「ええ、行きましょう・・・私一人で・・・」
どんな手を使ってでも手に入れたい物がある。
「待っていて下さいね、祐一様・・・。」
仲間を、姉妹を裏切ってでも手に入れたい物がある。
「このクアットロがお迎えに上がります・・・。」
大乱闘!スマッシュシスターズ!?
「う、うん・・・こ、ここは?俺はいったい・・・?」
目を覚ましたとき祐一は見知らぬ場所にいた。
コンクリートに囲まれた窓のない部屋。
明かりはあるが小さく、部屋全体を照らすには足りない。
どうやら、かなり大きめの部屋らしい。
祐一は、まだぼんやりする頭を必死に働かせて、なにが起こったのか思い出してみる。
「確か六課が襲撃されて・・・スバル達と迎撃にでて・・・俺は最終ラインにいたはず・・・」
そう、隊長陣不在の機動六課を襲撃してきた戦闘機人達を迎撃するため、六課フォワード陣と隊舎に残っていた祐一が出撃したのだ。
祐一は最後の砦としてスバル達の後方、最終防衛ラインにいたはず。
「えっと、それから・・・そうだ、通信が出来なくなった、って言ってシャーリーが出てきたんだ。」
だんだん頭がはっきりしてくる。
「そう!そうだ!ティアナからの最後の通信で、俺が狙われてるって!それでシャーリーに連れられて!・・・あれ?じゃあなんで俺気絶してたんだろ?それにシャーリーは?六課はどうなったんだ?」
「ご心配なく。あんな連中に興味はありませんので。」
「!!誰だ!?」
自分しかいなかった部屋に、いつの間にか誰かが入ってきていたことに驚きつつも、そちらに目を向ける。
薄闇から姿を現したのは大きなメガネをかけ、白いコートを着た少女。
「初めまして祐一様。gWクアットロと申します。」
「gW?戦闘機人か!」
「はい〜その通りです〜。」
「・・・俺を捕まえて・・・どうしようって言うんだ?」
クアットロを睨みつつ装備を確認してみるが、やはりすべて奪われてしまっているようだ。
このクアットロという戦闘機人が、自分をここに連れてきたのなら当然であるが。
「どうするか?ですって?」
「・・・・・」
「ふ、ふふふ、ふふふふふ・・・そ〜んなの決まってます〜!貴方様には、私たちの『お兄様』になって頂くのですよ〜!!」
「・・・・は?」
今この子は何を言った?鬼井様?いやいや、俺は相沢だし。
じゃなくて!どういう事だ?一応確認してみよう。もしかしたらミッドの方言か何かかも知れないし。
「『お兄様』?」
「はい『お兄様』です♪」
「それはあの・・・兄妹の上の男の人?」
「はい」
「ぶらざー?」
「いえす」
「マジ?」
「私はマジだぜ!」
確認終了。
「全力でおことわr」
「拒否権はありません」
「先読みされた!?」
完全にクアットロのペースにハマってしまっている。このままでは本当に「お兄様」にされかねないと感じた祐一は、なんとか話を逸らそうとする。
「六課はどうした?」
「先ほども言いましたが、貴方様以外に興味はありません。ですから、最初に仕掛けてきたあの子達以外に危害は加えておりませんわ。」
「シャーリーは?俺と一緒にいたはずだが。」
「ああ〜、コレのことですか?」
クアットロが左手を挙げるとそこに現れたのは、
「シャーリー!?いや、これは・・・。」
「そう、これが私の能力。つまりは偽物ですわ。」
「なるほど・・・、上手く誘導されてたって訳か。」
「ご名答〜」
クアットロは祐一の位置を確認した後、ジャミングをかけロングアーチスタッフとの通信絶つと、得意の幻影を用いてあらかじめ用意していた、この部屋に誘導していたのだ。
つまり、妹や姉達がつぶし合っていたときには、もうすでに手中に収めていたのである。
「さあ祐一様!私と共に来て頂きましょう!私たち12人のお兄様に!」
「12人!?それゲームがちがうんだけど!!」
「なんの話です?お兄様?それとも『お兄ちゃん』と呼ばれるほうがお好みですか?」
「くっ!」
クアットロは祐一を転移させようとトランスポーターを起動させる。この部屋そのものがトランスポーターとなっており、行き着く先はクアットロの私室である。
「さあ!めくるめく愛のランデブー!!兄妹の禁断の愛へ!!」
「おい!さっきと言ってることが違うぞ!!」
祐一は、このまま何も出来ずに連れて行かれてしまうのかと思われた。が、
「な、なぜ?」
クアットロが驚愕の声をあげる。
トランスポーターが起動しないのだ。なにかトラブルが起こったのだろうか。それとも誰かがトランスポーターを停止させたのか。
いやこの計画を知っているのはライバルを潰すために一時的に手を結んでいたディエチだけのはずだ。
そのディエチも先ほど自分で手を下した。
この計画も場所も知っている者はいないはず。
「フフフ、あなたの考え、最初からお見通しよ。」
「誰!?」
突如後ろから声をかけられ驚くクアットロ。何故だ。誰に。どうやって!?
その声の主が姿を現す。
「ウ、ウーノ姉様・・・。それに・・・。」
「久しぶりねクアットロ。」
「ドゥーエ姉様!?」
驚くべき事だ。動けないはずの長女と、どんな任務を行っているのかすらわからない次女がそこに立っているのである。
「あなたに教育を施したのは誰だったかしら?」
「それに、私はナンバーズ全員の動向を把握しています。あなたに動きがあったことなど最初からわかっていたのですよ。」
「あ、ああ・・・」
実は今回の六課襲撃には、任務中でスカリエッティのもとにはいなかったドゥーエと、スカリエッティの秘書であるウーノは参加していなかった。というより参加出来なかった。クアットロはそれを見越して他の姉妹を扇動し、うまく祐一を自分のものにしようと考えたのだ。それが最初からバレていたとは・・・。
ショックを隠しきれないクアットロにさらに追い打ちをかける。
「あなたは祐一様をうまくこの場に引き込んだつもりなのでしょうけど。」
「ここに連れてきたのはこの私。あなたの作った幻影などではないわ。」
そう言うと、ドゥーエの姿が一瞬で変化する。
先ほどクアットロが祐一に幻影として見せた女性、シャーリーの姿に。
「ライアーズ・マスク」gUドゥーエのISにして高度な変装能力。あらゆるセンサーを欺くことができ、当然、クアットロも例外ではない。
「あなたは現在妹たちの中でも最大の独自行動を許されているけど・・・少々オイタが過ぎたわね・・・。」
「ドクターが事を起こす前に、本部ではないとはいえ管理局を直接襲撃するなんて。」
クアットロに詰め寄る姉二人。
「ひぃ!」
「それに、なにより・・・・」
「この私たちを抜きにして・・・」
「「祐一様に手を出そうなどとは!許せません!!」」
「あなた達もですか!!」
置いてけぼりにされつつあった祐一だが思わずツッコんでしまう。戦闘機人だと言うことは敵ではあるが、まともな人達だと思ったのに。てか「12人姉妹の兄」って言われたけど、この人達結構歳いってるような・・・。俺とそんなに変わらないんじゃないか?
とは口が裂けても言えないのだが・・・。
「祐一様。愚妹がとんだご無礼を。ですが、丁重におもてなしをさせて頂きますので、どうか私たちと共に・・・。」
「大人の女の魅力を存分に堪能して頂けますわ。クアットロには教えていないテクニックが、まだまだあるのですから。」
今度はウーノ達が祐一に詰め寄ってくる。
よくよく考えてみれば、戦闘機人が二人増えたのだ。状況はむしろ悪化、脱出はより困難になってしまった。
なんとかスキを見つけて脱出しなければ。救いは彼女たちが祐一に危害を加える意思がないということだが、この二人の相手をさせられるのは、お兄様にされるよりヤバそうだ。
と、
「ん?なんだ?」
遠くから何か聞こえてくる。誰かの叫びのようだ・・・。
「・・・・ぉぉぉぉぉ・・・」
「ウーノ?この声は?」
「待って、今確認を・・・。これは!!」
「うおおおおおりゃあああああああ!!!」
部屋の壁をぶち抜いてひとつの影が飛び込んでくる!
「クアットロ!てンめぇ――――!!」
「げ!ノーヴェ!?」
「よくもハメてくれたな!!」
スタート早々にセインにすっころばされたノーヴェが復活してきたのだ。
もちろんリタイアしていないのは確認していたので、予防線を張ってきていた。ノーヴェの怒り具合を見るとどうやらそれを看破してきたらしい。
「なんでここが!?」
「ディエチがバラしたんだよ!幻影なんてくそったれなことしやがって!危うく・・・ウ、ウェンディとキスしそうになったじゃねえか!!」
クアットロの張った予防線とは、気絶し、リタイアした姉妹にシルバーカーテンを使い祐一に偽装させる、というものだった。ライバルを欺きつつ、やられた姉妹も回収できるという一石二鳥の策だったのだが、どうやらノーヴェは祐一に偽装させられたウェンディを回収した後、帰る前につまみ食いしようとしたところで気づいたらしい。
ちなみにオットー、ディードも同じ方法でだまされて姉妹達を回収していったのだった。
「あ、あら、してしまえば良かったのに!大切なファーストキスが妹なんてステキじゃない!」
「てめえ!頭カチ割んぞ!」
「ノーヴェ、落ち着きなさい。祐一様はすでに我々の手の中。あとはアジトにお連れするだけ。クアットロが先走った事は許せないにしても、結果として祐一様はお連れできるのだから。」
ウーノは、怒りのあまりローラーブーツのスピナーを回転させ、クアットロに渾身の蹴りを喰らわせそうな勢いのノーヴェをなだめる。
「ちっ。わかったよ。ウーノ姉がそう言うなら・・・」
「よろしい。ではこの場は私が預かりましょう。」
そう言って、祐一に近づいてくるウーノ。
しかし・・・。
一度は納得したノーヴェだったが、それを見逃さなかった。
ウーノが口の端にほんの僅かに笑みを浮かべているのを!
「ちょっと待った、ウーノ姉。まさか上手いこと言って「独り占め」なんてしないよな・・・?」
「・・・・しないわよ?」
「その間はなんだよ!!」
「ちっ!」
「だぁ〜〜〜!!これだから、頭ばっかり使ってる連中は信用できね〜!!」
「ウーノ姉様卑怯です〜」
「貴方に言われたくありません!」
「ウーノ!私をのけ者にはしないわよね!?アニメ本編での私の扱いを思い出して!!」
「時間軸がズレているわ!」
一度はおさまったかに見えた、争いがまた始まってしまう。しかし、そんな混乱した状況で逆に祐一は冷静さを取り戻していた。
言い争いをしている今がチャンスだ。入り口はふさがれていたようだが、さっき入ってきたノーヴェという戦闘機人は壁を突き破って入ってきた。部屋の外は通路のようだが、この部屋から出られれば脱出できるかもしれない。
少しずつ、気づかれないように壁の穴に寄っていく。
そして・・・
「あ〜〜!もうめんどくせー!こうなりゃ実力でケリ付けてやる!」
言い争いに耐えかねたノーヴェが実力行使に出ようとした瞬間!
「よし!今だ!!」
壁の穴に向けて一直線に走り出す!
「うおおおおお!!」
「「「「しまった!!」」」」
彼女たちも気づくが、
「もう遅いぜ!でやああああ!!」
瓦礫を飛び越え、部屋の外へ飛び出す!
だが神はまだ祐一に手を差し伸べはしなかった・・・。
ガスッ!!
「ごあっ!!」
何かが顔面に直撃し、また部屋の中に戻されてしまう。
(そ、そんな・・・まだ仲間が・・・)
この状況で失敗。ラストチャンスをものに出来なかった祐一は立ち上がることが出来ない・・・。
(もう・・・ダメ・・・か・・・)
だが様子がおかしい。脱出を試みた祐一がナンバーズの誰かに妨害された。ならば、それなりの反応がるはずだ。
しかし、祐一がわずかに感じる部屋の内部の空気は「困惑」のそれである。
「これは・・・?」
「誰かのISではない・・・?」
祐一がどうにか視線を巡らせ部屋を伺うと、部屋のほぼ中心に位置する場所、その空中に光の玉が浮かんでいる。
あれはなんだろうか?なにやら部屋の中をうかがうように揺れ動いており、ウーノ達も状況を把握できていないようだ。
そう、一度は祐一を絶望にたたき落としたこの光の玉、これこそが、神が差し伸べた手。
祐一を救う女神の微笑みだった。
某所
「WAS進入成功。目標を発見しました。」
「やっと・・・見つけた・・・」
なのははずっと探していた。報告を受け文字通り飛んで帰ってきたものの時すでに遅く、祐一は連れ去られた後だった。
しかし、彼女は諦めなかった。広域探索をかけ続け、ある場所へと急ぐ一人の戦闘機人、ノーヴェを発見したのだ。
はやる気持ちを抑え、WASによる追跡を開始。ノーヴェが入っていった建物の内部構造を調べた上であの部屋へ魔力球を進入させる。
案の定、そこには祐一が、そして、祐一をさらった憎き戦闘機人達がいた。
それを確認したなのははガマンの限界を超えた!
「レイジングハート・・・」
「Yes」
「ブラスタァァァァァ!!スリィィィィィ!!!」
「All right My master!!」
戻って、祐一達のいる部屋
「外部に強力な魔力反応!?推定・・・・Sランクオーバー!?」
「ロックされてる!」
「うそ!?でも、ここには祐一がいるんだぜ!そんな無茶苦茶するわけ・・・い!?」
ノーヴェは驚愕する。祐一はすでに桜色の結界で保護されていたのだ。
「と、いうことは・・・・」
ウーノ達の耳に破壊の女神となったなのはの言葉が響く。
「よ〜く、覚えておくの・・・・祐一さんは、あなた達の「お兄ちゃん」なんかじゃないの・・・」
「祐一さんは・・・・祐一さんは・・・・」
「 私 の 嫁 な の ! ! ! 」
「「「「いぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
「ええええええええええええええええ」
凄まじい光の奔流に、ウーノ達の絶叫と祐一の驚愕が飲み込まれていった・・・。
gT ウーノ
gU ドゥーエ
gW クアットロ
g\ ノーヴェ・・・・脱落
勝者・・・高町なのは!!
その後すぐに崩壊したビルの残骸の中から、祐一は助け出された。
気を失っていたものの、なのはの結界に守られていたおかげで一切ケガはしていなかった。
戦闘機人達はと言うと、管理局が到着したときにはすでにその姿はなく、スカリエッティが回収していったのだろうという事になった。
スカリエッティに繋がる重要参考人を取り逃がしてしまった事を、フェイトは悔しがっていたが祐一が無事だったということで、とりあえずは納得したようだ。
戦闘機人達に倒されたフォワード陣のケガはひどいものではなかったが、為す術無く倒されてしまった事にショックを受けると共に、この敗北をバネに「もっと、鍛えて下さい!」となのはに詰め寄ることとなる。
今回の事件は戦闘機人の能力の高さを知らしめることになり、結果として機動六課をレベルアップさせることに繋がったのだった。
余談ではあるがこの後なのはの「嫁発言」に対し、なのはを含め機動六課内で、大乱闘スマッシュ六課が繰り広げられ、祐一は
「探さないでください」
という置き手紙を残し、放浪の旅に出たのだった。
ちなみに帰ってきたときには、ヴィヴィオが「高町ヴィヴィオ」になり最強の刺客となっていた事も付け加えておく・・・。
後書き
え〜、後編なんとか書き上げることができました。
StSの時間軸がぐっちゃぐちゃになってるうえ、祐一さん、JS事件の決着をすっぽかしてしまいました・・・。orz
そこは所詮ネタ作品として流して頂けるとうれしいです。(滝汗
Web拍手の砂糖シリーズではフェイトさん同伴でしたが、やはり冥王なのは様に登場していてだいたほうが、
豪快にぶっ飛ばせるので、なのはさんルートです。
それにStS本編の「ブラスター3!!」のセリフがやたら男前で惚れましたし。
しかし、今回初めてSSを書かせて頂きましたが、やはり「実力が足りない・・・」と実感するばかり。
それでも、感想で「面白い」と言ってもらえて大喜びし、「後編が楽しみ」と言って頂けて、すごく励みになりました。
力不足ながら、精一杯書かせて頂きました。
少しでも期待に応えられたでしょうか?
それでは、ここまでおつきあい頂きありがとうございました!