※今回も魔法青年の番外という設定です。
正規のリリカルなのはとは若干辻褄の合わない点。作者オリジナルの点があります。
今回はA’sの設定は無視してくれると嬉しいです。(まぁ、出てくる人物はとても少ないのですが)
あ、あと決してこのサイトはロリコンを推奨してるわけではないのであしからず。
『さぁ、本日のカードで一番期待してるのはどれですか? ○○さん』
『私はこのアケボノ対ぼびーを押しますね〜、是非皆さんにも見ていただきたいです』
『今年もやってきました紅白歌合戦。紅組、白組どちらが勝利をするのでしょうか?』
『モカムラさん、今年はなんと炎に包まれた大玉を―――』
テレビから毎年見慣れた謳い文句が流れていく。
そのコロコロと移り行くチャンネルを俺はコタツの中でぼけっと見ていた。
「今年も変わらずって感じだなぁ……」
少し前までは紅白歌合戦だけだったと思っていたのだが、いつの間にかそんな不変神話は崩れ去ってしまったようだ。
「祐一」
「ん? どしたフェイトちゃん?」
不意に隣でリモコンをカチカチやっていたフェイトちゃんが呼びかけてくる。
勿論こたつに足を突っ込んだまま、前には食べ終わったみかんの皮が2つ積んである。
「祐一はどんな番組が見たいの?」
「俺は別になんでもいいよ。フェイトちゃんが見たいやつを見よう」
「うん」
俺がそういうとフェイトちゃんは少し嬉しそうな顔をした後、リモコンを再び弄り始める。
そんな行動が愛くるしくて……愛おしくて……ついつい微笑ましく見てしまう。
「?」
視線に気付いたのか再びこちらに視線を移して首を傾けるフェイトちゃん。
まだ小学生なフェイトちゃん、当然背は低い。
そうなると自然に俺を見上げる形になり、小首を傾げた上目遣いが完成する。
考えてやっていたとすればそれはそれでフェイトちゃんのイメージが崩れるが、天然でやっていたとしても質が悪い気がする。
「気にするな、フェイトちゃんは可愛いなって思ってな」
「……」
白い頬をほのかに赤らめるフェイトちゃん。
「……今年も終わりなんだな」
「うん」
「本当、いろいろあったなぁ」
「……うん」
今年は俺自身にとっても激動の一年だった。
―――出会ったのは異界の仲間。
―――手に入れたのは魔法の力。
―――愛したのは黒衣の少女。
たった一年の話。だけどそこには一生分のわくわくと冒険が内含している。
魔法青年IF―――始まります。
魔法青年 相沢祐一Another Stage04 IF
〜魔法青年の大晦日〜
私の祐一への最初の印象はなのはの友達だった。
その印象は決していい意味ではなかった。
なのはが祐一に見せた笑顔は私が知らなかったものだったから……私の知らないなのはを見てる祐一に嫉妬してた。
祐一がなのはを私から遠ざけてしまうんじゃないかって。
戦いの終盤になるとそんなこと気にかからなくなったんだけど、それでも祐一を『普通の人』以上には見てなかった。
いや、『普通の人』以上に見ようとしなかった。
それは最初の頃の祐一への嫉妬が根強く残っていたから。
でも違ったんだ。
事件が終わって―――
みんな、元の生活に戻って―――
私やアルフも裁判に備えた軟禁生活が続いて―――
そこで私宛のなのはのビデオを、祐一のビデオを見るようになってやっと気付けた。
『フェイトちゃん。いつも、いつまでも、私は、私達はフェイトちゃんのお友達だよ』
『フェイトちゃん。早く裁判が終わるといいな?
今度は何も無いときにこっちに遊びに来てくれよ? 歓迎するぞ』
なのはの言葉を聞いて、祐一の笑顔を見て。
私は祐一に嫉妬してたんじゃなくて、なのはに嫉妬してたんじゃないのかって。
祐一に笑顔を向けることが出来ること。
祐一がそれに優しく微笑んで答えてくれること。
そのやり取りが……羨ましかったんだ。
でもなのはは友達だからって誤魔化して―――
そうしたら残りは祐一しかいなくて―――
だから祐一に嫉妬してるって思いこんでた。
私はあの時―――本局で出会ったあの時から、祐一を『普通の人』以上に見てたんだって。
もうとっくにあの笑顔に魅了されてたんだって。
だからすぐ祐一を呼び出した。
一刻も早く私の想いを聞いて欲しかった。
……そして、なのはに取られたくなかった。これだけは友達でも譲れない。
―――そして私は祐一を手に入れた。
『ありがとうございました。白組、日川キヨシで『キヨシのじょんがら節』でしたー』
『さすが演歌のプリンスです。いい歌声ですね』
チャンネルを紅白歌合戦に固定してじっと見つめているフェイトちゃん。
その姿をじっと見ている俺。
いつからだろう?
俺がフェイトちゃんを好きになったのは?
気が付いたらいつの間にか。そんな表現が正しかった。
実際にはなにかきっかけがあったんだと思うけど、俺はフェイトちゃんが好きなんだという事実だけで十分じゃないかと思い改め、視線をテレビに移す。
大晦日。
俺は自分の彼女でもあるフェイトちゃんを自分の家に招待した。
ちなみに自分の家というのは水瀬家じゃない。時空管理局から出た協力に対する謝恩で俺が大学受験勉強用に借りた場所だ。
水瀬家三姉妹からはぶーぶーとブーイングが巻き起こっていたが(ちなみに彼女ら以外はそこはかとなく喜んでいた)、秋子さんの鶴の一声でなんとか納得してもらった。
まぁ、時々夕飯を食べに家に寄ることを条件にされたが(料理スキルの無い自分からすれば、寧ろその方が都合がいい)、それ以外は快適な一人暮らし。
ここには夜に夜襲をしかけて来る少女も、毎日遅刻ギリギリまで眠ってる寝ぼすけもいない。
広さは水瀬家のそれより狭くなってしまったけど、精神的に俺は大満足だ。
それに一人暮らしをすると事件のときに関わったメンバーを気軽に呼ぶことが出来るのもいい。
フェイトちゃんだけで無く、たまに時空管理局で働くことになったフィア達や怪我が完治したクロノを呼んで色々話をしていたりする。
閑話休題
「そういえばフェイトちゃんは日本の年末は初めてだったっけ?」
「うん」
「それじゃあ、『年越しそば』っていうのも知らない?」
「年越し……そば?」
「そ」
トントン
「ちわー、雪花庵でーす」
「お、来た来た……って北川?!」
「……?」
「おー! 相沢って言うからもしかしたらと思ったけど、まさか本当に相沢だとはな〜
本当に一人暮らししてるんだな?」
ドアを開けるとエプロンを身に着けた北川が岡持ちを持って立っていた。
「バイトか?」
「あぁ、この時期は稼ぎ時だからな……んでそこの女の子は?」
「フェイトちゃんっていって、俺の友達だよ。
フェイトちゃん、こっちは俺の親友で北川っていうんだ」
「フェイトです。はじめまして」
「……攫って来たのか?」
「なわけあるか」
「いてっ」
北川に舞直伝のチョップを軽く食らわす。
オーバーに痛がる北川にお金を渡し、引き換えに丼を二つ貰う。
「まぁいいや、ありがとうございました。またご贔屓に。
相沢、百花屋で奢りでみんなには黙っておいてやるよ」
ぐぬぬ……人の足下見やがって……
だが幾ら唸ったところで現在の北川との絶対的不利の差は埋められるわけでない。
仕方なく了承する。
「じゃあな、相沢、フェイトちゃん。よいお年を」
「車に轢かれちまえ!」
「さよなら」
ドアが閉まる。
くそぅ、ある意味一番見られて厄介な奴に見られたな。
「祐一?」
「あ、あぁ、年越しそばも来たし……食うか」
丼を持ってコタツに再び入る。
フェイトちゃんも俺の隣という定位置にすぅっと入る。
「ねぇ、祐一。年越しそばって?」
「この世界……というか日本だけなんだが、年末にこういうそばを食う習慣があるんだよ。
それが年越しそば。たしか『人生は蕎麦のように細く長く生きる』という、延命長寿の願いを込めて食べる由来からだったかな?
あとそばは切れやすいから今年のことをきっぱり切り捨てて清々しい気分で新年を迎えようって意味もあった気がする」
「そうなんだ」
他にも由来があったと思うんだが、あまり覚えてない。
そばを口に入れる。美味い、さすがここらでも有名なそば屋なだけあるな。
「俺としては後の方の意味が好きだな。細く長くっていうのは性に合わないし」
「私は前の方だな」
「そう?」
俺が聞き返すとフェイトちゃんは少し悲しめに口を開いた。
「だって、もし人生が短かったら祐一といられる時間も短いってことだから……」
「……」
「そ、それに私は今年あったこと……忘れたくないよ?
なのはと出会って、祐一と出会って……今まで生きてきた中で一番楽しかった。
こうして祐一と一緒にいることも忘れちゃうなんてそんなの……嫌だよ」
「……」
フェイトちゃんはそれだけ言うと、慣れない箸を使ってそばをすすりはじめた。
「……おいしい」
そう感想を漏らすフェイトちゃん。
対する俺は言葉を返せない。
「……」
「ゆ、祐一?」
「……」
「何か……気に障ること言っちゃったのかな?」
「……」
「ご、ごめん、祐一! べ、別に祐一の考えが悪いってわけじゃなくて―――?」
「……ぷっ」
うろたえてるフェイトちゃんに徐々に笑いが込みあがってきた。
「ぷっ……あは、あはははははは」
「祐一?」
「ははっ、悪い悪い、ただフェイトちゃんの慌てっぷりが……ね」
「あっ……」
途端に顔を赤くして俯いてしまうフェイトちゃん。
「フェイトちゃんの言う通りだよな。
俺もフェイトちゃんとできるだけ長く一緒にいたいしな。
それに俺も今年のことをそう簡単に忘れたくない。
たしかに苦しかったこともあったし、辛かったこともあったけど、それら全部ひっくるめて俺の思い出なんだから
それにフェイトちゃんにも出会えたしね」
「うん!」
ゴーーン……ゴーーン……
部屋全体に唸るような重低音が響く。
除夜の鐘……もうそんな時間になったのか?
『さぁ、いよいよ大トリです。
なんと今年の大トリは、亜田ワキ子でも、転倒よしみでもない新人の歌手が務めます。
これには賛否両論が飛び交って色々と問題となりましたが、私はこの歌手、大好きですねー
それでは聞いて貰いましょう!
水着間々で『Skyblue gradation』です。どうぞ!』
ゴーーン……ゴーーン……
歌が終わった余韻に鐘の音が響く。
「……この歌」
彼女の歌が終わり、結果発表に入ったときにフェイトちゃんが口を開いた。
「なんだか、私みたい」
「?」
「昔の私と、なのはや祐一と会った頃の私と、今の私」
「孤独だった私と、変わろうって頑張っていた私と、満ち足りている私」
「……」
「……ぁ」
俺は無言でフェイトちゃんを抱き寄せてやる。
フェイトちゃんがこんな素晴らしい歌みたいだって言うんなら、そんな悲しい顔して言わないで欲しい。
フェイトちゃんの過去のことを自分から知りたいと思わないから。
だからただ真っ直ぐ前を―――未来を向いて?
それでも過去を振り返りたくなったら、俺が抱きしめてあげるから。
「ごめんなさい……少し昔のことを思い出しちゃって」
「気にするな、過去のことを思い出すことなんて誰にでもあることだろ? でも―――」
「でも?」
「その時は俺に抱きしめさせてくれよ?」
正直、かっこ悪い。
でも俺は『奇跡を起こす男』なんかじゃない。
なんの力も無いのに、人の過去を解決させるなんて生半可なこと……言えない。
それが愛する人なら尚更だ。
俺は抱きしめる力を少しだけ強め、彼女の金色の髪を撫でてあげる。
「私、祐一にもっと早く会ってればよかったな……」
「いいじゃないか。既に俺達は会ってるんだ。
道を歩いてるんだよ。だから、一緒に前を向こう?」
ゴーーン……ゴーーン……
いつまでこうしてたんだろう?
除夜の鐘がまだ鳴り響く。
時間は……午後11時59分にもう少しでなる所か。
「今年も終わりだなぁ……」
「うん、いろいろあった今年もおしまい」
あと―――30秒
「祐一」
「ん?」
15秒
「目、閉じて?」
「こうか?」
フェイトちゃんの言う通りに目を閉じる。
10秒
「うん……そう……」
5
4
3
2
1
唇に当たる暖かいもの。
これって……
目を開けると、フェイトちゃんがにこやかな笑みでこっちを見ていた。
「え?!」
「祐一、大好きだよ。そして―――」
あけましておめでとう!
あとがき
〜備考〜
魔法少女リリカルなのは本編→魔法青年本編→(ここで本来A’sだけど今回は無視)→今作
ちなみにA’sを省略した理由は終わってすぐにこれじゃあ、なんか変な感じがしたためと、A’s最終回を見ていないためです。
と い う わ け で !
な、なんだこれは。
ついに精神を冒されすぎて狂行に走ったか?
フェイトのキャラ壊れすぎだろうとものすごく自分にツッコみたい。えぇ、ツッコみたい。
なに書きたかったのかもわからなくなったし。
と、自暴自棄なコメントばっかりですが、マジで急ぎすぎた感があるんですよ(汗
まぁ、流れ的には可笑しいと思われるところは無さそうなので(自分の現在の精神状態が正常ならばw)今回はこれで掲載してみることにしました。
にしても水着間々って……w
アニソンが全然出ない紅白への怒りが篭っていても水着間々って……w
あとこの歌の正体と歌詞を知りたい方は『Skyblue gradation 歌詞』という言葉で検索かけてみればいいと思われ。
2005年12月31日作成