祐「あれ、フェイトちゃん。綺麗な小瓶持ってるな」

フェ「さっき廊下で拾ったの。祐一に見てもらいたくって」

祐「そうだったのか、本当、綺麗な色だな。それになんかいい匂いも」

フェ「本当、いい匂い」

祐「化粧品か何かかな?」

フェ「うん、そうかも。ちょっと祐一、つけてみて」

祐「へ、俺? 化粧品なんて男の俺には似合わないだろ。フェイトちゃんつけてみなって」

フェ「ううん、私、化粧はあまり好きじゃないから……それに最近は男の人も化粧する人が多いって言うし」

祐「そっか、それじゃあ、一回付けてみようか――」

な・は「「待ったあああ!」」

祐「ど、どうしたんだ?! 二人とも」

な「ちょ、ちょっと、ぜぇぜぇ、それつけるの、はぁはぁ、待って、もらえませんか?」

「それ、実は、私の持ち物、なんです」

な「ちょ、はやてちゃん?! あのお薬はさっき(魔法を使った)話し合いで等しく分配するって決めたじゃない?!

は「ごめんなー、なのはちゃん。私、好きなもんは人に食べさせたくないタイプなんや」

「バャデヂャン、オンドゥルルラギッタンディスカ-!?」

フェ「え、えっと……」

シャ「ちょっと待ってくださいっ!」

祐「あれ、シャマルさん。まだ何か用?」

シャ「すみません、はやてちゃんがご迷惑をかけてしまったみたいで」

は「なんや、今(肉体言語的に)忙しいんや。ちょっと待ってな」

シャ「そうはいきません! はやてちゃん、その前に私から掠め取ったお薬返してください!」

は「なんのこと? 私が持っとるのは『お砂糖』や。決してシャマルが言う、『お薬』なんて持っておらんよ?」

シャ「フェイトちゃんや祐一さんは誤魔化せても、私の目は誤魔化すことはできません。それは確かに私が持っていた『お薬』に間違いないです」

は「わかったわ。それならこれはお薬ということにしといとこか。
 ならシャマルに質問や。じゃあシャマルはこれを使って何をしようとしたんや?」

シャ「……えっ?」

は「治療用のお薬なんて答えはノーサンキューやで。
 私はこれをキッチンで見つけたんや。さっきまでシャマルが料理作ってたキッチンでな」

シャ「っ?!」

は「そこんところの説明をしてほしいなぁ、シャマル」

シャ「う、ぅ……」

な「(……もしかして)はやてちゃん!」

は「なんや、今、正義の鉄槌(と書いてラケーテンハンマーと読む)をシャマルに下すところや。
 ちょっと邪魔しないでもらおか? それと台詞がないからただ喋ってみました言うのもなしや。
 若手芸人ですら、発言する時はオチを考えるもの。オチもないのに口を開くなんて三流の証拠や」

な「そ、そうじゃなくてね? もしかしたらの話なんだけど、これって私達踊らされてるんじゃないかな?」

は「どういうこと?」

な「シャマルさんは一応医療班所属なわけでしょ?
 もしそうだったらこんな薬、すぐに代わりを作ることができるし、作れるのならわざわざここまで必死になって取り返しには来ないって思わない?」

シャ「一応って、しくしく……」

は「何が言いたいんよ?」

な「つまり、シャマルさんはこのお薬を作ることができない。
 ということは、シャマルさんにそのお薬を与えた黒幕がいるんじゃないかな?

シャ「ど、どうしてそのお薬をもらったことを知っているんですか?!」

は「な、なんやて?!」

な「はやてちゃん、そんなどこかのパン職人みたいなリアクションいらないよ。
 つまりシャマルさんを尋問すれば、黒幕の正体が判明するってことだよ!」

は「……なるほど、さすがなのはちゃんや」

シャ「え、ちょっと、全然さすがじゃありません!」

は「覚悟せえシャマル!」

な「やるよ、レイジングハートっ!!」

シャ「いやああああああああああっ?!」






だから彼女達は気付かなかった。

この部屋からフェイトと祐一の姿が忽然と消えていたことに……