ソードダンサーU〜うたわれるもの〜

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、あの戦いから100年の年月が過ぎ――――高町恭也が、新たに転生した時に起きた事件だった。

 

 

きっかけは些細なことだったかもしれない。恭也の宿敵である、奴との戦いが終わった時にそれは起きた。

 

 

互いの力が放たれた時に起きた、オーバーロード。それによって次空間は揺らぎ俺の身は、傷ついたまま異世界へと流れ着く……

 

 

それが、今回の高町恭也の戦いの本当の意味での幕開けとは知らずに……

 

 

これは、漆黒の騎士の後を継ぎ、その力を使い戦いぬく事を決意した高町恭也の戦いの第二幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ……」

 

「っ!大丈夫ですか!?」

 

「俺は……大丈夫だ、それよりもその子にこれ……を……!」

 

 

 

アルルゥとエルルゥとの出会い。

 

 

 

 

「ほほほほ、礼儀をしっとるのう、お主」

 

 

 

 

その二人の祖母、トゥスクルとの出会い――――

 

 

 

 

「貴様……何者だ!」

 

「キョウヤ……様……?」

 

 

 

 

互いを思いあう、不器用な兄と身体は弱いがとても優しい妹との出会い――――

 

 

 

 

「……おとーさん♪」

 

 

「キョウヤさん♪」

 

 

 

 

この世界は平和だと思っていた。

 

 

――――だが、平和を破壊する足跡は直ぐ傍にまで迫っていた。

 

 

 

 

「俺様はヌワンギだ!!!」

 

 

 

 

「折角拾った命を無意味にしますか……」

 

 

 

 

「大将、どうしやす?」

 

 

 

 

「私はオンヤミカムイからの使いでウルトリィと申します」

 

 

 

 

「きゃあ!?」

 

 

 

 

「ふふふ……主様」

 

 

 

 

「聖上は守り抜くことが(それがし)の役目故!」

 

 

 

 

「むぅ……折角余が会いに来たのだ、大人しく相手をせい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次々と現れていく仲間達――――

 

 

そして、遂に――――

 

 

 

 

「ツァァァァァァァッ!!!」

 

 

「グォォォォォォォッ!!!」

 

 

 

 

現れる出でる‘うたわれるもの’

 

 

 

 

「おとーさん!」

 

 

「主様!」

 

 

「聖上!」

 

 

「キョウヤ様!」

 

 

「大将!」

 

 

「お兄様!」

 

 

「聖上!」

 

 

「キョウヤ!」

 

 

「兄者!」

 

 

「キョウヤさん!」

 

 

 

 

「うたわれるものよ!

 俺が、お前の願いを叶えてやる!!

 魔闘鬼神流 小太刀二刀術 最終奥義――――ッ!!!」

 

 

 

 

今、恭也の小太刀は光り輝き、うたわれるものへと振るわれるッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かに訪れる色なき世界

 

全ての時を止め眠りにつく

 

悲しみ 喜びを 集めて人は

 

流れし時の中 安らぎ見る

 

生まれ生き 消えてゆく 人の運めの中

 

 誰も皆 空の星に

 

微かな願い託す

 

 

 

 

 

今は遠い昔から、歌い継がれてきた優しい唄――――

 

 

その音色が灯すものには、如何な物が……?

 

 

‘うたわれるもの’の願いとは……?

 

 

 

 

 

ソードダンサーU〜うたわれるもの〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァァァァァァッ!!!!」

 

 

「ォォォォォォォッ!!!!」

 

 

 

 

刃が閃き、二刀を持った男は十字の刃を持つ男に対して刃を振るう。

 

 

互いに満身創痍で、大きな傷をかなりの数負っている。

 

 

油断した方が、隙を見せたほうが、一瞬でズタズタに引き裂かれる運命にあるだろう。

 

 

だが、それ程に苛烈でありながらも、その戦いは優雅であった。

 

 

その戦いは悪夢のようでありながらも、幻想的に美しい円舞のようでもあった。

 

 

刃が振るわれるたびに、壊れ、滅び、侵食し、互いを滅ぼさんと凶刃が閃く!

 

 

 

 

「―――――ッ!!!」

 

 

「―――――ッ!!!」

 

 

 

 

言葉にならない叫びでありながら、互いが互いにその名がお互いの名であることを理解していた。

 

 

今、この瞬間、この時だけは、世界は二人を中心に回り、世界はこの二人を中心に狂っていた。

 

 

互いの刃は苛烈になり、世界を一つ滅ぼし、世界を一つ生み出し、世界をまた一つ滅ぼし、世界をまた一つ生み出す!

 

 

それは、刃がぶつかる度に出来上がるビッグバンである。

 

 

それは、互いを貪る、滅びの業火であるそれは、生を誕生させる祝福のエールである。

 

 

二刀を持つ男は構えを変え、また、もう一人の男は剣の用でありながらも、神樹のようでありながらも、それは剣の形をしていない剣をどこから伴い空間から取り出した。

 

互いに全てを出しつくし、相手を貪りつくす、それしか互いの考えの中には無い。

 

 

 

 

ガゴォォォォォォォォッ……!!!!

 

 

 

 

一際大きな滅びの音が響き渡り――――この狂おしい世界から、二人の姿が消えた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時間――――ヤマユラの森

 

 

 

 

 

 

タッタッタッタッタッ……

 

 

軽快な足音が森の中に木霊する。

 

 

幼い少女は、森の中を走っていた。

 

 

少女の目的地は、唯一つでそこはもう近かった。

 

 

そして、その少女の後ろを――――もう一人、少女が追いかけていた。

 

 

二人の少女には、普通の人間には無い特徴があった。それは、耳と尻尾である。

 

 

後ろを走っている少女は、その少女と比較して体つきも顔つきも大人である。

 

 

その少女は、まるで前の少女を追うかのように――――

 

 

 

 

「コラー! 待ちなさい、アルルゥ!!」

 

 

 

 

――――訂正、どうやら追っているようだ。

 

 

ともかく、二人の少女は追いかけっこをしていた。

 

 

 

 

「……きゃっほい」

 

 

 

 

しばらくすると、幼い少女――――アルルゥは、目的についたらしく立ち止まり、素早く木を駆け上っていく。

 

 

アルルゥは、手早く木に登っていき、あっという間に上のほうまでいってしまった。

 

 

 

 

「コラーっ!! アルルゥ、降りてきなさい!! 危ないでしょ!?」

 

 

 

 

もう一人の少女――――アルルゥの姉である、エルルゥは腰に手を当て木の下で怒りを撒き散らしていた。

 

 

それは、同時に少女の安全を心配してのことだった。

 

 

だが、アルルゥはぷいっと横を向くと、木になっている果物を取ろうとする。

 

 

 

 

「アールールー!!!」

 

 

 

 

だが、ここで二人には予期せぬことが起きる――――

 

 

 

 

ドォンッ!

 

 

 

 

何かが地面に激突する音共に、凄まじい地震が起きる。

 

 

そして、木に登っていたアルルゥは――――

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

「アルルゥ!?」

 

 

 

 

その木から身体を離し、地面へとその身は吸い込まれていった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落下地点――――

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……が…はぁ……!」

 

 

 

 

その場に居たのは――――高町恭也である。

 

 

服はボロボロで、ほぼ着ていないといっていい状態である。

 

 

先の闘いの傷と、今の落下で負った傷で、本来ならとうに致命傷である。

 

 

だが――――

 

 

 

 

(師匠に――――鍛えて、もらった、かいが……あっ、たか……)

 

 

 

 

傷は少しずつ癒えている。

 

 

――――だが、いつもよりも傷の治りは遥かに遅かった。

 

 

それは、恭也の生命力がかなり低下していることを表していた。

 

正直、このままいけば五分五分と言った所か……

 

 

 

 

「ぐぅ……っ!」

 

 

 

 

ボロボロの身体に鞭を打ち、恭也は立ち上がる。

 

 

そして、近くにあった木を支えにする。

 

 

――――肉体蘇生、開始――――

 

 

心の中で、短くそう囁く。

 

 

これは、物質的なものではなく、精神的なものである。

 

 

よって、こう思うことで、本当に傷が癒えるのでなく、精神世界に入り込み、肉体の回復の方に精神を向けることでより速く回復することができるのである。

 

 

だが、それでも……

 

 

 

 

(やはり、回復が遅い、な……)

 

 

 

 

本来の半分のスピードも無いのだ。

 

 

と、その時――――

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!! アルルゥ!!」

 

 

 

 

恭也の耳に聞こえてくる悲鳴。

 

 

――――恭也は、没頭していた精神をそちらへと向ける。

 

 

なん……だ?

 

 

ともかく、急がなければ――――

 

 

ボロボロの身体に、更に鞭を打ち、かろうじて歩けるようになった足でそちらへと向かう。

 

 

 

 

「ぐっ……ぅ……!」

 

 

 

 

一歩歩くごとに傷から血が、ぴちゃりと滴る。

 

 

咽喉の置くから、血を吐きそうになる。

 

 

 

 

(――――やはり、無理があったのか……! が、この状態でも、できることはある……筈だ!)

 

 

 

 

そして、恭也は見つけた。

 

 

一人の幼い少女と、もう一人、その少女を抱きかかえるように必死に呼びかけている少女を。

 

 

幼い少女の方は、ひどい怪我を負っている――――あの傷では、通常の方法では助かる方法は、ない。

 

 

 

 

(――――まさか、こんな所で、役に立つとは、な)

 

 

 

 

恭也自身、混濁しそうになる意識を必死に保ち、少女達に向かう。

 

 

 

 

「アルルゥ! アルルゥ!!」

 

 

「これ……を……」

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

一瞬、少女は振り向いたが、その振り向いた先の光景に絶句する。

 

 

当たり前である、恭也の傷はエルルゥの比ではない。

 

 

それでも恭也が生きているのは、彼が得た研鑽による物のの成果であり、生命力のおかげである。

 

 

 

 

「ぐぅ……!」

 

 

「っ……大丈夫ですか!?」

 

 

「俺は……大丈夫だ、それよりも、その子に……これを……!」

 

 

 

 

恭也の手にあるのは、最も高位の霊薬である――――エリクシエルである。

 

 

恭也の師が、めったなことでは使うなと言って、恭也に渡した秘薬である。

 

 

恭也自身、これを服用しなかったのは恭也の方には、今だに生き残れる自身があったからだ。

 

 

少女は、美しく透き通った瓶を受け取って、おずおずと幼き少女の口元へと持って行った。

 

 

――――恭也はそれを見届けた瞬間、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――次回予告――――

 

 

 

 

 

 

宿敵と、奇しくも相撃ちに近い状態で終わり深い傷を負った恭也。

 

 

異界で出会った少女を助けたのは偶然か?――――それとも必然か?

 

 

普通、人間にはない、尻尾と耳を持つ者が横行する世界。

 

 

この世界は、高町恭也という青年に、一体何を示してくれるのだろうか……?

 

 

恭也はつかの間の平和の中に身を浸す。

 

 

 

 

 

次回!!『ヤマユラ』

 

 

闇を切り裂き、光を灯せ! 我が双剣よ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:これは嘘予告です! 続きません!!