魔道法戦 R・MIX

   プロローグ

「終わりからの旅立ち」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇蹟は起きなかった。

 

悲劇だけが雪の降る町に舞い降りた。

 

七年前から始まった全ての物語が終焉を迎えた。

 

少年は誰も救えなかった…大切な人達を誰一人として。

 

 

ある少女は母親に起こった悲劇に心を閉ざした。

ある少女は病によって息を引き取った。

彼女の姉も深い罪悪感に苛まれ、心を病み総てを投げ出した。

ある少女は姿を消した。伝承の通り、人の心に悲しみという災厄を残して。

それによってある少女の心も消えた。深い悲しみから逃れる為に心を消した。

ある少女は長い戦いの末、自分が魔物と呼んでいたものと相打ち息絶えた。

少女の親友は元から存在していた心の傷に追い討ちを掛けられ、耐え切れずに自ら自殺した。

ある少女は七年の入院生活に終わりを迎えた。小さな偽りの願いを告げて、本当の願いを叶えられずに。

 

 

 

 

 

「どうして…どうしてだよ……なんで皆が死ななくちゃいけないんだ!?

 なんで俺だけがのうのうと生きてる!?どうして!?なんで!?」

 

ある切り株に思い切り手を叩きつけて少年は叫ぶ。

かなり長い間泣いていたのであろう、顔には涙の後がハッキリと見て取れる。

更に目の下にもクマがあり、長い間寝ていない事も表していた。

 

「神様なんて…奇蹟なんて無かったんだ……そう言えばあいつ等も起きないから奇蹟って言うんだ

 って話してたな」

 

そう呟き力なく空を見上げる。

見計らったかのように雪が舞い降り、少年の顔に触れて溶けて涙のように流れ落ちる。

 

「雪…か…もうどうでもいいや……」

 

呟きながら少年は寝転がった。

いや、寝転がると言うより総てを投げ出すようにして仰向けに倒れこむ。

そのまま何をするでもなく、ただ雪の舞う夜空を眺める。

 

「だから…この町に来るのは嫌だったんだ…」

 

 

 

「それで、このまま眠ればみんなの所にいけるかもしれない…か?」

 

少年は突然話しかけられた事に驚く。しかし表情や仕草には全くの変化が無い。

取り合えず気になったのか、少年はゆっくりと顔を声のした方に向ける。

そこには全身を覆う黒いフードを被った人物が立っていた。

少年は男の問いの返事なのか再び空を見上げ小さく呟く。

 

「もう一度だけでも良いから…みんなの笑顔が見たかったんだ」

「ならその願い、叶えてやろうか?」

 

その言葉に少年は心を動かされた。

と言っても起き上がるような事はせず、興味が湧いて視線を男に向けただけだが。

 

「俺の使命を引き継いでくれるなら…願いを叶えるチャンスが出来る」

「使命?引き継ぐ?」

「ああ。だがな、願いを叶える代わりに厄介な問題が起こる。トンでもなく厄介なヤツがな」

「別に構わないさ…またみんなと会えて……あの笑顔が見れるなら悪魔とだって契約しても構わない」

 

男の言う事を信じたわけではなく、少年はただ自分の願いを口に出しただけだった。

それにも構わず、男はフードの下で口元に笑みを作る。

 

「なら、契約成立だ」

 

そう言うと男は懐から二枚の真っ白な純白の羽と一冊の古びた書物を取り出し少年に差し出す。

少年はその二つから不思議なものを感じ取り、思わず体を起こしてそれを受け取る。

そして男は数歩後ろに下がり少年と距離を取ると、右手の平を少年に向ける。

すると男の手の甲に竜の様な絵文字が現れ、強い光を放ち少年お身体に吸い込まれていく。

更に少年の足元が山吹色の輝きを放ち、幾つもの線を浮かび上がらせた。

それは中心に勾玉を重ね合わせ、多くの文字を連ねた八角形の陣の平面図を形成する。

 

「な、なんだ!?」

「これからお前は別の世界へ旅立つ事になる…そして、運命を変えるチャンスも与えられる」

「さ、さっきの話し…本当なのか?みんなを救う事ができるのか!?」

 

驚きながら、それでもただ口から漏れた願いが叶うという話しに希望を持てた事で思考が戻ってきた。

その間も少年の体は光に包まれて徐々に消え去っていく。

 

「それはお前次第だ…だが忘れるなよ、その代わりお前は複数の世界の運命も背負ったんだからな」

「どういう意味だ?」

 

男は少年に渡した書物を指差す。

 

「それはお前に力を授ける…同時に深い悲しみもな」

「力?深い悲しみって――――」

 

少年は最後まで言葉を発する事が出来ずにその場から消え去った。

まるで最初からそこには何も無かったとでも言うように。

男はそれを見届けると、少年がいた切り株の麓に腰かける。

 

「…時間切れ……か」

 

呟きながら自分の手を眺める。

その手は透明に透き通り、光の粒子となって掻き消えていく。

いや、手だけでなく身体全体から光の粒子が飛び散り、男の姿が徐々に希薄になっていく

 

「俺は選択を間違えた…だから今度は間違えるなよ」

 

切り株に背を預け、夜空を見上げてそっと目を閉じていく。

 

(もう一度…あの笑顔を見たかったな)

 

もう二度と叶う事のない願いを思いながら、これまでの記憶を辿っていく。

そして、ほんの少し時間が経つと彼は光の粒子となって完全に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、相沢祐一という人物がこの世界から完全に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<後書き>

 

どうも初めまして。

新しく魔法少年始めたいと思います。

時間軸は冒頭から分かるように全ルートバットエンド後です。

こっからいかに魔法へと発展するかは大体決まってます。

ただそこに行く筋書きが出来てない。

 

分かり辛いと思いますが、菩薩の様な仏心で見守ってくれたら幸いです。

ではまた次回、お会いしましょう。