ガララララッ

 

 

「お、おはよ……」

「あっ、おはよう河野く―――いっ!?」

 

二日休日をはさんで月曜の朝、教室で愛佳に話しかけると驚かれる。

まぁ、気持ちも解らないでもないが、オーバーすぎじゃないか?

 

昨日、一昨日とリレーの勝利のために猛練習をしたおかげで体は疲労困憊。

グッスリ眠って起きたら遅刻寸前で、制服を着る以外はほとんど寝てた時の状態で家を飛び出した。

というわけで、今の俺は制服全開、寝癖爆発、とどめに社会の窓まで全開だった。

 

「あ、あはは、河野君……大変だったみたいだねぇ〜」

「あぁ、リレーで負けられない理由が出来てな」

 

そう、俺は今大切なもの(主に貞操)を守る戦いをしているのだ。

 

「それじゃあ、頑張って下さいね。応援してますから」

「ありがとうな小牧。それで十分だよ」

 

「席付け〜、HRを始めるぞ〜」

 

丁度担任の先生が教室に入ってきたので、俺は皆と同じように自分の席に座る為に移動を始める。

 

「……」

「ニヤニヤ―――あいでっ!」

 

その前になんかムカついたから雄二を殴って。

 

 

 

 

 

 

RUN RUN RUN!!

―走れ、走れ―

第三話「チームメイト」

 

 

 

 

 

 

「それでは、これでHRは終わりだ。あぁ、それと河野ときれいなそら。放課後にリレーのチームの顔見せがあるから、放課後にパソコン室に集合するように連絡が来ているぞ」

「あ、はい」

「るー」

 

……ってかるーこ!?

 

「るーこが女子のリレーの選手だったのか!?」

「そうだ、うー。『りれー』というものが何なのか解らないから試しに参加してやるぞ。感謝しろ」

 

俺が聞くと、ピンク色の長い髪をした少女で、自称宇宙人のるーこ・きれいなそらが答える。

全然気付かなかったな……

 

「って、リレーがわからないのに出るなよ」

「何を言っている、うー。うーの文化を知り、るーにいる仲間に報告するのがるーの使命だ」

 

両手を高々と挙げるいつものポーズをしながらるーこは答える。

ちなみに通訳すると、『うー』は地球・地球人、『るー』はるーこ曰く、色々意味があるらしいが、ここではるーこの(自称)母星と、自分を指す代名詞だろう。

 

「……るーこ、走るのは得意か?」

「るー?」

「……」

 

ま、まぁ、走ってみれば解るよな。

 

 

 

 

 

 

「たしか、パソコン室は―――と」

 

珊瑚ちゃんを尋ねに行った時の記憶を頼りにパソコン室を探す。

ここら辺にあった気が―――

 

「わわわっ!! ど、どいて!! どいてーー!!」

「ん……げふぉ!?」

 

振り向くと腹部に衝撃が走る。

ナ、ナイスタッ……クル。

 

「はっ! わ、わわっ!? どどどどどうしよう? ついにボクのせいで死人が―――」

「で、出てないから安心しろ……」

「わーーーーっ!! い、生き返った!?」

 

俺にタックルしてきたと思われる人物は、いつものウチの制服に髪は雄二のような茶色がかった髪を肩口くらいまで短くバッサリ切ったボーイッシュな感じの女の子だった。

女の子は俺の声を聞くなりいきなり飛びのいて距離を作る。

まぁ、ダメージが無かったら(女の子が苦手な)俺の方が先に飛びのいていたけど、いきなり飛びのかれるとあんまり気分のいいものじゃないなぁ……

少し凹むし。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい。謝りますからどうか成仏―――」

「だから、生きてるって」

「へ? い、生きてたの!? ご、ごめんなさい」

 

俺が生きてても申し訳ないように謝ってくる。

 

「って、こんなことしてる場合じゃなかった。早くパソコン室に行かないと」

「パソコン室? それならボクと行き先が同じだね!」

 

ん? それじゃあ、この人も?

 

「さっ、行こう!!」

「あ、お、おい!?」

 

と、人の腕を掴んで引きずっていく。

先程とは打って変わってだな。別段、俺みたいに異性が苦手じゃないだけなんだろうが。

 

「キミ」

「なに?」

「この目の前にあるのがパソコン室なんだが、俺を何処へ連れてくつもりだ?」

「へ?」

 

今気付いたんだがこの女の子、少々抜けてるところあるよな。

女の子は目の前にある教室と俺の顔を交互に見る。

 

「あ、あはは〜」

「笑って誤魔化すな!!」

 

本当、俺が言わなかったら何処へ連れ去られていたんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

ガララララッ

 

 

「こんにちはー!!」

「……どうも」

 

パソコン室には既にメンバーは集まってきているようだった。

さっきの女の子もとっとと奥に行ってしまったようで、隣には誰もいない。

さて、俺も行くかな。

 

「遅いぞ。うー」

「るーこはパソコン室知ってたんだな」

「当然だぞ。うー、パソコン室を見つけることなどるーには朝飯前だ」

「そ、そうか」

 

威張って言える程のことじゃないんだがな。まぁ、それがるーこらしいが。

 

 

チョンチョン

 

 

「ん?」

 

不意に誰かに肩を軽く叩かれる。

振り向くと

 

「る〜☆」

「なんだ、珊瑚ちゃんか、珊瑚ちゃんもリレーの選手に選ばれたのか?」

 

そこに立っていたのは、少し青みがかった髪を左右で団子にした髪形の少女、姫百合珊瑚ちゃんだった。

でも、なんかおかしいよな? 珊瑚ちゃんはロボット工学においてはすごい才能を発揮してたけど、運動はさっぱりだったはずだ。

 

「ちゃうで〜、瑠璃ちゃんがリレーの選手に選ばれたんや〜、ウチはその付き添いや」

「へ〜、瑠璃ちゃんがねぇ……」

 

確かに運動神経なら珊瑚ちゃんよりかは数倍良さそうだもんな。

それこそ身に染みるほど解る。

 

「貴明もリレーの選手に選ばれたんやなぁ、瑠璃ちゃんは一緒にいれて羨ましいわ〜、瑠璃ちゃんもきっと一緒で嬉しいと思ってるで」

「全然嬉しくない!! なんで貴明と一緒でウチが喜ばなあかんねん」

 

噂をすれば影とやらで瑠璃ちゃんも話しに加わってきた。

瑠璃ちゃん―――本名は姫百合瑠璃で、紫色の髪を珊瑚ちゃんと同じようにした双子の妹。

すごいお姉ちゃん子で、珊瑚ちゃんと仲がいい俺が気に入らないらしく、よく制裁という名前の暴力を受けていた。

そういや、最近じゃあそういうのも無くなったけど、何かあったのだろうか?

 

「だって、瑠璃ちゃんは貴明すきすきすき〜やもん」

「ちゃーうー!! ウチが好きなのはさんちゃんだけで―――」

「もー、瑠璃ちゃんは恥ずかしがり屋さんやなぁ……」

「だから、ちゃーうー!!」

 

顔を真っ赤にして反論している瑠璃ちゃん。

それを笑いながらいつもの調子でからかってる珊瑚ちゃん。

―――こういうやり取りって普通、受け攻めが逆な感じを受けるのは俺だけだろうか?

 

「……」

「……ん? どうしたんだ? 瑠璃ちゃん」

「貴明のあほーー!!」

 

 

どげし

 

 

瑠璃ちゃんはそういいながら俺にローキックをいれて教室の奥のほうへ行ってしまった。

 

「瑠璃ちゃん待って〜……それじゃ、またな、貴明」

「あぁ……」

 

珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんを追って奥の方へ行く。

 

「それじゃあ、全員集まった事だし、ミーティングを始めるとしますかな」

 

奥の窓際に居た、初老のロン毛の男性が立ちあがる。

どうやら先生のようだな。

 

「え〜、ここに来ているみんなは、約一週間後にある体育祭の組別対抗リレーに出場する選手なわけですね。

え〜、まず、知らない人もいるだろうから自己紹介をしましょうか、私は3年B組の担任を務めてる阪木 銀七(さかき ぎんしち)といいます。

え〜、組別対抗リレーのB組チームの監督を務めさせてもらいますから、よろしく頼ますよ。」

 

髪をしつこくかき上げながら自己紹介する阪木先生。

ちょっとその仕草が笑えるのはこっちの話だ。

 

「え〜、それでは、他のメンバーも自己紹介をしてください」

 

阪木先生の指示の元、まず長身のいかにも運動系な男の人がまず立ち上がる。

 

「俺は、黒須 祥一(くろす しょういち)だ。

学年は三年で、部活は陸上部で部長をしてる。短い間だが、よろしく頼むな」

 

そこまで言って、黒須と名乗った先輩は一礼をして座っていた椅子にまた腰を下ろした。

陸上部の主将なら、この中で一番の実力者だろう。どの位置でも安心して任せられるよな。

 

そして、次に立ち上がったのは先程タックルしてきた女の子だった。

 

「え〜と、ボクは守屋 美里(もりや みさと)です。

学年は三年生で、部活はバスケ部をやっています。走るのは毎晩練習するくらい大好きです。よろしくお願いしますっ!!」

 

元気よく挨拶して席に付く守屋先輩。

ってか、この人先輩だったんだ……あの言動からして下級生だとばっかり思ってた。(まぁ、瑠璃ちゃんが選手の時点でまさかとは思っていたが)

今後は粗相の無いようにしよう。

 

次は……順番からして俺か。

 

「河野 貴明です。学年は二年で、部活は入ってません。走るのはあんまり自信があるわけじゃあ無いんですが、足を引っ張らないように頑張りますので、よろしくお願いします」

 

一礼して席に座る。

うむ、我ながら上手に出来た方かもしれないな。

 

次はるーこか。

 

「るーの名前は、るーこ きれいなそらだ。リレーというものが何だかよく解らないが、よろしく頼むぞ、うーの者共よ」

 

うわ、すごい尊大な感じ。

というか、リレーの選手の発言じゃないな。コレ。

ま、運動神経は悪くは無かったと思うから、ひとまず安心はしてるけど……

 

次に立ち上がったのは髪を金髪にした少年が立ち上がる。

 

「……南海 亮(なんかい りょう)。一年で部活はサッカー部。この髪は地毛なんで気にしないで下さい……よろしく」

 

南海は淡々とそこまで言うと軽く一礼をして席に座ってしまった。

ふむ、なんかクールな性格だな。

地毛が金髪というのも珍しいし。

 

で、最後は瑠璃ちゃんか。

 

「ウチは姫百合瑠璃っていいます。学年は一年で、部活は帰宅部。あと、そこにいる姫百合珊瑚は双子の姉です。よろしく」

「瑠璃ちゃんをよろしく頼むな〜」

 

至って普通の挨拶を済ました瑠璃ちゃんが席に着くと、阪木先生が髪をかき上げながら前に出てくる。

 

「え〜、これで全員ですね。それではこれから一週間、六人で力を合わせて頑張りましょう。目指すは優勝です!!」

 

「「おー(る〜)!!」」

 

こうして、急造の組別対抗リレー、B組チームが発足したのだった。

 

 

 

 

後書き

瑠璃ちゃんを怒らせるのが苦手なJGJです。

本当はるーこじゃなくて草壁さんが選手でもよかったのでしたが、JGJは草壁さんのキャラを表現する事がとても苦手なのでここはるーこで。(個人的には草壁さんをチョイでもいいから出したいですけどね)

そしていよいよB組チームが発足。次回から練習編です。

にしても阪木先生。まんまあの人やなぁ……

 

 

人物データ

 

 

守屋 美里

 

身長160cm 体重●●kg

B:85 W:59 H:84

高三でバスケ部の女の子。身長が低いが、持ち前の機動力と持久力でバスケ部のレギュラーになっている。

性格は元気娘の一言に尽き、スポ根ものが大好き。

実は中学の時に陸上部だった経験がある。

 

 

南海 亮

 

身長:166cm 体重:54kg

高一の後輩。サッカー部に所属している。

非常にクールな性格をしており、人とコミュニケーションを積極的に図ろうというタイプではない。

でも、一度認めたりした人には普通に話しかけたり、相談に乗ってくれたりと懇意にしてくれる友達想いな人。

 

 

黒須 祥一

 

身長:182cm 体重:64kg

高三の先輩。陸上部では主将をしている。

熱血気味な性格で、正義感に厚く、面倒見も良いので、先輩としてはこれ以上無いって位最高な先輩。

 

 

阪木 銀七

 

B組チームの監督みたいなもの。担当は現代文。

まんま金○先生。

↑でも、作者が上手く書けない。

 

 

 

 

 

2005年7月11日作成