「うう・・・・・・」
高町なのはは頭を抱えていた。
その原因は今日の国語の授業で出された宿題のことだった。
なのは自身そんなに頭が悪いわけではないのだが、それは全体的な平均で見ての話であって、
一科目に絞るとかなり差が出ている。
特に彼女は理数系が得意なのだが、文系に関しては中の下くらいの成績。
なので、今まさに苦手な科目の宿題に頭を悩ませている。
「・・・そうだ」
ピカッとなのはの頭上で電灯のようなものが明るく点灯したような感じがした。
「フェイトちゃんに聞いてみよ」
そういって机の上の携帯を手に取り、開いてフェイトへとメールをする。
そして、送信ボタンを押す瞬間。
「!!!」
『マスター!』
感じる違和感。
これの感覚は・・・結界!?
その答えをはじき出した瞬間。
(なのは!)
フェイトの声が聞こえた。
もちろん聞こえたといっても電話や言葉の類ではなく、
魔導師同士が会話の手段として使う『念話』と呼ばれるものである。
(フェイトちゃん!これって!?)
(結界だと思うけど・・・一体誰が・・・)
(こっちに向かってくる気配はないみたいだけど・・・)
(結界内の魔力反応・・・五つ・・・私となのはを除けば・・・三つ・・・)
(三つとも集まってる・・・行こう、フェイトちゃん!)
(うん!)
部屋を出て、階段を駆け下り、玄関をくぐり、外へと出る。
「レイジングハート!」
『All right my master』
「セーットアーップ!!」
光に包まれ、なのはの服がバリアジャケットへと変化する。
『フライヤーフィン』
両足に発現する桜色の小さな羽根。
地面を蹴り、空へと舞う白き魔導師、高町なのは。
夜空に一つの白い光が夜の闇を走っていく。
魔法少女リリカルなのはA’s SEED
第02話「思いもよらない再会、なの」
「なのは!」
後方から来る親友の声。その声の主はすぐになのはに近付く。
「フェイトちゃん!」
黒衣を身に纏い、黒き斧を持った魔導師、フェイト・テスタロッサ。
過去のジュエルシード事件の際、なのはと知り合い、戦い、ぶつかり合い、
そして・・・友達になった。
「この結界・・・誰が・・・」
「それはわからないけど・・・あっ!!」
感じていた魔力の反応の内の一つが、とても小さくなった。
「これって・・・あ、また!!」
そしてまた同じように小さくなっていく反応。
「急ごう!!」
「うん!!」
二人は速度を上げ、現場へと向かっていく。
「・・・ん?」
誰かが近付いてくる・・・これは・・・。
「なるほど・・・だが、まだ関わらない方がいい、か・・・」
そして影は、光のない闇へと消えていく。
「あれ?」
「反応が・・・消えた?」
三つあった反応の内、二つが弱くなり、残っていた一つが忽然と消えてしまった。
まるで、そこにいたことすら無かった事のように。
「一体なぜ・・・」
「もうすぐ着くよ、フェイトちゃん!」
ギュッと互いのデバイスを持つ手に力が入る。
そして反応のある場所の少し手前で降下する二人。
(何が出てくるかわからないから、気をつけて)
(う、うん)
恐る恐る、反応のする場所へと近付いていく二人。
(この茂みの向こう・・・だね)
(うん・・・)
この向こうに魔力反応を感じる。
微かに、とても微弱だが感じる魔力。
(よし、ここは私が先に出るから、なのははここに)
(それはイヤ!)
(なのは・・・)
(二人で一緒に出よう。ね?)
フェイトの気持ちは嬉しかった。
だが、友達を見捨てるようなことだけは絶対にしたくない。
(・・・わかった)
フェイトもなのはの気持ちを汲み、了承した。
(・・・それじゃ・・・せーのっ!!)
ガサッ!!と茂みを出る二人。
そして二人が最初に目に入ったのは、横に倒れている二人。
「「!!」」
二人は一人、一人に駆け寄る。
そしてうつ伏せている状態から仰向けにして、顔を見ると
「え・・・?」
「なん、で・・・?」
驚愕の表情を浮かべる二人。
倒れていた二人。それは
「キラ・・・君?」
「アスラン・・・・・・?」
紛れもなく、今日自分達のクラスへと転校してきた二人。
キラ・ヤマトとアスラン・ザラであった。
「な、なんでキラ君とアスラン君が・・・?」
「・・・と、とにかく、一度アースラへ連絡を取らないと」
冷静な判断をしていたフェイトだったが、心情は乱れていた。
だが目を閉じ、意識を集中しアースラにいるはずのクロノへと念話を飛ばす。
「キラ君、キラ君!」
なのはは名前を呼んでみるが、目を開ける気配がない。
だが、息はしているし、心臓も動いている。脈拍は一定を刻んであり、外傷もこれといってなかった。
アスランも同様で、体は至って健康体であることに違いない。
おかしいのは、ただ一つ。
魔力の源であるリンカーコアが、今にも消えそうなローソクのように小さく微弱な事。
だが、おかしいのはそれだけではない。
始めてあった時には魔力反応なんて二人からはかけらもしなかったのが、今はしっかりと反応している。
これは一体どういうことなのだろうか?
そう考えていると、念話の返答が返ってきた。
(こちらクロノ。どうしたフェイト?)
(こちらフェイト。クロノ?今アースラはどこに?)
(今は地球の軌道上に待機しているが・・・)
(今から私達をそっちに転送してほしんだけど・・・)
(転送?それは構わないが・・・私"達"?)
フェイトの言葉を不思議に思ったクロノは聞き返す。
(私となのはと、それと・・・)
(?)
(急患が二人いる)
「・・・う・・・ん」
キラは意識を取り戻した。
重い瞼を開き、目を開ける。
まだぼんやりとする視界。脳がまだちゃんと覚醒していないんだろう。
ボ――――――ッと天井を見上げている。
段々と覚醒してくる意識。そして、自分の目の前に広がるのは、見知らぬ天井。
自分が今いるのはベッドであるのはわかる。
でも、ここは自分の部屋じゃない。
そして、体を起こそうとして、力を入れようとしたが、
「あ、れ・・・?」
思うように力が入らなかった。
起き上げようとする上半身がとても重く感じた。
なんとか起き上がり、首を振り、部屋の中を見て。
「・・・・・・ここ、どこ?」
見知らぬ機械があり、部屋の雰囲気も殺伐としていた。
病院・・・とはまた違う感じがした。
とりあえず、ベッドから降りてドアと思われる所へと歩いていく。
前に立つと、自動で開いたドア。
そして部屋を出て、廊下に出るキラ。
長い廊下を見ても、やっぱり自分の知っている景色じゃない。
とりあえず、行って見よう。
そう思い、重い体を引きずるように前へと進む。
「で、どういうことなんだ?」
クロノが目の前の二人、なのはとフェイトに問う。
「それが・・・・・・」
事の顛末を説明する二人。
突如発生した結界。弱くなった魔力反応、消えた魔力反応、そして倒れていた二人は今日来た転校生だということ。
「なるほど・・・事情は大体理解した。二人が目覚めたら事情を聞くとしよう」
「そうだね・・・」
「でも、二人とも始めてあった時は魔力反応なんてしなかったのに・・・」
朝の記憶を思い返す。
「クロノ、そんなことってあるの?」
「いや、普通そういうことはないんだが・・・魔力の素質、リンカーコアを持っているものなら
どんなに僅かな魔力でも反応する筈なんだが・・・」
全員が疑問に満ちた表情で考え込む。
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
突如入る電子音。アースラ内の回線通信の音である。
「はい、こちらクロノ」
「あ、クロノ執務官ですか!?大変です!保護した子供がいません!!」
「なんだって!?」
ディスプレイの向こうの医者の言葉に立ち上がるなのはとフェイト。
「今艦内を捜索中です!」
「わかった!僕達も探そう」
「「うん!!」」
そして部屋から出て行く三人。
「いたぞ!!」
「くそっ!!」
振り返り、全力で疾走する。
そして偶然開いた部屋の中に入る。
ダダダダダ・・・。
複数の足音が遠くなるのを確認してから、はぁぁぁぁぁと深いため息をつく。
「一体、何なんだ・・・」
彼、アスラン・ザラは意識を取り戻してからそこが自分の知らない場所であることを知り、
部屋を出て、壁伝いに歩いていた。すると、スーツのような服を着た大人達が自分を捕まえようとして迫ってきた。
身の危険を感じ、重い体を引きずりながら逃げ回っていた。
「・・・キラ」
意識をなくす前の記憶を思い返す。
帰宅途中の奇妙な感じ。キラから出てきた手。倒れるキラ。そして自分にも出てきた手。
突然襲ってくる激痛。そして倒れて・・・。
そこで記憶は途切れていた。
そして今自分は知らない場所に連れてこられている。
誰が?何の為に?どうして俺を?
出てくるのは疑問ばかり。
だが、心配なのはキラのことである。
あいつももしかしたら俺と同じようにここへ連れてこられたのかもしれない。
「・・・くそっ」
なら余計にこんな所にいるわけにはいかない、一刻も早くキラを探さないと。
ドアを開けて、前方を確認し来た道を戻る。
「待ってろ・・・キラ・・・!!」
見知らぬ廊下を走り続けるアスラン。
「くそ!一体どこへ行ったんだ!!」
苛立ちを隠せないクロノ。
キラが運び込まれて寝ていたはずの部屋には誰もいなくなっていた。
「キラ君・・・」
不安な表情を浮かべるなのは。
(フェイト、そっちはどうだ?)
クロノがフェイトに念話を飛ばす。
(ダメ、部屋には誰もいない)
「とりあえず、手分けして探そう。僕はこっちに行くから、なのははそっちを!」
「わかった!」
それぞれの方向に向かって走っていく二人。
「アスラン・・・」
誰もいない部屋から出て、廊下を走るフェイト。
「一体どこへ・・・?」
道なりに真っ直ぐ走っていき、角を曲がろうとして、
ドンッ!!
「きゃっ!!」
「うわっ!!」
尻餅をついたフェイト。
出会い頭に誰かとぶつかってしまったようだ。
「いたたた・・・えと、ごめんなさ」
「いててて・・・」
「・・・いた」
目の前で頭を抑えていたのは、尋ね人の一人、アスラン・ザラだった。
見つけたことを思わず口にしてしまったフェイト。
「え?」
そして交差する視線。
「テ、テスタロッサ!!?君もここに連れてこられたのか!?」
「え?あ、いや私は」
ガシッと両肩を捕まれるフェイト。
「大丈夫か?怪我はないか?」
「え、あ、はい」
アスランの問いに素直に答えるフェイト。
「そうか・・・よかった」
ホッと安心した表情をするアスラン。
「あ、あの、アスラン・・・」
「?」
「落ち着いて聞いて欲しいんだけど・・・」
続く廊下をただ歩き続けるキラ。
そして辺りを見回すが、やはり知らない景色が広がっていた。
「・・・ここ・・・どこなんだろう」
何度つぶやいたかわからない質問。無論返って来る言葉もない。
誰もいない廊下を歩き続けていたキラは精神的にも体力的にも限界であった。
ガクッと落ちる膝。そのまま壁へともたれながら座り込む。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
どうして僕はこんな所にいるんだろう?
キラは記憶を模索し、最新の記憶を呼び起こす。
アスランを送っていく途中、変な感じがして、僕の中から変な手が出てきて、突然痛みが走って・・・。
記憶はそこで止まっていた。
「・・・・・・アスラン」
一緒にいたはずの親友の名前を呟く。
必死に僕を助けようとしていた彼は無事だろうか?
もしかしたら、今頃僕を探しているかもしれない。
アスランだけじゃない、母さんや父さんも心配してるかもしれない・・・。
皆の事を考えていると、自分しかいないこの空間の孤独が全身を襲う。
「・・・・・・」
一滴の涙が瞳から流れ、頬を伝い、地面へと落ちる。
不安が一気に押し寄せる。
流れてくる涙。押し寄せる勢いは止まることなく涙腺を刺激する。
「うっ・・・うっ・・・」
怖い。
誰か。
誰か、誰か、誰か・・・。
震える体。顔を俯け、地面へと落ちていく涙。
キラは不安と孤独の恐怖に押しつぶされそうになっていた。
瞬間。
「・・・・・・?」
声が、聞こえた。
小さくだけど、でも聞こえた。
また、聞こえた。
今度はさっきよりもはっきりと聞こえた。
「・・・・・・ラ・・・ん・・・」
そして、その声は段々と大きくなって・・・。
「キラ君!!」
自分の名前を呼びながら近づいてくる誰か。
それが誰かを確認する前に、キラの精神は限界に達した。
張り詰めていた緊張感が、一気に開放されて疲労感が全身を襲う。
そして意識が途切れる瞬間。
微かに見えたその姿は、キラの脳裏に焼きついた。
そして、それを確認する前にキラの意識は落ちていった。
to
be continued・・・・・・。
あとがき。
一月ぶりの更新ですみません・・・お久しぶりです、神輝 望です。
やっと第2話が出来たのに話的に全然進んでません・・・。
次の話は出来る限り早く書き上げるつもりです・・・頑張ります・・・・・・。