黒っ!!)
「祐一、酷いよ〜」
「お前がちゃんと起きればいいだけの話だろ?」
朝御飯も滞りなく食べ終わり、玄関へと向かっていく
「それじゃあ秋子さん、行ってきます」
「行ってきま〜す」
「いってらっしゃ〜い」
玄関のドアを開け、何気ない一日が始まるのだろうと思ったら・・・
「おはようございます、名雪さん、祐一さん♪」
「おはよう、相沢君、名雪」
「うんおはよ〜香里、栞ちゃん」
俺の恋人・美坂栞とその実姉である美坂香里が待っていた
「ああ、おはよう栞、香里」
俺も二人に向かって挨拶を済ます
「今日は名雪が起きれたのね?」
「ああ、禁断のオレ・・・」
「「わ〜!! それ以上言わないで〜!!」」
「・・・・すまん。禁句だったな」
名雪と香里が顔を青くして「言わないで」と必死に言う
ある意味命がけでもあるな
「・・・祐一さん、オレ「「栞(ちゃん)も言わないで!!」」・・・・わかりました」
渋々禁断のワードを封印する栞と俺であった
あの一件以来、香里は栞と仲直りをした
今では仲の良い姉妹だ
香里は何か重いモノを隠しているようであったが今ではそれも消え去り、今まで以上の明るさが際立(きわだ)っている
栞も誕生日まで生きれないという医師からの宣告を受けたがそれを乗り切って今を精一杯生きている
二人がこの様に今を生きているのがこんなにも素晴らしいとは・・・・
「それじゃあ行くか。学校に遅れちまうぞ」
「うん」
「そうね」
「はい」
皆が俺の言葉に返事をする
ようやく今日という日が始まった
四時間目の授業が終わった頃であった・・・・
「ふう、ようやく午前中の授業が終わった・・・」
学校に到着し、ゆっくりと時間は流れていった
授業は思ったよりも長くて緩やかに過ぎていった
「どうするか・・・・」
「祐一、お昼だよ」
「そうだな、もう昼休みだ」
時間も丁度授業が終わって5分経過したところだ
「相沢、お前は栞ちゃんのお弁当があるからいいよな」
「そうでもねえって。あの量は反則だ」
栞が作る弁当の量はかなりのものだ
あれを食べきるにはかなりの労力を必要とする
おかげで胃痛が起こるときもあって大変だ
「ん、そうだ。お昼はどうする?」
「う〜ん、屋外だと寒いから教室で食べよ」
「そうだな、そうしよう」
俺と名雪でそんな会話をしていると香里が会話に入ってきた
「そろそろ栞がくる頃じゃない?」
「おお、そうだな」
4時間目の授業が終わればもうお昼休みだしな
そう思っているとクラスのドアを開いて現れたのは他ならない栞であった
「祐一さん!!」
「お、栞か」
そう言って俺たちに近づいてくる
こうして見ると制服になっても栞は小さいな
まあ私服でも小柄に見えるけど
「えう〜、祐一さん酷いです!!」
「・・・・また口にしてたわよ」
「またか・・・」
この癖、治らないものかな本当に
「ごめん栞、そう怒るなって」
「駄目です、謝ったって許しませんから」
一度怒ると栞は簡単には許してくれないからな・・・
「一度だけ何でも言う事聞くから」
「・・・本当ですか?」
その時栞の眼が光ったように見えたのは気のせいではないだろう
まあしょうがないけど
「ああ、冗談は言うけど嘘はつかないぞ・・・・俺は」
「それじゃあ、今ここでいいですか?」
何故栞の顔が悪魔の笑っている顔に見えるんだろう
それに何だかは知らないが背筋に寒気が走る
「ああ、ここで出来ることならな」
「それじゃあ、言いますね・・・・それじゃあ今ここで」
「ふむふむ」
「キスしてください」
「そうかキスをね・・・って!?」
何ぬかしてんですか俺の恋人
それにここは教室だ、生徒もまだ多くいる
それを聞いたクラスの人間がニヤニヤとしながら俺のほうをじっと見つめている
「相沢君、してあげなさい」
「何言ってるんだ香里。こんなところで出来るわけねえだろ」
「それとも何、栞の頼みごとを断るって言うの?」
香里もニヤニヤしながらそう言い放つ
そんなに俺を晒(さら)し者にしたいのだろうか
「相沢、ここはしてあげろよ」
「北川、お前までそう言うか」
北川もくっくっくっと笑いながらそう言いやがった
「祐一、してあげるんだおー」
「名雪、お前もか?」
少し不満げに言いつつも顔はニヤニヤしている名雪
この三人は絶対、いや100%楽しんでやがる
「それとも何」
「してあげないとでも」
「いうつもりなの?」
香里、北川、名雪はそれぞれそう言った
何気にこの三人は息が合っているのは嬉しい事なのか悲しい事なのだろうか
それにクラスの奴等はそれを期待しているかのようにこの状況を見つめていた
「・・・わかったよ」
観念して俺は栞のほうに歩いていく
「いいか、栞」
「はい、祐一さん」
無邪気な笑顔でそう言い放つが何となくだが栞の腹黒い部分が現れているような気がしてならなかった
そう思いつつも俺は、みんなの見ている中で栞に優しくキスをした・・・・
その瞬間に歓声が校舎内に響いたのはお約束であった
放課後となり、それぞれが帰りの道を行く頃・・・
「まったく、散々な目にあったぜ」
「ふふふ、でも祐一さんしてくれたじゃないですか」
「ああまで言われて、しかも皆が見ているところでキスしてくれなんて普通言うか?」
帰りの道で、俺たちはデートとして街中を歩いている
まああの三人がデートしたいでしょと言って俺と栞だけになったからであるが
「いいじゃないですか。それに奇跡が起こったという証がほしかったんです」
「証?」
「はい。私、誕生日まで生きれないって言われてじゃないですか」
そう、栞は重い病気を患(わずら)い希望もなく苦しんでいた
「初めて出会った時も、私カッターナイフで手首を切ろうとしてたんです」
「・・・・」
「でも祐一さんとあゆさんの二人を見て自殺する事なんて馬鹿らしく思ったんです。そして祐一さんは私を受け入れてくれて、嬉しかったんです」
「・・・・」
「だから私も頑張らないとって思ったんです。私、あの時言いましたよね・・・『奇跡って、起きないから奇跡っていうんですよ』って。でも祐一さんは『起きる可能性があるから奇跡って言うんだ』っていいました。私、奇跡なんて起こるはずがないってずっと思っていましたから・・・・」
栞はずっと苦しんできて、でも奇跡っていう言葉に縋(すが)る事も出来ずに苦しんでいた
俺に出来たのは同情の気持ちを持つのではなく、栞の事を信じてやる事しか出来なかった
俺の出来た事なんて、奇跡とは程遠いものでしかなかったはずなのに・・・
「この奇跡がいつか終わってしまうのではないかって不安になったんです。だから、証がほしかったんです」
「何言ってるのやら。奇跡は終わらないさ、俺たちが諦めないかぎりな」
「祐一さん、よく恥ずかしい事言いますね」
「何とでも言え。本当の事だからな」
自分でも恥ずかしい事言ってるってわかってるさ
「でも今は祐一さんが起こしてくれた奇跡に感謝しています。だから、ありがとうございます祐一さん」
「礼を言われることでもない。栞が頑張ったから今というこの瞬間を手に入れることが出来たんだ。それは奇跡なんかじゃなくて必然だったってだけさ」
奇跡なんて信じて待つだけじゃ手に入る事もないし、起こることさえない
奇跡を起こすのは人の心の強さだと今ではそう思える
そしてその奇跡は、きっと今でも続いている
「さあ、今日はどこに行こうか」
「そうですね・・・まずは――」
凍てついた冬の季節から、やがて暖かい春を迎える・・・・・
あとがき
短編、第2作目となりました。正直オチがないのは勘弁してください。今度は祐一×名雪あたりでも書こうと思います。勿論長編も頑張って書きますけどね。感想お待ちしています〜。
話の構成 平成19年7月19日
執筆の日 平成19年7月19日