「……ねぇ? スコール」
「……なんだ?」
北の街に降り立ったフェイト、アルフ、スコール。
その内の黒いワンピースを着たフェイトが同じように黒を基調としたTシャツを身に纏ったスコールに話しかける。
「今頃、なのは達って『オキナワ』って所にいるんだよね」
「あぁ、そうらしいな。何でも、海が綺麗な場所だと聞いているが」
「海……海っていうと、なのはと戦ったくらいしか思い出がないな……」
「あたし達は山の方でよく遊んでたからねぇ」
「そういえば、僕もそんなに海に行った記憶は無いな」
「オキナワ、いいなぁ……」
「……そうだな」
「オキナワ、行きたいなぁ……」
「…………そうだな」
「ま、まぁ、なのは達は祐一の護衛するのも含まれてるわけだから、一概にオキナワに行くのが良いとはいえないんじゃないかねぇ〜」
着ている服の黒さよりも濃い負のオーラを出してる2人に、慌ててアルフがフォローを入れる。
「そうだとしても羨ましいことには変わりないよ。アルフ」
「そうぞ。それに僕達はそのオキナワに行った相沢達の代わりに、ここでのディアボルガ勢の動きの監視」
「一回、リンディさんとはゆっくり話し合わないといけないね。スコール」
「そうだな、フェイト。俺達諸々の待遇については、僕も一言、忠言したいことがある」
「ふ、ふふふ……」
「はははは……」
「あ、あははは……」
この後、リンディの所に2人が行っても、あたしのせいにしないで欲しいと切に願うアルフだった。
魔法青年 相沢祐一
36幕『魔法青年 IN 沖縄』
「着いたぁーーー!!」
時刻は午前11時。
那覇空港を出た俺は両腕を天井へ向けて突き上げた。
「テンション高いですね。祐一さん」
「そりゃあ、沖縄だからな。ビバ沖縄! OK沖縄! イッペーカナサン沖縄!!」
「これはテンションが高いというよりかは壊れてると呼称した方がいいと思います」
「……なんか、恥晒してるみたいで恥ずかしいわ」
「他人のフリしましょう、皆さん」
なんかすごく酷い言われようだ。
いじけてやるぞ?
「はいはーい、皆さん、目的地である那覇に到着しました。
向こうに車を用意してありますので移動しましょう」
佐祐理さんの先導の下、俺達は到着ロビーを抜けて外へと出る。
空には雲一つ無い青空。
絶好の休暇日和だな。
「それでは、3人ずつに分かれて乗り込んでもらえますかー?」
少し歩くと、一般車の出迎えのスペースのところに3台の高級車が置いてあった。
それにしても3人か。
その言葉を佐祐理さんが発した途端に皆さんの目の色が変わった気がするんですけど……
「「祐一さん! 一緒に乗りましょう!!」」
動いたのは同時だった。
フィアとなのはちゃんがほとんど同時に俺に対してそう誘ってくる。
「なのはさんはユーノさんと一緒に乗ってればいいじゃないですか?」
「はい、だから私とユーノ君と祐一さんで3人ですよ、フィアちゃん?」
怖ぇ……
2人とも笑顔なんだけど目が笑ってねぇ……
なんだか知らんが俺を争いに巻き込まないでくれ。
「あ、あたしはabsoluteとdreamと一緒に乗ろうかなぁ〜」
「賛成です。それはもう大賛成です」
「今、この2人を敵に回すのは得策じゃないものね」
「「しっ!」」
「……それじゃあ、私達は向こうの車に乗り込んでいますので」
そういいながら奥の車へとさっさと移動してしまう守護者ーズ。
ちっ、混ぜてもらおうと思ったのに。
こうなったら佐祐理さんにヘルプしてもらうしか―――
「祐一さんは佐祐理とミナちゃんと乗るんですよー」
「えっ!? あの? さ、佐祐理様?」
さ、佐祐理さ〜ん。
なんでそんな火に油どころかニトログリセリンを注いじゃうんですかぁ〜?
遊び心も大概にしてくださいよ?
「丁度祐一さんにお話をしたいこともあるので、祐一さんを貸してもらえませんか?」
「……わかったです。少しだけなら貸すです」
貸すって、俺は物じゃないんだから。
でも佐祐理さんと一緒なら問題は起きなさそうだ。
「それじゃあ僕達で一組、祐一さんの所で一組で行きましょう、行くよ2人とも」
「わわ、ユーノ君、引っ張らないでよ〜」
「必ず返してくださいですよぉー!」
「あ、あはは……」
ユーノ君が2人を引っ張って、もう一つの車に乗り込むのを苦笑いで見送った後、俺は佐祐理さんに向き直る。
「ありがとう。佐祐理さん」
「ふえ?」
「俺がなんか知らないけれどピンチだったから助け舟を出してくれたんだろ?
それと早いけど、俺達を沖縄へと連れてってくれたお礼」
「気にしなくてもいいですよ。それに、お話したいことがあるのは本当ですから」
「そうなんですか?」
「はい、それじゃあ乗り込みましょうか。
ほら、ミナちゃんも」
「はい」
俺達も乗り込み、3台の車は市内へと走り出したのだった。
―夏だ! 海だ! 太陽だ!!―
そんなフレーズを口ずさみたくなるような気温、海の美しさ、天気。
車に揺られて20分少しで佐祐理さんの家の別荘に到着した俺達は荷物の整理もそこそこにして、目的である海水浴をする為に別荘の前にあるプライベートビーチへと行くことになった。
というわけで、数少ない男手(まぁ、俺よりも力がある人はいるが)である俺とユーノ君が先に砂浜に出てパラソルやらなんやらの準備をしている訳だ。
しかし、どうにも集中できない。
原因はわかってる。さっき車の中で佐祐理さんにいわれたあれだろう。
「それで、話ってなんですか?」
「はい、祐一さんに頼みたいことがあるんです」
「頼みたいこと?」
車内、広々とした座席に深く体を埋めながら、俺は隣に座っている佐祐理さんに話を聞く。
一瞬、告白でもするのかと思ったが、どうやら杞憂で済んだみたいだ。
……いや、それはそれで現実に起きたら嬉しいことだから杞憂とは正確にはいわないのだろうが。
「祐一さん」
「は、はい」
佐祐理さんが急に畏まった口調になったのでついつい俺も畏まってしまう。
「佐祐理を……祐一さんの弟子にしてください!」
「…………はい?」
佐祐理さんの言葉に開いた口が塞がらない俺。
弟子? 一年で一番日が長い日……は夏至か。
「佐祐理も何か役に立ちたいんです。
祐一さんとミナちゃんの友人としてお手伝いをしたいんです」
「ダメです! 佐祐理様!!」
「ミナ……」
「危険です。佐祐理様は私やご主人様とは違って、一般人なのですよ?」
「ミナに悪気が無いというのはわかるんだけど、できれば一般人という言葉を使うのは止めてくれ、一応俺も一般人だから」
「あっ、すみませんご主人様……と少し話がそれましたが、佐祐理様、私達はそのお気持ちだけで十分ですわ」
「そうそう佐祐理さん。それに俺達は他の人をこれ以上巻き込みたくないんだ」
もう、俺のせいで誰かを傷つけたくない。
誰かが傷つくなら、代わりに俺が傷つくだけの覚悟、そんなの既に腹を括っている。
「でも佐祐理は悔しいんです。フィアちゃんやなのはちゃん、ユーノ君だって頑張っているのに、佐祐理だけ事情を知っているのに見て見ぬフリなんてできないんです」
「そうだとしても、佐祐理さんが俺達のような力を持っているならいざ知らず、魔力の無い佐祐理さんには―――」
これから戦いが激しくなるだろう。
もし、そうなったら俺達は佐祐理さんを守れる自信が無い。
そう続けて口にしようとした時、ミナが口を開いた。
「待って下さい、ご主人様。佐祐理様に魔力が無いと決め付けることは難しいですわ」
「へ?」
佐祐理さんに……魔力が?
いや、確かにこの前の戦いの時にそうなんじゃないかと感じる所があった。
結界の発動の感知―――封時結界内への侵入―――どちらも魔法の素質が無ければ無理だ。
「私を拾った時も、きっと私の無意識の内に出していた微弱な魔力の波動を感知したんだと思います」
「そうなのか? 佐祐理さん」
「はい、なんかいつもと違う感じの空気を感じて足の向くままに走ったら、ミナちゃんがいたんです」
ということは、佐祐理さんは魔法使いになれるということなのか?
あんまり俺は魔法に精通していないからよくわからないのだが。
「佐祐理は諦めませんよ。祐一さんの首を縦に振らせるまで、ずっとお願いし続けますから」
「まいったなぁ……どうしよう? ミナ」
「私は絶対反対です。前の主人といえ、危険な目に合わせるわけにはいきません」
「佐祐理だって、ミナちゃんをそんな目に合わせる訳にはいきませんよ〜」
うーむ、一進一退。
佐祐理さんって見た目に似合わず頑固そうだもんなぁ……
ミナは会った頃からなんか頑固っぽいところがあるって感じる所があったし。
……本当にどうしようか?
「祐一さん」
「のわっ!?」
気がつくと、ユーノ君が俺の顔を覗き込むように立っていた。
どうやら、佐祐理さんの件でかなり深刻に考えていたらしい。
「どうしたんですか? 祐一さん、らしくないですよ」
「すまん、考えごとしててな、さて、パラソルを立てるか」
「はい」
ユーノ君と力を合わせてパラソルを立てる。
数分も立たない内にその作業も終わり、他の作業も恙無く終了すると、俺達はパラソルの下に敷いた、黄色のレジャーシートに腰掛ける。
「しかし、女性の着替えは長いというのは本当だな。男ならこうも遅くはならないし」
「そうですね」
「そういえば……水着あったんだな。ユーノ君もなのはちゃんも」
フィアは適当に佐祐理さんの方で見繕ってくれるといってたからいいんだけど。(守護者の4人は服の形状を変えればいいだけの話だから論外)
「いえ、僕やなのはは倉田さんに適当に見繕ってくれたものを借りてきました」
「あぁ、俺と同じか。適当な割には似合ってるな。ユーノ君」
ちなみにユーノ君の水着は緑色の、俺は青のトランクスタイプだ。
「ありがとうございます。祐一さんも似合ってますよ」
「はは、お世辞でも嬉しいよ」
「祐一さ〜ん」
ユーノ君と雑談していると女性陣の着替えが終了したらしい。
元気にやってきたのはなのはちゃんだった。
「どうです? 祐一さん、ユーノ君」
俺とユーノ君の前に立つとくるっと回るなのはちゃん。
なのはちゃんが着ている水着はピンク色のワンピース型だった。
縁についているフリルのようなものが年相応な印象を与えさせてくれる。
「似合ってるよ。なのは」
「おー、たしかに似合ってるな。なのはちゃん」
今更なんだが、なのはちゃんってピンク系統の色が似合うよな。
「そうですか? それならよかったです」
「ふふふ、ワンピースだなんてまだまだ子供です」
「にゃっ!?」
なのはちゃんの次に現れたのはフィアだった。
フィアは全身を覆うなのはちゃんの水着とは違って露出度の高い、黄色のビキニタイプを身に着けている。
決して水着に着られてるという訳ではなく、上手く着こなしている。
だが……
「……ふっ」
「は、鼻で笑ったですか!?」
「フィアのようなまな板で、俺を誘惑するなど1万年早いわ!」
「で、ですっ!?」
フィアのような起伏の無いお子様にはビキニは似合わないというのが俺の信条だ。
……スクール水着だったら危なかったのはここだけの秘密。
「でも、よく似合ってるよ?」
「まぁ、それは否定しないな。似合ってる」
「えへへ〜です。どうですか、なのはさん。
祐一さんに似合ってるといわれたですよ」
「わ、私だっていわれました!」
「全く、二人とも大人気ないわよ?」
「喧嘩してもいいですが、もう少しボリュームを抑えられませんでしょうか?」
「……太陽が眩しいわ」
「佐祐理様はまだ支度中のようでしたので、先に来ました」
喧嘩する二人を制するようにかかる声。
振り返ると、黒のホルターネックを纏ったエレナさん、白の普通のワンピースのabsolute、カラフルなワンピースの上にTシャツを着て、頭に麦藁帽子を乗せたdream、薄いオレンジのワンピースのミナがやってきた。
「「……」」
「あら、どうしたの?」
「……理不尽だよね? フィアちゃん」
「だいじょぶです。私達にはまだ未来があるです」
先程まで喧嘩していたのにあっさりとテンションが低くなる二人。
その視線は、エレナさんの胸と自分達の胸を交互に見ている。
「そうそう、牛乳飲みなさい。牛乳」
「欝にしたあなたがいうことではないと思いますが? time」
「皆さん揃いましたかー?」
「あ、倉田さ―――ぶっ!?」
「ど、どうした!? ユーノく―――ぶはっ!?」
鼻を抑えて蹲るユーノ君に釣られ、俺も佐祐理さんの方を見たが、すぐに視線を逸らす。
最後にやって来た佐祐理さんは、黄緑と白のマス目の三角ビキニを着ていた。
エレナさん程の胸はないのだが、露出度はこちらの方が高いので、佐祐理さんの方が官能的に見える。
しかもこっちに走ってくるから胸が揺れて、更に煽情的な光景に仕上がってると来た。
ふとユーノ君を見ると、鼻から赤い一筋の線が出ている。
純情だなぁ……まぁ、あの光景を直視したもんな。
「全員揃ってますよ。佐祐理さん」
「ふえ? なんで祐一さん、佐祐理の目を見て話してくれないんですかぁ?」
自分の胸に聞いてみてください。
「……座布団一枚」
「absolute?」
「いえ、なんでもありません」
後書き
J「大変だった」
フ「おつかれです」
J「なに今月PS強化月間(書き始め当時11月1日)なのにコレ書いてるんだろう……とか、演劇のお手伝いが激しくなってきたなぁ……とか、もうすぐ推薦入試だなぁ……とか、昔の作品をパソコンで見つけて読んでいたら相当痛くてorzしてたりとか」
フ「鬱々ですね」
J「本当、最近鬱々よ。この一ヶ月間、これが立て続けに起こってHPを閉鎖しようかしまいかマジで考えた」
フ「ま、これを書いたということは立ち直ったってことでしょうから、いいと思いますですが」
J「若気の至りってよくあるよな?」
フ「後悔先に立たずですよ」
J「さて今回は季節を大幅に無視して、水着を出してみました」
フ「そですね。何気に私が一生懸命背伸びしてる所とかはJGJにしては考えた方じゃないですか?」
J「そう言ってくれる優しさが痛い……」
フ「?」
※感想・指摘・質問がございましたら、BBSやmailにてお願いします。
P.S.
J「水着の名称に関しては個々で調べてください。自分、こういうの疎くって疎くって」
フ「なんか専門用語ばっかですね」
J「あとabsとdreamの名前の方はあと2、3話は以前の名前で行きたいと思います」
フ「突然変わったら変ですから〜」
2005年12月30日作成