「勝負?」

「そう、タカ坊VS私VSこのみの」

「……かけっこ?」

「当たり前でしょ。この流れで大食い勝負だと思う?」

 

そりゃ、思わないが……

 

「でも、このみにも勝てない俺がタマ姉に勝てるわけないじゃないか」

「嘘だよ。タカくんが本気を出したら、きっとこのみなんて一捻りだよ」

 

今まで本気で走って追いつかないってのに、どう本気を出せば抜けるんだか。

 

「うーん、でもタカ坊の言葉も一理あるわよね。今のタカ坊じゃ正直私に追いつけるかどうか怪しいし……」

 

タマ姉は少し現実を見てくれているようで(あくまでこのみに比べればの話だが)考え込んでいる。

 

「じゃあ、こうしましょうか。たしか体育祭まで一週間ちょっとあるわよね、その一週間ちょっとタカ坊は練習をしなさい。で、組別対抗リレーで決着をつけましょう」

 

 

 

 

 

 

RUN RUN RUN!!

―走れ、走れ!―

第二話「決定」

 

 

 

 

 

 

「へ?」

「それなら実力も多少は拮抗するだろうし、チームの強さによっても多少はハンデが出来るかもしれないしね」

 

俺の意志とは関係なく事態が進行していく。

 

「ちょっと! 勝手に話を進めるな!」

「あら、タカ坊がちゃんと練習した上で本当の実力を出し切れば、この勝負そんなに難しいとは思わないけど?」

「だから本当もなにも、今までかけっこでこのみ相手に手を抜いたことなんてほとんど無いっての」

あったとしても、それはこのみが俺よりも遅かった頃だからかなり昔の話だ。

ちなみにその頃からタマ姉には勝ったことが無い。

 

「むー、嘘はよくないでありますよ!! タマお姉ちゃん、タカくんは何かメリットが欲しいんだよ」

 

いや、そういう意味ではなくてだな。

反論したくても反論する前に話が進行していってしまう。

 

「そうねぇ……あんまりメリットとか付けたくないんだけど、

 じゃあ、タカ坊が勝ったら私を―――」

「え!?」

「あぁーー!! ズルいよ、タマお姉ちゃん!! だったらこのみが賞品になる!!」

「このみはまだ子供だからダメ。じゃっ、タカ坊」

「却下!!」

 

そういって腕を回そうとするタマ姉から距離をとりつつ拒否する。

 

「ほーら、やっぱりこのみの方がいいんだよ。タカくんロリコンだから」

「このみでも却下なもんは却下だ!」

 

勝手にロリコン扱いするな。

 

「もー、わがままなんだから……」

「どっちがだ、どっちが」

「それじゃあ、タカ坊が勝ったら私達が何でも一回言う事を聞くってのはどう?」

 

それはかなり魅力的な提案かもしれないな。

……いや、別にこのみ達にいかがわしいことをするためではなくて、自分の身を守るため。

もしものヤバいとき(主に貞操関係)の最後の切り札になるだろうし。

 

「でもなぁ……どうやっても勝てないんだろ? 一週間そこらの練習じゃあ……」

「タカ坊、自信を持つの」

「タカくんならきっと出来るよ!!」

 

うーん、これがタマ姉からすれば最大限の譲歩みたいだし。

元々当たって砕けろ。ダメ元でチャレンジしてみるのもいいかもしれないな。

なんか話の方向性が少しズれている気がしないでもないが。

 

「わかったよ」

「決まりね。じゃあ、日時はさっきも言ったけど体育祭の組別リレー。タカ坊チームが勝ったら私達が何でも一回言う事を聞く。私やこのみが勝ったら、タカ坊は勝った方に一日付き合うと」

「ちょっと待った!! タマ姉!!」

 

今、笑顔でなにおっしゃいました!?

 

「何? タカ坊」

「最後の『一日付き合う』って?」

「言葉の通り一日付き合うのよ、朝から昼、当然よ・る・も」

「そんなこと聞いてないんだけど……」

「……えへっ」

 

だ、騙された……

 

自分の遥か上空で髭を生やした爺さんがニヤリと笑った気がした。

 

 

 

 

 

 

「俺、辞退する」

「認めません」

「タマ姉!! 何だかんだで俺を持ち上げたのはこのためか!!」

「あら、本気を出せば私達より速いかもと思ったのは本当よ?」

 

騙された今となってはその言葉すら怪しいものだ。

このみの方を見る。

 

「タカくんと一日……タカくんと一日……タカくんと一日……」

 

ダメだ。このみの目が欲しいおもちゃを見る子供の目になってる。

 

「タカくんと一日……タカくんとデート……タカくんとくんずほぐれつ、さしつさされつ……」

 

なんか考えが桃色っぽくなっているこのみ。

頭で何を考えているのか聞きたいところだが、聞くと現実に起きかねないかもしれないので聞かないことにする。

 

「タマお姉ちゃん!! やろう!!」

 

このみが普段とは全く違う勢いでタマ姉に迫る。

あぁ、この情熱を勉強に活かせば成績も上がるというのに。

 

「で、タカ坊はどうするの? まぁ、私はタカ坊が一度言ったことを撤回するような男として―――いえ、人として下の下な男の子だとは思っていないけど」

 

それは暗に断るなと脅迫しているようなものです。タマ姉。

言った相手がタマ姉なら尚更。

 

「えぇーーい!! 俺も男だ、その勝負受けるよ」

「よく言ったわタカ坊。じゃあ、対戦の時を楽しみにしてるわね」

 

なんか勢いで言っちゃったけど、本当に勝てるのだろうか……

 

 

 

 

 

後書き

自分で書いてて少し羨ましくなったり(ぉ

このみ妄想爆発。タマ姉がめっちゃ計算高い。貴明は……まぁ、ドンマイ。

↑今回を大雑把に纏めるとこんな感じ。

 

今回はなんかこのみがすごい事になった気がします。新しくこのみは『妄想癖』を覚えた! みたいなw

このみファンには悪い事をしたかもしれません。でも自分は大満足。

 

 

 

 

 

2005年7月10日作成