「ああ!あの光は!!」
突如、天に向かって伸びた光の柱に、避難していた六課職員がざわめいた。
今あそこはどんな状態になっているのだろうか?
突然の開戦。訳もわからず避難してきた者にとっては不安しか感じなかった。
「みんな・・・大丈夫かしら・・・。」
そんな中、一人の女性が誰かを案じるようにつぶやく。
彼女はアイナ・トライトン。機動六課の寮を任される寮母だ。
彼女にとって面倒を見ているスバル達は、娘とまではいかなくとも年の離れた妹や弟のよ
うなもの。
今ここにいないということは、あそこに残っているということだ。
心配そうに、「はぁ」と大きくため息をつくと側にいる少女の方を見やる。
と・・・
「あら?あの子、どこに行ったのかしら?」
今まで側にいたはずの少女がいなくなっていた。
「もう。離れちゃダメって言ったのに。」
大乱闘!スマッシュ六課!!
3人の少女がそれぞれの獲物を手に、向かい合っている。
時空管理局機動六課部隊長 八神はやて。
同じく機動六課ライトニング分隊隊長 フェイト・T・ハラオウン
そして機動六課スターズ分隊隊長にして、現チャンピオン 高町なのは
若くして、数々の事件を解決してきたエース達が今は敵同士である。
「いくよ!」
「いつでも!」
「どうぞ!!」
3人が同時に構える!
「アクセルシューター!!」
「プラズマランサー!!」
「ブラッディダガー!!」
瞬時に100発近い魔力弾が生成され
ズドドドドドドドド
ぶつかる!
「うおお!さ、さすがSランクオーバー!レベルが違う!」
魔力弾のぶつかり合う爆風にあおられながら祐一が叫ぶ。
実際、とんでもない数の魔力弾が次々に撃ち出され、ぶつかり合い、相殺され消えていっ
ているのだ。
しかし、並の魔導師なら、すでに魔力切れを起こしてもおかしくないほどの攻撃にも、3人はまだまだ余裕を見せている。
「さぐり合いはもう十分。そろそろ、いくよ!バルディッシュ!!」
<Yes Sir
Haken form>
フェイトはカートリッジをロード、バルディッシュをハーケンフォームに変形させる。
「お?ほな私も行かせてもらおか!」
続くはやても構えを変え、次の攻撃に備える。
「「はっ!」」
2人が同時に射撃を止め、その場から離脱。すると、フェイトが自慢のスピードでなのは
に迫る。
「接近戦なんかやらせない!」
<Divine buster>
迫るフェイトに牽制の砲撃を放ち、自身も後退。フェイトの得意な接近戦に付き合う訳に
はいかない。
「そうは、問屋がおろさへん!」
しかし、それを読んだかのように、はやてからの援護射撃がなのはの退路を塞いだ。
「くっ」
「いくよ!なのは!」
「しまった!」
砲撃をかわしたフェイトがすぐそこまで迫ってきている!
しかし、どうしたことか高速で突っ込んでくるフェイトがバランスを崩したかのように倒
れる。
いや、違う!倒れたのではない!
「はあああ!!」
気合いと共に、片手でロンダード!バック転!バック転!そして!跳んだ!!伸身後方
2回宙半回転ひねり!!
「おお!回転の中心が胸の位置!10点!!」
「ありがと!祐一!!」
回転しながら祐一の言葉に応えつつ、フェイトは空中でキックの体勢をとる!!
<Thunder arm>
「うおおおおお!!」
<Lightning blast>
雷を纏った右足が、なのはに向けて放たれる!
「はっ!オンドゥルルラギッタンディスカー!!」
謎の叫び声と共に、なのははその攻撃を後ろに跳んでなんとか避ける。
地面に突き立ったフェイトのキックがコンクリートを貫き、舗装された地面がひび割れを
起こした。
「まだまだやで〜!らいだー!じゃ〜んぷ!!」
叫びはやてが、空に舞う!
空中で身体のバネを効かせて、拳に力をため込む!
その拳は、強化魔法がかけられており、紫電が走っている。
「らいだーぱ〜んち!!」
上空から、バネを効かせたパンチがなのはに撃ち込まれる!
「く!ううううう!!」
その攻撃をレイジングハートで受けたなのはだったが、衝撃で後ろに吹っ飛ばされる。
ズザザザザザザ!!!
大きく後ろに後ずさりしながらも、レイジングハートを地面に突き立てて踏ん張る。
「なるほど、2人がかりでまずは私を潰そうってことだね。」
「せやな〜。なのはちゃんは先にやっとかんと、あとあと面倒そうやしね。」
「それになのはは接近戦が苦手。普段なら、なかなか潜り込ませてくれないだろうけど、
私とはやてで組めば上手く接近戦に持ち込める。」
フェイトが脚を地面から抜き言い放つ。
その隣にははやてが並んでいる。
「どや?これはさすがに勝てんのとちゃう?」
「ギブアップすれば、酷いことはしないよ。」
しかし2人の言葉にもなのはは怯まない。それどころか、まだ余裕の笑みを浮かべてい
る。
「う〜ん。最近は2人と模擬戦もやってなかったし、どれくらいレベルアップしてるかわ
からなかったから、戦闘レベルは結構高めに計算したつもりだったんだけどなぁ。」
<私もです。彼女たちをいささか甘く見すぎていたようです。>
レイジングハートと会話をするなのは。その表情は、自分の前に立ちはだかる2人を値踏
みするかのようだ。
「そうだね。レイジングハート、2人の戦闘力を少し上向きに修正しようか。」
<了解しました。>
なのはは素早くレイジングハートに指示を送り、さっきの攻撃を元に2人のデータ修正を
すませる。
「なんや?密談は終わり?」
「で、どうする?」
「なんの話?降参がどうのってやつ?まさか本気で言ってたの2人とも?」
イラッ
まったく怯む様子の無いなのはに、少々いらだちを感じるはやて達。
「ほ〜う・・・ほんなら、痛い目見てもらおか!!」
「バルディッシュ!!」
再びコンビネーションで、なのはを攻めるべくフェイトはなのはに突っ込み、はやてそ
の後ろから援護射撃を行う体勢をとる。
<Sonic move>
フェイトが急加速でなのはに迫る。
<Accel shooter>
しかしなのはは何ということか、目に前のフェイトを無視。後方のはやてに向かって射撃
魔法を撃つ!
「な!?」
予想外の行動にはやては攻撃の準備を止め、シールドで攻撃を防御。しかしフェイトはす
でになのはの目前まで迫っている。
「もらった!」
バルディッシュを振りかぶりなのはに斬りつけようとしたその瞬間。
<Restrict lock>
「あっ!!」
なのはの仕掛けたバインドがフェイトの四肢を拘束した。
「フェイトちゃん。前に『罠への対応が甘い』ってクロノ君に言われてなかったっけ?」
なのはは、わざわざフェイトに顔を近づけ、にっこりと微笑みながらそう告げると大きく
後ろに距離を取る。
<Buster mode set up.>
「ディバイーン・・・」
「くっ!」
なんとかバインドから逃れようともがくフェイトだが、レストリクトロックはなのはが使
える魔法の中でも練度が高く抜け出すのが非常に困難な魔法だ。
力ずくでもなかなか抜け出すことは出来ない。
「バスター!!」
そうこうしている間になのはの砲撃が準備を終え、フェイトに向かって放たれる!
「!!」
ズドオオオオオオオオン
桜色の極太ビームにフェイトの姿が飲み込まれ大爆発が起こる。
「フェイトちゃん!!」
「直撃!?」
爆煙が晴れると、そこには砲撃を食らい無惨な姿になったフェイトが気絶していた。
さしものフェイトも、あの砲撃を食らってはひとたまりもなかった。
「はあ。やっぱり頼りになるんは自分だけやな。なのはちゃんもこんな風にしたるわ。」
「!!フェイトちゃんのことか―――――――!!」
「やったの自分じゃん!!」
今度はさっきとはうってかわって砲撃戦が開始される。
「ディバインバスター!!」
「フレスヴェルグ!!」
「「おおおおおおおおおおおおおおおお」」
砲撃のぶつかり合う衝撃で、バインドで拘束されたままの祐一は吹っ飛ばされる。
「ぐお!」
とそのとき後ろから誰かから制服を引っ張られた。
これはチャンスだ。なんとかバインドを外せれば助かるかも知れない。
「あの、すいません。どなたかわかりませんが、これ外せませんか?」
しかし、返事がない。もう一度声をかけてみる。
「?あの〜」
すると思いも寄らない声が帰ってきた。
「ぱぱ〜」
「え!?」
バインドをかけられたままでごろりと転がって後ろを見てみると、そこにいたのは間違い
なく
「ヴィヴィオ!?」
だった。
「なにしてるんだ!?こんなところで!」
「ぱぱをたすけにきたの〜」
「助けにって・・・。」
ヴィヴィオの言葉に閉口する祐一だが、当の本人はいたって真面目らしい。
しゃがみ込んで祐一の顔をのぞき込んでいたヴィヴィオは、立ち上がると壮絶な砲撃戦を
しているなのは達に大声で叫んだ。
「なのはママ〜!!はやてさ〜ん!!」
「え!?」
「なんや!?」
「ちょっとヴィヴィオ!!」
突然の乱入者に動きが止まる2人。
しかしヴィヴィオはそれだけでは終わらない。とんでもない爆弾発言をぶちかます!
「ヴィヴィオぱぱとけっこんする〜〜〜!!」
「「「はあああああああああああああああああああああ!?」」」
ヴィヴィオの一言に3人の声がハモる。
「ちょ!ちょっとヴィヴィオ!なに言ってるの!?」
「そ、そうやで!祐一さんはヴィヴィオのパパやんか!父親と結婚はできんのやで!?」
「でもはやてさんは『ほしいものがあったらちからずくでもうばんやで』っていってた!」
「はやてちゃん!」
「え、え〜そんなこと言うたかなぁ〜。あはは・・・。」
管理局員として何気に問題発言をかましているはやてに、なのはが突っ込む。
「だからー!ヴィヴィオうばうね!」
「ちょ!」
完全にやる気のヴィヴィオをなのは達が止めようとした瞬間・・・
ギュウウウウウウウウウウン!!
ヴィヴィオの元に何かが飛来した。
「あっ!」
「あれは!?」
「まさか!!」
それは、なのは達にはよく見覚えのある物。
赤いクリスタル。
見間違うはずもない・・・レリックだ!
「えへへ〜。これでヴィヴィオもへんしんするの〜!!」
そういうとヴィヴィオはレリックを抱きしめるように、自分の胸に押し込む!
「ヴィヴィオ!やめるんだ!」
祐一が慌てて止めようとするものの、拘束された状態では何も出来ない。
レリックはヴィヴィオの身体の中に完全に入ってしまう。
するとすぐに変化が始まる。
「ああああああああああああ!!!」
「ヴィヴィオ!!」
自分の身体を抱きしめながら、苦悶の表情を浮かべるヴィヴィオに祐一が声を上げる。
しかし、次の瞬間!
「キモチイイ〜〜〜!!」
「なにぃぃぃ!!」
1万年と2千年前から愛してるような声を上げ、ヴィヴィオの身体から虹色の光が噴出す
る!
光の中ではヴィヴィオの身体が劇的に変化していく。
小さかった身体は急成長。手足がスラリと美しく伸び、腰は細く引き締まる。
胸も女性らしく豊かに膨らみ、その身体を黒いボディスーツとジャケットが包み込む。
整った表情にはヴィヴィオの特徴であるオッドアイが強い意志を示している。
「不思議な宝石の力を借りて!最強無敵の魔法少女!聖王ヴィヴィオ!ここに降臨!!」
( Д
) ° ° ←なのは
( Д
) ° ° ←はやて
( Д
) ° ° ←祐一
「「「な、なんだって――――――――!!!!」」」
もはやこの変化について行けない人が3人。
彼女たちもヴィヴィオに勝るとも劣らないくらい顔が変化しているが。
ヴィヴィオはそんな状態の3人を気に止めることなく、祐一に話しかける。
「パパ、そこで見ていてね。すぐに戻ってくるから。」
祐一ににっこりと微笑むヴィヴィオ。
祐一は「はぁ〜ヴィヴィオは大人になるとこんなに美人になるのかぁ」とか思いながら、
とてもとても魅力的な微笑みに顔が赤くなってしまう。
「ゆ、祐一さんが赤く!?まさか・・・ロ・・ロr」
「ちっがーう!!」
「はやてさん!パパを悪く言うのは許さないよ!」
ビシィッ!っとはやてを指さすと、その姿が消える。
「えっ!?」
ガッ!
なんと、一瞬ではやての背後に回ったヴィヴィオは、はやてに当て身を食らわせ気絶させ
てしまった。
「うわっ!強い!?」
「さあ!次はなのはママだよ!」
はやてを倒したヴィヴィオがなのはに向き直る。
しかし、
「ヴィヴィオ!本気なの!?」
「本気だよ!」
「でも・・・そんな・・・。」
なのはにはまだ迷いがあった。
祐一の為とはいえ、あのヴィヴィオに全力全開してしまって良いのだろうか?
しかし、なのはの迷いから生じたスキをヴィヴィオは見逃さない。
容赦なく攻撃を仕掛ける!
「なのはママ!ぼうっとしてていいの!?」
「きゃああああああ!!」
ドゴオオオオオオン
魔力を纏った拳が打ち付けられ、なのはは地面に叩きつけられた。
「なのはちゃん!?」
たまらず祐一も声を上げるが、その祐一の前にヴィヴィオが悠然と降り立った。
「パパ!ヴィヴィオ、みんな倒したよ!ヴィヴィオと結婚だね!」
「ちょっ!ちょっと待ったヴィヴィオ!」
祐一の元に歩み寄るヴィヴィオの表情は実に嬉しそうだ。
しかし、今は大人の姿でも多分本当は子どもだ。そのヴィヴィオと結婚なんていくらなん
でもまずい!
というか、結婚とかまだ全然考えていないわけで・・・
「どうして?も、もしかして・・・パパはヴィヴィオが・・・きらい・・・なの?」
拒否の意思を示す祐一の言葉に、ヴィヴィオは目に涙を浮かべ、嗚咽に声を詰まらせる。
「はうあ!!」
ヴィヴィオの涙には敵わず、思わず祐一は言ってしまった。
「そんなことはない!そんなことはないぞ!パパはヴィヴィオが大好きだよ!」
その言葉を聞いたヴィヴィオの顔がぱあっと明るくなる。
「本当!?じゃあ結婚だよ!誓いのキスだよ!」
「だあああああ!!ちょっと!ストップ!」
ヴィヴィオは祐一の顔をがしっと掴むと唇を寄せていく。
なんとか顔を背けようとするが、ものすごい力で押さえられ顔を動かすことが出来ない。
「ん〜〜〜〜〜♪」
「ぐおおおおおお」
祐一の唇まであと数センチと迫ったそのとき・・・
「!!」
ヴィヴィオは祐一から飛び退いた。
祐一とヴィヴィオの間を裂くように魔力弾が襲ってきたのだ。ヴィヴィオがその魔力弾が
放たれた方を見ると、そこに立っていたのは、
「なのはママ。」
「ヴィヴィオ・・・離れなさい・・・」
どす黒いオーラを発散し、ヴィヴィオを睨むなのはだった!
しかし、後少しで祐一を手に入れられたはずのヴィヴィオは、そんな黒いなのはの気配に
気づかず猛然と吼える。
「いやよ!パパは私のものだもの!なのはママだって何度でも倒してみせる!うおおおおおお!!」
吼えるヴィヴィオから再び虹色の光が噴出する。
フェイト達との戦闘で消耗しているなのはには圧倒的に不利な状況。
しかし、なのははヴィヴィオの強大な魔力にも怯まず、静かに、冷徹に、わかりやすく言
うとStS第8話みたいな表情で、敵を見つめ続ける。
「レイジングハート・・・。」
<Yes.>
「わかってるわね・・・?」
<All light. Blaster set.>
一瞬桜色の魔力がなのはから噴出。その瞬間になのはの最大出力、ブラスター3が発動し
ていた。
しかし、猛り力を溜めるヴィヴィオはその変化に気が付かない。
自身の魔力を溜めて溜めて溜めまくる。
「いくよ!なのはママ!!はああああああ!!」
そしてヴィヴィオの両手から極大の砲撃が放たれ、虹色の魔力の奔流が唸りをあげてなの
はに迫り来る!
ズゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「なのはちゃーん!!」
なのはは微動だにせず、砲撃に飲み込まれていった・・・。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。」
「そ、そんな・・・。」
砲撃が炸裂した場所を、祐一は沈痛な面持ちで見つめる。
なのはが避けたようには見えなかった。防御魔法を発動していたとしても、防げるような
レベルではない。
ヴィヴィオは勝利を、祐一はなのはの敗北を確信した。
しかし・・・
♪ちゃらら ら〜らら〜 ちゃらら ら〜らら〜♪
どこからともなく、耳に、脳裏に、心に響くあのメロディ・・・。
「はっ!このBGMは!!」
「まさか!?」
「なのはちゃんの勝利確定BGM!!」
着弾点の中心、いまだ土煙が舞うその場所に立つ人影。
そこに立つのは紛れもなく、高町なのはその人。
彼女は召喚したブラスタービット8基を前面に配置、最大強化したシールドで受けきったのだ。
<Restrict rock>
「あっ!」
まさか防ぎきられるとは思っておらず、呆然としていたヴィヴィオをバインドが拘束する。
するとなのはが砲撃の体制に入る。
「一点集中で・・・」
「なにが!?」
「砲撃・・・」
「砲撃!?」
「てか収束砲・・・」
「SLB!?」
ヴィヴィオの砲撃を防いだことで、周囲には魔力の残滓が大量に残っている。
なのははビットを円形に配置、その中心にレイジングハートを構える。
それぞれのビットが、レイジングハートが周囲の魔力を集め始める。
小さな光がビットとレイジングハートに集まっていき、次第にそれぞれが巨大な光の球に
なる。
そして、その9つの球がさらに合わさり一つの超巨大な光球に・・・。
「ヴィヴィオ、すごく痛いけどガマンできる?答えは聞いてないの。」
「なのはママやめ・・えええええええ!?」
なのははレイジングハートを振り上げる。
「全!」
「力!」
「全!」
「開!」
「スタァァァァライトォゥ!!ブゥゥレイカァァァァ!!!」
「なんか、ネオジャパンのファイターみたいな発音になってる!?」
「いやあああああああああ!!!!」
その日ミッドチルダでビッグバンが起こった。
「う、げほっ!げほっ!」
吹き飛ばされ、瓦礫に埋まった祐一が何とか這い出し、粉塵にむせながら顔を出す。
すさまじい爆発だった。クレーターというか、巨大な穴というか、その中で粉々に砕け散
ったレリックと、レリックを破壊されたことで子どもの姿に戻ったヴィヴィオが気絶して
いる。
「な、なのはちゃんは・・・?」
なのはの姿を探す祐一。その後ろで何者かの足音が聞こえた。
はっとなって振り向くと、そこにいたのは魔力を使い切り、フラフラになったなのは。
しかし、レイジングハートに寄りかかりながらもその目は、祐一をしっかりと見つめてい
る。
「なのはちゃん・・・。」
その真剣なまなざしに祐一も覚悟を決めた。
しかし・・・
「ゆう・・・いちさ・・・ん・・・」
ドサッ
なのはの意識は、祐一まであと1メートルというところで途切れた・・・。
○
「結局誰が優勝なのかな?」
六課隊舎の食堂で昼食の席についたスバルが、相棒に尋ねる。
「う〜ん。参加者全員気絶ってことは、優勝者無しでいいんじゃない?」
2人とも顔に絆創膏が貼られており、なんとも情けない顔になっている。
そこに、昼食のお盆をもってキャロが現れた。
「ティアさん、スバルさん。」
「あ、キャロ・・・。なんていうか・・・悪かったわね。」
キャロに攻撃したことを謝るティアナ。しかし、当のキャロは笑顔で答える。
「いいですよ。もう気にしてませんし。次は私が殺ってやるから・・・」
なんか黒いオーラを出しながらだが。
(ティア!ティア!結構怒ってるよ!)
(わかってるわよ・・・なんか午後の訓練が憂鬱だわ)
「フリード、しっかり食べなきゃね。午後は模擬戦もあるし。フフフ・・・」
「エ、エリオはどう!?」
(スバルGJ!!)
なんとか話をそらそうとするスバル。
「エリオ君ですか?う〜ん手加減したつもりだったんですけど、良い感じで入っちゃった
みたいで。先生の話だと、『ギャグじゃなかったら死んでるレベル』だそうですwww」
ザザザッ
だが、キャロの発言にドン引き。
(ティア!ティア!今語尾に「www」って付いてたよ!!)
(うう・・・怖い・・・)
ちらりと様子を見てみると、ランチのコロッケをフォークでしばき倒していた。
「午後の訓練休もうかしら・・・。」
「はは・・・そういえば、なのはさん達どうしたんだろうね?午前の訓練いなかったし」
「フェイト隊長も来なかったわね。」
そう、今日は朝練にも午前の訓練にも2人とも来なかったのだ。
訓練自体はヴィータとシグナムが代わりに引き受けたのだが、こんなことは今まで無かっ
た。それに理由を聞いても答えてくれず、訝しみながら午前の訓練を受けたのだった。
二人して首をかしげていると、後ろから声をかけられた。
「2人なら、本局に行ってるわ。」
「「シャーリーさん。」」
「2人だけじゃないわよ。八神部隊長も一緒。今回の件で、なんかクロノ提督に呼び出さ
れたみたい。今頃大目玉食らってるんじゃないかな?」
「「あ、あはは・・・」」
乾いた笑いしか出ない。
と、スバルが思い出したようにシャーリーに質問した。
「そうそう、今回の争奪戦の事なにか聞いてないんですか?」
「キャロが・・・ずっと黒いんですよ・・・」
「ああ、それね。実は勝者きまってるのよ。」
さらりと言ってのけるシャーリーに2人の目が点になる。
「「え!?」」
「だだだだだ誰ですくあっ!いった〜〜。」
慌ててしゃべったため舌を噛んでしまったスバル。
「ちょっと落ち着きなさいよ。で、どういう事なんですか?」
「うふふ。じゃーん。」
ティアナの質問にシャーリーは制服の内ポケットから一枚の写真を取りだした。
そこに写っていたのはなんと・・・
「ああああああ!!こっこれ!!」
「シャーリーさん!?」
必死に顔を背ける祐一の頬に、キスをしているシャーリー。
「いや〜一種の賭けかな。ほら、私って誰と会っても勝てないじゃない?だから、みんな
が倒れるのを待ってたのよ。」
「で、でも、それって結構確立低いんじゃ・・・」
「私が勝つには、コレが一番可能性高いのよ。それに、『分の悪い掛けは嫌いじゃない』
って感じ?」
「うわあ・・・なかなかできないわ。」
魔法が使えないシャーリーは、最初からずっと隠れて自分以外の全員の動向をうかがい、
他の全員が潰れたところで現れたのだった。
ロングアーチスタッフとして六課の頭脳を任されているシャーリーにとって、隊員の動き
の把握はお手のものである。
「じゃ、じゃあ勝ったのはシャーリーさんてこと?」
「まあ、そうでしょうね・・・。」
「でもほっぺにちゅーだよ?唇じゃないじゃん!」
「あら〜?スバルはほっぺにちゅーすら出来なかったんじゃなかったかしら〜。」
「う!!」
「ほほほほほ〜。」
ガタッ
そんな会話をしていると、テーブルの一画から誰かが立ち上がる音が。
「み〜つ〜け〜た〜。私の獲物〜。」
「はっ!キャロ!?」
「まずい!シャーリーさん逃げて下さい!」
ゆらりと立ち上がったキャロが、怒臨気を噴き出しながら魔法の詠唱を始める。
「キャロ!ストップ!ストップ!こんなところで竜魂召喚しないで〜!」
あわててキャロを止めようとするスバルだが、ターゲットになっているシャーリーは至っ
て冷静だ。それどころかニコニコと微笑んですらいる。
というか、なにか企んでいる表情だ。
「キャロ・・・。祐一さん欲しい?」
「?」
突然のシャーリーの提案に、さすがのキャロも動きが止まる。
「どういう事ですか?シャーリーさん。」
「うふふ。優勝辞退しちゃおっかな〜。」
「ええ!?!?!?」
信じられない言葉に食堂が騒然となる。
「い、いいんですか!?そんな簡単に。」
「ええ、いいわよ。だってそのほうが面白そうじゃない。今回のだって面白そうだから参
加したんだし。」
「そ、そんな理由で・・・。」
「それに、私が本気出せば、いつでも『好き好きシャーリーさん』にできるしね〜。多分。」
「さ、さすが御前・・・。」
その言葉を聞いたキャロが、祐一の部屋に向かって突撃を開始した。
「いくぞ〜!!」
バァン!!
勢いよく祐一の部屋の扉が開かれる。
しかし、その中は空っぽ。そして机の上には
「探さないで下さい」
とだけ書かれた一枚の便せん。
「・・・・ああ〜〜!!逃げられた〜〜!!」
後で調べたところ、祐一はあの後すぐに事務課に休暇の申請をし、次の日にはすでに旅
立っていたとのことだった。
事務課としても、溜まりにたまっていた有給を使ってくれるというので、大喜びで許可を
出したらしい。
また、一部では祐一の身を案じたクロノが手を回したとも言われている。
ともかくこれで祐一は誰の手も届かない場所へ逃れる事となった。
さらに、後にJS事件と呼ばれる事件もその真の姿を見せ始めたことでそれどころではな
くなってしまったため、この件は一応の解決を見ることとなったのだった。
「ちょっと!私が王座を防衛するんじゃなかったんですか!?納得できません!!」
見ることとなった!
終わり
あとがき
なんとか書き上げました、後編です。
だいぶ遅くなってしまい、こんな私の作品を楽しみと行って下さった皆様には本当に申し
訳ない気持ちで一杯です。
一応いいわけをさせて下さい!
あのですね。私、この話をフロッピーに保存していたんです。
それで、「よ〜し完成、完成〜」と思ってメールで送ろうとしたところ・・・
ウイ〜ンガガガガとか言いやがるんです。
うお!まさか!?と思って、見てみたら案の定、中身がぶっ飛んでました・・・。orz
ということで、最初からまた書き始めることになりまして。
何というか私多分フロッピーと相性悪いんですよね。きっと。
やはり時代はメモリースティックなのですね・・・。
SSに関しては・・・もう本当にごめんなさいという感じです・・・・。
私、前作のスマッシュシスターズが初めてのSSになった訳なのですが、プロットとかの
組み方全く知らなくて・・・。
それに力のない私が、ギャグ作品で下手にプロットなんか組んで頭を捻ったりしたら、き
っと面白くなくなる、と思ったので・・・。
全部勢いです。手の動くままに書いたんです。そのせいで・・・・無惨・・・・ごめんなさい・・・。
最後にこんな未熟な私のそれも勢いで書いた作品を乗せて下さったJGJ様、ありがとうございました。本当に感謝の言葉もございません。
また、私のSSを面白いと言って下さった皆様、本当にありがとうございました。
すごく励みにさせて頂きました。
皆様、本当に本当にありがとうございました!!