「これでいいかな。…さて、どうするか…」
木々が吹き飛び、街灯も折れ、地面が深く抉れた公園で、先程まで謎の男と戦っていた少年が言った。
今、とりあえず一般人に見られないよう結界を張った所だ。
(逃げられたから、今すぐ探しに行きたい所なんだけど…)
そう考えながら辺りを見渡す。
(この状態をどうにかしないといけないし…。…それに)
辺りを見ていた少年の視線がある一点で止まる。
そこには気を失い、倒れている2人の女の子の姿。
(この子達も、このまま放っておく訳にもいかないからな…)
少年は左腕に着けている、白い宝石が埋め込まれたブレスレットに向けて言う。
「ダメージ受けてるみたいだし、取りあえず回復だな。ルミエール」
「Consent.」
無機質な声が聞こえると、ブレスレットが光り輝いた。
それがおさまった時、少年の左手に白銀の剣が握られていた。
「ん?」
女の子達の方へと歩く少年の視界の隅に何か光るモノが入った。
少年はその方向に目をやる。
「あれは……」
魔法少女リリカルなのはA’s After another story
♯2
「敵、それは『闇』なの?」
「う…ん…」
白く、大きな天井。
目を覚ましたなのはの目の前に広がっていたのはそんな光景だった。
「ここは…?」
なのははベッドに横になっていた体を起こして辺りを見回す。
そうしている内、隣のベッドに眠っていたフェイトが目を覚ました。
「ん…なのは…」
「あ…フェイトちゃん」
目を覚ましたフェイトが状況を確認するために辺りを見回す。
「ここは…本局の医療室…かな?」
時空管理局本局。文字通り、なのはとフェイトが所属する時空管理局の本局である。どうやらここはそこの医療室のようだ。
「でも…どうしてここに? 私達、公園に居たはずじゃ…?」
どうやらフェイトには襲われた時の記憶が無いようだ。
「うん…。あのね…私もよく覚えて無いんだけど…」
なのはが自分の覚えている事を話そうとした時、
プシュウという音と共にドアが開き、数人の男女が入ってきた。
「2人共、目が覚めたか」
「フェイト! 大丈夫かい?」
「なのはも、大丈夫?」
「よかった〜。心配してたんだよ」
「起きたのね。安心したわ。2人にもしもの事があったら大変ですもの」
上から、時空管理局執務官クロノ・ハラオウン、フェイトの使い魔アルフ、なのはの魔法の先生ユーノ・スクライア、管理局執務官補佐エイミィ・リミエッタ、管理局艦船アースラ艦長リンディ・ハラオウンである。
どうやら皆心配していたようだ。
「あ…うん。大丈夫」
「私も…大丈夫だけど…」
2人共取りあえず返事をするが、フェイトは全く、なのはもあまりよく状況が判っていないようだ。
「えっと…クロノ、私達一体どうしたの?」
何がなんだか判らないフェイトがクロノに尋ねる。
「憶えて無いのか?」
「うん…全然」
「なのははどうだ?」
「私も…あんまり良く憶えて無いの」
「そうか…2人は、彼に助けてもらったんだ」
「「彼?」」
クロノが目を向けた先になのはとフェイトも目をやる。
そこには、黒い服を着た少年が立っていた。
「紹介する。彼が…」
「俺は如月翔。よろしく」
黒衣の少年、如月翔が自己紹介する。
「あ…私は、高町なのはです。よろしくお願いします」
「フェイト・テスタロッサです。よろしく…お願いします」
2人が会釈をしながら答える。
「それで…助けてもらった事は何となく憶えてるんですけど…。あの後、どうなったんですか?」
なのはの問いに翔が答える。
「ああ、それは…」
「あれは……」
翔の視界の隅に入った光るモノ。
それは、今現在魔導師達の世界で最も広く知られている術式の魔方陣だった。
(確か…ミッドチルダ式の魔方陣だったか?)
翔はその魔方陣を警戒しながらなのは達の近くへ移動する。
見た所、転送魔法のようだ。どんな人間が何人来るのか分からない。
もしかしたら自分達に危害を加える者が来るかもしれない。
そんな危険性がある以上、警戒しておく必要がある。
魔方陣の輝きが強さを増す。
(…来る!)
魔方陣がより一層強く輝いた。
光がおさまった時、そこには黒い法衣に身を包み、黒い杖を持った少年、
栗色の髪の少年、茜色の髪の女性の3人が居た。
翔が彼らを警戒する。彼らもまた、その気配を感じ取り警戒する。
張り詰めた空気の中、黒い法衣の少年が口を開いた。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。…君は何者だ?」
「…如月翔」
クロノは翔と名乗った少年に注意を払いつつも、倒れているなのはとフェイトの方へ視線を移す。
「…そこの2人は、君が?」
クロノが聞く。もしそうだとしたら大変な事だ。
なのはとフェイトは共に時空管理局で定めるAAAランクの魔導師だ。
AAAランクまで至る者は魔導師全体の5%程だと言われる。
目の前の彼はそんな2人を相手にして勝ったと言う事になる。
しかも見た限りでは無傷で。
クロノ自身、2人を超えるAAA+ランクの魔導師だ。
それでも2人と戦って無傷はおろか、勝つ事さえ不可能だろう。
と言うか、どちらか1人を相手にするだけでも精一杯だろう。
もし、目の前の少年と戦う事になったら……。
そう考えるクロノの背中を、一筋の汗が流れた。
「…そこの2人は、君が?」
翔はその言葉を聞き、対峙している3人への警戒を解いた。
クロノと名乗る少年の言葉に、隠しきれていない心配だ、という気持ちが含まれていたからだ。
彼の両隣りにいる2人もこちらを警戒しつつも倒れている2人の方へ目を向けていた。
翔は左手に構えていたルミエールを待機状態のブレスレットに戻す。
目の前の3人を、少なくとも敵では無いと確信したからだ。
もし敵なら、あそこまで心配などしないだろう。
あれは、こちらを騙す演技などでは無い。そう感じたからだ。
「…何のつもりだ?」
突如デバイスを待機状態に戻した翔を不信がったクロノが聞く。
普通、この状況でデバイスを戻すなんて考えられない事だ。
「そっちに俺が敵じゃ無いってことを分かってもらおうと思ってな。
この2人に危害を加えたのは俺じゃ無い」
そう言うが、そう簡単に信用されるはずも無く、クロノはむしろ警戒を強くした。
「なら、誰がやったんだ?」
クロノが聞く。その問いに答えようと翔が口を開いた時、
「それは…や「ちょっと待った!」
「ア…アルフ?」
茜色の髪の、アルフと呼ばれた女性が翔の言葉を遮った。
「こいつは敵じゃ無いんだろ? だったらフェイトとなのはの方を…!」
「ま…まだ詳しい事情を…それに、敵じゃないと決まったわけじゃ…」
「そんなの後でイイじゃんか! ユーノ! 取りあえず2人をアースラに転送するよ!」
「う…うん!」
ユーノと呼ばれた栗色の髪の少年が戸惑いながらも答える。
「ユ…ユーノ…」
「2人共気を失ってる。早く医者に診せないと。クロノだって、本当は心配だろ?」
「う…それは…まあ、そうなんだが…」
クロノが少し呆れたような声でユーノを戒めようとするが、痛い所を突かれ言葉を濁す。
「「クロノ!」」
「…分かったよ…」
2人から同時にいわれ、クロノも折れた。
2人はクロノの言葉を聞くと直ぐに転送準備に取りかかった。
なんだか放っておかれている気がする翔がクロノに尋ねる。
「え〜っと…俺も付いて行った方がいいのかな…?」
「ああ。君はこの事件の重要参考人だ。色々聞かなきゃいけない事もある」
クロノも転送準備に取りかかりながら言う。
「詳しい話を、聞かせてもらえるか?」
「…とまぁこんな感じで今に至る、と」
事の一部始終を話した翔が言う。
「はぁ…そうなんですか…」
「簡単な話は聞かせてもらったが、まだ完全に信用した訳じゃ無いからな。
デバイスは預からさせて貰っている」
そう言うクロノの手には白と黒の宝石が埋め込まれた2つのブレスレットがあった。
「俺はまだ管理局にとっては怪しい人間だし、詳しい話は君たちが起きてからにしようと思ってね」
と翔が言う。
「さて、なのはとフェイトも起きたことだし、詳しい話を頼む」
とクロノが言い、翔が頷き、話を始める。
「ああ。まずは、なのはちゃんとフェイトちゃんを襲った奴等についてだが…」
「奴等って…あの黒い怪物みたいなのの事ですよね?」
となのはが聞く。それに翔が答える。
「ああ。一緒に居た男もそうだ」
そこで言葉を切り、一拍おいて言葉を続ける。
「人の負の感情、心の闇が具現化した存在……それが奴等『ウィケッド』の正体です」
全ての世界を巻き込む事件が今、始まる。
〜後書き〜
空:皆さんコンニチハ!空です。After another
story♯2いかがでしたでしょうか?
クロノ:いかがでしたか?じゃないだろ…♯1投稿してからどれだけ経ってると思ってるんだ?
空:そこには触れんといて…色々あったんや……
クロノ:しかも♯1と長さが全然違うぞ。
空:うぅ………
クロノ:予告のセリフも順番が違うし、まったく…計画性が無いったらありゃしない。
空:…………(;_;)
クロノ:これからは気を付けろよ。
空:セリフは変わらんけど…多少順番は変わるかもしれへん…
クロノ:……………
空:……………
クロノ:………ドバカ
空:く…くそ〜〜〜〜!!
タッタッタッタッタッタ……
クロノ:あ…まったく、何処かに行くんなら後書き終わらせてから行けよ…
それでは、魔法少女リリカルなのはA’s After another story♯3をお楽しみに!
〜空 最後の一言〜
予告のセリフの順番が多少前後することはご了承下さい……