※この作品を読む前にRyoさんの作った「魔法青年番外」を読んで頂けると幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン……

 

 

「ふわぁ……」

 

放課後を知らせるチャイムが鳴り、俺はあくびをしながらぐっと伸びをする。

明日は祝日でお休み。

久々にゆっくり出来そうな雰囲気満々だ。

北川でも誘ってゲーセン三昧といくかな?

……金無いけど。

 

「祐一さん」

「ん? あぁ、なのはちゃんか」

 

そんな休日の計画に思いを馳せていると隣のなのはちゃんが話しかけてきた。

 

「そういえば、この前はありがとうな。なのはちゃん」

 

この前というのは練習試合のことだ。

 

「いいえ、こちらも勉強になりましたし」

 

なのはちゃんはこちらこそといった感じに頭を下げてくる。

うむぅ……助かったのはこっちだというのに

何かお礼をしたいけど……う〜ん……

 

「そうだ! そのお礼といっちゃ何だが今週の休み、どこかに連れて行ってあげよう!」

「えぇ〜〜〜〜〜っ!!」

「いや、そこまで驚かなくても……」

「あっ、すいません……」

 

そういうと赤くなって俯いてしまうなのはちゃん。

なんか……萌え

 

「そこまでしてもらうほどの事なんて、こっちも無理にお願いしましたし、それに……」

「それに?」

「フィアちゃんとか他の人と約束とか……無いんですか?」

 

ぐはっ、なのはちゃんにまでそんな風に見られていたとは……祐一ちんショック。

 

「いやいや、あいつらとは約束してないぞ? あいつらと約束したら一日中百花屋にすし詰めになる」

「あ、あははは〜」

 

なのはちゃんもそんな絵が思い浮かんだのか苦笑いをしている。

 

「わかりました。それじゃあお願いします」

「よしきた。で、何処へ行く?」

「う〜ん……祐一さんが行きたい所で良いんですけど……」

 

う〜ん、遠慮気味ななのはちゃんも萌え

 

「いやいや、遠慮しなくてもいいぞ? 何処にでも連れて行ってやろう!」

「……何処でもですか?」

 

ん? なんか以前もこんな感じのような事無かったっけな?

……はっ!?

 

「デジャヴかっ!」

「はい?」

「いや、こっちの話……」

 

どうやら大声を出していたようだ。

……断じて電波ではないぞ。断じて。

 

「じゃ、お買い物に連れて行ってくれませんか?」

「……へ?」

「お買い物です。まだ家に必要な日用品とか揃っていない物があるんで丁度いいですし」

 

よ、よかった……買い物か……

確か、隣の駅前に何でも揃う大きなショッピングモールがあるってTVでCMをしてたっけ?

 

「じゃあ、10時に駅前に集合な! 電車使うから少し大目にお金は持ってきてくれ」

「はい! わかりました!」

 

こうして俺は明日、なのはちゃんと買い物に行く事になった。

 

 

 

 

 

 

魔法青年 相沢祐一 Another

高町なのは人気投票1位記念、またの名を

なのはメインヒロイン奪取計画(核爆

 

 

 

 

 

 

『朝〜、朝だよ〜朝ごはん食べて学校行ってイチゴサンデーを奢るんだよ〜』

 

 

バシッ!!

 

 

「いつの間にこんな目覚ましにすり替わった?」

 

夢にまでイチゴサンデーが出てきたぞ?

……ってそんな事より

 

「今日はなのはちゃんと買い物の約束をしてたよな。確か、駅に10時だったから……」

 

時計を見ると現在8時半。

駅まで20分ちょっとだから飯食って余裕で間に合うな。

え〜と、フィアは……

 

「むにゅむにゅ……もう食べられないですよぅ……」

 

よし、爆睡してるな。

フィアにバレるときっと連れてけ連れてけって煩いからな。

起きないようにそっと部屋から出て、下に下りる事にする。

 

「おはようございます。秋子さん」

「あ、祐一さん。早いですね、何か用事でもあるんですか?」

「えぇ、ちょっと友達と約束をしていまして、半日くらい家を空けてしまうんで昼食は要りませんので」

「了承、私も用事があったので丁度良かったです。楽しんできてください」

「あ、はい。頂きます」

 

秋子さんが出してくれたコーヒーを啜る。

うん、美味い。

 

「ふわ……おはようございます。秋子さん」

「おはようございます、秋子さん」

 

俺が準備を完了させて2杯目になるコーヒーを味わっていると、真琴とあゆが起きてきた。

 

「ゆ、祐一が起きてる!? あゆあゆ! 明日はてんぺんちいよ!!」

「うぐぅ……ボク、あゆあゆじゃないっていってるのに……」

「失礼な奴だな。俺にとってはこれ位、造作も無いわ」

「あゆあゆ! これは匂うわよ?」

 

うぐっ!? さすが元狐。

勘が鋭いな。

 

「きっと、真琴達の知らない誰かと一緒にデートするに決まって……」

「ていっ!」

 

 

トスッ

 

 

とりあえず、延髄にチョップを叩き込んで真琴を黙らせる。

 

「ガクガクブルブル……」

 

案の定、うずくまってガクガク震える真琴。

ふぅ……危なかった。

 

「祐一君?」

「あ〜! 俺これから用事があるんだ。悪いけど真琴の看病を頼むな」

「えっ? うん、それはわかったけど……」

「じゃ〜な〜」

「あっ!? 祐一君!?」

 

こんな時はヒット&アウェイ。詳しい事を聞かれる前に逃げるに限る。

少し待ち合わせ時間より早くなってしまうのは仕方ないが、早い分には一向に構わないだろうし……駅前でなのはちゃんを待ってるか。

 

「ガクガクあぅあぅ……ガクリ

 

 

 

 

 

「こんな早く着てるわけ無いよなぁ……」

 

駅まであと少しの所でそう独り言。

現在の時刻9時半ちょっと前、さすがに30分も前で待っているとは思えない。

でも戻ると尋問が待っているだろうから戻る事は敵わない。

 

「ま、ここに来た時に比べりゃ、30分位少ない内か」

 

ここに来た時は2時間近く待たされたし。

そういう風に割り切って駅前の広場に辿り着く。

すると

 

「あっ……」

「な、なのはちゃん!?」

 

広場には既にオレンジを基調とした私服を着た、なのはちゃんが立っていた。

 

「祐一さん……早いですね」

「な、なのはちゃんこそ……」

「はい、なんだか興奮して眠れなくって……」

「そ、そうか、それだけ興奮してくれたなら誘った甲斐があった。よかったよかった」

 

い、いかんいかん! 何をしどろもどろになってる俺!

今日はなのはちゃんを上手くエスコートしなければならないというのにこんなんじゃダメダメだ。

 

「それじゃ、少し早いけど行くか。あそこは10時開店だから着いたら丁度いい位だし」

「そうですね。それじゃ、案内よろしくお願いします」

 

そういってぎこちなくペコリとお辞儀をするなのはちゃん。

それを見てると何だか緊張してる自分がバカバカしくなってきた。

案内する側が畏まってたらなのはちゃんも畏まってしまうだろう。

ここは俺の方が緊張を解いてやらないと。

 

「ははは、そんな畏まらなくていいぞ? 普通に友達と遊びに行く感覚でいいから……な?」

「はい、わかりました」

「よし! それじゃ、行こうか。目的地はここの隣の駅にあるからまずは切符を買いに行こう!」

「はい!」

 

 

 

<移動中……>

 

 

 

「さっ、着いたぞ。なのはちゃん」

「はぇ〜、大きいですね〜」

 

目的地は駅から1分もしない所に建っていた。

そのビルを目の当たりにして感嘆の声を上げるなのはちゃん。

俺も大きいとは聞いてたけどこれほどとは……

ざっと見、20階くらいはあるぞ?

 

「私がここに来る前に住んでた街を思い出します」

「奇遇だな。俺もだ」

 

入り口の方へ移動すると、祝日だからかまだ開いていない自動ドアの前に結構な数の人が待っていた。

 

「結構、待ってますね」

「そりゃ、まだオープンしたてだしな。新しい物見たさで集まってるんじゃないのか?」

 

噂では遠い所からもやってきてるって聞いたし。

 

「で、なのはちゃんは何を買うつもりなんだ?」

「えっと、昨日もいったんですけど、まずここで生活するのに必要な日用品が欲しいです」

 

 

ガァーーーーッ

 

 

『おはようございます。本日はご来店、誠にありがとうございます』

 

「おっ、開いたみたいだな」

 

中に入ると早速案内板を探す。

何せ俺も初めてだから、何処に何があるか位は把握しておかないとな。

案内板に目を通すと、どうやら20階全部がデパートじゃないんだな。

上10階くらいはホテルになっているのか……ま、俺には縁の無い話だけど。

えーと……4階に100円ショップがあるみたいだから、まずそこへ行ってみるか。

なのはちゃんを連れ、エスカレーターで移動をする。

100円ショップはエスカレーターを出たところというわかりやすい場所にあったので、方向音痴な俺でも迷わずに到着できた。

 

「ほーっ、大きなもんだな」

 

フロアーの半分くらいの面積を持つ売り場を見て俺が一言。

ここなら日用品に限らず、何でも揃いそうだ。

 

「じゃ、なのはちゃんはここで買い物してくんだよな? 手伝おうか?」

「いえ、ここまで案内してもらいましたし、祐一さんもここに来るのが初めてならいろいろ回ってきたらどうですか?」

 

まぁ、なのはちゃんがいうのなら大丈夫だろうけど、なのはちゃんは小学生だからなぁ……

あまり長く離れてると万が一が起こらないとは限らない。

一応、付き添いという意味でも俺はいるわけだし……

……1時間くらいなら大丈夫か?

 

「それならお言葉に甘えるかな。じゃあ、12時くらいまで時間を潰してるわ」

「わかりました。それじゃ、12時にここに集合で」

 

 

 

 

 

 

「……とはいったが、約1時間とちょっと。どうやって時間を潰そうか?」

 

ブラブラ歩いているだけでも時間は潰せるけどなんか時間の無駄遣いっぽくて嫌だし、かといって何か欲しいものがあるかと聞かれれば答えはノーだし。

というか、これがバレた後のことを考えると……なんか寒気がしてきた。

 

 

ピーンポーンパーンポーン……

 

 

『本日は御来店、誠にありがとうございます。只今、8階催し物フロアにおいて手作り物産展を開催しています。皆様、お問い合わせの上御来場下さい』

 

そんな事を考えながらあても無くぶらついていると、そんな感じの放送が館内に流れる。

手作り物産展か……なんか面白そうだな。行ってみるか?

 

 

 

 

 

「いらっしゃーい! 手作りのしば漬けだよ〜」

「はいはい、そこのお姉さん達寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」

「へぇ……結構盛況だな」

 

館内放送のおかげか、フロアには沢山の人が集まっていた。

その横では売り子がいろいろな物が売っている。

どれも手作りとあってか、市販品よりも若干安いし、食料品だけでなくアクセサリーとかも売っているので見ていて飽きない。

こりゃ、来て正解だったかもしれないな。

後でなのはちゃんも連れてこよう。

 

「あら、祐一さん?」

「はい? って秋子さん!?」

 

聞き覚えのある声に振り向くと秋子さんが売り子をしていた。

朝いってた秋子さんの用事っていうのはここだったのか。

 

「祐一さんの用ってここだったんですね」

「はい、秋子さんもここだったなんて奇遇ですね」

「たまにこういうイベントに参加させてもらってるんですよ」

「それで、何を売っていたんですか?」

 

そういうと秋子さんは何処からともなく例のオレンジ色のジャムもとい邪夢を取り出して、

 

「これです。この前祐一さんに食べさせたジャムの改良版なんですけど」

 

『改良版? 改悪版じゃなくて?』

とは死んでも口には出せないな。

だって出した瞬間にあれが飛んでくるから。

 

「へぇ、それで売れ行きはどうなんですか?」

「はい、バッチリです。用意した数が少なかったのもあるんですけど、あと10個くらいで完売です」

 

……なんまんだぶ、なんまんだぶ。

 

「それで、祐一さんは? 友達と一緒に来たのでは?」

「はい、それで友達は買い物しているんで俺は時間潰しに」

「ふふっ、そうなんですか……それなら、何か買って行ってあげてはどうですか?」

「えっ?」

「女の子なんでしょう? プレゼントすれば喜ぶと思いますよ?」

 

秋子さんってもしかしてエスパーか?

それとも俺ってそんなに女たらしに見えるのだろうか?

何か、後者はすんごく心外だけど。

 

「……そうですね。いろいろお世話になった人ですし、何かプレゼントしてみようと思います。それと……」

「了承。名雪達には黙っておいてあげますよ」

「ありがとうございます」

 

よし、これで安心だ。

それで何を買おうか?

まずは一番重要な財布を確認。

中には諭吉さんが2人と一葉さんが1人、英世さんが4人、そして小銭がジャラジャラ。

うん、これだけあれば普通に何でも買えるな、念の為に多めに持ってきてよかった。

それで買うものだけど……

何が売っているか解らないので左から順々に見ていく。

 

柴漬け―――喜ぶとは思えないなぁ……

アクセサリー―――なんかもう少しインパクトがありそうなものは無いかなぁ……どうせあげるならなんか凝った物をあげたいもんな。

邪夢―――インパクトはあるけど……これは論外だろ?

 

「なかなか無いもんだなぁ……」

 

はぁ……とため息をつく。

今考えてみれば手作りという時点でかなり幅が抑えられている気がする。

 

「ん?」

 

そんな時、それは目に入った。

値段はアクセサリーとかよりも少しばかりかかるけど、手作りにしては良く出来てる。

それになんか可愛く包装してくれるみたいだし。

……これならいいかも。

早速俺はそれを買うと、なのはちゃんの待つ4階に移動する事にした。

 

 

 

 

 

「あっ、祐一さーん!」

「ごめん、なのはちゃん。少し待った?」

「いえ、こっちも今来た所です」

 

俺が4階に着くと、100円ショップの前で大きめな袋を2、3袋、床に置いて待っていたなのはちゃんが自分の位置を知らせるように手を振ってくる。

……これだけ聞くとなんかデートの待ち合わせっぽい、というかこれも一種のデートって奴なのかもしれないけれど。

 

「結構買ったな……」

「はい。100円ショップって安いからついつい買い過ぎちゃうんです」

 

あ〜、それは解る。100円だからとついつい要らない物でも買ってしまうんだよな。

主に入れ物関係とか……

 

「あっ、荷物を持ってあげるからこっちに渡してくれ」

「すいません」

「いやいや、こういう役割としてでも俺が一緒に来ているわけだし」

 

そういって申し訳無さそうに出してくる荷物を持つ。

 

「よし、じゃあ昼飯でも食べに行くか! 今日はお兄さんが奢ってやろう!」

「ふふっ、いいですよ。祐一さんの財政事情は解っているつもりですから」

「だけど、食事代は男が出さないと示しがつかないだろ? それ位の甲斐性は見せないと」

 

う〜ん、あいつらに聞かせてやりたいその言葉。

でも、いくらお金が無いとはいえ食事代を相手に払わせるのは気が引ける。

そうでなくても俺の方から誘ったのだし、それ位は何とか出せる。

 

「わかりました。それじゃ……」

 

 

 

 

 

「本当にこんなのでいいのか?」

「はい」

 

ハンバーガーを一齧り。うむ、値段相応かな。

もう少し肉が厚くても良いと思うんだが……そこらへんは事情か。

結局、俺が1階にあったファーストフード店でハンバーガーを奢る事でこの問題は解決。

せっかくの天気なのだから5階にある中庭みたいな所へ行って食べる事にしたのだ。

……食事代を出さないよりも甲斐性が無さそうに見えるのはきっと気のせいだろう。

 

「そうだ! この前のお礼と、これからもよろしくという意味でなのはちゃんプレゼントがあるんだ!」

「えっ!? プレゼント……ですか?」

 

なのはちゃんが俺の持ってた袋に全然突っ込まないからすっかり忘れてた。

 

「はい、なのはちゃん」

「これって祐一さんが持っていた袋ですよね。何が入ってたんですか?」

「それは開けてからのお楽しみな」

 

なのはちゃんが包装された袋のリボンを解いて中身を見る。

 

「テディベア……」

 

中には首の所を水色のリボンで止めた小さめな熊のぬいぐるみ―――テディベアが入っていた。

 

「あぁ、上で手作り物産展ってのやっててな、そこで売ってたんだ」

「祐一さん……ありがとうございます! 一生大切にします」

 

どうやらなのはちゃんは喜んでくれたようで、よかったよかった。

 

「それじゃ、私からも祐一さんに……」

「へ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、水瀬家に帰っていつの間にか集合していた名雪達に尋問されたのは別の話

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「明日も学校あるし、もう寝るねユーノ君」

「うん、わかった。おやすみなのは」

 

ユーノ君に挨拶して自分の部屋に入る。

机の上に置いておいたテディベアをひょいっと持ち上げる。

今日は楽しかったなぁ……祐一さんとお買い物をして、これをプレゼントしてもらって、それで……

 

「キス……しちゃったんだよね……」

 

自然に顔が真っ赤になるのがわかる。

恥ずかしくって頬になっちゃったけど、いつか大きくなってキスするのが恥ずかしくなくなったら……

 

「その時まで待っててくださいね……祐一さん」

 

そういって私はテディベアにキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

J「何コレ?」

フ「ほのラブ小説を書こうとして失敗した典型的な例です。折角の伏線をものの見事に無駄にしたですね」

J「……うぐぅ、ごめんなさい」

フ「こんなんじゃ、投票でなのはさんに入れた人たちから苦情が来るですよ?」

J「今、ほのラブに手を出した事に凄く後悔してる」

フ「まぁ、誰にも初めてや得意不得意もあると思うですけど……」

J「お前がフォローするな、余計辛くなる」

 

 

 

 

※感想・指摘・質問がございましたら是非BBSかmailにどうぞ!

 

 

 

2005年4月6日作成