皆さんはテストが近づくとどうしますか?

 

――――――真面目にコツコツお勉強?

――――――諦めて遊び倒す?

――――――ギリギリ粘って一夜漬け?

 

様々な選択肢がありますが、このお話に登場する2人は最後の『一夜漬け』を選択しました。

さて、その様子を見てみましょう。

 

 

 

 

cram for a test all-night.

〜一夜漬けと修羅場モードには栄養ドリンクとロックのCDは欠かせませんね〜

作:JGJ

 

 

 

 

P.M.7:00

 

「では、これよりテスト勉強会を始めるぞ」

テストを明日に控えた今日、俺、相沢祐一とその従兄妹の水瀬名雪は名雪の部屋で勉強会をする事になった。

本来ならば、テスト勉強という物は1週間も2週間も前からコツコツとやっていくものなのだろうが、決して品行方正、成績優秀といった真面目人間では無い俺達は明日から、明日からと先延ばしをして遊んでしまったのだ。

『あの時、始めればよかった』と思っても今となっては後の祭り。

時間は正確と同時に残酷にテストの前日を告げてしまっていた。

 

更にだ。

 

「でもなんで今回に限って香里が勉強を教えてくれないんだろ? いつもなら快く教えてくれるのに……」

……すまん名雪。それは多分……つか絶対俺の責任だ。

そう、普段なら名雪の親友で学年主席である美坂香里がテスト勉強を教えてくれるのだが今回に限ってはそういう案は存在しなかった。

というのは、数日前の数学の小テストの事だ。

そのテストで俺は偶然100点を取ってしまったのだ。

それだけならば良かったのだが、その時香里(その時は98点だった)にその点を見られてしまい、俺の実力を勘違いしたのか妙な対抗心を持たれてしまったのだ。

それ以来、表では何も変わらない友人として付き合ってはいるのだが、香里に勉強を教えてくれと頼んでも

『あら、あたしよりも頭の良い相沢君なら、あたしの教えなんて要らないんじゃない?』

とどうやら完全にライバルとして見られてしまい、一蹴される始末。

えっ? じゃあなんで名雪もいるのかって? 話は最後まで聞くものだぞ?

それで、遠まわしに名雪に頼まして教えてもらおうと考えたのだがそれも見破られ(正確には名雪が話した)それで名雪も教えてもらえなくなってしまったのだ。

まぁ、明日のテストで俺がコテンパンにされない限り、香里は考えを改めないだろう。

だけど、そんな事を正直にいうとオレンジが飛んでくるからここでは内緒。

「そ、そんな事よりさっさと始めようぜ」

「う、うん……そうだね。祐一、頑張ろう!」

「あぁ!」

こうして俺達は勉強を始めたのだった。

 

 

 

P.M.8:00

 

「…………」

「……………………………………………く〜

 

パコッ!

 

「だおっ!?」

勉強を始めて1時間

早くも爆睡を始めた名雪の頭を教科書で叩く。

「……寝てたろ?」

「…………寝てないよ」

「なんなんだ。その間は……」

「だって、もう良い子はぐっすり眠ってる時間だよ?」

「いつの時代の良い子だ。いつの……」

「と、とにかく眠いんだよ! だから『テストはどうするんだ?』わ、私、まだ頑張れるよ!」

俺の一言で素直に問題集に再び取り組む名雪。

……相当切羽詰ってるんだな……

 

 

 

P.M.10:15

「……」

「…………」

「なぁ、そろそろ休憩にするか?」

8時半に一旦中断し、15分休憩して更に一時間半。

何処の誰だか忘れたが、人間は90分位しか集中力というのは持続しないという言葉を思い出し、2回目の休憩を勧める。

「うん、そうだね。私、何か持ってくるよ」

そういって名雪が部屋を出て行く。

俺はぐっと背伸びをしたり、ケロピーとじゃれあったりして待っていると

「お待たせだよ〜」

お盆に2つのマグカップを載せて名雪が帰ってきた。

「あぁ、さんきゅ…………げ!?」

もらったマグカップの中には卵、はんぺん、コンニャク……

「これって、おでんじゃないか!?」

「うん、おでん缶

お、おでん缶!? そんな物がこの世にはあるのか?

「私は食べた事ないんだけど、お母さんが非常食用に買ってきたのを思い出して、夜食にいいかなぁ……と思ったんだけど」

確かに、小腹は空いてるが……

「ならせめて皿に入れてくれ。おでんなんだから」

「缶に入ってたからついついこっちに入れちゃったんだよ。移し変えたら食器がもったいないし……」

「まぁ、いいや。とりあえずいただくわ……」

「うん、召し上がれ」

恐る恐るマグカップに口をつけて食べてみる。

「…………なんというか、独特の味だな……」

気絶しない分、邪夢よかましか……

「ふーん……あっ、私にも一口ちょうだい」

「ん? 自分のを食べればいいだろう?」

自分のと中身が同じなのに食べたがるなんて不思議な奴だな。

「だって、私のはホットミルクだから」

「……」

はははっ、何なんだろう? この非常にムカつく感じは……そうか、これが殺意という物なのか。

 

 

 

P.M.11:45

 

「だぁ〜おぉ〜」

先程ホットミルクを飲んだせいか、それとも俺だけにおでん缶を食わした罰なのか、俺の前で線目で唸る珍獣だお〜……もとい名雪。

「私、もうゴールしてもいいよね……?」

「寝るな! 名雪! 寝たら落ちるぞ(成績が)」

「大丈夫……寝てないお〜……」

口ではそんな事をいってるが口調はもうマジで眠る5秒前な感じだ。

「じゃあ、聞くぞ? 1192作ろう?」

「いちごジャム〜」

「794うぐいす?」

「いちごサンデ〜」

「1941発?」

「いちごム〜ス〜」

「……駄目だ、こりゃ」

眠すぎて頭の中の情報がいちごしかなくなってしまったらしい

「祐一……」

「ん? なんだ?」

「ファイトだ……お〜……く〜」

「……だから寝るなぁ!!」

 

ゴッ!!

 

「だぁぁぁぁぁぁぁおぉぉぉぉぉっ!!」

名雪の頭を某桜咲く島の義妹のように辞書の角で叩くと、頭を押さえながらごろごろと悶える名雪。

「目ぇ、覚めたか?」

「ひ、酷いよっ! 極悪だよ!!」

「一生懸命眠いのを我慢して頑張ってる人の前で爆睡する奴にいわれたくないわ!!」

「でも、無理は良くないよ! これ以上起きてたら私、もう笑えないよ!!」

確かに、それも正論だな……だが

「じゃあ、名雪は寝るんだな。ただ、俺はお前の成績が下がって、秋子さんの怒りを食らっても知らないからな」

この場合文字通り『食らう』ことになるのがミソだ。

「祐一! べ、勉強するよっ!」

名雪はその恐怖のシーンが頭に思い浮かんだのか、また問題集に目を通し始めた。

さっ、俺も勉強勉強……

 

 

 

A.M.1:30

 

「……」

「……」

「「…………く〜」」

「あらあら、お夜食を持ってきたんですけど、お2人とも寝てしまいましたね」

そういいながら寝てしまった2人に毛布をかけてあげる。

「祐一さん……一人のほうが何かと楽なのに、わざわざ名雪の為にありがとうございます」

寝てしまって聞こえていないだろうけど祐一さんに感謝の念を伝える。

上から時たま騒々しい声が聞こえてきましたから、その度に名雪が寝そうになるのを阻止してくれたのでしょう。

「ふふふっ、明日の朝ごはんは特別に腕を奮いましょうか?」

「っ……う〜ん……いちご星人の来襲だお〜」

「秋子さん、いけません……俺達は……むにゃむにゃ」

い、一体どんな夢を見ているのでしょうか? 特に後の方。

気になります……

「さて、あんまり長居すると起こしてしまいますね」

私は持ってきた夜食を持って入ってきたドアを開けて振り返る。

 

「おやすみなさい……2人とも、そして祐一さん……これからもよろしくお願いしますね」

 

 

 

 

パタン……

 

 

 

 

これが『一夜漬け』を選択した2人の様子です。

えっ!? テストの結果はどうなったかって?

……それは皆さんでお考え下さい。

皆さんの答えがこの物語のオチなのですから。

……決して考えるのが面倒なわけではありませんよ?

 

 

 

 

 

2005年2月23日作成