お昼休みは休息じゃあない、本当の戦いの始まりの合図なんだ。

by.JGJ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん。一緒にご飯食べませんか?」

「あぁ、そうだな」

 

昼休み。音夢によって第八世界から呼び起こされた俺は、音夢からの申し出を快く受けることにする。

どうせ学食で工藤と杉並とで食べるのだ。義妹の一人や二人、増えても別に苦労はしない。

 

「それじゃ、杉並とか誘ってくるな」

「ううん、杉並君とかは別に誘わなくてもいいんじゃないでしょうか?

 ほら、もし忙しかったりとかしたら大変でしょうし」

 

俺が席を立とうとすると慌てた様子で止めに入る。

あいつが忙しくなったら、確実に数日中に学園で何かが起こるぞ。

それでいいのか、風紀委員。

 

「そ、それに兄さんと二人で食べ――」

「はよ〜ん」

 

音夢の呟きはドアからやってきた(至極当たり前だが)金髪見た目ロリ少女に掻き消された。

そう、俺の従兄妹の芳乃さくらだ。

さくらはこのクラスの生徒のように自然に教室に入ると、俺に飛び込んできたので、優しく抱きとめてやる。

さすがに何処かの北の街の奴みたいに避けるということは可哀想な気がしたのでしなかった。

 

「お兄ちゃん、一緒にランチでもどう? 勿論二人っきりで」

「なっ?!」

「うむ、たまにはいいか。音夢、さくらも一緒でいいよな?」

「ボクとしてはすっごく不満なんだけど、音夢ちゃんがいいっていうんならボクはかまわないよ?

 まぁ、音夢ちゃんに妹としての常識があるんならこの場は引いてくれるだろうけどね」

 

音夢の方を見てニヤリという擬音がつきそうな笑みを浮かべるさくら。

勿論、俺の腕の中でだ。

 

「いいよねー? 音夢ちゃん。音夢ちゃんは妹だもんねー?」

「お、おい、さくら……?」

「……」

 

音夢は俯いた状態で何も言わない。

はたから見るとそれは敗北宣言に見えた。

 

「それじゃ、音夢ちゃんは行かないみたいだし、購買でパンを買って屋上に行こう?」

「あ、お、おい?! 引っ張るなって」

 

俺の腕を取ってぐいぐいと引っ張ってくるさくら。

音夢の方を見る。俯いたままなので表情はわからなく、小さな肩を細かく震わせている。

 

「……ら……ん」

 

最初は泣いているのかと思った。

だけど、そんなことありえない。

 

「さ…ら…ゃん」

 

お昼を食べれないくらいで音夢が泣くなんて、ナンセンスだ。

だったらなに?

 

「さくらちゃん」

 

何故、俺の義妹は俯いて肩を震わせているのだろう。

 

「さくらちゃん!」

 

……あぁ、そうか。

 

「さくらっ!!」

 

教室中に広がる音夢の声。

昼休みの喧騒もあっという間に静まった。

 

 

 

そう、音夢は「泣いていた」んじゃない「憤っていた」んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さくら、なんで私から兄さんを奪うの? 私のこと、さくらは知ってるんでしょ?

じゃあなんでただの従兄妹のさくらちゃんが私の兄さんを奪うの?

なんで? なんで? なんで? なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……」

「お、おい、音夢?」

「なんでっ?! 答えてよ!! さくらちゃん!」

 

裏モードも忘れ、感情の思い向くままに言葉を投げつける。

それは学校にいる奴らからすれば異質に見えただろう。

だって、兄である俺からしてもそう思わせる程、音夢は荒れているのだから。

 

「音夢ちゃん、じゃあ、逆に言うよ。

 なんでボクからお兄ちゃんを盗ろうとするの?」

「?!」

「ボクは昔からっ! ずっと、ずーーーっと昔からっ!

 お兄ちゃんのことが好きだった!

 あのさくらの木の下で約束だってした! それなのに音夢ちゃんは、そんなボクのお兄ちゃんへの想いを泥棒猫扱い?

 いい加減にしてよね。泥棒猫なのは音夢ちゃんのほうなんだよ!」

「お、おい、二人とも……」

「お兄ちゃんは黙ってて」

「兄さん、少し黙っててください」

 

なんとかして収拾を収めようと思ったんだが……無理でした。

こうなったら誰かに協力を仰いで……おい、何でみんな目を反らす。

田端、俺達親友だよな?

 

『……無理』

 

眞子、いつも俺を殴ってる馬鹿力でなんとかならないか?

 

『朝倉の問題でしょ? あんた自身でなんとかしなさいよ』

 

……杉並、甚だ不本意だがお前に協力を頼みたい。

 

『悪いな、大佐殿からメールが来た。暫く俺は席を離すから、白河先生には早退と伝えておいてくれ』

 

神は死にたもうたか。

サインを送る友人にことごとくフられ続ける。

 

「さくらなんかに私は負けない」

「ぼ、ボクだって音夢ちゃんなんかには負けない。絶対に負けないよ」

 

音夢の叫びに呼応するようにさくらも叫ぶ

これから赤くて、鉄のような匂いがして、ドロドロした液体をみそうな雰囲気が充満してる。

 

「朝倉くん、ど、どうしたの? これ」

「あぁ、ことりか。一種の修羅場って奴だ」

 

俺が渦中ということは伏せて、教室にやってきたことりに事情を説明する。

 

「あ、あはは……渦中の人物が蚊帳の外って感じっスね」

「へ? なんでわかるんだ?」

「えっ?! ……ほ、ほら、二人とも朝倉くん好き好き光線を出してるもん。

 これだけ散布しててわからないわけないよ」

「う、俺ってそんなに鈍感なのか?」

 

なんかショックだ。

にしても散布って農薬じゃないんだから。

 

「ところで、ことりはなにか用か?

 これの野次馬だったら悪かったな。俺のせいで他のクラスにも迷惑かけちゃったみたいで」

「ううん、そうじゃなくて。お姉ちゃんが私と朝倉くんを呼んできてくれないかって」

「暦先生が? わかった」

「下手したら五時間目にかかっちゃうかもしれないから、お昼は理科準備室で食べるけどいい?」

「あぁ、別に構わない」

 

正直かったるいが、さすがにこれ以上成績を下げるわけにはいかない。

少しでも心象は良くしたいしな。

 

「というわけだから音夢、さくら! 用事が出来たからお昼はまた今度な!」

「え?!」

「ほわっと?!」

 

先程まで喧嘩をしていた二人が嘘みたいに呆然としている中、俺はことりと教室を出る。

 

「そういえば、まだ昼を買ってなかった。

購買寄ってくるから先に行ってくれないか」

「あ、それなら、一緒のお弁当を食べない?」

「なっ?!」

「にゃっ?!」

 

食べ物がないので購買へと走ろうとした俺に、ことりがありがたいお言葉を投げかけてくれる。

ことりの料理は以前食べたからその美味さは立証済。

しかも俺の懐を寒くさせなくてもいいという正に一石二鳥の申し出だ。

 

「いいのか? ことりが食べる分が減るけど」

「今日は作り過ぎちゃったから、丁度いいよ」

「それじゃあ、お言葉に甘えるとするか」

「うん、人の厚意には甘えるべきだよ」

 

さて、ことりの手料理も食べれることだし、お仕事を頑張りますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「……音夢ちゃん」

「なに? さくら」

「もしかしたらさ、ボク達、いがみ合ってる余裕なんてないのかな?」

「私も同じこと考えてました。一番の敵はもしかしたら白河さんかも」

「とりあえずボクは白河さんを敵性と判断したけど、音夢ちゃんは?」

「さくら、愚かな質問しないでください。勿論敵性です」

「……同盟成立、だね」

「あくまで仮初の、ですけどね」

「ふ、ふふっ……」

「ふふふ……」

(こ、怖えぇ……)

 

 

 

 

 

 

 

はじめてのD.C.の小説が修羅場ってどうよ?(挨拶

しかも短いしw

とりあえず修羅場の練習用の作品。

練習なのでとてもやっつけ、公開なんて絶対させれない。

でも、ネタが無い今、公開しないとやってられない(ぇ

でもなんか満足してる自分がいる。

あぁ、もう病気だw

 

 

 

2006年10月7日掲載