※この作品は「魔法青年」の外伝です。

この作品の祐一たちは事件終結から6年経っています。

よっていろいろオリジナルの設定が出てきますのでご了承ください。

今回、祐一は海鳴市で学校の先生になっています。

Kanonキャラは全然でてきませんのであしからず。

最後に今回、JGJは本能のままに書いてるので、少々文が荒いかもしれません。

ご了承願えると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガァァァァッ!!』

 

一面に広がる金色の丘。

それと対なるように広がるのは澄みきった蒼。

一般的に「砂漠」と呼ばれる場所に、そいつは突然現れた。

 

鎧の様に全てを弾き返すかのように硬い緑の鱗。

一振りでどこまでも吹き飛ばしそうな屈強な尾。

そして、そいつが知能を持ってる証とも言える、屈強な腕に装備された両刃の剣と盾。

明らかに砂漠とはミスマッチなその体躯はその生物が違う世界から来た生物だということを物語っていた。

その当の鎧蜥(リザー)蜴人(ドマン)と呼ばれる生き物であるそいつは屈強な外見と裏腹に内面では焦っていた

さっきまで自分はオアシスの街を襲っていたはずだったのに、何故、このような場所に立っているのだろうか?

わからない。気づいたらここにいたのだから。

 

獣は見たことのないものには本能的に警戒をする。

そして安心を確認してようやく警戒を解くのだ。

 

―――それが目に見えている物ならばの話だが。

 

鎧蜥蜴人が焦っているのはその行動を行った者の姿が見えないからなのだ。

別段どこに飛ばされてもいいのだ。

問題は「その行為を行ったものが何者で、その者は自分の力で適う相手なのか」なのだから。

 

 

 

 

 

 

「うし、作戦の第一段階は成功だな」

「うん、祐一」

「さすがなのは達。これだけの長距離強制転移魔法をこなしちゃうなんてねぇ」

 

狼狽している様子の鎧蜥蜴人を見やりつつ、俺は作戦の第二段階の準備をする。

脇には金の髪をストレートにしたフェイトちゃんとその使い魔であるアルフが立っている。

俺とフェイトちゃんは既に戦闘服へと衣装を変え、アルフは今回は狼の形態を取っている。

 

「じゃあ、わかってるとは思うけど、作戦の確認をする。

 まず、囮に協力してもらった街になのはちゃん達がスタンバイし、奴が来たら長距離強制転移魔法でここまで飛ばしてもらう。

 それでここで俺達があの蜥蜴野郎を迎え撃って気絶させる。

 いいか? 殺しちゃダメだぞ? 生け捕りにしないといけないってクロノが言ってたからな」

「簡単に言えば、死なない程度にぶちのめせばいいんだろ?

 回りくどい説明口調になってないで、最初からそう言えばいいじゃないのかい?」

 

俺の説明を簡単に要約するのはアルフ。

ま、まぁ……たしかにそうだけど、物事には雰囲気って重要じゃないか!

 

「そんなもん、虚数空間にでも捨てちまいな!」

「……俺のモノローグに突っ込みを入れるな」

 

っていうか、口に出してたのか?

 

「アルフ、最近アビスから読心術を教えてもらったらしくって……」

「しょうがないじゃない。最近、フェイトの付き合いが悪いし……夜も部屋に戻ってくるのが遅いし……」

「そ、それは……いつも祐一と話をしてるからで……

 

拗ねるアルフにアルフの言葉に顔を赤くして照れてるフェイトちゃん。

……アビス、後でお仕置きな。

 

 

 

(そ、そんな……で、でも相沢様なら……私を思う存分お仕置きしてください。

 むしろ、ドンと来い?)

 

 

 

 

……頭の中になにか聞こえてきたけど、空耳だということで結論付けて無視することにする。

 

「祐一、そろそろ……」

「ん? あ、あぁ……それじゃあ、準備はOKか?」

 

 

 

―――これは6年後の物語

 

 

 

「はい―――『バルディッシュ』!」

 

yes, sir.

 

 

 

 

―――成長した2人の魔法使いは、6年前からずっと変わらず

 

 

 

「さて、と、久々に楽しませてもらおうかねぇ」

 

 

 

―――絶えず幸せの日々を奏でている

 

 

 

「行くぞ! 二人とも!」

 

 

 

―――魔法青年ASIf After、始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法青年相沢祐一A.S.05If

〜6years later Ver.F〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐一」

「……zzz」

 

朝。淡い陽光のさす部屋の一角で一つの闘いが起こっていた。

一人はフェイトちゃん、もう一人は布団に包まった俺。

朝の無制限一本勝負。起きるか眠るかのまさに「デッド オア ライブ」。

……というと言いすぎかも知れないけど、この時間帯の睡眠時間の5分は非常に貴重なのだ。

段々名雪に似てきたなぁ……やっぱり血は争えないのだろうか?

 

 

「祐一、朝だよ。起きて」

「あと5分寝かせてくれ……あの蜥蜴野郎の事後処理のせいであまり寝てないんだ」

 

とフェイトちゃんから背けるように寝返りを打つと、フェイトちゃんはその容姿にあまり似合わないため息をつく。

 

「そんなこと言って、今日も学校があるんだよ?」

「そんなこと言われても眠いもんは眠い」

 

布団を頭からすっぽり被って徹底抗戦の構えを取る。

人は欲望に逆らえない生き物なのだよフェイトちゃん。

 

「……うん、しょうがないよね。最終手段だよね」

 

フェイトちゃんは自らに言い聞かせるように言うと、意を決したかのように布団の中に潜り込む。

……何をするつもりだ?

 

「ん……祐一さんの匂い……あったかい」

「そうだろぉ? ぬくぬくだろぉ? ぽかぽかだろぉ?」

 

だからあと10分寝かせてくれ。

いつの間にか要求してる時間が増えてるなんて突っ込む奴は嫌いだ。

 

「……いけないいけない、あと少しで祐一の罠にはまるところだった」

 

フェイトちゃんは俺の懐柔の言葉を振り切るように首を振っている。

ちっ、やはり一筋縄ではいかぬか。

完全に振っ切れたフェイトちゃんはいつの間にか俺の脇に手をセットしていた。

ま、まさか……この体勢は?!

 

「……こちょこちょ」

「っはっ?! わはっ、ひっ、や、やめ、やめろって、あははは、ははははは、ひぃ!」

 

暴れ回る俺をがっちりと足で掴まえてくすぐり続けるフェイトちゃん。

くすぐりもきついが、しがみ付いてるから背中に当たる柔らかい物も理性的にきつい。

 

「わかっ、わかったから、あひゃひゃ、お、起きる! 起きるからやめ……ひぃ!」

 

俺の降参の言葉を聞いてようやっとくすぐりが止む。

こんな状態で5分も寝れる奴なんてそれこそ名雪くらいなものだ。

 

「はぁ……はぁ……じゃ、ちゃっちゃと起きるとしますかな……というわけでフェイトちゃん?」

「……」

 

背中にいるフェイトちゃんに話しかけるのだが……返事がない。

振り返るとフェイトちゃんは俺にしがみついた状態でじっとしていた。

 

「祐一の背中……あったかい……」

「おーいフェイトちゃん?」

「……」

「離れてくれないと、起きれないんだけどさぁー」

「……ん」

「なぁー?」

「……ん」

「…………今日は遅れるかもな」

 

返事はすれども行動はせず。

完全に悦に入ってるフェイトちゃんの暖かさを背中に感じながら、俺は壁にかけてある時計を見る。

 

―――時刻は既に8時になろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー、フェイトちゃん」

「お、おはよう、なのは」

 

ギリギリで教室に入った私を迎えてくれたのは、大きくなって髪型をポニーテールに変えたなのはだった。

 

「おはよう、今日は遅かったんやな」

「う、うん……ちょっとね」

 

続いてはやてが話しかけてくる。

車椅子がないと移動が出来なかった足はすっかり完治して、しっかりと二本の足で立っている。

6年経って、中学3年生になっても当時のみんなとはずっと仲良しだ。

アリサやすずかとは違うクラスになっちゃったけど、登校の時に会ったときは一緒に学校に行っている。

 

「もしかして、祐一さんと人には言えんことしてたんちゃう?」

「なっ?! そ、そんなこと……してないよ」

 

はやての言葉に朝のことを思い出して顔が赤くなる。

あの時は自己正当化したけど、今思うと男の人の布団に潜り込むなんて、と、とても大胆なことをしてたんだよね?

 

「あ、赤くなった〜、怪しいわ〜」

「か、からかわないで……別に何もな―――」

「フェイトちゃん」

 

私の弁明を遮るようになのはが私の名前を呼ぶ。

表面上ではわからないけど、私に対して威圧たっぷりに。

 

「大丈夫。私、フェイトちゃんはそんなはしたないことする子じゃないってわかってるから」

「う、うん……」

「だからね。正直に話してね。朝、祐一さんとなにしていたのかな?」

 

私を逃がさないように肩をがしっと掴まれる。

顔は笑ってるんだけど目が明らかに笑ってない。

周囲に助けを求めようにも、何故かみんなはこちらから目を逸らすし、はやては苦笑しながらごめんな〜と手を合わせてる。

 

「ね、ねぇ……そ、それ、全然わかってない気が―――」

「祐一さんとなにをしてたのかな〜?」

「……な、なにもしてないよ。なのは」

 

その気迫に負けて思わず目を逸らしてしまう。

だ、ダメ。負けちゃダメ、フェイト。

ここで祐一を起こす為に布団に潜り込んでくすぐっていたら、そのまま祐一の背中と布団の誘惑に負けて寝ちゃったなんて言ったら……

考えただけでも身震いをする。

 

「本当に? フェイトちゃん、私の目、目を見て話してもらえるかなぁ?」

「なにもしてないよ? なのは」

 

負けちゃダメ。

 

「本当に?」

 

負けちゃダメ。フェイト。

 

「……本当に」

 

負けちゃダメ。フェイト。

 

「祐一さんの布団、どうだった?」

「うん、とても気持ちよかった……あっ……」

「ふ・う・ん……」

「……」

 

負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ、負けちゃダメ……

 

汗が止まらない。

 

「そうなんだ〜、フェイトちゃん、祐一さんと一緒に『寝た』んだ〜」

「ち、違うよ、なのは」

 

そう、違う。

祐一と一緒に住んで5年くらいになるけど、祐一と一緒に寝たことないんだから。

朝のやつは……うん、一緒に寝たって言わないよね。

そ、そうだよね。あれは私がうとうとしちゃっただけで、祐一は「目を覚ましてたんだから」

私がなのはにそう伝えると

 

「フェイトちゃん、それは屁理屈だよ!」

「そ、そんなこと言っても」

「フェイトちゃんがどんな言い訳をしても、祐一さんと『寝た』という事実は消えないんだよっ?!」

「で、でも……」

「決めた。このままじゃ、祐一さんが犯罪者になっちゃう。

 やっぱり祐一さんは私の家で―――」

「それはダメッ!」

「どうして? 私はフェイトちゃんのためを思って言ってるんだよ?

 それにお兄ちゃんが忍さんのところに行っちゃったから男手が足りないってお父さんが嘆いてたし、それに私もその方が嬉しいし」

 

最後の方は小声で聞こえなかったけど、多分私も祐一さんと一緒にいたいみたいなことを言ったのだろう。

なのはは6年前からずっと祐一を諦めてない。

口に出してなくても、それは未だに付き合ってる人がいないこと、告白されても全て断ってること、なにより今のような態度でわかる。

私が祐一と付き合ってるって知ってても、私から祐一を奪おうと画策してる。

もしかしたら髪型をポニーテールにしたのも、祐一の中でのなのは自身のイメージを変えさせようと思ってしたんじゃないのかって思うくらい。

……これは私が同じ理由で髪をストレートに下ろしたからってところからの推測にしかすぎないんだけど。

なのはは親友だ。

だけど、親友でも譲れないものがある。

私は自分の想いを祐一に打ち明けた。

なのはは自分の想いを告げなかった。

それが私となのはの違い……そして、現在の絶対的な差。

いくら親友でも、自分の想いを告げてやっと結ばれた絆、手放したくなんかない。

その為になのはと戦わなきゃいけないのなら……私は戦うよ?

だってそれだけ祐一のことが大好きなんだから。

 

「わ、私だって祐一のことを―――」

「高町、ハラオウン」

「「……え?」」

 

後ろからかけられた声に振り返ると、びしっとスーツを着こなした祐一がこちらに微笑みかけていた。

 

「頼むからそういうのは先生がいないところでやってもらえないか?」

「え?」

 

周りを見ると、他の人達は既に自分の席に着いてこちらを覗きこんでいる。

 

「「あ、あはははは……」」

「さて、ホームルームを始めたいんだが……二人とも、廊下でホームルームを迎えたいか?」

「「ご、ごめんなさい!」」

 

クラスメイトの笑い声をBGMにそそくさと席に着く。

あぁ、恥ずかしかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐一!」

 

昼休み。

授業を終え、職員室に帰ろうとする途中でフェイトちゃんに呼び止められる。

にしても……

 

「ハラオウン。学校では『相沢先生』と呼べってあれほど言ってるだろう」

 

今は幸い人がいないからいいものの、もし人がいたらどうなってたことか。

 

「あ、そうだね、じゃなくて、そうですね」

「はは、で、用はなんだい?」

「うん、あの、よかったら、なんだけど、一緒に―――」

 

 

♪〜〜♪〜〜♪〜〜

 

 

「あ、携帯。ちょっと待ってな」

 

携帯のウインドウを確認して、通話ボタンを押す。

 

『あ、祐一君?』

「どうしたんです? リンディさん」

 

電話の主はリンディさんだった。

リンディさんは今は第一線を退き、俺も居候している家で家事の傍らでデスクワークをしつつ、俺やフェイトちゃんのような人間界で生活しつつ時空管理局に所属している魔術師の橋渡しをしてる。

 

『クロノから救援が欲しいって連絡が入っちゃって……まだ学校の途中の上、お昼時のところ保護者として本当に悪いとは思っているのだけど、他のメンバーは手が一杯みたいだし……フェイト、なのはさん、はやてさんを連れて至急行って貰いたいのよ。

 学校の方へは祐一君……あなたからお願いできるかしら?』

「わかりました。早退願を出しときますね」

『それじゃあ、よろしく頼むわね。あと―――』

「はい?」

『フェイトにごめんなさいって伝えておいてくれるかしら?』

「はは、フェイトちゃんもそれくらいのこと、承知の上でしょう?」

 

時空管理局という場所で働く限り、緊急出撃というのはついて回るものだろう。

それくらい覚悟の上でフェイトちゃんはここに籍を置いてるはずだし。

 

『いえ、そういう意味じゃなくて……ね』

「はい?」

『……なんでもないわ。それじゃあ、気をつけてね』

「はい」

「……また出撃?」

 

携帯を切ると同時にフェイトちゃんが話しかけてくる。

正直、緊急とはいえ、早退させるのは心苦しいが……

 

「あぁ、なの……高町と八神を呼んできてもらえるか?

 俺は早退届を出してくるから」

「……わかりました」

 

少し悲しそうに目を伏せた後、元来た廊下を戻っていくフェイトちゃん。

……うーん、なんか今日はいつもと様子が違うような。

そりゃ、緊急で早退する時はいつも顔を少し曇らせるんだけど、今回のはそれと違った……なんか楽しみを直前で奪われたような……そんな表情だった。

 

「まぁ、考えてても仕方がない……か」

 

とりあえず、フェイトちゃんが悲しい顔をしてた理由は置いておこう。

今は、一刻も早くクロノの援護に行ってやらないといけないからな。

携帯を取り出し、北の街で一番の親友だった男で、今はここで俺と同じく教師をしているやつに電話をかける。

 

「あ、北川。俺、今から早退するから、教頭に上手く言っておいてくれないか?

 あぁ、今度翠屋で奢ってやるから。あと、俺のクラスの高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやても早退願出しといてくれ。

バカ、俺には心に決めた奴がいるんだ。つべこべ言わないでとっととやっとけ。奢り無しにするぞ?」

 

よし、北川への根回しも頼んだし、俺も行くとするかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

夜も12時を過ぎ、いよいよ深夜という時間。

私はこっそりと台所へとやってきていた。

といっても別につまみ食いをするわけじゃない。

 

「……」

 

今日は戦闘があったから、きっとみんな疲れて起きてこないよね?

私は手元にある包みを見やる。

それは今日のお昼に祐一と食べようと思ってたもの。

……私が作ったお弁当。

祐一に食べてもらいたくって、母さんに手伝ってもらって作ったお弁当。

……でも

 

 

「もう……いらないよね?」

 

保存の効かないものも作ったから、今日食べないと、明日はもう食べられなくなってるだろう。

明日、母さんに謝らなきゃ、折角教えてくれたのに、結局無駄になっちゃって……

 

「うん、明日は母さんに作ってもらおう」

 

私は生ゴミ捨て場にゆっくりとお弁当の中身を―――

 

「待った」

「―――?! 祐一?」

 

反射的にお弁当を背中に隠す。

 

「やっぱりか。どうにも変だと思ったんだよな」

「……」

 

祐一は台所の前の食卓に腰を下ろす。

 

「……ほら」

「……え?」

「お弁当、俺のために作ってくれたんだろ?

 いやー、ちょうどよかった。今日は昼抜きで戦闘したから晩御飯じゃ足りなくて足りなくて」

「で、でも……作ってからもう時間が経ち過ぎてるし、母さんの料理に比べたら美味しくないし、そ、それに……」

「いいんだ。俺はその弁当が食べたいんだよ。

 俺のためを思って作ってくれたその弁当がね」

「祐一……」

 

隠していたお弁当箱を机に出す。

 

「なんだ、初めてのわりにはそれなりにできてるじゃないか」

「で、でも卵焼きは焦げてるし、全部私が作ったわけじゃないし」

「俺はフェイトちゃんが作ってくれたって言うのが嬉しいんだよ」

 

そう言うと祐一は一番焦げの酷い卵焼きを口に放りこんで

 

「ん、美味い」

「祐一……ありがとう」

「自分に正直に生きてるだけさ。

 眠いもんは眠い。美味いもんを美味いってな」

 

熱いものが込みあがってくる。

歪な形をした野菜を。

黄色よりも黒い部分が多い卵焼きを。

祐一は苦い顔せずに平らげていく。

 

「ごちそうさん。おかげでお腹も膨れたし、本当にありがとうな」

 

祐一はずるい。

お礼を言うべきなのはこっちの方なのに、祐一はいつも先にお礼を言ってしまう。

 

「それじゃあ、お弁当を作ってくれたお礼だ。

 何でも願いを叶えてやろう……といっても、俺に出来る範囲のことだけどな」

「……それじゃあ、一つだけ……いいかな?」

「おう! なんでもござれだ。祐ちゃんに二言はない!」

「そ、それじゃあ……ね。今日、一緒に眠ってくれる?」

「……」

 

祐一の姿がその姿勢のまま固まる。

勇気を出して言ってみたんだけど、ダメなのかな?

 

「フェイトちゃん、もう少し自分を大切にした方がいい」

「……?」

 

フリーズから解凍した祐一は私の肩を掴んで言う。

そこでやっと祐一さんの言わんとすることがわかった。

 

「そ、そういう意味じゃなくって、え、えと、隣で祐一のぬくもりを感じてたいって言うか……だ、ダメかな?」

「そ、そんなことないぞ。うん。

 ……そうだよな、純粋なフェイトちゃんがやましいことを言うわけないよな。うん」

 

勝手に一人で納得する祐一。

いつかはそうなりたいけど、まだ私には早いもの。

これは目標への第一歩。行く行くは祐一さんの傍で……いいよね?

 

「よし、それじゃ明日も早いし、寝るか!」

「うん……ねぇ、祐一」

「ん?」

「大好きだよ。祐一」

「……俺もだ」

 

 

 

 

 

 

 

こんないいことがあるなら、明日からもお弁当を作ろうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

ちょっと改訂。

なんてものを自分は書いてるんだろう? 折角のリクエスト作品をorz

彼女達が中学生のSSって書いてて凄い難しいです。

どうにもそういったイメージが思い浮かばないんですよ。あのエピローグを見てもorz

というわけで雷樹さんのリクエスト。フェイト√の6年後をお送りしました。

オチも若干弱いし、展開が急すぎるのはもはや癖になりつつありますが、お楽しみ頂けたでしょうか?

 

展開的には

03、04が平行的に進行

→03のイベント、なのは、時が来るまで告白しないと決意。

→フェイトがその隙を突いて(フェイトは03の事実を知らない)祐一に告白。

→A’s本編

→04本編

→6年後、05本編

 

みたいな感じ。

 

祐一がフェイト達の教師になるというのは面白そうだったのでw

なのはとフェイトの言い合いもそんな感じで書いてみました。

 

 

 

 

2006年1月25日作成