まずはじめに、この物語は相沢祐一君を主軸にしたCCOVの物語です。
そして、この物語は読者様の感想がある一定以上入ってきてから書きます。
それではごゆるりとお楽しみください……
聖剣舞士〜ソードダンサー〜
第四話『新たな(?)出会い』
麗らかな昼下がり、俺と音夢はそこいら辺の売店をのんびりと冷やかしつつ昼食を摂っていた。
ここはシティ中央の商店街。流石、中央商店街と名付けられているだけあって人通りの多さは非常に目に付く。
俺の目的は特にない、強いて言うならばここに来るまでの間に消費していた縄・回復系の道具・その他、使い捨てグッズくらいだろうか。
音夢の方は、それだけではなくアクセサリーや小物、それに洋服と最後に――――刀類か。
むぅ、音夢も微妙にあの人の妹さんのおかげで刃物マニアと貸してるからな……
ちなみに、音夢が主に見るのは大太刀や野太刀といった大型のものである。
まぁ、音夢の場合自分の本来の武器がそうだからかもしれないが。
「兄さん……」
「な、なんだ、音夢?」
ふといきなり音夢がこっちを向いた。
微笑を浮かべていることから、どうやら裏モードらしい。
あ、なんだろう、凄く嫌な汗が吹き出てきた。
「変なこと考えてませんか?」
「メッソウモゴザイマセン」
だから、なんでそんなに鋭いんだよ!!
思わず心の中で突っ込みを入れるが、口にしたら殺されそうなので言わないでおく。」
「兄さん、そうですか、そんなに死にたいんですか?」
「な!?お、俺は何も言ってないぞ!」
「――――クスクス、ご自分の直りようのない癖って辛いですね」
うわ〜ん、発動したのね……思ったことを口にしちゃうこのスキル……
本当にどうにかしてくれよー……
パリパリと辺りの空気が放電しているのがわかる。
ま、街の中だから広範囲のものは使わないよな?流石に、な?
「天かける飛翔の雷、天の理をもって雷鳴を轟かせよ。その滅びの雷と共に!!」
ちょっと待てー!!
その呪文って、確か古代魔法―!?
「古き雷!!!」
「うぎゃああああああああ!!!」
お、俺――――ここまで音夢を怒らせることを言ったのか……?
体中がしびれている、さ、流石古代魔法――――中級の下でこの威力か……
「兄さん、私は刃物マニアじゃありませんからね……!?」
「は、はい!!」
――――あ、あれぇ?俺ってその部分まで言葉にしていたのかなあ?
酒場『スノウ・バッカス』
俺は、酒場に来ていた。
基本的に、情報集めといえばこういう場所である。
ちなみに音夢は街の中で聞き込みをしている。
――――まぁ、こういう場所にあいつを連れて来るわけにはいかないしな。
あー、この時間のせいかな、人が満員だなー。
酒の匂いが漂う店内を見回すと、ふと、一つの席の光景が目に入った。
この場にそぐわぬ位の年齢の少女だ。
歳のところは、おそらく俺より年下くらいだろう、背丈は俺よりも低い、と思う。
それに、さっきからキョロキョロと辺りを見回していることから、どうやら余りこういう場には慣れていないらしい。
それに、良く見てみれば注文もしていないな……
――――祐一、困っている人がいるのならなるべく力になれ――――
気がつけば俺は、彼女に話し掛けていた。
「ごめん、この席空いてるかな?」
「え、あ、その、あの………はい」
俺の言葉に、ものすごく小さな声で答える。
俺は、少女を困らせないように、怖がらせないように、おどけた口調で話し掛ける。
「いやー、ごめんなー。席が空いてなくて困っていたんだよー」
「い、いえ……」
「いや、本当に助かったよ。これで食事も摂る事ができるしねー」
――――同時刻・某所――――
「――――!なんだか、兄さんが見知らぬ女性と話している気がしますね……」
――――同時刻・スノウ・バッカス――――
「(ぞくり!)……!」
「ど、どうしたんですか?」
「い、いや……なんだか、凄い寒気が……」
この感覚はやばい……命の危機が迫っているクラスだ。
――――俺、明日の朝日を拝めるかなー……
あ、目から汗が出てきたよ……心の汗が……
「本当に……大丈夫ですか……?」
「あ、ああ……大丈夫、だと、思いたいなぁ……」
オロオロする少女に、俺は涙を流しつつ答えた。
彼女は、最初は忙しなく周りを見ていたが、ふと何かに気付くと、両手を顔の前で合わせた。
口から、静かに言葉が流れ出す。
「大いなる風の癒してよ、光を彩るメロディをここに……
風の交響曲……」
その瞬間、店内に風が吹いた。
風の交響曲――――確か、風の中位精霊魔法だったかな?
神官が、教会やその手の類の場所で使う、人の精神を癒すことの出来る魔法だったな。
爽やかな風が吹く。
お〜……なんかすっごくまったりするな〜……
「どう…ですか?」
「ああ、すっごく楽になったよありがとう――――え〜と?」
「あ、ちひろです。橘ちひろです」
――――って、そういえば本当に名前名乗ってなかったな。
「俺は祐一、相沢祐一だ。よろしくな、ちひろちゃん」
「は、はい!よ、よろしくお願いします……えと……相沢さん」
最後の方は尻すぼみになってしまう、そんな様子がちょっと可愛いなぁ、とか思ったり。
と、そうだった。
「色々してもらった御礼に、何か御飯くらいは奢るよ、何が良い?」
「そ、そんな!私が自分でやったことですし良いですよ」
「いやいや、ほら、なんていうか?俺の気がすまないんだよ、助けてもらったのにお礼ができないなんて……きっと今夜も眠れなくなってしまう!だから、是非とも俺に奢らせてくれないか」
ここで引いたら、男が廃る!
それに、師匠曰く『助けてもらったのなら、必ず恩は返せ』だ!
だから、ここは俺がお金を出さなければ気がすまないのだ!
「えっと……それじゃあ……これを貰えますか?」
「ふむふむ、って……これって、店の中で一番安い飲み物じゃないか。良いんだよ、あまりお金のことは気にしないで」
この前捕まえた賞金首の報奨金が、かなりあるからな。
音夢と俺で半分ずつだったけど、それでも超高級ホテルのスィートルームの宿泊費の10倍の額くらいある。
いや〜、アレはラッキーだったな〜
「あ、あの……でも、本当に悪いんで」
「いや、助けてもらったの俺だし……ん?」
そういえば、メニューをさっきからチラチラ見ているな。
ちひろちゃんの視線の先をこっそりと追い、俺は、その視線が何に行っているのかを確認する。
――――なるほど。
「おっちゃ〜ん!」
「はいよ」
「これを二つと、飲み物は――――この果汁100%オレンジとアップルを」
「おう、目がたけぇな兄ちゃん、この街の特産100%もんを頼むとは、待ってな、嬢ちゃんの分も含めてすぐに作ってくるからよぉ」
良いノリのおっちゃんだなー
そんなことを思いながら、おっちゃんを目で追っていく。
どうやらそれはちひろちゃんも同じらしく、呆然と見やっていた。
そうやって見やっていたのは一分くらいだろうか、どちらからともなく視線を戻し口を開こうとする。
「あ「おう、兄ちゃん、嬢ちゃん出来たぜ!」はやっ!」
右手にジョッキを二つ抱え、左手で大皿を二つ持っているおっちゃん。
何気に絶妙なバランスの取り方に感嘆したり。
「って、結構量があるな」
「おうよ!うちのモットーは疾い!廉い!旨い!だからな!!ガッハッハッー!!!」
そう笑いながら、おっちゃんは厨房へと戻っていった。
――――豪快だなー
「え、あの、これ……」
「ああ、気にしないで――――っと、やっぱり二つは多いなぁ、と、言うわけでちひろちゃんにも一つお裾分け」
そう言って、ちひろちゃんにお皿を渡す。
ちひろちゃんは、お皿を渡され戸惑っていたが、結局折れて口を付けた。
「あ、美味しい……」
「た、確かに……ってか、あのおっちゃん宮廷料理人になれるくらいの腕あるんじゃないか?」
本当に美味しい、いや、マジで。
今まで色んな街の料理を食べたけど、その中でも最高級や最高位のものに匹敵するくらい旨い。
恐るべし、スノウバッカスのおっちゃん。
ん?そういえば、俺は何か目的があったような気がしたんだが――――あ、いけない、いけない、忘れるところだった。
「そういえば、ちひろちゃん」
「……んぐ、あ、はい、なんですか?」
俺の言葉に、ちひろちゃんは顔を上げて俺の顔を見上げる。
――――見上げるようなその視線がちょっと可愛かったり。
て、言うか、ちひろちゃんって小動物系だなー。
「あ、あの……?」
「とと、そうだった、近頃のこと何だけ「こらー!!!!」…!?」
いきなり聞こえてきた声に、俺は反射的に体を傾けようとして――――な、体が動かない!?
【ピロリロリン♪
世界の修正が入りました♪祐一のステータスに一時的に麻痺がかかりまーす♪】
「ちひろになにしてんのよー!!!」
ちょっ、それ洒落になってな――――
ドグァン!!!
ゴンガラガッシャーーン!!!!
「ぐべぼばっ!?」
て、もろに首に入ったよ……
「ま、茉莉!!違うよ、その人は……!」
「えっ!?」
どこぞの主人公よろしく、俺は吹っ飛んでいった。
ちひろちゃんともう一人の声を聞きながら、俺は完全に意識が刈り取られていった……
「す、すみませ〜ん……」
んで、目が覚めたらいきなりそんな光景に出会ったわけだが。
ものすごく情けない表情をした、金髪ツインテールの少女が俺の寝ている布団の前で土下座船ばかりの勢いで頭を下げていた。
クリアになってきた思考で、さっきまでのことを思い出す。
……あー、確かこの子は俺が気絶する前に聞いた声だったか?
「あー、あんまり気にしてないから」
つーか、音夢の本当に怒ったときの悪夢の雷の雨に比べたらかなり威力が低い。
第一なんだ、あの世界の修正とかいう無茶苦茶な理屈は!
「で、でもー……」
「本当に気にしなくて良いぜ?第一、ちひろちゃんを思っての行動だったんだろ?だから、気にすんなよ」
「――――はい」
ようやっと、目の前の子が笑顔になる。
うんうん、女の子はやっぱり笑顔が一番だな。
そんなことやり取りをしていると、今度は扉が開いた。
――――ちひろちゃん?
「あ、ちひろー」
「ちひろちゃん?」
「目覚めたんですね?!良かったぁ……」
トテトテトテと駆け寄ってくるちひろちゃんを俺と、ツインテール少女が見つめる。
ちひろちゃんはお盆を持っていた。
よくよく見てみれば、お盆の上にはお粥が乗っていた……って、俺、病人じゃないんですけどー……
「これ、どうぞ」
「あ、ありがとう」
とりあえず、お粥を受け取り食べてみることにした。
――――塩加減がかなり絶妙だな。
うん、十二分に美味しい。
「これはちひろちゃんが?」
「は、はい……お口に合うとよろしいんですけど……」
「んぐ、いや十二分に美味しいよこのお粥」
ほっと胸をなでおろすちひろちゃん。
ツインテール少女はそれを嬉しそうに見ていた。
「それよりも、茉莉」
「あ、う……な、な、何?」
ちひろちゃんに名前を呼ばれたツインテール少女(茉莉と言うらしい)は、思いっきり顔を引きつらせた。
……あー、なんか役者を兄・妹にしたときと似てるなぁ……なんていうかデジャヴュ?
「いきなり、蹴りを入れたら駄目だよ」
「あ、あう……ごめんなさい」
「大体茉莉は……」
以下、四十行くらいにわたって、ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅと言葉が続くけど、割愛。
どうやらちひろちゃん、こっちが地らしい茉莉ちゃんに正座をさせてお説教している。
……あ、なんだろう、上を向いてないと心の汗が出てきそう……
「って!!今何時だ!?」
「きゃっ」
「え、え、え〜と……8時頃ですね、具体的には20時」
「な、なにぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
ね、音夢との待ち合わせが……16時――――4時間前――――は…ははは……こ、これは死んだかな……?
魂の抜け殻になりつつ、俺は呆然としてしまっていた……
「兄さん……帰ってきたら絶対にお仕置きです……」
流石に、雪の中では待っていられないので喫茶店の中に居た妹が怒りの形相でそう囁いた。