まずはじめに、この物語は相沢祐一君を主軸にしたCCOVの物語です。
そして、この物語は読者様の感想がある一定以上入ってきてから書きます。
それではごゆるりとお楽しみください……
聖剣舞士〜ソードダンサー〜
第一話『再会』
守備隊『朱雀』
南方を守護するこのシティの守りの要……と、師匠が言っていた気がする。
南方に位置する神社……確か、『天野』の者が守護をすると聞いたことがある。
なるほど、この子はその天野の一族の者か。
朱雀とは、基本を東洋呪術を用いて戦う部隊だ。
以外に、古い格式のある技術だけではなく必要な技術を取り入れていく集団でもある。
これは、現国王である、あの人が取り決めたことであの人の思慮深さが伺える。
俺としても、あの人の評価に関しては相当高く……いや、最上級と言ってもいいくらいに買っている。
何せ、あの師匠をして一目置くといわせるほどなのだ、しかも師匠と同じ位の力を持つという。
……と、話が逸れたな。
ともかく、目の前にいる少女……天野美汐が俺達の案内人らしい。
「どうしますか、兄さん?」
「ここに付いた時から視線を感じてたからなー。ま、別に隠れる必要もないわけだし」
……流石、二位の称号を持つだけあって、この程度のことは簡単にやってのけられるようだ。
そもそもこちらも、変に怪しまれないようにする為に力は隠してあるが姿を隠すことはしなかった。
音夢も俺の言葉に同意なのか、押し黙ると彼女の方を見る。
「……流石ですね。女王様のあの術を見破られるとは」
「んー、まぁ、それくらいはやってのけないと俺は今ここにはいなしなー」
師匠の修行の一つに、術を含めた穏行を見破る術を得る物がある。
……あれは、修行の中でも一段と恐ろしかった。
師匠の包囲結界の中にある複数の魔力で作り上げられた人形を二万体全部を発見して潰さなくてはいけないというものだ。
しかも……この人形、発見されると攻撃を仕掛けてくる。
破壊までが条件なので二万体全てを破壊しなくてはいけなかった。
しかも結界の中なので、大技で辺り一帯を吹っ飛ばすということもできない。
冗談抜きに神経が磨り減るところだった……
ちなみに、師匠は同じ事をさせられたときに潰させられた敵の数は百万体だったらしい。しかも、制限時間が一時間だったそうだ。
できなければ、最初からやり直し……つまり、俺の五十倍の数を相手にしてなんとか勝ったらしい。
……百回以上繰り返したといっていたが。
ただ、この修行のおかげで魔力・気を一切感じなくても、そこにいるというだけの存在感だけで、敵を察知できるようになった。
……まぁ、二度と同じことはごめんだけど。
だから、この程度のことはできて当たり前なのだ。
「遠い目をされていますが、どうかしたんですか」
「……余り気になさらないでください、家の兄は時たま、ああなるんです」
「は、はぁ……?」
音夢と天野美汐さんがなにやら言っているが……ま・まぁ、気にしないでおこう。
そんな事よりも……
「いい加減、中に入りましょう兄さん」
「……はい」
音夢に言おうとしていた台詞をとられてガックリと項垂れながらも、俺は答えた。
――――キャッスル内――――
現代からすれば、かなりここの造りは特異だ。
高層ビル・道路などが一般的に普及し科学力も上がっているこの世界では城、と言うのは時代遅れの品物に過ぎない。
――――と、思っていたのだが、流石ホワイトキャッスルだ。
中の造りはよくよく見てみれば、コンピューターによる監視だけではなく魔術的な措置もちらほらと見える。
所々に見える物の中にはトラップも見つけられた。
この城の中は良くも悪くも科学と魔術が入り組んでいる。要塞としては最悪なまでにバランスが取れているともいえよう。
以前、師匠達と共に乗り込んだ敵のアジトだってここまではすごくなかった。
……やはり、師匠が一目置くだけある。
固定概念や既存の概念に捕らわれることなく、新しい物をどんどん取り入れていくことができるのは王族などには特に難しいことだからだ。
なぜなら、王族が新しい物を取り入れることによって王権制度が壊れる可能性があるからだ。これは、師匠の言っていたあの件も濃厚になってきたな。
「兄さん、すごいですね」
「ああ、正直驚いている」
音夢も呆気にとられているようだ。
それに、魔術と機械の連携も素晴らしいの一言に尽きる。
絶妙なバランスで、魔術・機械・呪術を配置することによって互いに干渉しあい、結果効果を増幅しているのだ。
「私も女王様の見識・博識さには舌を巻きます。本当の賢者と言うのは、あのような方を言うのでしょうね。」
天野さんがそう言う。
その様子からは、彼女がどれだけ女王を信頼しているかが分かる。
「ここです」
しばらくして、大きめの扉のついた部屋の前に来た。
いかにもって、感じだなー」
「……兄さん、無自覚だろうからから言いますけど、口に出してますよ?」
「……うぐぅ」
「うぐぅもなにもありません、というか、兄さんのその時たま出る口癖は何ですか」
にべもなく言い放つ。
し、しばらく出てないから大丈夫だと思っていたんだけど……
……と、いうよりもうぐぅが癖になっている……?なぜだろう、激しく嫌な気分だー!!!
またこの癖が出始めたか……誰でもいいからどうにかしてくれ!
「……では、これで私は失礼します」
「あ。ありがとう天野さん」
「ありがとうございます」
俺と音夢は天野さんに礼を言う。
天野さんは頭を下げてゆっくりと今来た道を戻って行った。
――――しかし、思っていたんだが……なんていうか、見た目のわりに随分とおばさんくさかったなー。
「兄さん、そんなことを思っては失礼ですよ」
「ああ、そうだっ……音夢、今、思ってって言わなかったか?」
「気のせいですよ♪」
あははは……深くは考えないでおこう、うん。
嫌な汗を流しつつ、俺は扉の前に改めて立つ。
――――中に人の気配はない。
だが、俺には分かる間違えなく誰かいる、それもとびっきり強い相手が。
「失礼します」
「失礼します」
音夢が俺の後に続くように言葉を出す。
――――そこは謁見などを行う場所ではなく、どうやら私室らしい。
中には一人の女性がいた。青い髪をみつ編みにした女性だ。
こちらを向き微笑むその仕草に――――俺は素直に一瞬、戦慄した。
ゾクリと背中に一瞬衝撃を感じたといってもいい。
これほど底冷えするほどの底知れなさを感じたのは、師匠以来だった。
「お久しぶりですね、祐一さん、音夢ちゃん」
「――――はい、お久しぶりです、秋子さん」
「お久しぶりです、秋子さん」
なんとか口からそれだけ搾り出せた、音夢は俺ぐらいの実力を持たないから分からないらしい。この、感覚が。
敵対しないのは分かっている、それでもこれ程の実力者を前にしてしまうと、ひどく緊張する。
以前は分からなかったが故に、それは尚のこと。
――――前から思っていたが、やはり2位から下の階位と二位以上の階位は実力の差が開きすぎているな。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、祐一さん」
「――――っ」
微笑を浮かべたまま秋子さんは俺にそう言う。
凄い、普通なら――――いや、普通じゃない奴等でも俺の臨戦態勢状態の時の感情の読みなんてほとんどできないのに、この人はそれを平然とやってる……!
まずいなぁ……俺はこの人と――――
「に、兄さん?」
「祐一さん、少し好戦的になっていませんか?ふふふ、困った子ですね」
微笑を浮かべて少し困った風に笑い、音夢はあせった表情で俺を見ている。
秋子さんのその表情はどこか楽しそうだ
……ああ、全く師匠も俺に困った教授の仕方をしたものだ。
――――常に強くなりたいと思え、だが忘れるな、それは‘守る為’にだ――――
師匠は俺にそう教えてきた、そして俺は自分の家族である音夢や、あの家の第二の家族を守る為に強くなってきた。
だから、今、俺の中にあるのは自分よりも遥かに強いこの人と戦いたい――――ただ、それだけだ。
勿論、普段からこんな風なことばかりではない。
今回は、偶々しばらく本気で戦える相手がいなかったために力をセーブした状態でずーとちまちまちまちまちまちまちまちま戦っていたのだ――――時には音夢の電撃を浴びつつ。
以前は修行の時に師匠とは本気で戦りあっていた為にそんなこともなかったけど、まさかあそこから離れてこんな弊害が出るとは思っても見なかった。
そんなこともあり、俺は実にストレスがたまっていたのである。
だから、本来ならけして好戦的な性格じゃないんだからな!!
なんせ、祐ちゃんは紳士的なナイスガイなのだからな!!
けして勘違いしてはいけないんだからな!!
秋子さんは、頬に手を当てて「ふう……」と、困った風に溜め息を吐いた。
それは諦めたような、だがどこか楽しそうな、そんな表情をしていた。
「そうですね、そろそろ祐一さんも我慢ができそうにありませんし、本来なら積もる話もあるのでしょうけど、行きましょうか――――」
秋子さんはそう言うと、普段着から即座に白い装束に着替える。
――――師匠から、一度だけ聞いたことがある。
あのランクの二位であるこの人は、戦うときには全く穢れのない白い装束を着るという。
――――無垢なる魂
――――永劫なる白
――――そして、見るものに天と地の双方を見せるこの世界の究極の防具
――――完全なる白き無限
その、伝説と歌われたの防具を纏った二位が目の前に存在している。
「――――地下の、無限闘技場へ」
無限闘技場
このホワイトキャッスルにある、無限バトルフィールドのことで、なんでも前の大きな大戦のせいで空間が大きく捻じ曲がっているらしい。
名前のとおり、無限空間でひとつ間違えると異世界に飛んでしまうとも言われている。
秋子さんはそこの規則などをある程度解明し、一つ別の位相空間を作り上げたらしい。
そこでなら、俺や秋子さんのような特殊なランカーでも存分に戦える。
――――ちょっと嬉しかったりする。
手合わせ程度かと思っていたけど、かなり本気でやれそうだ。
「さて、祐一さん。どうぞかかって来てください」
――――微笑みはそのまま、けれどなぜだろうこの底冷えは。
さっきとは違う、これは凄まじい闘気だ。
ちなみに、音夢はこの部屋の前にいる。一応、観戦できる位置にいるのでこの光景を見ているはずだ。
「ええ、では遠慮なく行かせてもらいます!!」
一足で自らの間合いに俺は飛び込む。
神速の抜刀、腰から炎を纏った小太刀の獅子座の剣を抜刀し薙ぐ!!
――――だが、その攻撃はまるで柳の如く秋子さんに避けられてしまう。
「ハァッ!!」
二撃目は速度を上げ放ち、三撃目は更に速度を上げる!
薙ぎ・突き・払いと基本の如く俺は三連で攻撃を放ち一気に後ろに引いた。
秋子さんには命中するどころか、かすりもしない。
「ふふふ、中々良い攻撃です」
「ありがとうございます」
短めにお礼を言い、俺は獅子座の剣を両手で構える。
――――秋子さんは僅かに表情を怪訝なものにしたが直ぐにいつもの表情に戻ると手に宝石のような物を取り出した。
――――アレは。
「出番ですよ、天地」
天地――――まさか。
その宝石は、俺の考えを裏付けるかのように形を変えて杖となった。
天地の杖、デバイスとは違った本物の伝説の杖でデバイスの元となったといわれている。
デバイスはオリジナルである、天地の劣化コピーではあるが、ある程度の魔力があるのならば誰にでも使えるものである。――――が、オリジナルの天地は違う。
天地は意思が強く己のマスターを己で選ぶらしい。
――――そして、その力は一振りすれば全てを薙ぎ払うと言われている。
――――あ、秋子さん、手加減する気がないなー!!
「行きますよ祐一さん♪」
「ちょっ――――っ、待ってくださ――――」
慌てて獅子座の剣を構えるがこれ単体じゃ間に合いそうもない。
「えいっ♪」
秋子さんの偉く可愛らしい掛け声と共に、辺りに凄まじい爆発が起きた――――