黒衣の少女と少年は会合を果たした。
しかし、運命はかくも過酷なものなのだろうか。
かの少年に降り注ぐは混乱と、混沌の種。
そして、太陽を望まれた青年も過去の亡霊と再会する。
それが青年に如何なる選択肢を用意させるのか。
SHINING HERAT
第五話
「コード“Straight flush”」
「えっと……」
フェイトはたった今窮地に立たされていた。
強大な魔力の発生を感知して、慌てて飛んできてみると少年が魔導師−手に持つ紅い槍から、おそらく資料にあった謎の人物だろう−に襲われていた。
そして、その少年は自分の護衛対象である芳野さくら宅で同居していて……。
(確か、そこには備考として魔法の事情を知っている、と書いてあったはずなんだけど……)
資料は何度も確認したから良く覚えている。
だが実際には、少年は魔法についての知識は何もなく、魔力すら感じられない。
つまり一般人。
そんな人の目の前であそこまではっきりと、自分が時空管理局の局員であると名乗ってしまった。
それどころか魔法まで使ってしまった。
(どうしよう……)
任務開始直後からいきなり暗礁に乗り上げてしまったフェイトだった。
(どうしようか……)
フェイトが自分の失敗に困惑している最中、義之もまた困惑していた。
いきなり紅い槍を持った少年に命を狙われたかと思うと、今度は空飛ぶ美少女が現れ、しかも手に持つ黒い杖? から金色の閃光弾を発射。
それが少年の放つ紅い閃光とぶつかったと思えばそこで爆発し、いつの間にか少年の姿は消えていた。
あまりに非現実的すぎる状況。
夢かと思い頬をつねってみたが、しっかりと痛みを感じた。
(とりあえず、夢じゃなさそうだ)
どうやら思っていたより冷静みたいだなと自己分析しつつ、先程の光景を考える。
金色の閃光弾を発射する技術や、自在に浮遊する技術があるなど聞いたこともない。
そして、少年が言っていた“幻想の魔女”という単語。
(魔女……ということは、さっきのは魔法ってことか?)
いや、あまりにも短絡過ぎる気がするし、なにより非科学的な気がする。
義之はそこまで考えて思わず苦笑した。
(非科学的か……人の夢を見たり、和菓子を作ったりできる俺も十分非科学的な存在か)
いまさら非科学的だからどうだというのだ。
そんなものは見慣れている。
義之はそう気を取り直すと、ひとまずフェイトが困惑から復活するのを待つことにした。
一旦彼女から視線を外し、桜並木の方に視線を向ける。
先程の爆風によって舞い散った桜の花びらが、未だちらちらと舞っていた。
天空から地上を照らす月光と相まって、非常に幻想的な光景。
桜の花弁が月光で輝き、得も言われぬ雰囲気を醸し出していた。
(ん……?)
それに見とれていた義之は、その中に見慣れぬものを発見した。
それは、本来そこでは目にすることが出来ないはずのもの。
今まで慣れ親しんできた現実であるならば、あり得ないはずのもの。
それは二本脚で直立歩行を行う、爬虫類のような肌を持った異形の怪物。
その鋭角的な頭部には眼球と呼べるような器官は見えず、しかし微妙な凹凸を持っているように見えた。
両腕は異様に長く、その指には長く鋭い爪が付いている。
極めつきは腰の辺りから長く伸びている尻尾。
明らかに既存の生物とは一線を画している。
その様な生物が十数体もその場に“出現”していた。
「……? どうしたの? …………は!?」
フェイトもその気配に気付いたのか、杖を構えて後ろを振り返り、その怪物共を見て息を呑んだ音が聞こえる。
「これは……いったい、いつの間に?」
【Sensor doesn’t react 】
「やれやれ、管理局の人間がいるとは……これは予想外でしたね」
「誰!?」
フェイトが疑問の声を上げたとき、異形の怪物共の奥から一人の人間がゆっくりと歩み出てきた。
所々白髪の交じった頭の、どこかの民族服のようなものを纏った壮年の男性。
その言葉とは裏腹に、少しも困ったような表情は浮かんでいない。
「まあ、いいでしょう。貴女には“ガドラン”の相手でもして貰いましょうか」
あの怪物の名はガドランというのだろうか、そんなことを義之が考えていると、男は指をパチンと鳴らす。
すると、今まで沈黙を保っていたガドラン達が一斉に行動を開始した。
その行動は機敏で、一気に距離を詰めてくる。
目標は……フェイト。
その先頭に立つ一体がその鋭い爪を振り上げ、フェイトへと飛びかかる。
「はあ!!」
しかし、フェイトも然る者。
その動きの素早さには少し驚いたようだったが、爪の一撃を難なく回避すると、空いた脇腹へと杖を一閃した。
その一撃は自分より小柄な少女が放ったものとは思えないほどの威力で、たった一撃でガドランを吹き飛ばす。
しかし、次の個体が再び飛びかかってきた。
「バルディッシュ!! ハーケンフォーム!!」
【Yes,Sir】
フェイトの言葉に反応し、バルディッシュがその姿を変える。
斧にも似た形態から、金色の刃を為す鎌のような形態へと。
フェイトはそれを確かめもせずに迫ってくる個体の一撃をバルディッシュの先端で反らし、先程形成した刃で切り裂いた。
その一撃でガドランの胴体が二分される。
しかし異様なことに、その切り口からは血がこぼれ落ちることは無かった。
斬られたガドランは、まるでそれが当然であるように光の粒子となり、消え去ってしまう。
その光景に義之は思わず絶句してしまう。
そして、異質なものに対する恐怖を感じる。
(なんなんだよ、これは……)
あまりに異様な姿。
異質な最後。
その全てが義之の精神を揺さぶっていく。
気がつくと、義之とフェイトとの距離が開いていた。
どうやら彼女はガドランによって誘導されてしまったらしい。
その事がなおも義之の不安を煽る。
「君が桜内義之君か」
「っ!?」
突然背後から声を掛けられ、義之は思わず後ろを振り返った。
いつの間に来たのか、そこには先程ガドラン達の中にいた壮年の男の姿があった。
「ふむ……なかなか興味深い。だが、私にもやらなくてはならないことがありましてね」
男はそう言うと懐に手を入れる。
そこから取り出されたのは、何かの砕けた破片だった。
まるで夜の闇をそのまま封じ込めたかのような黒の欠片と、全く汚れのない純白の欠片。
ただの欠片であるはずなのに、そこからは言いようもない気配を感じる。
義之はそれに圧倒されるように一歩後ずさろうとして……出来なかった。
(体が動かない!?)
頭では動けと命令するのに、体が言うことを聞かない。
まるで何かに固定されたかのように。
「さあ、大人しくしていてください」
男はその欠片を手の中で弄びつつ、一歩、また一歩と近づいてくる。
頭の中で警鐘が鳴り響く。
危険、危険、危険と本能が叫ぶ。
だが体は未だ自由を取り戻すことが出来ず、こちらの意思に応えようとしない。
まるで別の意思によって体が動かされているかのように。
そうしている間に男はその手が届くところまで近づくと、その手に持つ黒と白の欠片を躊躇無く義之の胸へと突き立てた。
(っっっっっっ!?!?!?!?!?!?!?!?)
まるで鉄杭をねじ込まれたような、鋭い刃物を突き立てられたような痛みが一気に全身へと染み渡る。
それらの痛みに、体を分断されるかのような激痛が加わる。
何かが自分の中に強制的に侵入し、強引に引き裂かれるような、そんな痛み。
それを感じた瞬間、義之の意識は闇へと落ちた。
やや義之と男のいる位置から離れた地点では、未だフェイトがガドランとの激しい戦闘を繰り広げていた。
ここの戦闘能力ならフェイトの方に軍配が上がる。
何せ『純白の熾天使』と呼ばれる管理局のエース高町なのはと互角に闘うことの出来る人間の一人であり、過去の『闇の書事件』を解決に導いたメンバーの一人なのだから。
くぐり抜けた実戦も、力量もまるで違う。
だが如何せん物量の差が大きかった。
たった一人で十数体、しかも依然数が減らない群体を相手にしているのだ。
(くっ! このままじゃ……!!)
フェイトは焦っていたが、それでこの状況が解決しないのも分かっていた。
この場を切り抜ける方法が無いわけではないが、後に謎の男が控えていると分かっている以上今ここで無茶は出来ない。
あの時と違い、自分だけしかいないのだから。
そう思いつつも、バルディッシュの形成する金色の鎌で数体のガドランを切り裂き、光へと返す。
しかし、その隙間を別のガドランが再び埋める。
キリがない。
(どうしよう……)
いくらフェイトでも人の子であり、体力にも限界がある。
もう何体のガドランを光にしただろうか。
その一瞬の気の弛みと蓄積された疲労が、フェイトに対して牙を剥いた。
ガドランの反撃を許すという形で。
異形の怪物の凶爪が戦乙女を襲う。
「くう……!?」
咄嗟にバルディッシュがシールドを展開し、辛うじて外傷は防げたものの、その衝撃までは抑えることが出来なかった。
まるで人形でも飛ばすかのように吹き飛び、近くにあった桜の木に背中を打ち付ける。
「っ……!?」
その衝撃に思わず息が詰まる。
それにより体が力をなくし、地面に膝をつく結果となった。
その隙をガドラン達が見逃すはずもなく、フェイトの周囲には異形の怪物による壁が出来上がっていた。
衝撃が過ぎ去り、どうにか立ち上がったフェイトの頬に冷や汗が流れる。
(仕方ない、こうなったら……!!)
そしてフェイトが切り札を発動させようとしたとき……。
「ディバインバスター!!!!!!!」
天空から今まで何度も見てきた桃色の閃光が、ガドランへと降り注いだ。
その光の柱によって薙ぎ払われ、一瞬にして光にへと昇華されていく怪物達。
フェイトはそれに驚きつつも、咄嗟に光が降ってきた空へと視線を向ける。
そこには無二の親友であり、頼れる戦友。
「なのは!!」
『純白の熾天使』高町なのはの存在があった。
そう叫ぶと同時に彼女は目の前まで降りてくる。
その顔にはこちらを純粋に心配する表情が浮かんでいた。
「大丈夫? フェイトちゃん?」
「うん」
なのはの言葉にフェイトは肯くことで返す。
彼女にこれ以上の言葉は不要。
なのはもそれで全てを察したのかホッとした表情を浮かべ、すぐに残ったガドラン達の方へと真剣な表情で振り返った。
「行くよ」
「任せて、フェイトちゃん」
二人は互いに肯き合うと、それぞれの頼れる相棒をしっかりと握りしめる。
そして、今まさに突撃しようとしたとき……。
白と黒の入り交じった光の柱が天空へと立ち昇った。
「素晴らしい……」
男は目の前に立ち昇る黒白の光柱を感慨深く眺めていた。
ここまで深く同調するとは思っていなかったが、魔力は安定しているため暴走を心配する必要はない。
(これで第一段階は完了ですね。後は“彼”がどう動くかですが……)
男は今後の予定を思考しつつ、咄嗟にその場から飛び退いた。
瞬間、空から青い魔力によって形作られた刃が飛来し、先程まで立っていた地点に斬撃の後を刻みつける。
「これは……」
男はこの一撃を見たことがあった。
当時に比べると威力、鋭さが落ちているものの見間違えようがない。
これは、刀神の得意技の一つ。
「貴方がまさか復帰しているとは思いませんでしたよ」
男はそう呟きつつ、その剣撃が降ってきた上空に視線を向ける。
「相沢祐一」
その視線の先には、白銀の刀型デバイスを手に持ち白のバリアジャケットを纏った、懐かしき人物の姿があった。
もしそこになのはがいたらきっと驚いていたことだろう。
彼の体からは非常に高密度の殺気が吹き出し、その顔にはありありと憤怒の表情が張り付いていたのだから。
「ルスト、まさか貴様までもがここにいたとはな」
祐一がゆっくりと降下してくる。
ルストはそれを黙ってみている。
それもそうだろう。
彼にとっては喜ばしき事態なのだから。
「ええ。まさか君にここで再会出来るとは思っても見ませんでしたよ」
「俺は出来れば二度と会いたくは無かったがな」
祐一の言葉には、抑えきれぬほどの殺気が滲んでいる。
だがそれすらも心地良い。
あまりの喜ばしさに胸が躍る。
二度と殺し合うことが出来ないと思っていた、憎き怨敵に出会えるとは。
感動に、歓喜に身を震わせるルスト。
次の瞬間、固い金属同士が激しくぶつかり合う音が鳴り響いた。
祐一が一瞬で間合いを詰め銀光しか残らないほどの一閃を放ち、それをルストが一瞬で召還した、自分の身の丈ほどもある巨大な腕型デバイスで受け止めた故の結果だった。
二人の膨大なまでの魔力がぶつかり合い、大気を揺らす。
「ふむ、やはり“あの”デバイスでないとこんなものですか」
おそらくAAA級魔導師でも反応できないであろう祐一の剣撃を受けたのにもかかわらず、ルストは幾分不満そうな声を上げた。
「うるさい。お前らの相手など全力でするまでもない。それに、あいつはもう休むべきなんだ」
祐一の苛立ちを含んだ声。
彼の腕に力が籠もり、こちらのデバイスを押してくる。
「やれやれ、あれでさえ互角だったというのに、そんな劣化品で我々がどうにかなるとでも?……やれ、ガイオゾン」
ルストの声に反応し、そのデバイス“ガイオゾン”がその力を発動する。
強大な魔力の噴出と共に形成される、魔力剣。
それの一振りによって祐一は吹き飛ばされた。
「くうっ!?」
「ほら見なさい。貴方にもブランクがありすぎる。この程度の一撃にさえ弾かれるようでは話になりませんよ」
直ぐさま体勢を立て直す祐一を見つつ、先程の高揚感が無くなっていくのをルストは感じていた。
つまらない。
真につまらない。
あの、抜き身の日本刀のような研ぎ澄まされた魔力は錆び付いてしまったのか。
戦闘時の、ギラギラとした殺気はどうしたのか。
(これでは味わえないではありませんか)
殺し合いの高揚感を。
殺意と殺意のぶつかり合いの狭間にある、生命の輝きを。
自分が存在しているという実感を。
しかし……。
「……あまり俺を舐めるなよ?」
「…………っ!?」
斬られた。そう、錯覚した。
いや、錯覚させられた。
祐一の体から噴き出す、先程とは比較にならない量の魔力によって。
「エクスダム、魔力バイパスのリミッターを20から60まで上昇。同時に魔力収束開始」
【 Yes my master Convergence start 】
まるで滝のように流れ出ていた魔力が祐一のデバイスの刀身へと収束していき、エクスダムの刀身が蒼き魔力に覆われていく。
「多少のブランクはあるが、それでもお前一人が相手なら関係ない」
祐一の口から発せられるのは殺意そのもの。
圧倒的なまでの威圧感、存在感。
「……素晴らしい! これでこそ白銀の刀神だ!!」
あの頃と遜色ないほどの魔力。
斬られるというイメージを植え付けられるほどの殺気。
これこそがルストの求めていたもの。
ならば、自分もそれに応えなければ失礼というもの。
「ガイオゾン!! 全力で行きますよ!!!」
【Sir】
ルストの声に応えて、ガイオゾンが全身に魔力を漲らせる。
その腕の先から発せられるのは、先程とは比べものにならないほどの魔力によって為される刃。
それに合わせるように、祐一の構えが居合い抜きのような体勢に変わる。
急速に高まっていく緊張感。
張り詰めていく二人の魔力。
それらがぶつかり合い、火花を散らした。
その瞬間、祐一の体が霞んだ。
「“一の太刀、絶影”!!!!!!!」
そう感じた瞬間には祐一の体が既に眼前へと迫っていた。
同時に放たれる先程のが遅く感じるほどの一閃。
それを、直感とガイオゾンの自動防御反応で何とか受け止める。
互いの魔力が干渉し合い、激しく大地を震わす。
「一つ聞かせろ」
激しい鍔迫り合いの中、祐一が口を開いた。
「あの少年に何をした? 彼は一般人のはずだ」
「一般人? 桜内義之が?」
なんと。
彼を只の一般人と言うか。
「……くく」
面白い。
実に面白いことだ。
「何がおかしい!!」
祐一の両腕に力が籠もり、僅かに体が押される。
だがルストにとってそんなことは既にどうでも良くなっていた。
「おかしい? ああ、おかしいですね」
白銀の刀神ともあろうものが、ある人物の手のひらの上で躍らされているという事実は、実に滑稽だ。
「君は知らないのですか? 彼は、桜井義之は、限りなく“こちら側”なんですよ?」
「!?」
これは是が非でも観客として見物せねばなるまい。
相沢祐一がどう躍ってくれるのか。
この実にくだらない茶番劇の上で。
その事だけを見なければ。
ルストはわざと体の力を抜き、祐一の剣撃の勢いを利用して間合いを空ける。
「さて、私が彼に何をしたか、でしたね。簡単です。デバイスを埋め込んだのですよ。貴方が作り上げ、しかし封印したあのデバイスの欠片を」
「な!?」
ルストの言葉に祐一の表情が驚愕の色に染まる。
ここまで動揺する祐一も珍しいが、そろそろ時間だろう。
「さて、私はここで失礼させていただきましょう」
ルストは祐一に慇懃無礼に一礼すると、一瞬にして、まるで元からいなかったかのように姿を消した。
「なに、これ?」
フェイトはただ呆然と呟いた。
突然目の前に立ち上る白と黒が入り交じった光柱。
そこから、今までに感じたこと無いほどの魔力を感じ取ったからだ。
あまりに強大で、そしてどこか異質なそれは、何故か“闇の書”の姿を思い出させた。
目の前のガドラン達もその光柱の方を向き、魅入られてしまったかのように動かない。
それ程までの存在感。
しかしその魔力と光も次第に弱まり、そこに一人の人間の姿を残していた。
「……え!?」
光柱から現れた人影に、フェイトは思わず驚きの声を上げる。
そこにいたのは服装こそ先程とは違い、白地に黒のラインが入ったロングコートを纏ってはいるものの、先程まで自分の近くにいた少年、桜井義之だった。
その手には見慣れぬ純白の刀身を持つ、鍔元にスロットの付いた西洋剣が握られている。
だが、彼の目には意思の光が感じられない。
ただそこに立っているだけだった。
その時、周囲のガドラン達に動きが見られた。
一斉に、まるで獲物を見つけたピラニアのように義之へと飛びかかっていく。
「あ!!」
しまった。
いきなりの事態の推移に呆然としていたフェイトは、ガドラン達の行動に反応しきれなかった。
自分の不甲斐なさに怒りすら感じてしまう。
だが、今それを考えている場合ではない。
そう思考し、手に持つバルディッシュを構え、地を蹴ろうと力を込め……。
再び膨れ上がった魔力に足を止めざるを得なくなった。
【危険度増大、並びにマスターの意識喪失を確認】
同時に、義之の方向から聞こえてくる聞き覚えのない機械音声。
【よって、自衛行動を行います。“使用カード”は“2”“3”“4”“5”“6”】
使用カード? それに読み上げられているナンバーはいったい?
フェイトの頭に疑惑が募る。
【コード“Straight flush”】
その言葉が聞こえた瞬間、義之の体が初めて動いた。
自然な動きで剣を構える。
それと同時に彼の周囲に現れる5枚のカード。それらにはそれぞれ違った絵と紋様が描かれている。
ふわふわと浮かぶそれらは、まるでそれ自体が意志を持つように剣のスロットへと飛翔し、そこへ吸い込まれていく。
吸い込まれると同時にその剣から光が発せられ、その数が増えるごとに輝きを増していく。
しかし、その時には目前にガドランが迫っていた。
「危ない!!」
咄嗟に大地を蹴り、バルディッシュに魔力を込める。
(絶対間に合わせる!!)
一般人の彼を巻き込んだのは自分の責任。
だから自分が守る。
それだけを考え、フェイトは光の鎌を宿したバルディッシュを高々と振り上げ……。
【発動】
淡々とした機械音声を聞いた。
それに従い、義之の剣を構えた腕がぶれた。
いや、そう見えるほどの一閃。
シグナムの一閃に近いほどの一振り。
その瞬間、白銀の一閃がその刀身から放たれた。
それは次第に巨大化しながら、ガドラン達を飲み込んでいく。
そして、その一撃はそれにとどまらず、フェイトへと迫ってくる。
「っ!?!?」
咄嗟に障壁を展開。
次いで訪れる巨大な衝撃。
「くう!!」
何て衝撃だろうか。
あれだけの数のガドランを消し去ったというのに、これほどの威力を秘めているとは。
障壁が軋むのを感じてしまう。
だから刃に回していた分も障壁に回す。
その数秒後に衝撃は過ぎ去った。
白銀に染まっていた視界が開けると、目の前には最初に見た格好をした義之が倒れている。
(いったい、彼に何があったんだろう。それに、あれは)
あまりに急な状況の変化にフェイトは戸惑うことしか出来なかった。
何気なくフェイトが空を見上げると、そこには今の状況を示唆するように黒い雲が星々を覆い始めていた。
後書き
どうも、天信です。
今回は義之君が自分のデバイスを手に入れました。
実は彼のデバイスには元ネタがあるんですが、皆さんはおわかりになったでしょうか?
と、あまり本編に関係ないところは置いておきまして、ここで漸く第二の敵が登場しました。彼の目的は謎ですが、これから何度も物語に関係していくと思われます。
また祐一との因縁もいろいろと関係していくでしょう。
何はともあれ、初音島での事件に関係するメンバーが出そろったことになります。
これから一体何が起こるのか。祐一の過去に一体何があったのか。
それはこれから明かされることになると思います。
出来るなら、それを楽しみにしていただき、これからも拙作を読んでいただけると幸いです。
それでは最後に、ここまで読んでいただきありがとうございました。これからも応援よろしくお願いします。
感想、意見、その他諸々も遠慮無くお申し付け下さい。
それでは、ここで失礼いたします。