「忘れるなよ、その代わりお前は世界の運命も背負ったんだからな」

「どういう意味だ?」

 

意味が解らず尋ねると、男は俺に渡した書物を指差す。

 

「それはお前に力を授ける…同時に深い悲しみもな」

「力?深い悲しみって――――」

 

そこまで言った時、手に持った白い羽根の内一つが消滅する。

更に強烈な光が発生し目の前が見えなくなり俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

魔法少年祐一 R・MIX

第一話『物事の返事はよく考えてから答えましょう』

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

「ぅ?」

 

風に顔を撫でられ意識が戻る。

それが妙に心地よかった。

 

「ここは…どこだ?」

 

眼が覚めたとき、そこは見知らぬ場所だった。

周囲を見渡してみると、どうやらかなり長い通路に放り出されたようだ。

近くにある窓から外を見てみると、近未来的な建物やよく分からないものが並び立っている。

触れている壁も石垣とかじゃなくて、全部が機械で作られたものだった。

 

「異世界に…飛ばされたってヤツか?」

 

ここに来る前の事はハッキリと覚えている。

それが夢でない事も、手に持った一枚の羽と古惚けた書物が証拠だ。

外に見える文明も、多分かなり高度な文明の世界なのだろう。

けど人の気配が全くしないのは何故だ?

 

 

―ドクンッ―

 

「ん?なんだ?」

 

突然手に抱えていた書物が強く脈打った気がした。

見てみると黒紫色に発光しながら、ドクンドクンと音が出そうなほど点滅を繰り返している。

それが、ある方向に向けると一層強くなる事がわかった。

 

「行けって事なのか?」

 

取り合えず、他に行く所も目的も無いので歩き出す。

途中、周囲を見渡したが人はいなかった。

一瞬これが死後の世界かと思った。

けど、不安から出る心臓の鼓動が自分が生きている事を伝えてくる。

 

暫らく歩いていると、妙に開いた空間に出た。

そこは壁自体が本棚になっている、恐らく図書室の類の部屋だろう。

見ると他の通路への道や部屋が並び、その部屋の一角に明かりが点いている。

気が付くと足が勝手に部屋に向かって歩き出していた。

考えるよりも先に、心の中の何かが惹かれる様な…何か期待するような…妙な気分だった。

 

「誰?」

「うおう!!」

 

扉を開けようとした途端、逆に中から扉を開けられ驚く。

思わずシェーのポーズを取ってしまった。

 

「?」

 

中から出てきたのは黒い長髪を持った優しげな瞳の女性。

彼女は首を傾げながら俺の様子を見ている。

不味い。このままだと俺、変態?

 

「あ、いや…俺は怪しいものじゃない!多分身元不明かもしれんが、それは俺の所為じゃない!!」

「ふふふ…可笑しな人ね」

「はぁ…」

 

初対面の人に変と言われてしまった。

正直に言ってちょっとショックだ。

 

「取り合えず部屋に入らない?」

「良いんですか?」

「変だけど…怪しい人には見えないから良いわ」

「それは喜んで良いのか微妙なんですけど」

「さあ、どうかしら?」

 

悪戯っぽく微笑む女性。

何だろう…この人からは俺と似たようなものを感じる。

穏やかな中に、悲しさを秘めた瞳。

まるで大切な者を無くしたような悲しい眼。

 

「それで入らないの?ええと…」

 

彼女が扉を開けて俺を呼ぼうとして口ごもる。

そう言えばまだお互いに名乗ってなかったな。

 

「俺は祐一。相沢祐一です」

「そう、私はプレシア、プレシア=テスタロッサよ」

 

お互いに名乗りあった後、部屋に入る。

部屋を見渡しているとプレシアが何かを操作したのか、どこかで機械が動く音がした。

 

「気にしないで…それで、貴方…祐一はどんな世界から来たの?」

「え?」

「この世界には特殊な方法でないと来れないのよ…それもかなり高度な魔術やアイテムを使わないとね」

「そうなのか」

 

彼女は俺の反応に疑問を感じたようで、また首を傾げている。取り合えず俺はこれまでの事を隠さずに話した。

どうやってこの場に来たか。来る前に出会った男から手渡された道具や話。

そして、元の世界で起きた出来事も…全て隠さずに話した。

ここまで話せたのも、多分似たものを感じたからだろう。

 

「そう、貴方も大切な者を失ったのね」

「俺…も?」

 

そこから彼女の話が始まった。

話しを聞くと彼女はこの世界に来る前に大きな過ちを犯したらしい。

最初は最愛の娘を死なせてしまった事。その後、自分の娘を蘇えらせる為に『生命蘇生』の研究を行ってきた事。

その研究の一つで生み出した人造生命…クローンを作り出し、その子を実の娘と見ずに道具として扱った事。

この世界に来てから一度自身の病によって死の淵に立ち、研究が完遂できそうに無いと思った時

不意に最後まで自分を母と呼んでくれたその娘に対しての罪の意識が現れたのだと言う。

 

その時、彼女に謝りたいと思った事。

今度はアリシアと同じ様に親子として接したいという気持ちが生まれた事。

それからは一人の娘の為だけでなく、もう一人の娘に会う為の研究も始めた事。

その甲斐あって、ようやく研究も後一歩の所で完遂できる所まで来れたという事。

 

 

彼女はその胸の内の想い含めて、全てを話してくれた。

 

 

「―――これで私の話はお終い」

 

話し終えた彼女は、自嘲しているような瞳を俺に向ける。

それは愚かな事をしているでしょう?と言ってるように見えた。

けど、俺にはその気持ちが痛いほど良く分かる。

 

「…少し貴方とそれを調べさせてくれないかしら?」

 

沈黙を破るためか、純粋な興味からかプレシアが話を切り出す。

 

「別に良いけど…何でだ?」

「あと少しで研究が完成する事は話したでしょう?」

「ああ」

「足りない何かを探す為に私はここに来たの…そして貴方に出会った。それで、もしかしたらって」

「…そう言うことなら」

 

そう答えるが、探しても見るかるのは確率的にはとても低いだろう。

二人とも実際に目ぼしい何かが見つかるとは思っていなかった。

でもこれで話しが更に暗い方向に流れることは無いだろう。

それに自分自身、この世界に来て身体に変化が無いか調べるのは必要だと思った。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

「こ、これは…」

「なにか解ったのか?」

 

別の部屋、明らかに何かの研究をやってます。

と言うかやります的な場所の寝台らしき物の上に寝かされながら訪ねる。

 

「…」

「あの、プレシアさん?」

「ちょっと面白い事が分かったわ」

「は?」

「もう少し詳しく調べさせて貰えるかしら?」

「あ、ああ。別に構わないけど」

「そう」

 

そう答えた瞬間。

プレシアの眼を見た俺は全身に猛烈な悪寒を感じた。

なんと言うか、さっきと目つきが明らかに違っていた。

これは俗に言う、マッドサイエンティスト。

実験動物を手にした科学者の眼だ。

 

「じゃぁ、少しだけ痛いかもしれないけど…我慢しなさい」

「ちょ、ちょっと待ってください!なんかキャラが微妙に変わってる気がするぞ?!」

「気のせいよ…大丈夫、痛くてもすぐに意識が飛ぶから」

「待て!何をするつもりだ!?痛いのか?って言うか意識が飛ぶって俺の身体になにをする!?」

「ここじゃなんだから向こうへ行きましょ」

「ま、まて!ちょ、いやぁああああああああああ!!!」

 

俺は大きな建物に声を響かせながら、何処とも知れない場所へと問答無用で連れてかれた。

 

 

 

 

 

数分後。

どっかのデカイ研究室。

 

「おーほほほほほほほほ!!ドリル!ハンマー!!キャノン砲!!!どれがお望みぃ?」

「やめろぉおお!○ョッカーは嫌だぁああ!!せめて○ックマン]にしてくれぇえええええ!!」

 

電光の影に映る二つのシルエットは端から見れば凄く楽しそうだった。

本人達はいたって真面目なのだが、片方は新たな発見に舞い上がり、片方は非現実の連続で混乱の極み。

その異質なテンションを止める者はこの場にはいなかった。

これから祐一がどうなるかは…良く分からん。

 

 

 

「いやぁあああワタシマダ田舎から出てきたばっかりナノニィイイイイ!!」

 

突然の異世界での出会い。

それが俺にもたらすものとは何なのか…それはまだ解らない。

ただ俺が今言える事はたった一つ…たった一つのシンプルな答え。

 

それは…

 

 

 

 

人生なにが起こるか分からないって事だね☆(現実逃避)

 

 

 

 

キュイイイイイイイン!

ガリガリガリ!ゴリッ!ボキボキボキ!!

ゴキャァッ!!

べキン!!

ゴキ!

めそ。

 

 

 

すみません。

普通に俺、生きていられるんでしょうか?

by相沢祐一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<後書き>

 

なんて言ったら良いのでしょうか。

取り合えず一言だけ言わせて貰いますと…誠に申し訳ございません。

シリアス無理でした。ボケも中途半端だし…本当に駄目ですね自分。

最後のプレシアの言動は精神病みたいなもので、たまに壊れる事がある…と思ってください。

色々突っ込み所はあるけど、戦闘は次回以降になるやも知れません。

多分次回は祐一に与えられた力が発覚できるかと思います。

…その前に説明不足やら表現不足を解消できるよう頑張ります。

また次回もお付き合い戴けたら幸いです。

それでは。