見渡す限り、白く染まった世界。

 冷たい雪が積もり、白銀の世界を作り出している。

 そこに私はいた。

 

「せっちゃんの滑り方、滑るというよりも飛ぶやな」

 

 私をせっちゃんと呼ぶ女の子。

 私と色違いの服を着て、スキー板にストックを持ち私の滑りについて感想を述べる。

 そう、今私がいるのは雪山のスキー場。

 学校の行事の一つ……スキー実習で麻帆良を出て、私達はここ北国に来ていた。

 私以外の生徒は、ただ普通にスキー実習に。

 私とお嬢様、そしてネギ先生は学園長から別の依頼を受けて……

 

 

 スキー実習1週間前。私は学園長に呼ばれ、学園長室の前に来ていた。

 

「失礼します」

 

 コンコンと、学園長室の扉を言葉と共に叩き、静かに部屋の中へと入る。

 

「学園長先生、ご用件とは何でしょうか?」

 

 部屋の中には、扉の真正面に立派な机を挟んで異常に頭の後頭部が長い老人が椅子に座っていた。

 この人は、私が学園長と呼んだように、ここ麻帆良学園の学園長にして関東魔法協会の理事を勤める人で、お嬢様の祖父に当たる人でもある。

 

「今度、スキー実習があるのは知っておるの。そこの場所のすぐ近くにワシの知り合いがおって、この手紙を届けて欲しいのじゃ」

「それは構いませんが、なぜ私なのですか?」

 

 私の疑問に、ふぉふぉふぉっと笑い出す学園長。

 そして、顎から長く伸びている髭を触り、机の上にある手紙を見ながら

 

「それは行って見たら分かるかも知れんの〜」

「……分かりました」

 

 学園長から、疑問の答えは返ってこなかった。

 釈然としないが、このじじいめ問い詰めても言わないであろう。

 仕方なく私は扉に向かって歩き、出る際に一礼して学園長室を後にした。

 

 

 そんなことが合って、任務受けながらスキー実習に来ているの訳ですが……

 

「ア、アスナさ〜ん待ってくださいよ〜」

「遅いわよー、ネギ」

「明日菜って、相変わらず運動神経だけはええよね」

「だけは、余計よ。だけは」

 

 スキーは初めてなのか、ゆっくりと上から滑ってくるネギ先生。

 ……他にも辺りを見渡せば、遠くにいて小さくしか見えないがはっきりと自分のクラスメイトだと分かるグループが。

 麻帆良にいた時と同じ騒ぎ様である、私の心の中と正反対に。

 

「そう気を張るな刹那。お前も時間まで任務を忘れて遊んでおけ」

 

 颯爽と、私の横まで滑り降りて来た龍宮。

 ゴーグルを上げ、少し微笑みながら私を見る。

 

「龍宮……そうだな。今回は危険なことは無いだろう……無いか?」

「いや、私に聞かれても困る。まぁ、今回はエヴァンジェリンも一緒に行くんだ、ネギ先生も成長している」

「少し、考えすぎか……?」

 

 そう思うが……北国に入ってから、予感がしてならない。

 こう、何か大きな出来事がある気が……

 

「まぁ頑張れ」

 

 私の肩を叩き、滑り去っていく龍宮。

 いや、まて

 

「否定はしないのかっ?! 龍宮!」

 

 雪山に吹く冷たい風を背に、さらに高まった予感であった。

 

 

 

 

 

想いの守護者

 

 

 

 

 

 スキー実習2日目。

 この日の午後は自由行動。その為、依頼の手紙を届けにスキー場を出て目的地、隣町にある水瀬家へ……

 

「ここの住所は……こちらですね」

「茶々丸さんのおかげで助かりました」

「私達だけだと迷ってたわ、絶対に」

 

 私にお嬢様、ネギ先生、アスナさん。それに茶々丸さん、エヴァンジェリンさん、そしてネギ先生が話したらしく朝倉さん。朝倉さんに憑いている相坂さんは学校から出られずいないが、計7人もの大人数で水瀬さんの家に向かっている訳ですが……大丈夫でしょうか? 連絡はしているとはいえ、この大人数……

 そう思いながらも私達は、茶々丸さんを先頭に雪の残る道を歩いていく。

 そして私には、近づくと同時に大きくなる予感が二つありました。目的地に近づくにつれて大きくなる不安……そして期待。この予感の元に会いたくない。逆に早く会いたい気持ちが。

 

「此処です」

 

 そんな矛盾する気持ちに違和感を覚えていると、先頭を歩いていた茶々丸さんの歩みが止まった。それに続いて私達の歩みも止まる。

 私の視線の先には、周りにある家と同じぐらいの家。これといって特徴も無く、結界で守られている感覚も感じられ無い。

 

「おい茶々丸、本当に此処なのか? じじいの知り合いにしては魔力の力が感じられないが――」

「あらあら、私は知り合いなだけで魔法使いではありませんよ」

「――!?」

 

 とっさに声の聞こえた方を向く私達。

 そこには、笑顔を浮かべた青い髪を三つ網にした女性が立っていた。

 いつの間に、全く気配を感じられなかった。

 

「ごめんなさいね。気配を消すのが癖になってしまって」

 

 ……今、私の心に答えなかったか?

 

「とりあえず上がって下さい。お話はそれからしましょう」

 

 そう言って家の中へと戻っていく女性。

 その後姿を見ながら、私は恐怖を覚えていた。

 気配はちゃんと感じられるようになったが、逆にその存在感が大きくなり過ぎ恐怖を覚える。

 

「騙されるな刹那、ただの幻術……いや錯覚だ。気配を消していたところから存在感を大袈裟に大きく見せて錯覚させているだけだ」

 

 女性に気を取られていた為気がつかなかったが、いつの間にかエヴァンジェリンさんと茶々丸さんが側に来ていた。

 

「魔力の大きさは見習い魔法使いレベルです。武器を隠し持っている場合もありますが、マスターはもちろんネギ先生のレベルでも対処出来ると思われます」

「そうですか」

 

 二人の言葉に、安堵を覚える。龍宮にも言われた事だが、少し気を張り過ぎていたのかも知れない。

 私は一度息を吐き気持ちを切り替えると、夕凪を抜く為に紐を解いた袋を戻し紐を結び直す。

 そして、皆のあとに続いて家の中へと入っていった。

 

 

「どうぞ」

 

 リビングに私達を通し、座って待っててくださいと言いキッチンへと消えていった女性。

 そして、どう考えても早すぎるほどの短時間で、人数分の紅茶を淹れたトレイを持ち戻ってきた。

 私はそれを受け取り一口だけ口をつける。すると、外の寒さで冷えていた体の中を温かく染み渡っていた。

 温かい……あらかじめ淹れていた訳ではないのか。

 

「寒い中ご免なさいね。あのお爺さん企みごとが大好きで」

 

 揃って女性の言葉に頷く私達。

 絶対に頭の上に、ふぉふぉふぉっと笑う学園長の姿が現われているだろう。

 

「自己紹介がまだでしたね。水瀬秋子です。右から、ネギくん、明日菜ちゃん、木乃香ちゃん、刹那ちゃん、エヴァンジェリンさん、茶々丸ちゃん、和美ちゃんで良かったかしら?」

「はい! あれ、僕たちの名前」

「前もって、手紙を貰っていましたから」

 

 ……一緒に送れば良かったのでは?

 そう疑問にを心に思うと、また頭の上にさっきよりも大きな声で笑う学園長の姿が現われる。

 そんな学園長に一太刀浴びせて消し飛ばし、

 

「では、水瀬さん 「娘がいますから、秋子と呼んで下さいね」 秋子さん、この手紙は?」

「それは、刹那ちゃんと木乃香ちゃんが読んで欲しいそうよ」

 

 私とお嬢様が?

 再度頭の上に浮かんだ学園長が笑い出す前に斬り飛ばし、お嬢様に目線を移すと頷いたお嬢様が。

 私は、それを肯定の意味と捉え手紙を開けると、中には二枚に重なった紙があった。

 それを取り出し中に書いてある文を読み出すと……

 

「おい刹那、私達にも分かるように声に出して読め」

 

 エヴァンジェリンさんの願いもあり、声に出して読み始めました。

 

「この手紙を読んでいるのを見ると、どうやら着いたようじゃの。今回この依頼をしたのは、過ぎてしまったが刹那ちゃんの誕生日、早いが木乃香の誕生日プレゼントにある物を用意しておる。さぁ、呼ぶのじゃ」

 

 一枚目の紙にはそう書かれており、二枚目の紙は……

 

「ゆうちゃん助けて…………えぇ?!」

 

 と、中央に大きく書かれていた。

 私がその言葉を声に出して読むと、家の中二階からバンと扉を開ける音が大きく聞こえ、すぐ後に階段を下りてくる音が。

 そしてリビングの扉が開き、

 

「大丈夫かせっちゃん!!……ってせっちゃん、このちゃんなんでここに?! その前にさっきの声で気づけよ俺!!」

「自分でボケて、自分でツッコムの!?」

「相変わらず、ゆうちゃんは面白いな〜……あれ、ゆうちゃん?」

「遅っ! 気づくの遅いわよ木乃香!」

 

 ゆうちゃんが現われました。

 学園長のプレゼントとは……ゆうちゃんのことでした。

 

 

 

 時間は少し戻って水瀬家二階、祐一の部屋。<視点変更 刹那→祐一>

 

 

 荷物もほとんど無く、殺風景の俺の部屋。しかし、今日はいつもと違い多くの人数がいる為、いつもは広く感じる部屋が狭く感じる。

 

「なぁ、別に一つの部屋に固まる必要はないんじゃないか?」

「あら相沢君、名雪を起こす人が可哀相じゃない。ここは平等にする為にも、同じ部屋にするべきじゃない」

「ひどいよ〜、私寝ないよ」

「嘘だな(ね)」

 

 俺と香里の声がハモル。

 今俺の部屋には、勉強会のために集まった10人の戦士。

 睡眠師寝雪。食い逃げマスターうぐぅ。爆薬師しおりゅん。召喚獣まこぴー。魔剣士マイマイ。拳闘士かおりん。魔女っ子佐祐理。巫女みっしー。そして、一般人俺、受信機アンテナ。

 

「俺機械?!」

「だって北川、他に考えつかんぞ」

「相沢君、真面目にやるなら今の言葉聞かなかったことにしてあげるわよ」

「ごめんなさい」

 

 この大人数が一つの部屋で勉強している訳だが……なぜか、大学がすでに決まっている俺まで生徒側になっている。

 ちなみに、生徒側は俺を始めとして北川、名雪、あゆ、栞、真琴。先生側として、香里、美汐、すでに大学に行っている舞に佐祐理さん。

 七年間寝たきりだったあゆや狐だった真琴は小学生レベルから、入院を繰り返していた栞は高校2年、授業中寝すぎて名雪高校三年、俺と北川高校卒業レベルの勉強を教えてもらっている。

 

「……誰か来た」

「舞?」

 

 先ほどまで俺と北川がしていたテストプリントを採点していた舞が声を出した。

 気配に敏感な舞。その為、信用できる言葉である。

 

「下に、お客さん」

「そうか、おい誰か来たみたいだから静かにな」

 

 大きな音をたて、下に来ているお客さんに迷惑を掛けないように、皆に注意を促す。

 その言葉に、頷く皆。まぁ、1人すでに寝ている奴がいるが……

 

「出来ましたよ祐一さん、北川さん」

「お、何点ですか?」

「祐一74点、北川70点」

「北川さんの大学は大丈夫ですけど、祐一さんの大学はぎりぎりですね」

「本当、よく受かったわね麻帆良大学」

 

 そう、俺は関東の方にある麻帆良の大学を受け、見事に受かったのだ。

 その時の受かった報告が異常に早かったのだが……しかも学園長直筆の手紙で報告があったのが気になる。

 

「しかし、なんでそこを選んだんだ? しかもそこしか受けてないし、何か麻帆良にあるのか?」

 

 北川の言葉に、音がピタリと無くなった気がした。

 そして、皆がこっちを見てくる。

 

「ん? ちょっとな」

「ちょっとってなんだよ」

「秘密だ」

 

 俺の返しに、不満な表情でこっちを見る。

 悪いが、この話はある理由から一部の者にしかはなすことは出来ない。いくらこいつらでも話すことは出来ない。

 俺は、不満そうにこっちを見る皆を気にせずにさっきのテストを見直そうとしようとしたとき、

 

 ――ゆうちゃん、助けて!!――

 

 俺に助けを求める声が聞こえた。

 俺は、飛び跳ねるように立ち上がり、

 

「相沢?」

 

 昔の感覚でテーブルを右足一歩で跳び越え、着地する前に部屋の扉を開き左足で廊下に着地。そしてその勢いを使って体を階段へ向け更に跳ぶ。そして階段の前で片足を着地させて、1階へ3歩で飛び降り、跳び込む様にリビングの扉を開け

 

「大丈夫かせっちゃん!! ……ってせっちゃん、このちゃん?! なんでここに!? その前にさっきの声で気づけよ俺!!」

「自分でボケて、自分でツッコムの!?」

「相変わらず、ゆうちゃんは面白いな〜……あれ、ゆうちゃん?」

「遅っ!? 気づくの遅いわよ木乃香」

 

 部屋の中に入るとせっちゃんとこのちゃんの姿に、知らない女の子が4人に身の丈ほどの杖を持った男の子が1人ソファーに座っていた。

 

 

 

 <視点変更 祐一→刹那>

 

 リビング……上にいた祐一さんを含めてさらに人数が増えました。

 男性3人、女性15人と比率の差が大きく……この人達は祐一さんの何なんでしょうか?

 その疑問も、祐一さんの一言により互いに紹介することで解消しました。

 学校の友達だそうですが、何故女性ばかり……

 

「相沢君と刹那ちゃん、木乃香ちゃんは幼馴染で良いのね」

「ああ」

「それなら、さっき大丈夫かって走り出したのは?」

「な、なんのことだ?」

 

 焦りすぎです祐一さん。

 香里さんが他にも何かあるのではと疑っているように、私と祐一さんはある特殊な関係上にあります。

 その話をするには、魔法と同じようにこちら側に踏み込むということなので、一般人に話せることではありませんが。

 

「それは、せっちゃんがこの手紙に書いてあったゆうちゃん、助けての文字を読んだからや。ゆうちゃんはその声を聞いて飛び出したんやろ」

「そうそう、あの時静かだっただろ。それで声が聞こえたから飛び出したんだ」

 

 お嬢様感謝します!

 香里さん達を誤魔化す為に、私が呼んだ手紙の事を説明してくれました。

 

「そうでしょうか? 確かに静かになっていました。しかし、私は何も聞こえませんでしたが」

「そうよ! 真琴だって何も聞こえなかったわよ!」

 

 美汐さんと真琴さんに同意して、頷く上にいた皆さん。

 実際、二階まで聞こえる筈がない大きさでしたが……祐一さんには聞こえたみたいですね。

 そんな皆さんの追撃に、祐一さんは誰が見ても焦りだし、返す言葉がないようです。もっとも、私も返す言葉ないのですが……

 祐一さんは他の人に助けを求めようとしますが、アスナさんやネギ先生はおろおろと状況を窺い、エヴァンジェリンさん茶々丸さん朝倉さん秋子さんは面白そうに見るだけで、この場で唯一頼れるのが「そんなの簡単や」と笑いながら言うお嬢様。

 

「愛の力に決まってるやん」

 

 御免なさい、頼れませでした。それどころかとんでもない事を言い出すお嬢様。

 

「どういうことだよ祐一!!」

「そうだよ! こ、恋人ってどういうことだよ!!」

 

 恋人とは言ってません。

 お嬢様の言葉を聞き、名雪さんあゆさん栞さん真琴さんが、一斉に祐一さんに詰め寄ります。

 そんな4人から逃げ出そうと逃げ道を探す祐一さん。しかし、完全に面白がっているエヴァンジェリンさんと秋子さんが窓とリビングへの道を塞ぎます。

 

「だぁー、俺は刹那の守護者なだけだ!!」

「守護者?」

「そう、守護者。俺は刹那の……あ」

 

 逃げ道まで塞がれ、つい言ってしまった祐一さん。自分の言った言葉の大切さにあとから気づいたがすでに遅く、皆さんしっかりと聞いてしましました。

 気づいた後、少しの間固まりゆっくりと顔をこちらに向けて、俺言っちゃった? と、視線で問いかけてきたので、私は頷き肯定の意味を示す。

 すると祐一さんは眉間を押さえ

 

「守護者の説明は絶対にしないからな。これを聞いていいのは……そっちのは良いのか?」

「……あまり話したくは無いのですが」

 

 ネギ先生達はこちら側の住人なので話せますが……祐一さんの友達方々は違うので話せることではありません。もっともネギ先生達でも、話すと後日からかわれる可能性があるので話したくありませんが。

 祐一さんが話せないと言い出すと、詰め寄っていた人達が文句を言い祐一さんに再度詰め寄ります。

 そんな祐一さんの姿を、私は何もすることが出来ず黙って見ることに……

 

「せっちゃん、顔が仕事の時のようになってるで」

「え? そうですか?」

「うん、険しい顔しとる」

 

 何故でしょうか? 別に嫌な気配を感じるわけではありませんが……

 

「若いっていいよなー」

「イキナリ老け込まないでくださいマスター。それに意味が不明です」

「茶々丸さん分かってないなー。つまり――」

「――なるほど」

 

 完全に観覧モードになったエヴァンジェリンさん茶々丸さん朝倉さん。

 3人で話しているようですが、小声の上少し離れている為はっきりとは聞こえません。

 朝倉さんが茶々丸さんに耳打ちをしたあと、こちらを見る目が変わった気がしますが……一体何を話しているのでしょうか?

 

「……そう、そうなのね」

「残念ですけど、諦めるしかないようですね」

「舞……泣いちゃ駄目だよ」

「分かってる。悲しいけど、笑顔で応援する」

 

 香里さん、美汐さん、舞さん、佐祐理さんも一言呟いた後、私を見る目が変わりました。

 微笑を浮かべ、こちらを……

 

「アスナさん……意味分かりますか?」

「うーん……分かってないのって、私とネギだけ?」

「あはは〜、それは――」

 

 朝倉さんが茶々丸さんにしたように、ネギ先生とアスナさんに耳打ちをする佐祐理さん。

 すると、ネギ先生とアスナさんは茶々丸さんと同じく「なるほど」と呟き、他の人と同じように私を見ます。

 ……本当に、皆さん何を話しているのでしょうか?

 

「そうですネギ君。佐祐理を呼ぶときは佐祐理お姉ちゃんと呼んでくれませんか?」

「佐祐理お姉ちゃん?」

「んー、可愛いです!」

 

 ネギ先生に抱きつく佐祐理さん。

 その後は、ネギ先生アスナさん、佐祐理さん舞さんのグループ。エヴァンジェリンさん茶々丸さん朝倉さん、香里さん美汐さん秋子さんのグループに分かれ、雑談をしていました。

 もっとも、私とお嬢様は祐一さんへの質問が尋問に変わった4人の側から離れる事が許されませんでしたが……

 

 

 

「あ! 皆さん、そろそろ戻らないと」

「あらあら、祐一さん。皆さんを送って行って下さいね」

「分かりました」

 

 時計を見ると、ここに来てからかなりの時間が経ち、スキー場に戻らないといけない時間でした。

 その後すぐにスキー場に戻る為、水瀬家を後にしました。

 帰る際、挨拶をする時になぜか名雪さんあゆさん栞さん真琴さんからは睨まれ、香里さん美汐さん佐祐理さん舞さんからはがんばれと応援されたのですが……何故でしょうか? 今日は自分自身に対してもですが解らない事ばかりです。

 

 

 

 

 

「――あ、せっちゃん……ちょっと良いか?」

「え、はい」

 

 スキー場のある駅に降りると、祐一さんに引き止められました。本来ならここで祐一さんと別れるはずでしたが、話したいことがあるらしくスキー場まで送ってくれるそうです。それと、

 

「せっちゃん、頑張りや」

 

 なぜかお嬢様にも応援されました。一体、何を応援されているのでしょうか?

 

 

 スキー場へと続く道。お嬢様達はスキー場に一番近い道を、私と祐一さんの願いもあって遠回りの道をゆっくりと歩いてスキー場に戻ることになりました。

 

「――すいません、わざわざ送って貰って」

「いや、俺も話がしたかったからちょうど良い」

 

 その後、沈黙が続きます。

 電車の中ではお嬢様達もいたので話せましたが、いざ2人きりになると言葉が出てきません。

 それは祐一さんも同じらしく、小さく言葉をだそうとするのを繰り返すばかりです。

 

「えと……このちゃんと一緒にいるのは、考えを変えたからだよな」

「え、はい。ネギ先生やアスナさんのおかげで」

「そうか……心配していたが、せっちゃんも変わったんだな」

「はい……祐一さんも、7年前のこと」

「ああ、俺も解決した」

 

 私はもっと強くなる為に剣の稽古で忙しくなり、お嬢様とはほとんど会わなくなりましたが、祐一さんとは守護者の関係でいつも会えました。しかし7年前の冬、祐一さんは出かけた先から心がぼろぼろの状態で帰ってきました。

 守れなかった、祐一さんはそう言いました。その後、そのときの記憶を忘れる事で自分を取り戻し普段と変わらない姿に戻りましたが……

 

「そうですか」

「悪いな、心配させて」

「い、いえ。私もご迷惑をかけましたから」

「お互い様か」

 

 ……また、沈黙が続きます。

 

「あ……着いたな」

「そうですね……着きましたね」

 

 駅からの道の大半を沈黙だけで歩いてしまいました。

 話したいことはまだ合ったのに、祐一さんと別れる時間がすぐそこまで来ている。

 

「お別れだな……そうだ、せっちゃん。俺、麻帆良大に受かったんだ。だから、春からそっちに行く」

「それは、守護者としてですか? 祐一さん自身の意思ですか?」

 

 祐一さん言葉を聞くとすぐにそんな疑問が浮かび、声に出していました。

 単純に私を守護者として守る為に来るのか、それとも……

 

「守護者としてせっちゃんを守るのは俺自身の願いだ。だから守護者としても、俺自身の意思でもある」

 

 祐一さんの言葉を聞き、心に安堵を覚える。

 

「だから、せっちゃん」

「はい」

「俺がお前の側に居たいのは――」

 

 

 

 一方、別ルートでスキー場に戻った木乃香達は、刹那と祐一よりも早くスキー場のすぐ側の宿泊施設に帰ってきていた。

<視点変更 刹那→木乃香>

 

 

「ぼうや達もちょっとこい」

 

 自分の部屋に戻ろうとした所を、エヴァちゃんに引き止められた。

 そして、部屋の中に誘われ、部屋の中に居た龍宮さんとちうちゃんも参加して、せっちゃんの様子を使い魔を通して見ることになったんや。

 ごめんなせっちゃん、覗き見して。でも、気になるやん。

 

「いったい、なんだよこれは? それにネギ先生、良いんですか? こんな時間にここにいて」

「大丈夫です千雨さん。それと、これは使い魔の見ている景色を見れるそうです」

 

 それだけ聞くと、ちうちゃんだけは自分は係わり無いってゆうて、このテレビみたいなんから一番離れている布団に潜ってもうた。

 でも、メガネを外してないのを見ると、すぐに寝る気は無い見たいやな。

 

「で、これで何を見るんだ?」

「刹那さんの恋模様です龍宮隊長」

「ネギ先生、隊長はやめよう。ん? 刹那の恋模様?」

「そうなのよ龍宮さん! 刹那ちゃんに恋人がいたのよ!」

 

 正確にはまだや。絶対に両思いやろうけど、どっちも告白してへん。

 

「そういえばこのか、守護者って何なの?」

 

 アスナの言葉に、今思い出したとばかりにウチを見る皆。

 龍宮さんはいてなかったんやけど……

 

「ウチも詳しく知らへんけど、神鳴流を守る使命をもっとる一族やそうや」

「守る……そういえば、聞いたことあるな。裏の世界に、力を持っている子供が一般人の前で力を使わないように守る一族がいる話を」

 

 子供の時にゆうちゃんがゆうたことやから、ほとんど覚えてへんねんけど……神鳴流を守るのが俺の使命だってのが、ゆうちゃんの口癖やったな。会ったばかりの時は、いつもウチとせっちゃんを離れた所から見ているだけやった。でも、いつからか一緒に遊ぶようになってからは、口癖も無くなってから忘れてたわ。

 

「届いたぞ」

 

 エヴァちゃんの声にすぐに振り向きテレビみたいなんを見ると、夜の道を歩く2人の姿が映っとった。

 しばらく、ウチらは無言のままで見とったんやけど……

 

「ねぇエヴァちゃん……これって声は無理なの?」

「いや、こいつらが喋ってないだけだ」

 

 あかんよせっちゃん! せっかくゆうちゃんと2人きりになれたのに!!

 そう思うんやけど、せッちゃんとゆうちゃんには伝わらず、無言で歩き続けて施設の見えるところまで着いてもうた。

 

「なんだ、面白くない。キスの1つぐらいしてみろ」

「無茶だな。あいつがそんなこと出来るとは思えない」

「あれちうちゃん、興味が無かったんじゃないのかな?」

「けっ」

 

 振り向いてみると、背中を向けていたはずやのに、いつの間にかこっちを向いていたちうちゃん。

 やっぱり、気にはなってはいたみたいやな。

 

「お別れだな……そうだ、せっちゃん。俺、麻帆良大に受かったんだ。だから、春からそっちに行く」

「……それは、守護者としてですか? 祐一さん自身の意思ですか?」

 

 はっきりとゆうちゃんとせっちゃんの声が聞こえ、釘付けになるウチら。

 しかも、なんや聞いてる側には告白へ進む予感がしてならないセリフや。

 

「守護者として、せっちゃんを守るのは俺自身の願いだ。だから守護者としても、俺自身の意思でもある」

「これって……好きだって遠まわしに言ってるんじゃないですか?」

 

 ネギくんの言葉に頷くウチら。

 でも、せっちゃんは気づいた様子は無く

 

「いくらなんでも鈍すぎないか刹那の奴」

「せっちゃん、ゆうちゃんが自分を守るのは昔からやったから」

 

 龍宮さんの言葉にフォローを入れる。

 でも、ごめんせっちゃん。ウチもそう思うわ。

 そない思ってたんやけど……

 

「だから、せっちゃん……俺がお前の側に居たいのは――」

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

 

 <視点変更 木乃香→刹那>

 

 え……えと。ゆうちゃんの顔がアップなのは何故? もしかして、キス?

 

「俺がお前の側に居たいのは、お前を好きだからだ」

 

 私を好き……ゆうちゃんが私を好き。

 

「えぇ!? ゆうちゃん、ウチやで! 剣術以外なんのとりえもないウチなんか、そや! このちゃんの方が絶対ええわ! ウチより美人やし、頭もええし――」

「俺は刹那が好きなんだ」

「ウチ、人間やないんよ! それでもええん!?」

 

 ウチは忌み嫌われる存在。

 烏族の仲でも白い翼は異端と嫌われ、その翼のせいで人間でもない。

 このちゃんやアスナさんは綺麗な羽だと言ってくれたが、それでもウチが化け物なのは変わりない。

 

「ああ、俺は刹那を好きになったんだ。刹那が人間じゃなくても関係ない、俺は刹那が好きだ」

「……ウチも、ウチもゆうちゃんが好きや!! ほんまにええ? ウチ、絶対にゆうちゃんに迷惑かけるで」

「せっちゃんが思ってるほど、迷惑なことなんて起こらないよ」

「ごめんゆうちゃん、それなら今から迷惑かける」

 

 ゆうちゃんの胸に抱きつき、止まらない涙を流した。

 ゆうちゃんがウチを受け入れてくれたことに対して嬉しさ。これからウチがゆうちゃんにかける迷惑をかける悔しさ。

 このちゃんを守れなかった時に強くなると決めてから初めて、ウチの気持ちをゆうちゃんに話した……

 

 

 

「――ごめんゆうちゃん、服濡らしてもうて」

 

 ゆうちゃんに抱きつき泣いた為、ゆうちゃんの服が涙で濡れてもうた。

 でも、ゆうちゃんは気にするなっていうて、ウチの頭を撫ぜてくれる。

 

「……さすがに、これ以上は引き止めれないな」

 

 そういうて、頭に乗せた手を退かすゆうちゃん。

 え? ……そうや、もう戻らないとあかん。でも、ゆうちゃんと別れたくない。

 そう思うと、ついゆうちゃんの服の端を握ってしまう。

 

「せっちゃん……卒業したらすぐにそっちに行くから待っててくれないか?」

「……分かった、約束やで。ウチ、待ってるからな」

「約束だ」

 

 今度は、ウチも気持ちを込めて口付けを返す。

 身長の差から、背伸びした体勢での口付け。

 その時また涙がでたんやけど、ゆうちゃんが指で拭ってくれた。

 

「せっちゃん、もう1つだけ約束。俺の前では心を隠さないでくれ」

「約束や、ゆうちゃんの前では隠さない」

「ん、それじゃぁなせっちゃん。手紙でも書くから」

 

 そういうてゆうちゃんは、最後に一度だけ私の頭を撫ぜ、着た道を戻っていった。

 その後姿を見てウチはとても悲しかったけど、またゆうちゃんに会えると約束したから我慢や。

 

「ゆうちゃん……約束やで」

 

 

 

 

「お帰りせっちゃん」

 

 お嬢様達の元に戻ると、目が真っ赤なお嬢様に迎えられました。

 その後ろで、ネギ先生アスナさん朝倉さんも真っ赤な目をしていましたが……ま、まさか

 

「お嬢様……も、もしかして見ていたのでは?」

「ウチ、応援してるからな!」

 

 そう言って、布団に飛び込み頭まで被ってしまうお嬢様。

 私がお嬢様の布団に気を取られていると、気配を消して私の後ろを通り部屋を出て行こうとするネギ先生。

 それに気づき振り向くと、ネギ先生はビクっと震え止まり

 

「ぼ、僕も応援してますから!!」

 

 瞬動術を使い部屋を出て行くネギ先生。

 瞬動術まで使われると捕らえることは出来ないので、アスナさんと朝倉さんに視線を移すと……

 

「わ、私も応援してるからね刹那さん」

「うんうん、私も応援するよ!」

 

 2人も、お嬢様のように布団の中へ飛び込んでしまう。

 ……絶対に見てましたね……そんなことが出来るのは、エヴァンジェリンさんですね。

 そう考えた私は、夕凪をいつでも抜けるようにしてエヴァンジェリンさんのいる部屋へ……

 

 

 その後、1つの悲鳴が上がりましたが、ある部屋の住人は聞こえない振りをしてその夜は過ぎていきました。

 スキーから帰った後聞いた話ですが、他の部屋の住人もその部屋の異様な雰囲気に近づかなかったそうです。

 

 

 

 

 それから時は経ち、春。麻帆良学園中央駅。

 桜の花びらが舞う駅前の広場で、私はある約束を待っていました。

 

「これからよろしくな、せっちゃん」

「うん、ゆうちゃん」

 

 私を抱きしめるゆうちゃん。約束は、果たされました。

 あの冬。ゆうちゃんの想いを知り、ウチの想いも伝えたあの日。その日にした再会の約束。

 ゆうちゃんは、約束の通りに来てくれました。

 

「それと守護者として使命だ」

 

 ゆうちゃんは、ウチの前に騎士が主にするようにしゃがみ、

 

「桜咲刹那の守護者相沢祐一。再び汝を守る為、戻りました」

 

 昔から決まっている儀式。でも、祐一さんは……

 

「そして相沢祐一、守護者としてだけでなく、1人の男としてこれからずっと汝の側で守ることを許していただきたい」

 

 さらに、自分の想いを加えました。

 

「……はい、桜咲刹那。私もその想いをを心から喜び願います」

 

 ウチはその想いに答える為、返事と共にゆうちゃんと口付け交わしました……

 

「守護者として1人の男としてその想い、絶対に守ります」

「約束やで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき

rk「京都弁って、こんな喋り方だったか? rkです」

祐一「始めに言っておこう。これは、Kanon×ネギまです」

rk「ちなみに刹那が、感情が揺れている時はゆうちゃん、このちゃんと呼ぶのや。さらに大きく感情が揺れている時は京都弁が出るのは……これは自分の中の毎設定です。実際にそうなのかは知りません」

祐一「KanonはALLエンド後、1年後の冬。ネギまは、3年生の冬の設定で、ネギまにいたっては問題すべて解決していると設定している」

rk「覗き見するのにエヴァの力が必要だったので……解決していないとね」

祐一「だからエヴァが麻帆良の外に出ている訳だ」

rk「好きなキャラだし、出したかったから……一番は刹那だがね」

祐一「まったく、ぎりぎりだな……いろんな意味で」

rk「……これは、Kanon×ネギまです! いや、ネギま×Kanonです!」

祐一「同じだっ! 神鳴流……極大雷鳴剣!!」

rk「風花風障壁!!<フランス バリエース・アエリアーリス>」

祐一「追撃! 1点集中 百烈桜華斬!!」

rk「ちっ! エクゼキューショナー ソード<エンシス・エクセス エンス>!!」

 

 以降、混戦……

 

木乃香「至らぬ所もあったやろうけど、未熟者やから許したってや」

刹那「それでは、最後まで読んで頂きありがとう御座いました。また、機会がありましたらお会いしましょう」

木乃香「せっちゃん……またってあるん?」

刹那「暇とネタが浮かべば、次はエヴァンジェリンさんを書くらしいですけど……正直な所、分かりません」

木乃香「駄目駄目やな」

刹那「そうですね」

 

祐一「我が守る想いは絶対なり! 斬れ刹那

rk「それ没ネタの技! ぐはっ!」

 

木乃香「せっちゃん……愛されてるな〜」

刹那「……ゆうちゃん