まずはじめに、この物語は相沢祐一君を主軸にしたCCOVの物語です。
そして、この物語は読者様の感想がある一定以上入ってきてから書きます。
それではごゆるりとお楽しみください……
聖剣舞士〜ソードダンサー〜
第五話『ダンジョンへ行こう!』
視点:SYUKAN
「……ええ……そうですか……」
キャッスル内の一室である、水瀬秋子の部屋には一通の電話がかかってきていた。
その口調と雰囲気から、とてもではないが好ましい内容ではないようだ。
この一室にある電話は特殊で、とある者達にしかからない・または受信できないように施設を限定してあり、まず盗聴をされる心配がなかった。
「……はい、どうやらそちらはうまくいっているようですね。……え、それは本当ですか?」
秋子の口調が変わった、それを境目に徐々に表情が変化していく。
最初は困った表情に、次いで口元が引きつり、最後には溜め息を吐くまでになった。
「そうですか……では、アレはこちらの手元に置いておいたほうがいいですね?ですが、なぜアレを狙うんですか?アレは確かに特別ですがそこまで……!そうですか、そう言う理由なんですね?」
会話の主の言葉に、ため息を交えつつ秋子は答えた。
どうやら、会話の主の言葉、秋子の中での考えを納得させるのには十分なものだったらしい。それも、先程以上に顔を引きつらせている以上、悪いほうの意味合いでだ。
「……確認しますが、あなたの元にも一体居るんですね?――――究極の騎士の方にも?……分かりました、こちらでも確認が出来次第お知らせいたします」
カチャンと、電話を置く。
秋子は、先程までのことを思い、思わずもう一度溜め息をついた。+
――――敵の狙いがアレならばともかくアレを守ることをまずは考えなければいけない。
だが、アレは地下倉庫の――――それも、最も奥深くにあるのだ簡単に取りにいけるものではない。
もし、自分達がとりにいかなければ奴等は、遠慮なくアレを取りにいくだろう。
「本当に困りました……」
秋子は頬に手を当てて思考に潜る。
――――祐一さんに行ってもらいましょうか……?
彼ならば、あそこまで辿り着く事が出来るだろうと考えての思考だった。
うまくいけば、アレを起動できるかもしれないし……
だが、今は一人で考えても仕方がないだろう。
ともかく、取らぬ狸の何とやら――――まずは、アレを手に入れることを最重要としよう。
「全く、漆黒の騎士も困った課題をくれますね」
仕方がありませんが、と、苦笑をしながら彼女は自らの部屋を出て行った。
――――彼女自身も分かっているのだ、もしも漆黒の騎士たる彼がその事を教えてくれなければ、状況は尚悪化していると言う事を。
それにしても皮肉が利いている、と、ふと秋子は思った。
何せ――――
「何故、それぞれの師と弟子のところにあるんでしょうね……?」
きっとそれは、そう――――
「運命、なのでしょうね……」
それも、とびっきり皮肉の効いた――――
視点:YUICHI
「ローゼンメイデン?」
「ええ」
「あ、知ってます、確かそれって世界に七体しかない人形ですよね?」
秋子さんの言葉に、音夢は目を僅かに輝かせながらそう言った。
――――そういえば、音夢もかなり人形好きだったな。
かつて住んでいた所で、何回か入ったことのある音夢の部屋を頭の中に思い浮かべた。
そして、こういうことを知っていることから分かるように、音夢はかなり人形に詳しかった。
以前に住んでいた所でテディベアや、ビスクドール店が開かれていたら必ず行くほどだ。
――――が、それとは別口で俺もその名前を聞いたことがあった。
「しかし、アレって確か……」
「はい、そうです。ですが、私がわかっているところだけで既に二体程目覚めているようです」
「――――っ!?」
俺が聞いたこと、それはアリスゲームというものだった。
アリスゲーム――――なんでも、七体のローゼンメイデンのドール達を戦わせて最後まで戦い抜いたドールが‘アリス’とやらになれるらしい。
アリスゲームが始まる、そう言うことなのだろうか?
「ちなみに、目覚めさせたのは漆黒の騎士と究極の騎士のお二人ですよ」
「「ええっ!?」」
いや、ちょっと待て……なんで師匠と、お師匠様なんだ……?
てか、この話の流れだともしかして……?
「はい、察してると思いますが――――この地下にもあります♪」
「あるんですかっ!」
「――――って!?もしかして、目覚めさせるんですか!?」
音夢は嬉々とした表情で秋子さん言葉に答えた。
秋子さんは、それはもういつも以上に笑みを深くして言う。
「あなたの師と、漆黒の騎士の総意ですよ?」
「選択権なしっ!?」
師匠だけでもほぼ確定なのに、そのまた師匠にまで決定付けられたら俺に退路はない。
――――つうか、逃げたら死ぬ。100%死ぬ。
ちなみに、執行人は目の前に居る魚座だ。
「兄さん」
「音夢?」
「今回はがんばりましょうね!」
――――なぜかいつも以上に気を張っている音夢に、俺は項垂れるしかなかった。
こうして俺は、これから長い付き合いになるであろう、あの生意気な人形を持ってくるべく俺達は動き始めるのだった。
一抹の不安を感じながらも――――
秋子さんの頼みを聞いた後、俺はメンバーを集めることをまず考えた。
曰くかなり危険なところらしい。
まぁ、王家の財宝がある所なのだ、危険なのは当然だろう。
俺と音夢だけでも十分なのだが、このパーティ恐ろしい程に攻撃に偏っている。
なんせ、剣士&剣士だ、回復とか魔法とか一応使えるけどそれでも限度がある。
――――むー、神官タイプが一人欲しいなー……でも、そんな知り合い……
「居た……」
「どうしたんですか、兄さん?」
つい先日であったばかりの少女二人を頭の中に浮かべ、俺は苦笑した。
本当に縁とは奇なり、だ。
とりあえず、音夢に話して――――
「………………」
「どうしたんですか、兄さん?」
音夢に、話す……?
あの、雪の日に音夢を待たせていた日に、女の子とあっていたことを話す?」
そんな自殺行為な……」
「へー、兄さん。あの日、女の子にあっていたんですねー……それは、初耳です」
「ねねねねねねねね、音夢さん!な、なんでその事を!?」
「自分の癖って、厄介ですよねー」
ヒィィィィィィ!!怒ってる、怒ってるよー!!
て、言うか、俺絶対にこの癖のせいでいつか絶対に死ぬー!!!
音夢の周りには、いつも以上の雷がパチパチと帯電していた。
し、しかも輪状になってる……って!?
ま、まさか……
「さぁ、兄さん、覚悟して下さい」
「ま、待て!音夢、話せば分か……!」
「問答無用です!」
そんなー!!!
「フル・インパクト・ライトニング!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
音夢の必殺魔法が俺に降り注ぐのだった……
ガクリ
合掌
「えと、王城の地下のダンジョン、ですか?」
「うん、茉莉ちゃんとちひろちゃんがよければ、だけど」
自己紹介を済ました後、余り時間もないので早速俺は本題に入った。
――――最も、ちひろちゃんは俺の言葉に少し戸惑った表情をしているが。
まぁ、確かに意味が分からないだろうけど……
それは、茉莉ちゃんも同様のようだった。
「――――実は結構危険らしいから断ってくれても構わない」
「どうする、茉莉?」
「んー、私は手伝っても良いと思うけど」
前のことがあるし、と、顔を僅かに引きつらせていった。
――――あの蹴りは、世界の修正が入ったとはいえ強烈だったからなー……
ちなみに、音夢はニッコニコと裏モードで笑っているように見えるが……うえーん、目が笑ってないよー……
きょ、極力音夢の方は見ないようにしよう!!
ぼ、ボロを出さないように……
「でででででででで、てててて、手伝ってくれるのか?」
「なんで、どもってるんですか?」
全然駄目でした。
「それはともかく、私は良いですよ。茉莉は?」
「うん、私も良いよー」
と、二人は快く快諾してくれた。
そんなこんなで、メンバーは俺こと、双剣士・相沢祐一と妹の剣士の音夢、それに僧侶のちひろちゃんと……え〜と、多分格闘家?の茉莉ちゃん。
……ちょーと、パワーバランスが攻撃よりに近づいているけど、まぁ、そこら辺は気にしない方向性で。
それにしても驚きだ、無限闘技場の下がこんな風になっているなんて。
この場所をはっきりと表す言葉があるとすれば迷宮だろう。
それも、かなり巨大なサイズのようだ。
今歩いているところは一本道だが、しばらく歩いていると四つ股に分かれているところが見える。
――――秋子さんいわく、この迷宮の広さはほぼシティと同じサイズらしい、だから地図を渡してくれたのだ。
それにしても、この十字路……俺の感では、右が当たりだといっている!!
「えと、どっちの方角ですか?音夢さん」
「少し待ってください――――左ですね。って、兄さん。なんでそんな悲しそうな顔をしているんですか?」
「……いや、なんでもないです」
ふんっ……いいよいいよ……どーせ俺は方向音痴さ!
そんなことを思いながら、俺はとぼとぼと音夢達の後ろに着いた。
ちなみに、今回は俺は先行しないようにと音夢にかなり強く言われている。
俺達だけならともかく、茉莉ちゃん達をそこまで面倒ごとに着き合せないためだそーだ。
――――いーよ、分かってるもん。俺、方向音痴だし……
あー、また凹んできた……
「あ、あの……祐一さん、大丈夫ですか?」
「……ちひろちゃんは優しいなぁ……」
思わず涙がホロリ。
そんな漫才じみたことをやっていると、突き当たりに出た、見事に袋小路である。
――――おかしいな、音夢が道を間違えるはずがないし……それに、なんだか変な違和感があるような……?
音夢も、地図を見ていぶかしんでる。
「おかしいですね……ここに道があるという表記があるのですが……」
「――――あ、ほんとですね……でも、道がふさがってるし……?ちひろー、何か分かる?」
「ちょっと待って」
ちひろちゃんは一回目を閉じると、ゆっくりと開いた。
――――青みがかっていた瞳は深緑に変わり、その瞳からかなり強力な魔力が感じられる。
魔眼――――か。
「――――ん、魔術的な迷彩がかけられているみたい。でも迷彩だけみたいです、音夢さん」
「あ、なるほど、さっきから感じていた違和感はそれか」
まー、魔眼持っててもちひろちゃんはちひろちゃんだし、そんなことはどーでもいいか。
俺と音夢も強さは別として魔眼所持者だし、後付けらしいけど師匠なんて直死の魔眼を持ってるし。
……改めて考えると、やっぱり化け物だな、師匠。
「……兄さん、その思考は危険ですよ」
「ねねねねねねねね、音夢さま!!後生ですから、師匠には言わないでください!!!!」
「ふふふ、考えておきますね」
……つーか、思考が読まれるのがほぼ標準になってるー!!!
「それはともかく、でしたらここの先にいけるんですね?」
「あ、はい……それは、問題ないと」
「兄さん、ゴーです」
「……りょーかい」
「……って、音夢さん!?」
茉莉ちゃんの驚きの言葉に苦笑ながら手を振って、音夢の言葉に従い俺はゆっくりと歩き始めた。
――――別段、音夢は俺を適当に動かしたわけではない。
この中で、最も戦闘力が高いのは俺であることは間違えない。
故に、この扉の向こうに何が待っていたとして最も迅速かつ的確に対応できる俺を選んだのだ。
音夢の頭の回転率の高さに関しては、俺はかなり信頼している。
20分ぐらいの距離を歩いたとき。
いい加減結構歩き、音夢たちを呼び出そうと思ったときである。
「グルォォォォォ!!!」
「おでましか」
俺は、剣にこめていた、膨大な魔闘気をそのモンスターに向けて放つ。
――――閃――――
ズズゥン……と、大きなものが落ちる音が響いた。
――――残る気配は2体。
「ガァァァァァァ!!!」
「グォォォォォォ!!!」
仲間を殺されたのがよほど頭にきたのか、巨大な雄たけびを上げながらモンスター『ハイ・エレフィス』と『ダイ・グリズリー』が襲い掛かってくる。
『ハイ・エレフィス』は高位モンスターで像の頭と人の体を持ったモンスターだ。
知能はそんなにないが、ともかく攻撃力と防御力がひたすら高い。
その証拠に――――
ガァァァァァァァァァン!!!!
迷宮の壁に大きな傷がつく。ずいぶん太い壁なのか貫かれることはなかったが、かなりの大きな衝撃だ。
まともに受ければ、人間なんて粉々だろう。
最も、まともに受ければ、だがな――――
「魔闘鬼神流――――
――――大螺旋!!!」
俺の持つ小太刀――――『麒麟』に水の力が集まる、水の力は俺の刀を中心に渦を巻き強力な力と成す!!
「ハァァァァァ!!!」
水の刃は、『大螺旋』の名の如く螺旋のように周り、突き刺した『ハイ・エレフィス』に悲鳴を上げさせることもなく容赦なくズタズタに切り裂く。
――――二体目!!
「――――なっ!?」
一体目のモンスターを倒したとき、俺は確かに感じた、通り抜けた壁の向こうから音夢達以外の気配を!高まる魔力と闘気を!
まずい!急いで倒していかなければ!!
向こうに居るモンスターが、ここに居るモンスターと同レベルならかなりまずい。
が、残りの一体『ダイ・グリズリー』は、二体の自分の仲間がやられた事に気づき距離をとっていた。
『ダイ・グリズリー』はこのタイプのモンスターの中ではそこそこ賢い。
故に様子見をしているのだろう、だが構えを解かない所を見ると、まだ攻撃の意思は残っているようだ。
このモンスターは『ハイ・エレフィス』と同様にパワーと防御能力に関してはピカ一だ。
そして、『ダイ・グリズリー』にはもう一つの特徴がある。
「グルルルルルッ!!!」
そのスピードは、『ハイ・エレフィス』を上回り、モンスターの中でも敏速な『ウルフ』族に匹敵する。
そして――――
「グォォォォォ!!」
「チィッ!!!」
この“声”がひたすら厄介なのだ。
音速を超えるその声が、衝撃波となり俺を襲う!
グガァァァァァァン!!
俺は、もう片方の手に獅子座の剣を呼び出すと十字に交差させた。
『ダイ・グリズリー』……危険度Sランクモンスター……しかも、こいつはその中でもSSランクに近いタイプだ。
騎士団でも、かなり上位の物が数人でしか倒せないモンスターだ。
――――今の状態で挟撃にされるわけにはいかない。
どうしてこんな所に居るのかは疑問に残るが――――今は、倒すのみ!!
「ハァァァァァァァァ!!」
己の中の魔闘気を高めて、体に纏う。
通常、魔闘気は常時身体に纏っているのだが、戦闘時はそれに更に力をこめる。
それが今の俺の状態だ。
「――――行くぞ!!」
宣言し、剣を鞘に収める。
――――俺の師が、最も好んで使う奥義を持ってこのモンスターに相対する。
こめられた魔闘気は膨大で、身に纏っている魔闘気だけでも下手な呪文なら防ぐことができるくらいだ。
『ダイ・グリズリー』もまた、疾駆する。
その速さは、巨体に似合わず一級品だ。
――――だが、俺から言わせればまだ遅い。
視界がモノクロに変わる。
知覚領域が広がり、速度は更に加速する。
――――御神流 奥義の歩方 神速――――
『ダイ・グリズリー』の疾駆していた肉体はほぼ止まったようなスピードになる。
だが、この世界で俺だけは正常な速さで動いていた。
付け足すのならば、魔闘気を纏っている為に負担もほぼない。
ゲームセットだ――――ッ!!!
――――永全不動八門一派 御神真刀流 奥義之六――――
走る思考、止まらぬ剣閃――――!!!
――――薙旋――――
四つの閃光が『ダイ・グリズリー』に走る。
まさに、神速。
モノクロの世界から世界は鮮やかな色を元に戻す。
俺は、『ダイ・グリズリー』を無視して即座に動き出す。
「くっ……音夢!ちひろちゃん!茉莉ちゃん!」
僅かに焦りを感じながら、俺はすぐに道を戻った。