過去と再会する少年。

 

親友。後輩。

 

そして少年は再び力を手に取る。

 

呼ばれた意味を見出すために。

 

再び捨てた力と相まみえる。

                                       

 

 

 

                            SHININGHERAT

                                    第二話

                              「エクスダム……」

 

 

 

 

 

「そうか、高町さんは高校一年か」

 

「はい、なかなか勉強が難しくて大変です」

 

 なのはは祐一と一緒に、アースラへと行くために指定された場所へと向かっていた。

 

「ところで祐一さん、その高町さんっていうの止めてもらえませんか?祐一さんの方が年上なんですから、なのはで良いですよ」

 

 さすがに年上の人にさん付けされるのは違和感がある。

 

「ふむ。なら、そうさてもらおうかな」

 

 それからなのはは楽しく雑談しながら歩いた。

 

 そんなことをしながら、なのははちらりと祐一の様子を伺う。

 

 さっき、一瞬だけだが祐一の様子がおかしかった。

 

 祐一本人は「何でもない」と言っていたので、とりあえず気に留めないでおいたが。

 

 今のところそんな様子はないので内心安心する。

 

 そんなこんなしていると、指定された場所に到着した。

 

「エイミィさん、今着きました」

 

『こっちでも確認したわ、今転送するね』

 

 アースラに到着した旨を伝えると、返事と共に転送魔法が発動する。

 

 一瞬で光に包まれ、収まったときには、見慣れたアースラの艦内だった。

 

「やあ、祐一」

 

 既に目の前にクロノの姿があった。

 

 隣にいる祐一に気さくに声を掛ける。

 

 何となくだが、幾分表情が和らいでいる気がする。

 

「よう、クロノ。久しぶり」

 

 祐一もさっきまでとは違う、堅さのとれた表情で返す。

 

 クロノたちの言葉を信じていなかったわけではないが、本当に知り合いのようだ。

 

 だから……。

 

(いったい、祐一さんに何があったんだろう?)

 

 その事が気になった。

 

 見るところ、この二人の関係は問題ないように見える。

 

 少なくとも、クロノは気を許しているようだ。

 

 だったら何故……。

 

「なのは、置いていくぞ?」

 

 突然声を掛けられ、はっとなる。

 

 いつの間にか二人とも歩き出していた。

 

 思ったより考え事に集中していたのだろう。

 

「今行きまーす」

 

とりあえず浮かんだ疑問は一旦保留にすると、なのはは二人の後を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、クロノ。いつの間にか提督になって、出世したもんだな」

 

「まあ、それなりに仕事はこなしているからな」

 

 祐一はクロノと話しながら、アースラの艦内を歩いていた。

 

 歩く方向からして、目的地は艦長室やブリッジではなさそうだ。

 

「それよりクロノ、何で俺なんか呼んだんだ?他にも有望な奴はいっぱいいるだろうに」

 

「生半可な局員じゃ駄目なんだよ。それほどまでに今回の事件は危険なんだ」

 

 生半可。

 

 なら十年もデバイスに触ってすらいない自分が何の役に立つというのか。

 

 それを察したのか、クロノが先に口を開く。

 

「十年間のブランクを埋めて、有り余るほどの魔力と、経験が祐一にはある。それが理由だ。……着いたぞ」

 

 話しているうちに、ちょうど目的地に着いたらしい。

 

「開発室?」

 

 顔を上げ、見た部屋のプレートには確かにそう書かれている。

 

 なぜここに連れてこられるのか、それが分からない。

 

「祐一にとっては、今日は再会の多い日になると思うよ」

「再会?」

 

 クロノの言葉に思わず首を傾げる。

 

「まあ、とりあえず入ろうか」

 

 こっちの疑問などつゆ知らず、クロノはさっさと開発室へと入っていく。

 

「やれやれ」

 

 もう、ここには来ることはないと思っていたのだが。

 

 思っても見なかった現実に、思わず溜息が漏れる。

 

「どうしたんですか?」

 

 入ろうとしない祐一を疑問に思ったのか、なのはがこちらをのぞき込むようにしながら声を掛けてくる。

 

「いや、大丈夫。何でもないよ」

 

 なのはに笑顔でそう語りかけると、ゆっくりと室内へとはいる。

 

「「「お久しぶりです、祐一さん」」」

 

 その瞬間、聞き覚えのある声の三重奏に出迎えられた。

 

「えっと、真に、みなも、それに彩か?」

 

 目の前には、かつて自分が技術指導した魔導師、丘野真、鳴風みなも。そして鳴風みなもの融合型デバイス『フォローウィンド』の管理プログラムで彼らの親友、月代彩。

 

「はい、その節はお世話になりました」

 

 彩が丁寧に頭を下げる。

 

「いや、あの時のことはいいんだが……、なんでお前たちがここに?」

 

「実は、クロノさんに依頼されまして、祐一さん専用のデバイスを開発して欲しい、と」

 

 祐一の問に真が答える。

 

「俺専用の……デバイス?」

 

「はい。これです」

 

 みなもが差しだした手の上には、白銀に輝く宝石の埋め込まれたカード。

 

 祐一はそれをそっと手に取る。

 

 なんとなく体が熱くなってくる。

 

(久しぶりだな、この感覚も)

 

 あの頃感じていた、自分が魔法を使っていた理由。

 

 力なき人のための刃となる。

 

 その時の想いが蘇ってくる。

 

(だが、そんな権利は俺にはない)

 

 強引にそれを心の奥底に封じ込めると、真に向かって声を掛けた。

 

「それで、こいつの名前は?」

 

「『エクスダム』です」

 

「エクスダム……」

 

 その名前を何度か小さく呟く。

 

 再び手にした魔法の力の名を。

 

「ありがとう、真、みなも、彩」

 

「いえ。それでは、さっそくテストを行いましょう」

 

「テスト?」

 

「はい。まあ、祐一さんにちゃんと馴染むかどうかのテストです」

 

 成る程。

 

 彩の言葉でようやく開発室に呼ばれた意味が分かった。

 

 ここならデバイスの実験のための結界を張る設備もある。

 

 調整程度なら打って付けの場所だ。

 

「相手は既に準備して貰っています」

 

「分かった」

 

 さっそく祐一は実験室へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

「遅かったな」

 

 実験室に足を踏み入れた途端、そんな言葉を投げかけられた。

 

「悪いね。久しぶりにデバイスを触ったもんだから」

 

 祐一はすぐに声のした方へと視線を向ける。

 

 そこにはピンクの長い髪を黄色いリボンでまとめ、甲冑を身に纏い剣を持つ女性が立っていた。

 

「……成る程、『夜天の騎士』が相手か」

 

「ほう、私たちのことを知っているのか」

 

「まあ、噂くらいはな」

 

 そう切り返しながら、祐一は内心クロノたち(なのはは事情を知らないようだから除く)に文句を言いたい気分でいっぱいだった。

 

 夜天の騎士、すなわち超一流の魔導師を相手に、十年のブランクのある男が肩慣らしをしろと?

 

 ふざけるのも大概にして欲しい。

 

「悪く思わないでくれ。これは私が頼み込んだのだ」

 

 こっちの内心を察したのだろう、目の前の女性、確か『剣の騎士シグナム』だったか、が声を掛けてきた。

 

「今回の事件は第一級ロストギア関連事件だ。なら実力あるものを配備するのが当然のはず」

 

 シグナムの淡々とした口調。しかし、だんだんそれに力がこもってきた。

 

「お前がクロノ提督の古い友人という話は聞いている。しかし、それを十年も魔法に関わってきていない男に任せることには納得がいかない!」

 

 シグナムの鋭い視線がまっすぐにこちらを射抜く。

 

「だから、これで私がお前に勝ったら、我々がお前の代わりにこの任務に就く、そう約束を取り付けた」

 

 シグナムが自らの愛剣レヴァンティンの切っ先を祐一へと向ける。

 

「だから全力でかかってこい。そして、お前の力を見せてみろ!」

 

「……」

 

 大体事情が飲み込めた。

 

 ようするにクロノは、祐一の実力を見せる場所と、リハビリを兼ねてこの場を用意したのだろう。

 

 上手くいけば、シグナムのような者達を静めることが出来る。

 

 クロノにどういう意図があるかは知らないが、非常に都合が良い。

 

「おい、クロノ」

 

 だが、いくら何でもこれは非常識すぎる。

 

「いったい俺に何をさせたい?」

 

 祐一は顔を上げ、クロノの方を見る。

 

『……今は言えない。だが、これはお前のためでもある。それだけは信じてくれ』

 

 クロノ真剣な瞳。

 

 そこからは嘘の色は見て取れない。

 

「……わかった。だが、後で必ず話を聞かせて貰うぞ」

 

 納得しきってはいないが、今はこちらに集中しよう。

 

 そう思考を切り替え、シグナムへと向き直る。

 

『祐一さん、エクスダムは以前、祐一さんが使っていたデバイスを元にしています。なので、基本構造はそれと同じです。ただ、さすがにあそこまでの能力は出せませんでした』

 

「分かった」

 

 真からのエクスダムの説明に、懐かしい単語が含まれていた。

 

 もう破壊されてしまった祐一のデバイス。

 

 一度失った、失うことを選んだ力の後継者。

 

 改めて自分が、再び魔法の力を得たと実感させられる。

 

「よし、行くか。エクスダム、セットアップ」

 

【Yes,my master  】

 

 女性的な機会の音声がカード状のエクスダムから発せられる。

 

 まばゆい光が祐一を包み込み、弾ける。

 

 白を基調とし、黒のラインが入ったバリアジャケット。

 

 そして、その右手には日本刀型のデバイスが握られていた。

 

 魔法石は日本刀の鍔元に埋め込まれている。

 

 しかし、祐一は特に構えず、その右手を力なく下げている。

 

「何のつもりだ?」

 

 シグナムが眉をひそめる。

 

 まあ、特に構えも見せなかったら誰だってそう反応するだろう。

 

 特に、今から闘おうという相手なら尚更だ。

 

「気にするな。これが俺のスタイルなんだ。さあ、気にせずいこうか」

 

 祐一はすっと体を半身にずらし、重心を少し落とした。

 

 それに何か感じたのだろう、シグナムも口をつぐみ、構える。

 

 しばらくの間、二人はじっとにらみ合う。

 

 次の瞬間、二人は全く同時に床を蹴り、突撃していった。

 

 

 

 

 

後書き

 どうも、天信です。

 

 今回登場したのはWindのキャラです。一応、彼らにも今後出番はある予定……なんですが、書いてる途中でプロットが変わるかも(汗)

 

 とりあえず、祐一がバリアジャケットとデバイスを装着しました。しかも、元自分が使っていたものの劣化版のようなものを。

 

 ちなみに形状は、武装錬金のサムライソードXをイメージしていただければ良いかと。

 

 ちょっとだけネタバレですが、彼のデバイスにはそれほど特殊な機能はありません。

 

 それでも祐一の強さを形成する何かはあります。

 

 さて、次回はシグナムとの戦闘と、もう一人、この話の中核となる予定の人物が登場予定です。

 

 しかし、この展開の遅さはどうなんでしょう?

 

 なにぶん、初めてなもので、勝手が分かりません。

 

 とにかく、頑張って書いていくつもりなので、どうぞよろしくお願いします。