魔法青年相沢祐一

54幕『魔王』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、覚悟は一人前に育ったようだな」

 

俺の視線の先にいるあの野郎、ディアボルガは玉座の上に座り、憎たらしい笑みを浮かべている。

いつの間にここに現れたのか知らないが、不可思議なことでも魔法の力と言われれば納得してしまう程に魔法に染まってしまった俺にとってはそんなことはどうでもいい。

 

「ディアボルガ、答えてもらうぞ。俺の感じた違和感。

copyは……いや、お前が持っていたユンカースは、本当にお前の手によって封印されていたのか?」

「それを答えて何になる? 我が答えたところで、今の事態は動かぬし、貴様らがすることも変わらない。当然、我がすることもな」

「なっ?!」

「話し合いに来たとでも言うのだろう? 生ぬるい考えだ」

 

ディアボルガにこちらの意図を読まれ、更に否定される。

正直、こう言われることを予測してなかったわけじゃない。

だが、ここまで一方的に拒絶されるとは思わなかった。

 

「……そうだとしても。俺はお前と話し合いたい」

「目の前で貴様の仲間をやり、貴様らに我の仲間がやられ、それでも尚、話し合おうと言うのか」

「そうさ、俺は馬鹿だからな。戦いを止める利口な方法なんて思い浮かばない。

それにどちらかが譲らないと憎んで憎まれて……決して戦いは終わらない。

クロノには悪いって思うけど、俺達が話し合うことで戦いが収まるっていうなら、その方が良いに決まっている」

「……」

 

意外にもディアボルガは口を挟んでこなかった。

俺の意見に耳を傾けてくれたからだろうか。

ディアボルガは少し俯かせていた顔を上げる。

そこにあるのは……笑み。

 

「くくく、面白い奴だ。たしかに戦いはどちらかが妥協をすれば、止まる。

 だが、それでは根本的な解決にはなるまい?」

「そうだとしても!」

「ならばもっと単純に事を解決する方法を我々は知っているだろう?」

 

ディアボルガが玉座から悠然と立ち上がる。

その青眼は穴が開くほどにじっと俺の方を見つめ続けている。

 

「――どちらかが倒れるまで戦い続ける。

立ち続けた者は栄光を享受し、倒れたものは絶望と共に消え逝く。

我らの間ではそれだけで十分であろう」

 

ディアボルガ周囲の魔力が膨らむ。

完全に戦闘態勢だ。あれはもう止まらない。

 

「くっ、リム!」

「わかっているわ」

 

ディアボルガの行動に反応して、即座に壁を想像する。

手元から放たれた雷はそれに阻まれて霧散する。

やっぱり戦うしか無かったのか……?

壁をすぐ消すと、忌々しい表情でこちらへ飛んでくるディアボルガの姿が見えた。

 

「ちぃ、やはりdreamの生み出した壁は強力だな。

 力は弱くとも、能力は最強とはよく言ったものだ」

「……?!」

 

なんだ、今の言い方。

ディアボルガは昔からユンカースのことを知っているのか?

ユンカースから情報を得ているのであれば、リムの能力も当然理解している筈か。

いやでも今のはそれよりも以前からリムのことを知っていたようにも聞こえた。

まるで昔の――魔法界で使われていた頃のユンカースを知っているような、そんな感じ。

 

「ならば我はそれを上回るだけ」

 

魔力がディアボルガの周りに集まっていく。

その早さ、錬度、量全てにおいて、先程のが牽制の一撃だったとわかる。

 

「デスピアー・ボルト」

 

ディアボルガの言の葉と共に黒雲が生まれる。

周囲に電気のエネルギーを纏い、徐々に肥大していく。

あれは……間違いない。俺を庇ってクロノが受けたあの魔術が飛んでくる。

 

「もう一度絶望を味わえ、ヘル・ランサー」

 

闇色の稲妻が俺へと疾走する。

 

「死ぬがいい!」

「俺は!」

 

弾速から壁を作らず、腕――正確には前方に展開した魔力壁で受け止める。

が、完全に威力を殺すことは適わず、後ろへ吹き飛ばされる。

 

「相沢様!」

「大丈夫。威力を殺せなかっただけだ!」

 

今度はこっちのターンだ。

俺は先程のcopy戦同様にナイフを思い浮かべ、周囲に生成する。

数十本を生み出したところでそれらを全て解き放つ。

対象は当然、ディアボルガだ。

敵を射抜くイメージを携えたナイフはある一つは一直線に、一つは大きく弧を描きつつ、一つは地を這うように、とそれぞれ違う軌道を描きながらも目標に向かって飛んでいく。

回避不能のナイフの檻、これなら奴をやれる。

だが――

 

「射抜くイメージを持った武器か。それならば話は簡単だ」

 

ディアボルガは全く焦った様子も見せずにそれらを見やると。

 

「邪魔だ」

 

ナイフが完全に捉えた瞬間、ディアボルガの周りを隙間なく囲うように雷が生み出される。

ナイフがそれに触れるとばちっという音と共に弾かれ、光に還る。

一度加速をつけたナイフを停止させることもできず、ブラックホールに吸い込まれる塵の様に次々に吸い込まれていく。

 

「なっ?!」

「『どんな軌道でも必ず敵に当たる』のであれば、我は一々狙いをつける必要は無い。向こうから飛び込んできてくれるのだからな」

「拙いわね。相手は私の能力を完全に把握している。

 さっき初めてfusionをしたばかりの筈なのに」

 

リムが悔しそうな声で呟く。

さすが魔王ということか。それとも――

 

「お互いに放ち、防ぎ……これでは埒が明かないのではないか?

 遠慮などいらん、全力の一撃で来るがいい」

 

ちょいちょいと指を動かし、ディアボルガが挑発めいたことを言う。

いや、完全に挑発している。

俺に最高の魔術を出させ、その上で勝つと。

なら乗ってやろうじゃないか、その喧嘩。

 

「リム、アウロラブラスターカノンは何発撃てると思う」

「一発が限度ね。それ以上の使用は結界と融合が耐えられない」

「充分」

 

一発あればあいつの挑発に乗れる。

 

「レイバルト・バリアント、D.S.M.モード展開!」

 

レイバルト・バリアントを先程の射撃形態に変形させ、ディアボルガに向けて構える。

 

「相沢様、あまり無理はなさらないでください」

「いざという時は私達もいるということをお忘れないよう」

「ルドラもいるのぉ! 祐一様の役に立つのよ?」

 

一人を除いて心配そうな瞳でこっちを見てくるギャラリー。

ディアボルガも完全に俺達に狙いを定めていたようで彼女達に被害は無い。

もっともそれは彼女達が戦闘に割り込むタイミングを完全に逸してしまったというのも一因だろうが。

 

「心配するな。俺だってあの時から成長したってことをあいつに見せてやる」

 

話している間にデバイスに魔力も十分循環できたようだ。

魔力場に呼応して発射口の魔方陣が小さく震え、ばちばちとスパークする。

 

「行くぞ! ディアボルガ!!」

「来い! 人間――否、相沢祐一!!」

 

 

周囲の様々な魔力を取り込み、虹色と化した魔力が一気に放出される。

 

 

「アウロラッ! バスタァァァァァァ! カノン!!」

 

一直線に向かう極彩の流撃。

 

「ぐぅっ……」

 

射撃の反動で後ろへ飛ばされるのを何とか耐える。

ここが正念場だ。この一撃を耐えられたら、もう一発も撃てない。

グリップを強く握り、更に威力を上げる。

 

「ぬぅ?!」

 

直撃。

ディアボルガは避けるとも、守るともせず、その一身で受け止めていたのだから間違いない。

 

 

――だが。

 

 

「なかなかの一撃だ」

 

ディアボルガはそれを喰らったまま平然とした表情で立ち続けていた。

改めて見れば、光線はディアボルガの周囲を避けるように広がり、激流に浮かぶ中洲のようにそこに存在していた。

 

「これくらいはやってもらわないとこちらも挑発した意味がない」

「こっちの攻撃が当たらないだと?」

「真の強者には魔力も平伏すなどという世迷い事は言わんよ。

 いや、貴様が予想を裏切る力で我に挑んできたのであれば、或いは言っていたかも知れんな」

「……何が言いたい?」

 

俺が問うと、奴は攻撃を受け続けているとは思えないくらい冷静な様子で答えた。

 

「何、こちらも貴様の一撃に見合った敬意を見せなければならんと思っただけだ」

「舐めるな!」

 

魔力をつぎ込み続ける。

魔力を取り込み続ける。

あらゆる魔力を貪り食った極光の一筋はその身を一回り大きくしてディアボルガに牙を剥き続ける。

しかしそれでも届かない。

これが奴との絶対的な差だとでも言いたいのかと思うほどに、現実は彼の周りを避けるように二又に割れ、後ろへと流れていった。

背後の壁は抉れ、地響きと共に崩壊している。それだけの威力を持つ一撃。

それでも奴には、ディアボルガには届かない。

 

「さて、そろそろ終わりにせねばなるまい。

 それ以上の魔力をつぎ込めば結界やデバイスだけでなく、貴様の体も崩壊するだろう」

「人の心配する程の余裕があるってか……馬鹿にするな!」

「馬鹿にはしてはいないさ。今、貴様に死なれるのが困るだけだ。

 我の「計画」を達する為にはな」

「それを、馬鹿にしているって言うんだよ!」

 

貪欲に魔力をつぎ込む。

体が軋み始めているが知ったことか。

最悪でもこいつと相打ちを取ってやる。

 

「まあ、熱くなるな。そうは思わんか? dream」

「……否定はしないわ」

「リム?」

「けどね、退けない一線っていうのもあるんじゃないかしら?

 私、馬鹿にするのは好きだけど、馬鹿にされるのは嫌いなの」

「……そうか。なら無理矢理止めてやるまでだ。

 試させてもらうぞ、相沢祐一」

 

ディアボルガの体が青白く発光する。

光が広がっていく……?

放たれた光は砲撃を押し戻しながらこちらへと向かって……いや、掻き消しながらこちらへ向かってきている。

拙い。何とは言えないが、あれにはやばい匂いしかしない。

早く回避行動を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一体、何が起こったんだ」

 

気が付くと俺はその場に倒れこんでおり、手には変形する前の通常形態のレイバルト・バリアントが握られていた。

 

「……リム?」

 

体内のリムに呼びかけてみるが、返事は無い。

体を動かすと所々が痛んだが、動けないほどの重症という訳ではない。

俺は体を起こすと周囲を見渡した。

 

「?!」

 

そこで俺の眼に入ったのは、ボロボロの服装で倒れているリムの姿。

その奥には同じように気を失っている守護者達もいる。

 

「リム! みんな!」

 

今の状況に痛みなんて吹き飛んでしまった。慌ててリムたちの下へと駆け寄る。

見ると手痛くやられていたが、大きな怪我は無い。ただ気を失っているだけのようだ。

それは後ろの面々も同じようで、時折体を揺するような仕草が見えた。

 

「何がどうなっているんだ?」

 

ディアボルガにアウロラバスターカノンを放ち、それを受け止められた所までは覚えている。

その後、青白い光に包まれて……ダメだ。そこから思い出せない。

気が付いたら俺はfusionを解かれて倒れこんでいて、他の皆も気を失っていた。

 

「ディアボルガは?!」

 

慌てて、周囲を見渡す。

奴はすぐに見つかった。何故なら彼は一歩もそこから動いていなかったのだ。

ディアボルガは何をするでもなく、ただこちらをただ見つめ続けていた。

 

「何をした!」

「なに、ただ貴様の魔法を「破壊」しただけだ」

 

ディアボルガはとりたて隠すこともなく教えてくれた。

破壊? 魔法を無効化したってことだろうか。

 

「たいしたものだ。我にこの能力を使わせる所まで成長することが出来たとは。

 だが足りない。それだけでは足りない。

 やはり、我一人でやるしかないのだろうか」

 

足りないというのは十中八九実力のことだというのはわかる。

だが、それが足りないとはどういうことだ?

ディアボルガが俺の実力を追い求める理由がわからない。

 

「もう少し時間があれば、解らなかったのだが……残念だ。

 さて、消えてもらおうか」

 

ディアボルガの手にエネルギーが集まっている。

こっちの魔力は空。体にもダメージがある。

もう、ここまでだって言うのか……?

 

「死ぬがいい!」

 

奴の手から放たれた雷が、俺、向かって、まっすぐ、伸びて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Lightning Protection.

 

 

 

 

 

直撃する寸前、俺の前に現れた魔法陣が雷を防ぐ。

防護陣はぱちぱちと音を立てながら消えた。

 

 

 

「間に合ってよかったね。レイジングハート」

 

 

振り返ると、桃色の柄に金色のフレームの杖と会話する白い防護服を纏った幼い魔導師の姿。

 

「なのはちゃん!」

「はい、なのはです。祐一さん!」

 

なのはちゃんに呼びかけると、笑顔が返ってくる。

ほ、本物なのか……? ドッペルじゃないよな?

 

「馬鹿なっ?! あの攻撃を防いだだと?」

 

なのはちゃんの登場に初めてディアボルガが声を荒げた。

正確にはなのはちゃんの使った防御魔法の堅牢さに、だろう。

かくいう俺も今の魔術は見たことが無かったしな。

Protectionに似ているようだったが、今のディアボルガの攻撃をここまで完璧に防ぐことは難しいはずだ。

 

「フェイトちゃんとの戦いを参考にして作った魔法だけど、まさかこんな所で役に立つなんて思わなかったよね」

It is so.(そうですね)

 

なるほど対フェイトちゃん用の防御魔法……つまり耐電性に優れていたからだったのか。

――って、そんなことより。

 

「なのはちゃん、無事だったのか」

「私よりも祐一さんの方が心配です。ディアボルガと戦っていたんですから」

「こっちはなんとか大丈夫だ。なのはちゃんも助けてくれたし。

ありがとうな。なのはちゃん」

「わ、あ、あの、その、うぅ……それは反則です

 

俺が笑みを浮かべると顔を真っ赤にして慌て始めるなのはちゃん。

……ちょっと面白い。

 

「随分と余裕だが、たかが魔導師一人増えたところで我の絶対優位は変わらんよ!」

 

声に反応して向くと、ディアボルガは第二射の準備を完了している。

しまった。なのはちゃんに気を取られすぎた。

 

「不意打ちで悪いがやらせてもら――?!」

 

発射しようとしたディアボルガの動きが止まる。

見ると振り下ろされる予定だった腕には小型の魔法陣がはまっており、ディアボルガの動きを阻害していた。

 

「あれは設置型のバインド?!」

 

 

 

 

 

「サンダァァァァ!」

 

 

 

Thunder Rage

 

 

 

「レイジ!」

 

 

 

 

 

ディアボルガがバインドを外そうとする一瞬の隙を突き、精度の高い落雷が襲い掛かる。

 

「ちぃっ!」

 

ディアボルガは舌打ちと共にバインドを破壊するとそのままこちら側に雷を放ち、もう片方の腕で落雷を防ぐ。

放たれた雷がこっちへ向かってくる。

なのはちゃんに防御してもらいたいが、当のなのはちゃんはその攻撃は絶対に当たらないと確信しているかのようにぴくりとも動かない。

 

 

 

 

 

 

「知っているかしら? 腕に魔力を纏わせるとね、本来触れられないものにも触れることが出来るのよ?」

 

 

 

 

 

 

俺の横をすり抜けて前に出ると、その拳で雷を受け止める影。

この声、受けた印象は全く違うが間違いない!

 

 

 

「ネオ・ホーネスト。『ムーンライズ エクスカリバー』

 ちぇすとおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

それとは別に躍り出た影が雷の防御で、完全に無防備になっていたディアボルガを剣の腹で思いっきり殴りつけて、吹き飛ばす。

 

「僕も忘れないでもらいたいね」

「フェイトちゃん! フィア! それにスコール!」

 

フェイトちゃんも、フィアも、スコールも俺の下へ駆け寄ってくる。

 

「祐一さん、無事です?」

「なのは、急ぎすぎだよ。今回はそれでよかったみたいだけど」

「守護者の奴らも直に目が覚めるだろう。その前にリムを回復させておいたほうが良い」

 

いつの間にか元の感じに戻ったフィアやフェイトちゃんが、俺を心配するような言葉をかけてくれる。

俺は一言大丈夫だと伝え、スコールの言う通りに気絶しているリムをレイバルト・バリアントに収納する。

 

「あ、これ渡しておきますです」

「僕も渡しておこう」

 

フィアとスコールがそれぞれ俺に何かを握らせてくる。

これはユンカース? 『No.19 earth』、『No.14 metal』と彫られた魔石が手の中で問いに肯定するように鈍い光を放った。

これで魔石は19個。あとは守護者とNo.21の魔石だけになったわけか。

 

「……なかなかに効いたな、今の攻撃は」

 

吹き飛ばされたディアボルガがおもむろに立ち上がる。

見たところ、そこまでダメージは負っていないようだ。

一体、どれだけタフなんだよ。

 

「だがこれでも足りない。これでも我が望む域まで達しない」

 

ディアボルガが両腕を前に突き出す。

 

「悪いが、もう加減はしない。この一発で決めさせてもらおう」

 

ディアボルガに急激に魔力が集まるのがわかる。

これはさっきの俺のアウロラバスターカノンに似ている。

ただひたすら貪欲に魔力を掻き集めている。

間違いなくディアボルガの最大の攻撃が飛んでくるだろう。

 

「何だ、あの魔力は?!」

「これだけの魔力がこもった一撃なんて防ぎようがないよ」

「防ぐ必要なんて無いさ」

 

俺は杖を横にして突き出す。

 

 

 

 

「ぶち抜くだけだ」

 

 

 

 

「笑わせる! ぶち抜くと言ったか? この一撃を!」

 

ディアボルガの手の先には肥大した魔力球が存在する。

あれだけの大きさであれば人一人くらい簡単に飲み込み、消滅させることくらい容易く出来るだろう。

 

「『earth』」

 

大地の魔石の名前を宣言する。

杖を軸に砂が集まっていく。

 

「『wind』」

 

烈風の魔石の名前を宣言する。

風が砂を巻き込み、錐を作り上げる。

 

「『metal』」

 

鋼鉄の魔石の名前を宣言する。

その全てが金属化し、白金に彩られた一つの型を作り出す。

 

 

「三つの魔石の力を融合し今、新たな魔法として生まれ変われ!」

 

 

出来上がったのは一つの螺旋状の錘。

突撃槍のように杖の先端に付き、きゅるきゅると音を立てて、ゆっくりと回転運動を開始する。

 

 

「そんなもので、我の攻撃は破れん!

『ジェノサイド・ブリンガー』全てを喰らい尽くせ!」

 

その漆黒の魔力球は巨体に見合った速度でゆっくりと地を削りながらこちらへ向かってくる。

そんなのを前にしても、俺はどこか冷静でいられた。

魔力はもう空だと思っていたのに。

もう体は動けないと思っていたのに。

不思議だ。体中から力がどんどん溢れてくる……!

今なら俺は誰にも負けないっ!

 

「スパイラル・ダッシャァァァァァ!!」

 

ドリルを高速回転させ、竜巻を起こしてぶつける。

竜巻と魔力球がぶつかり合い、火花を散らす。

 

「ぬうううううう!」

「うおおおおおお!」

 

互いに力を放出し続け、戦況はどちらにも動かない状態。

俺自身信じられないが、五分五分である。

 

「祐一さん、私達の魔力をあなたに」

「祐一、私達はこれくらいしかできないけど」

「ぶち抜け、相沢!」

「いっけえええええです!」

 

Divide Energy

 

なのはちゃん達の魔力が光となって杖に集まっていく。

これで完全にディアボルガの力を上回った。

 

「馬鹿な?! そんな力……!」

 

竜巻が魔力球に食い込んで行き――

 

 

 

「ぶちぬけええええええ!」

 

 

 

――貫いた!



同時に弾ける様に黒が飛び散り、霧散する魔力球。

 

「ぬ、おおおおおおおおおおっ」

 

竜巻はそのままディアボルガを呑みこみ、上へと巻き上げ閉じ込める。

それを確認してから俺は魔力を注いでドリルの回転数を更に上昇させる。

 

「『speed』」

 

ドリルと化した杖を両腕で構え、加速する。

目指すは当然、竜巻に閉じ込められたディアボルガだ。

 

「これが最後の一撃だ!

ネヴュラス・ドライバァァァッ!」

 

加速した勢いそのままに竜巻の中に突入し、ディアボルガにドリルをぶつける。

だが、そのまま貫かない。

ドリルをギリギリの位置でピタっと寸止めすると、先端に魔力を集める。

 

 

 

「エンドッ! シューーーーーーーーート!!」

 

 

 

先端からの光線のゼロ距離正射。

直撃したディアボルガは竜巻を衝きぬけ、壁へ叩きつけられる。

壁に大きな亀裂を残し、力なくゆっくりと倒れるディアボルガ。

それは長い長い因縁の結末。

そして、この戦いの終焉の合図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがけ

鬱。このままではニート一直線な予感orz

ようやく終わりました。ディアボルガ戦。

これでようやくA’sも視野に入れることが出来そうです。

今回は文章の上手い下手というより、燃える展開か燃えない展開かを重視して書いてみたんで、文章的にかなり粗くなってしまったのはご愛嬌。

 

 

 

 

 

魔術説明

 

Lightning Protection.  術者:高町なのは

帯電性を持ったProtectionその為、対電気属性には滅法強い。

 

 

Thunder Rage 術者:フェイト・テスタロッサ

落雷を放つ範囲攻撃魔法。範囲魔法と銘打つ割には精度は非常に高く、周囲に被害を与えずに目標物だけ攻撃することも可能である。

 

 

ムーンライズ エクスカリバー 術者:スコール・スティナイト

ネオ・ホーネストのもう一つの形態。形状は剣になる。

 

 

ジェノサイド・ブリンガー 術者:ディアボルガ

弾速は遅いが、非常に攻撃力の高い魔力球を放つ魔法。

ディアボルガの中で最強の必殺技。

魔力をこめればこめるほど威力は上がる。

 

 

ネヴュラス・ドライバー 術者:相沢祐一

「wind」「earth」「metal」の複合魔術。

ドリルを作って、突撃する魔術。

windの力を利用して竜巻に閉じ込めること(スパイラル・ダッシャー)や、純粋な魔力をドリルの先端から放つ(エンド・シュート)こともできる。

 

 

 

 

 

※感想・指摘・質問がございましたらBBSかMailでよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

2008年2月11日作成