好きという言葉

 

作者:十七式

※名雪END後の話です。祐一×名雪の話です(ジャンルは不明、恐らくシリアスラブ?)。こりないな、俺・・・。

そろそろギャグでも書いてみるか・・・・?

 

 

 

 

「ふう、休日でもやることはあるもんだな」

たまの休日で俺は部屋の掃除をしている

俺自身、あまり物を散らかさないタイプなので掃除するには苦労はしない

漫画本も戸棚にしまい、ベッドの横にある写真立ても少し埃(ほこり)がついているので綺麗な布巾で丁寧にふき取る

 

・・・実はというと、写真に写っているのは俺と名雪なのだ

終業式の前で少し時間があったので家の前で秋子さんに写真をとってもらったのだ

その写真は俺と名雪の分を焼き増ししてもらって二人で同じ写真を持っている

見られると少し恥ずかしいのでお客が来るときはいつも倒して見えないようにするのだが・・・

 

そんな写真立てを丁寧に拭いたベッドの横の台に置く

写真を見て少し息をつく

ま、今日も何事もなく穏やかな日になってくれる事を思いながらも掃除を続ける

フローリングの床なので掃除機を使わなくても小さな箒(ほうき)と塵取りで事足りてしまうのだ

勿論掃除中は窓を開けて換気をする事も忘れてはいけない、埃っぽくなってしまうからだ

そうして掃除をする事約15分経過した頃であった

掃除も一通り終わり、箒と塵取りを片付けているところであったのだが

コンコンッ

部屋のドアをノックされた

今現在この家にいるのは秋子さんだけである

名雪は陸上部の練習で今日の朝早くに学校に出かけたのでいないのだ

「はい」

そうして部屋のドアを開けると秋子さんがいた

「秋子さん、どうしたんですか?」

「祐一さん、ちょっとおつかいを頼まれてくれませんか?」

少し困ったような顔をしながらそう言った秋子さん

「ええ、それは構いませんけど・・・どうかしたんですか?」

「実は名雪がお昼のお弁当を忘れて行ってしまって・・・」

朝、名雪が早く起きることはかなりの無茶をしないと難しいのだ

それが朝練なら、なおの事辛いものだ・・・特に名雪にはな

今日も遅刻すると言いながら慌てて走っていったと想像するのも難しくはない

それでお昼になって忘れてたなんて気づくと悲しいものだ

「いいですよ。俺も出かけようと思ってたところですから」

「そうですか? ではお願いしますね、祐一さん」

そうして俺はお昼ご飯の入っている弁当箱の包みを預かった

それを持って階段を降り、玄関で靴を履(は)く

「それでは、行ってきます」

「はい、お願いしますね」

玄関で温かい笑顔をしながら見送ってくれる秋子さんを背に、俺は名雪のところに弁当を届けることになった

 

雪がまだ少し残っている道をゆっくりと歩いていく

いつもは名雪が朝ごはんをのんびり食べているのでその分全力で走る羽目となっている道も今では何てこともない、ただの道路と化している

差し込む日差しもまだ冬なのに少しだけ空気が暖かくしていると感じるのは気のせいではないだろう

肌寒い季節はゆっくりと過ぎ去り、小春日和を迎えるのもそう遠くではないと感じられるからだ

「さてさて、季節の変わり目を感じるのもいいけど頼まれた事をまず終えよう」

季節の変わり目を感じつつも、その足取りを止める事もなく学校へと向かって歩いていく

その道は変哲もない道路であるが、学校への道のりは歩いていくと意外と長く感じるものだ

そんな道に少しばかりの笑みをこぼした

 

ゆっくり歩いて20分くらいであったろうか、ようやく学校に辿り着いた

いつもと変わらない、そんな校舎を見るといつもの学校生活が浮かぶのは学生としての性(さが)なのだろうか

「さてと、名雪は校庭のグラウンドで練習しているはずだ。まずは・・・」

名雪を探さないとな

そうでなければ今日ここに来た意味がない

学校内に入り、少し歩くと校庭のグラウンドに辿り着いた

「名雪は・・・・あ、いたいた」

名雪は長距離の練習をしているようであった

こうして見ると名雪は中々速い

いつも走って登校している賜物なのであろうか、などとくだらない考えが過(よ)ぎった

・・・まあ、無理もないか

時間的にもそろそろお昼の休憩時間に入るだろうと思い、俺は目立たないところで少しの間だけ待った

そうしていると休憩時間となったのか、名雪が部員の皆に指示を与えていた

名雪は陸上部の部長をしているとはじめて聞いたときには信じられなかったが、今の名雪を見ると妙に納得してしまう

面倒見が良くて立派な部長・・・・俺の目にはそう見えた

陸上部の人たちがそれぞれ休憩時間に入る

名雪も部室に向かおうとしていたが俺はその時名雪に話しかける

「名雪」

「あ、祐一。どうしたの?」

タオルで汗を拭き、スポーツドリンクを飲んでいた名雪に俺は少しばかりの笑みを浮かべながら言った

「お前、急ぐのはいいけど・・・弁当忘れたら元も子もないぞ?」

「え、わざわざ届けてくれたの? ありがと〜」

俺は名雪に弁当箱を手渡す

時間もそう長い間は経過していないので温かいはずだ

「それにしても・・・名雪も立派な部長さんだな。いつもの姿を見てると、とてもそうとは思えなかったぞ?」

「えへへ・・・。最初はどうすればいいかわからなかったけど、だんだんわかってきてね。今では部長の仕事がようやく慣れてきたんだよ」

名雪は責任感もあるし、実力もあるのだから部長になるのも不思議ではない

「名雪も成長したんだな」

「祐一だって、成長してるよ?」

当たり前のような顔をしながら名雪は俺に言った

「そりゃ、そうだけどさ・・・。俺が見ない間に、名雪は本当に魅力的な女性になんだなって改めて思ったんだよ」

「ゆ、祐一・・・」

名雪も顔を真っ赤にして照れているようだった

こんな発言した俺自身もかなり照れているのだけれど

「ははっ、恥ずかしい事言っちまったな。俺もいつか名雪に相応しい男になれるように頑張んなきゃな」

俺は苦笑しながら名雪にそう言った

しかし名雪は俺の言った言葉に対してこう言った

「・・・祐一はもう私に相応しい男の子になってくれてるよ?」

「・・・名雪?」

「祐一にはいつも迷惑かけてばかりだったんだよ? けどそんな私に手を差し伸べてくれた。苦しい時も、悲しい時も、ずっと私の傍にいてくれるって言ってくれた時は、本当に嬉しかった。だから、私の傍にいてほしい男の子は祐一だけなんだよ?」

 

あの事故で幼かった俺はふさぎこんでしまっていた

そんな時に名雪には酷い事をしてしまった

けど7年という歳月は俺からその出来事をを忘れさせるように優しく、それでいて残酷だった

そんな忘れていた俺に、現実は否応なくその対価を求めるような仕打ちが待っていた

それは、つい最近の事だった

秋子さんが事故で病院に搬送された時、名雪は一人で絶望に苛(さいな)まれていた

そんな名雪に俺はずっと傍にいてやると言った

奇跡も起こせない俺だったけど、名雪が好きだったからそう約束したんだ

名雪が苦しんで、悲しんで、辛い時には傍にいてやることしか出来なかったけど、そんな俺に名雪は傍にいてほしいと言ってくれたのだ

 

「私の好きな人は祐一だよ。これからも、ずっとね」

名雪が笑顔でそう言った

その言葉に、俺は目を瞑り口元に少しの笑みを浮かべた

そして、眼を開けて俺は名雪に言った

「俺も名雪のことが好きだ。他の誰よりも、な」

俺と名雪はこうしてお互いの気持ちを言葉で確認しあったのであった

何て事のない、ただの休日における昼下がりの出来事であった

 

好きという言葉は互いを少しずつ変えていく

それは、止まっていた時が動き出すためのスイッチであるかのように

現実は誰にでも優しく、それでいて残酷だ

けど、そんな現実にも安らぎと希望があることを祈りたい・・・

 

 

あとがき

何やら最後の文が物凄いクサイ言葉で書いてて恥ずかしくなったのは自分だけでしょうか(実はこれ、詩を書いてて思いついたものでした)? 感想お待ちしています〜

 

話の構成・平成19724

執筆の日・平成19724