「……」

「どうしたんですか? 祐一さん」

「いや、なんでもない……」

「……そんな態度じゃ説得力ないと思う」

 

戦艦の中で、同じように待機しているなのはちゃんが話しかけてきたので、そう返すと、フェイトちゃんが鋭くツッコんでくる。

ま、フェイトちゃんの言うとおりか。

怖い表情で黙りこくっててなんでもないなんて、そんなわけないよな。

でも、本当のことを言うのを俺は躊躇って。

 

「いや、対した事じゃないさ。帰ってきたらあいつらにどれ位奢らなきゃいけないのかな?

 って思っただけさ」

「あいつら?」

「あ、あはは……」

 

事情を知らないフェイトちゃんは首をかしげ、なのはちゃんはいつものように苦笑いをする。

結局、まったく違うこと―――あながち全くというわけでもないが、今思ってることとは違うことを言ってその場を誤魔化してしまった。

本当に考えてたことは満月のこと。

たった数日間とはいえ、クラスメートと戦わなければいけないということ。

満月は何故、このようなことに手を貸しているのか。

わからないことだらけだ。

でもたった一つ感じてることは元々敵だったフェイトちゃんに歩み寄ることができた、なのはちゃんのように、満月とも話し合いで共に歩み寄ることができるんじゃないかっていう、練乳よりも甘すぎる考え。

まさしくフィアの言うとおりだ。

俺は甘すぎる。満月は完全に敵のはずなのに、クラスメートとしての素性を知ってるだけで、話し合いができるんじゃないかって考えてしまうのだから。

 

でも今回だけはそんな考えを捨てよう。

俺はみんなを引っ張る位置にいるんだから。

そんな甘ちゃんじゃ、みんなに迷惑がかかる。

 

 

ヴィーー! ヴィーー! ヴィーー!

 

 

『みんな、敵襲よ。戦艦の前方に多数の傀儡兵が展開。

 こちらに向かっているわ。担当の武装局員は至急これの迎撃に当たってちょうだい』

 

 

敵襲を知らせるサイレンと共に流れる、リンディさんの放送。

 

「さっ、俺たちも準備をするか」

「はい」

「うん」

 

三人それぞれ各々のデバイスを取り出す。

 

「レイジングハート!」

All right, My muster!

 

なのはちゃんの構える真紅の宝石が―――

 

「バルディッシュ!」

Yes sir!

 

フェイトちゃんの携える黄金の台座が―――

 

「行くぞ! レイバルト・バリアント!!

 うぐぅ〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

俺の持つ蒼空の魔石が、眩く輝き、変形していく。

そして服もその変形した姿に釣り合うように装飾される。

光が収まると、戦闘服という戦場での正装に身を包んだ三人の魔導師が立っていた。

 

「レイバルト・バリアント! メタモルフォーゼッ!!

 行くぞ!! 二人とも!」

 

今、決戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法青年 相沢祐一

41幕『門番』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ。三人とも、こちらの準備はとっくに済んでいるというのに」

「まぁまぁ、スコール」

 

苛立ちを隠そうともしないスコールと、それを一生懸命宥めているユーノ君に迎えられてブリッジに入る。

他の面子も全員揃っているから俺たちがどうやら最後のようだ。

 

「段取りは頭に入っているわよね?」

「はい」

「それじゃ、早速行ってもらうわね。アレックス、カウントを取ってもらえるかしら?」

「はい。それでは、カウント60から」

「祐一さん、頑張って下さいね。佐祐理もここで頑張りますから」

「えぇ、精一杯やってきます。佐祐理さん」

「ふぁいとっ! ですよ〜」

 

佐祐理さんに親指を立てた右手を前に突き出すと、佐祐理さんも同じように返してくれた。

 

 

「45……44……」

 

足元の魔法陣が展開され、輝きを増していく。

いよいよ、敵の本拠地に乗り込むわけか。

武者震いが止まらない。

 

「30……29……」

 

 

ドォォォォン!!

 

「きゃっ?!」

「状況報告!」

「は、はい。迎撃している武装局員が若干押されているようです。

平均的な傀儡兵なら押し切れるだけの戦力を投入してるのに、そんな……」

 

衝撃に包まれるブリッジにリンディさんの怒声が響く。

エイミィさんから語られた現状はあまり芳しくないようだ。

 

「作戦の憂いを今頃後悔しても遅すぎるわ。

 アレックス! カウントを止めなさいと誰が言ったの?」

「は、はい……28……27」

「艦長! ダメです。押されてます! このままじゃ―――」

 

再度、衝撃。

今度はさっきよりも大きい。

 

「とにかくあと数秒耐えるよう伝えて! 彼らを送り出せば、どうにでもなるわ!」

「リンディさん!」

「安心して、あなた達は必ず送り出してあげるわ」

「そんな……」

「20……19……」

 

状況は切迫している。

先程の衝撃ほどではないが、小刻みに船体が揺れる。

 

「このままじゃ……」

「なのはちゃん?」

「13……12……」

 

脇にいるなのはちゃんがなにやら考える素振りをする。

 

「祐一さん」

「ん、どうしたんだ? なのはちゃん」

「私、ここに残ります」

「は?! お、おい」

「……3……2……1……0っ! 転移開始!」

 

カウント0と同時に、なのはちゃんは輝きを更に増していく魔法陣の外へと出る。

そんななのはちゃんに俺だけでなく、周囲も当然慌て始める。

転移魔法は既に起動している。取り消しはできない。

 

「勝っても、帰ってくる場所がないなんて……そんなの意味ないです。リンディさん」

「……なのはさん」

「フィアちゃんにフェイトちゃん、少しの間、祐一さんのフォロー、頼むね」

「なのは」

「言われなくてもわかってるですよ」

「祐一さん、ここが片付いたら必ず、後を追います。だから―――」

「なのはちゃん!」

 

ここで転移魔法が発動し、光に包まれる。

最後の言葉は聞こえなかったけど、きっと心配しないでくださいとか言ったんだろう。

 

「約束だぞ!」

 

転移される直前。なのはちゃんに聞こえたかどうかはわからないけど、俺は力いっぱいそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが……?」

「みたいです」

 

立派に構えられた金属製の扉。

どうやら入り口に転移させられたみたいだ。

 

「内部にはいけなかったのか?」

「本局の時と同じですね。外部からの転移魔法は受け付けないみたいだったので」

 

俺の疑問にユーノ君が答える。

まぁ、普通に考えてそうか。

 

「それじゃ、一発、大きいのを派手にぶちかましてやりますです?」

「そうだな。どうせ罠だってわかってるんだし」

「はぁ……つくづく実戦向きじゃないわね。あなた達」

「まぁ、そう言わないの。いろいろ溜まってるのよ」

「祭りは派手なほどいいものですよ? リム」

「エレナはともかく、まさかアビスまでそんなこと言うとは思わなかったわね」

 

呆れた表情で俺達を見る、dreamことリム。

リムというのは、連携の際にドリームやらアブソリュートやら名前が長過ぎるとアルフがごねた為、短く親しみやすいネーミングに改名することになっていたのだ。

それで局員の人にネーミングを密かに募集して、俺がいい感じのを選んだわけだ。

ちなみにabsoluteはアビスというネーミングだ。

 

「とにかく、先へ急ぎましょう。

 このままここで突っ立っているわけにもいきませんし」

「ミナの言う通りだ」

 

ミナとスコールに先を促され、扉と面と向かう。

大きさ、硬さ、厚さ。どれもありそうなそれ。

どちらにせよ俺達の細腕じゃ、動かないだろうからぶち抜かないといけないだろう。

 

「フェイトちゃん、ミナ!」

「はい、バルディッシュ」

「かしこまりましたわ」

 

Thunder smasher.

 

「『wing』、『chain』、『power』」

「撃ち抜け、轟雷」

「「三つの魔石の力を融合し今、新たな魔法として生まれ変われ!!」」

 

バルディッシュから円形の魔法陣が現れ、雷のエネルギーが迸り、鎖に繋がれて振り回しているレイバルト・バリアントもミナの力で緑の魔力に包まれる。

 

「サンダー……」

「「パワードアカシック……」」

 

「「クラッシャーーーー!!」」

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォン!!

 

 

閃光、轟音、爆発。

黄色と緑の光の奔流を受けた扉はひび割れ、煙を立てながら崩れ落ちる。

 

「うし、それじゃあ、先に―――散開!!」

 

前方からの殺気にそう指示をし、回避行動に移る。

先程までいた場所に煙の中から飛び出した銀色の鋭利な槍のようなものが数本突き刺さる。

 

「ヴヴヴヴ……」

「……人間? いや違うか?」

「ヴヴヴヴヴ……」

 

前方の敵を見やる。

全身を銀色の光沢を放つ金属に包まれた少し大きめの人型。

生気を感じないところから人ではないとわかる。だから人型。

例えれば昔CMに出てきたペ○シマンみたいな感じ。

そんな人型の腕が伸びて、俺達を攻撃したらしい。

槍のように感じたものは伸びて槍のように鋭利になったやつの指だった。

 

「どうやら、さっきの門に融合してたみたいだな」

「素晴らしいゲートキーパーね」

 

今考えれば、直接触らなくてよかったのかもしれない。

直接触ったら最後、いきなり飛び出したあれに心臓射抜かれてジ・エンドだった。

 

「……相沢、先に行け」

「スコール?」

「役割を忘れたか? 僕達は君達の露払いが役割。

 なら、ここは僕一人で戦えば、効率的にもいいだろう?」

「で、でも」

「いいから行け。こんな全身銀色の気色悪い生き物、僕一人で十分だ」

「ヴヴヴヴヴ……」

 

無動作で次々に放たれる指を回避しながら話す。

いくらなんでもスコール一人じゃ無茶だろう。

そう言いたかったが、スコールの真剣な目に気おされて言うことができなかった。

代わりに出たのは

 

「死ぬなよ?」

「馬鹿を言うね。僕は凄腕魔術師さ……腐りきっても、ね」

「……祐一、どうするの?」

「ここはスコールに任せて、俺たちは先に行く。

 スコール、絶対に追いついて来いよ?」

「何度も言わせるな。僕は凄腕魔術師さ」

 

ニヒルな笑みを浮かべるスコール。

その顔には余裕の色がありありと見える。

 

「―――『speed』!」

「スコール様、御武運を」

「ふん!」

 

次々とスコールとペプ○マンもどきの横を通って入り口の中に移動をしていく。

しかし、そうは問屋が卸さないようだ。

 

「ヴヴヴヴ……」

 

背後から俺たちに攻撃しようとしているのがなんとなくわかる。

そう、やつは門番なのだから。

だけど俺たちは振り返って迎撃などしない。

 

「お前の相手はこの僕だぁ!!」

 

 

ガキィィィッ!!

 

 

炸裂する金属音をバックに聞きながら、俺たちは先へと進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキィィィィッ!!

 

 

「ちっ、ファーストアタックは失敗か!」

 

振り返りもせずに易々と杖による攻撃を防御する門番。

スコールは忌々しげに舌打ちをしながら距離を離す。

 

「不意打ちは通用しない、か」

「ヴヴヴヴ……」

 

あっさりと深追いをせずにスコールの方を見る門番。

どうやら門番としての本懐は忘れていないらしい。

距離はスコールなら2歩くらいで詰められる距離。

遠くもなく近くもなくだ。

 

「さて、ちょうど新しく貰った杖の性能を試しておきたかったところだった」

「ヴヴヴヴ……」

「悪いが、その試験体になってもらう」

 

構えた通常局員用の杖を後ろに放り投げ、ポケットから一枚のカードを取り出す。

薄いカードに様々な模様が描かれ、真ん中には深紅の宝石が埋め込まれている。

 

「相沢と再戦する時のために、隠しておいたが……

あいつがいない今なら、存分に力が振るえる――――そうだろう?」

 

返事の変わりに金属製のカードが光る。

 

「そうだろう? 『ネオ・ホーネスト』」

 

スコールの問いに答えるように、一瞬にしてカードが杖の形状へと変化する。

形は正確には杖というよりも槍に近く、真ん中の宝石を守るように脇から刃が囲っており、刃の根元には左右に二基のブースターが備え付けられている。

魔術を使用するというよりも、杖自体で戦闘を行うことを前提に作られたようなつくりだ。

 

「ネオ・ホーネスト、『サンライズ・ゲイボルグ』

 こいつの一撃は痛いぞ?」

 

ブースターを起動、火を噴いたブースターの動きに合わせるように、スコールも疾走する。

殺人的な加速で門番の前へ肉薄すると、そのまま杖を突き刺す。

門番はそれを右腕で受け止める。

一点集中の一撃は容易くその金属の腕を貫く。

 

「ヴヴヴヴ……」

「貫けぇ!」

 

Sunlight Buster. Type-B

 

ゼロ距離から槍の切っ先から生じた光線を打ち込む。

耐久力を誇る門番もさすがにこれは効いたらしく、受け止めた腕が木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 

Booster Reverse.

 

右腕を吹き飛ばしたと同時に門番は左腕を振りぬく。

しかし、これはブースターを逆反転させあっという間に距離を離すスコールには当たらず、空しく空を切った。

 

Sunlight Buster. Type-A

 

再びネオ・ホーネストの切っ先から光線が放たれる。

的確に狙われた光線は狂いなく、目標の腹部を貫通した。

衝撃の風圧にあっけなく倒れる門番はそのままピクリとも動かない。

 

「ふん、練習台にもならないじゃないか」

 

杖を肩に担ぎ、スコールは愚痴る。

どうやら、あっけない幕引きが不満らしい。

 

「まぁ、戦闘も終わったことだ。早く相沢達と合流せねばな」

 

前を走る祐一達を追うため、悠々と動かぬ門番の脇を歩いていこうとするスコール。

―――しかし

 

 

ブシュゥッ……

 

 

「がはっ?!」

「ヴヴヴヴヴ……」

 

破壊された右腕も、腹部に開けられた傷も完治した門番の右腕が、スコールの腹部を貫いていた。

口から血を吐き、その場に膝を付きそうになるスコール。

そんなスコールに門番は追撃の手を緩めない。

 

「ヴヴヴヴヴ……」

「くそ……油断したか」

 

よく見ると、右腕は先程までの人間味を帯びた物ではなくなり、鋭利な、フランス料理などで使われるナイフのような形状に変化していた。

振り下ろされる右腕。

 

「ちっ、ホーネスト!」

Boost fire.

 

それをブースターを使用して緊急回避する。

しかし、急にかけられた衝撃に体が耐えられないのか、苦悶の表情を見せる。

 

「ヴヴヴヴ……」

「はぁ、はぁ……そ、そうか……さっきの腕が伸びたときといい、お前の正体は液体金属の塊か!」

 

先程の攻撃でスコールは破壊したと勘違いをしていた。

しかし実のところ、門番は自ら部位を破壊することで、ダメージを最小限に押さえ込んでいたのだ。

倒れたのは、機能を停止したのではなく、殺しきれなかった衝撃で倒れてしまっただけで、結局、スコールは門番にはほとんどダメージを与えていなかったということだ。

それに引きかえスコールはその勘違いのせいで深手を負い、門番は液体金属の性質なのか、回復、強化してしまう始末だ。

戦況は完全に逆転していた。

 

「げほっ! はぁ……はぁ……」

 

黒い服で目立たないが、腹部からは血がとめどなく出ている。

このままでは倒れるのも時間の問題だろう。

 

「……ヴヴヴヴヴ」

 

門番の左腕が変化する。

人のそれだった腕が粘土細工のように変化を遂げ、長い砲身のような筒状に変化する。

 

「まずいな」

「ヴヴヴヴ……」

 

 

ドォォォン! ドォォォン!

 

 

左腕から放たれた2発の金属の塊。

弾速はそこまで速いものではないからか、ブースターでそれを回避する。

しかし体の負担が大きいブースターは怪我している身には多用は厳禁だ。

次々に放たれる塊をブースターの反動が少ない最小限の動きで回避していくスコール。

しかし、それが裏目に出た。

 

 

パァァァァン!!

 

 

「しまっ?! 炸裂弾か!」

 

金属の塊が音を立て破裂し、その破片がスコールに襲いかかったからだ。

それまで最小限の回避で済ませていたスコールに、広範囲に攻撃ができる炸裂弾は効果的だった。

威力は低いものの、その炸裂した破片の3割近くを食らったスコール。

服を多少傷つけた程度で深手になっていないのが現状で唯一の幸いか。

 

「ヴヴヴヴ……」

「はぁ……なかなかやるじゃないか。だが、そうでなきゃ僕もこいつを持ち出した意味がない」

 

Sunlight Buster. Type-C

 

宝石に浮かび上がる文字と同時に、切っ先に魔力が集まりだす。

腹部を血で滴らせ、荒く息をつきながらスコールは杖を門番へと向けた。

 

「はぁ……はぁ……貴様にクイズを出してやろう。

Type-A は貫くことに特化した光線。

 Type-Bは爆発させて複数の相手を巻き込むことに特化した光線。

 じゃあ、このType-Cは何に特化したものか、わかるか?」

「ヴヴヴヴ……」

「ふっ、げふっ……そうだったな。貴様は言葉を話すことができなかったな。

 ならば……答えを教えてやるから刻み込め」

「?!」

 

切っ先に膨大な魔力が赤みを帯びて集まっていく。

その大きさは既にスコールを飲み込めるほどにまで膨大し、まだ大きくなっている。

それを前方の門番に向けて発射する。

ゆっくりと全てを呑み込んで進む、極太の魔力の筋。

門番はなす術もなくその光線に呑み込まれていった。

 

Type-Cは消滅させることに特化した光線。

 いくら液体金属とはいえ、物質自体が無くなってしまえば―――」

 

ドゴォッ……

 

 

「……ヴヴヴヴ」

「が、は……な、なぜ?!」

 

いきなり床から生え出た拳に高々と飛ばされるスコール。

拳は姿を人型に変える。紛れもなく門番だった。

 

「ヴヴヴヴ……」

 

門番は容赦なく左腕の形状を大口径の筒に変化させる。

自由落下を開始しているスコールに狙いを定める。

 

「ヴヴヴ……」

「くそ! 『wall』!!」

 

門番の発射した弾丸とスコールの防御魔法が同時に発動する。

結果は金属の弾に魔力の盾が辛うじて勝り、攻撃は防がれる。

スコールはその間に体制を整えて着地する。

着地の瞬間に腹部から血が飛び出るが、スコールはそれを黙殺するように笑う。

 

「なるほど、床一面が金属でできているここはお前の格好の戦場というわけか」

「ヴヴヴヴ……」

「更に床から金属を取り込むことで自らも回復・強化するわけか。

 ―――それならば!」

 

スコールは杖を構えなおす。

二基のブースターがけたたましい咆哮をあげる。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

先程よりも格段に速いスピードで門番に近づく。

そのスピードに防御ができないと悟ったのか、門番も迎撃するように右腕を振りぬく。

 

 

ザクシュゥッ!!

 

 

「うぐっ?!」

「……ヴヴヴヴ」

 

相討ち。

門番の腹部にはスコールの、スコールの腹部には門番の得物が突き刺さる。

しかし、それを無視してスコールは深く杖を捻り込む。

捻り込むことによって、スコール自身にも門番の得物が腹部に食い込み、ぽたぽたと血が落ちる。

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

「?!」

 

深く食い込ませた杖を使って、門番を宙に浮かす。

門番の足が金属でできた床から離れる。

空中で暴れまわる門番を見て、スコールはニヤリと笑った。

 

「それならば、金属に触れていない空中ならお前は回復できない。違うか?」

「?!」

 

門番は咄嗟に左腕を構え、ロクに狙いもつけずに発射する。

至近距離から放たれた金属の塊はスコールの頭部に直撃、頭からも出血を起こし、体を斜めに傾けさせるが、手から杖を離さない。

 

 

「……こいつで……終わりだ」

「!!」

「ネオ……ホーネストォッッ!!」

 

Sunlight Buster. Type-C

 

 

切っ先に魔力が集まる。

集まる魔力に飲み込まれ、門番の体が崩壊を起こし始める。

 

「消え、失せろぉっ!!」

「ヴヴヴヴ……」

 

光の奔流に飲まれ、塵と化していく門番から一つの宝石が飛び出す。

宝石は弧を描き、反動で叩きつけられたスコールの手元にすぽっと収まる。

 

「No.14、『metal(メタル)』……ユンカースだったか。

 道理で理不尽な能力だ」

 

宝石に刻まれてあった文字を読み、スコールは納得する。

 

「だが、あれほどの強さのユンカースなど今まで見たこともない。

 契約した魔術師の力でユンカースの力も変わることがあるとでもいうのだろうか?

 ディアボルガ……恐ろしいやつだ」

 

スコールはそう言うと、上に持ち上げていた腕を力なく下ろし、大の字になる。

 

「ダメだ。血を流しすぎた……少し休ませてもらおうか」

 

腹部から溢れる痛みに歯を食いしばり、スコールは目を閉じる。

 

初戦はアースラ側に軍配が上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

J「うはっ、久々すぎてやばすぎだろ。これ」

フィ「ここまで血みどろな戦闘、JGJにしては珍しすぎるです」

J「なんというか、死闘を書きたかった」

フィ「それでこのできですか」

J「は、鼻で笑うなよ〜!」

 

補足

扉破壊の際にフェイトがサンダークラッシャーと叫んでいますが、これはただ単に祐一のアカシッククラッシャーに語尾を合わせたためで、威力、効果はサンダースマッシャーとなんら変わりはありません。

 

 

杖紹介

 

ネオ・ホーネスト 『サンライズ・ゲイボルグ』

スコールの新しい杖で、祐一のレイバルト・バリアントのデータを流用している。

魔術を行使するというよりも突き刺して使うように作られているのか、形状は槍のようになっている。

刃の根元に二基のブースターが装備されており、これは360度どのようにも変更することができるため、肉体が耐えられるならば、慣性を無視したような動きも可能である。

使用魔術はレイバルト・バリアントの内臓魔術を強化したものが多いので、レイジングハートに似たものを使用する。

 

 

魔術紹介

 

パワードアカシッククラッシャー 術者:相沢祐一、ミナ(power)

 

アカシッククラッシャーの『fire』の代わりに、ミナの力を使ったもの。

属性の効果は付かないが、純粋な破壊力ならpowerの力を使用している分、こちらの方が強力なものになっている。

 

 

Sunlight Buster. 術者:スコール

 

レイバルト・バリアントのSunrise Arrowの強化版のようなもの。

その後に付く『Type-○』の○に付く文字によって効果が違う。

Type-Aは貫通させることを重視した光線。

Type-Bは接触後爆発し、多数を巻き込むことを重視した光線。

Type-Cは高圧縮した魔力で相手を消し去ることを重視した光線である。

 

どれも光線のためか、連射は不可だが、威力は非常に高い。

 

 

 

 

 

 

 

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2006年3月16日作成