夕闇に染まる住宅街。その遙か上空に三人はいた。

その中の髪を緑に染めた男が口を開く。

 

「反応はどうだ? ルドラ」

「バッチリですぅ、間違いなくここにいるよぅ」

「ナら、とっトと回収しちまおうゼ」

「落ち着け、アグニ。ここの屋敷はセキュリティーは旧時代以下の物であるが、これだけ大きい屋敷、何があるかはわからない。暫くは様子見だ」

 

緑髪の男がそういうと、アグニと呼ばれた男は不機嫌な顔になる。

 

「あァん? そんなこといってたら何もできねぇじゃねぇか!」

「り、リーダーに文句はいわない方がいいよぅ……」

「うるセぇ! チビがいっちょまえに俺に指図スんじゃネぇよ!!」

「ち、チビっていうなぁ!」

「あー、二人とも? 落ち着け。それなら、一人あの屋敷に潜入し、確認後突入でどうだ?」

 

リーダー格の男の提案にひとまず喧嘩を止める二人。

 

「いいですよぅ。それ賛成ですぅ」

「イいんじゃネぇの? どうせ回収なんて、俺一人いりゃ十分だと思ってたシよ」

「よし、決まりだ」

 

そこで話を区切ると、遙か下にある目標―――倉田家を見下ろす。

 

「さぁ、狩りの始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

魔法青年相沢祐一

32幕『力』

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふふ〜ん♪」

 

口笛を口ずさみながら屋敷の中を闊歩する一人の少女。

髪は透き通っているような水色で瞳も同じ。

全体的に整った顔立ちをしているが、その顔や体格には幼さが見え隠れしている。

年齢的にはまだ16いっているかいないかくらいだろう。

そんな彼女の名は、ルドラ。先程の三人組の一人である。

 

 

 

 

「ふんふふ〜ん♪ アグニがジャンケン弱くて助かったよぅ♪」

 

どうやら、彼女はジャンケンで潜入捜査の役目をもぎ取ったらしい。

先程の光景とは打って変わって、何か凄く親しみやすい。

 

「でもぅ、潜入操作って何やればいいんだろうね? リモコンとかでも探せばいいのかな?」

 

微妙に意味を履き違えて考えてるルドラ。

この子はどこかネジが抜け落ちていると思ったのは作者だけじゃないだろう。

 

「……い〜や、とりあえず、リモコンを探して動かせばいいんだよねぇ〜簡単簡単♪」

 

結局、意味を履き違えたまま作戦を開始してしまうルドラ。

きっと当初の目的もどこか間違えているのだろう。

 

「リモコ〜ン、リモコ〜ン、リモコンコン♪」

 

もう、何もいうまい……

一応断っておくが、彼女の目的は潜入捜査なので主に偵察をすればいいわけで、決してリモコン探しではない。

そんなこんなで歩き回るルドラだが、一般的に豪邸と呼ばれる倉田邸で、特に宛もなく歩き回れば―――

 

 

「うーん、ここって何処ぉ?」

 

 

五分後、彼女は迷子になっていた。

 

 

 

 

 

「うぅ、リモコンどこぉ……」

 

少し涙目になりながらも、当初の目的(?)を果たそうと頑張るルドラ。

なんか段々可哀想になってくる。

 

 

 

ドサッ

 

 

 

「はぅ!?」

「あっ、すいません……って女の子?」

 

廊下の曲がり角で誰かにぶつかって尻餅を付くルドラ。

その誰かとは、佐祐理とのお喋りの途中でトイレに立った祐一だった。

 

「うぅ、お尻がいたいぃ……」

「す、すまん! 俺がよそ見して……ほら、立てるか?」

 

倒れたルドラに、せめてもの償いとばかりに笑顔で手を差し伸べる祐一。

 

「……ぁ」

「ん? どうした?」

 

一方のルドラは呆けた顔で、視線は祐一の顔と手をせわしなく行ったり来たりしている。

 

「ほら、立たないなら、もう行くけど?」

「ふぁっ!? あっ、立ちますぅ! 立ちますぅ!!」

 

慌てて手を掴むルドラ。

その動作に苦笑を漏らしてしまう祐一。

 

……やっと見つけた、ルドラのおうじさまぁ

「ん? 何かいったか?」

「ううん、何もいってないよぅ……それで、お兄さんの名前は何ていうの?」

「お、俺の名前か?」

「うん。親切にしてもらったしぃ……お名前を聞きたいのぉ」

「俺は相沢祐一っていうんだ。よろしくな」

「ゆう……いち?」

 

何か引っかかるのか、首を捻って思い出そうと努めるルドラ。

 

「俺の名前に聞き覚えでもあるのか?」

「ん、気のせいだよねぇ……うん。それじゃあ、祐一様って呼びますぅ」

「ゆ、祐一ぁ!?」

 

いきなり付けられた在り得ない敬称に、素っ頓狂な声で返す祐一。

 

「はいぃ、祐一様はぁ、ルドラの王子様ですからぁ。

あ、ルドラというのはルドラの名前ですぅ」

「お、王子様……ねぇ」

「それじゃあ何か忘れてる気がしますけど、ルドラはこれで失礼しますぅ。また会いましょうねぇ」

 

ルドラは礼儀正しくお辞儀をすると、トコトコと廊下を駆け出して行ってしまった。

 

「……あの子も佐祐理さんが拾った子だろうか?」

 

祐一は佐祐理を待たせてはいけないと思い、深くは考えなかった。

しかし、この後すぐに彼女と再会しようとは、この時彼は思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

私に宛がわれた勿体無いほど広い部屋で、一人、手を見つめる。

あの人―――佐祐理様は祐一と呼んでいたあの方からは魔力を感じられた。

そう、あの人は間違いなく魔法使い。

私の……敵。

 

 

 

だけど、何かがひっかかる。

 

 

 

もし、私に接触する為に佐祐理様に紹介してもらったのなら、魔力を全くもって隠そうともしなかったのは何故?

あえて、垂れ流すことによって、私の警戒を誘っている?

いや、そんなことをする意味がわからない。

 

わからない……全く持ってわからない……

 

もしかして、私に気付いていない?

まさか、私を捕まえようとしている程の魔法使いが守護者の魔力の感知すら出来ないのは致命的だ。

 

それじゃあ、あの人は、魔力を持ってるだけのただの人間だとでもいうのだろうか?

あの人のことを、信用してもいいのだろうか―――?

 

 

 

ドォォォォォォン!!

 

 

 

「!?」

 

突如、轟音と共に窓が打ち破られる。

そこから現れた影。

もう、かぎ付けて来たというのですか?

 

「また、あなた達ですか」

「またとはご挨拶だな」

「全く手間かけさせヤがるぜ」

 

私が悪態をつくと、現れた二人はそう答えを返す。

―――二人? たしか彼らは三人だったはず。

 

「おっと、暴れても無駄だ。既にこの部屋には俺が封時結界を張ってある」

「あのチビがいネぇせいで、完全な結界にはなっちゃいネぇが、手負いのお前一人、俺達で十分だぜ」

「……」

 

確かに、私はまだ完全に力が回復している訳じゃない。

今のところなら全開でも通常の半分位しか出せないだろう。

その程度の力じゃ奴らには敵わないし、逃げ切れる自信も無い。

なら、どうする?

 

「……ここは腹を括りましょうか」

「随分とあっさりしてるな」

「ナんでも構わネぇよ。本人が腹ぁ括ってンなら、さっさと連レてこうぜ?」

「あなた達、なにか勘違いをしておいでですね」

「「?」」

 

「私はあなた達に捨て身で挑むといっているのですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ……暇です」

 

口に前足を当て、欠伸をする芸の細かい猫―――もといフィア。

 

 

ガチャッ

 

 

「あら、フィアちゃん。今日は珍しく起きてるのね?」

「にゃ〜」

 

ドアを開けて入ってきた秋子に取り繕うように鳴くフィア。

 

(何の用でしょう?)

 

秋子は腕に抱えていた小さな小包を机の上に置いた。

どうやら祐一宛の小包を置きに来たらしい。

その後、秋子は唐突に机の引き出しを開ける。

そこには一冊の雑誌のようなものが入っていた。

 

「ふふっ、祐一さんも色を知る歳になったんですね……」

 

(?)

 

フィアは意味がわからないといった風に首をかしげる。

秋子はその雑誌を元の引き出しの中に戻す。

その時、フィアはその表紙をちらと窺い知ることが出来た。

そこには……彼の名誉の為に敢えて表記はしないが、男の性がわかる物とでもいっておこう。

 

「後で、晩御飯を持ってきてあげるわね」

「にゃ〜」

 

フィアが一声鳴くと、秋子は微笑んで出て行く。

秋子が階段を降りる音を確認してからフィアは人間形態に姿を変える。

 

「ふ、ふふっ……祐一さん、あとでお仕置きです」

 

不敵な笑みを浮かべながら小包に近寄り、その包装を解く。

中から出てきたのは青い宝石と、それを挟むように添えてある二つの石、そして一枚の手紙だった。

 

「時空管理局も意外に原始的な方法を使うですね。なんかこう空間を飛び越えて〜、みたいなのを想像してたですが」

 

二つの魔石を手にとって見る。片方には『No.18 wind』、もう片方には『No.1 absolute』と彫られている。

 

「祐一さんがこの前dreamを持って来たですから、これで十五個目ですね。

copyを抜くと、あと五個ですか」

「……そういうことになりますね」

 

声と共に片方の魔石が光り、メイド服を来た一人の少女を形作る。

これがabsoluteがこの世界で使っている姿。

守護者ならではの特権だ。

 

「ご無沙汰です。フィア様」

「absoluteも元気にしてたですか?」

「えぇ、それにフェイト様や局員の方々と合同で訓練したり、とても有意義でした」

「へぇ〜、そだったですか」

「はい。それで、相沢様は?」

 

キョロキョロと辺りを見回しながら、これから主人となるべき人の所在を問うabsolute。

 

「祐一さんならまだ帰ってないですよ」

「あら、残念。祐一と話でもしたかったのに」

「……いつの間に人間形態になったですか? エレナさん」

 

二人の会話を遮るように、timeことエレナが口を挟む。

 

「祐一君の話を疑うわけじゃないけれど、まさか本当に二人も守護者を仲間にしてたなんて驚きだわ」

「ど、dreamもですか……」

 

エレナ同様、いつの間に人間形態になったのか、dreamも話に参加してくる。

 

「dream!?」

「あら? 一番気難しそうなあんたがまさか仲間になってたなんて驚きだわ」

「……そんなに私がここにいるのが不思議?」

「いえ、相沢様には私達を惹きつける不思議な力があります。

かくいう私もそうですし、別段、不思議という訳ではないです」

「そうそう。祐一を見てると、どうも力を貸したくなるのよね〜」

「……まぁ、そういうことにしておくわ」

 

『フィア』

 

フィアの脳内に突如響き渡る、少年の声。

部屋にいる人物の中ではこんな声の持ち主はいない。

 

「んにゃ? この声は?」

『フィア、聞こえますか? こちらユーノです』

『あー、ユーノさんですか。それでどうしたですか?』

 

突然の念話に驚きもせずにフィアは念じて言葉を返す。

 

『なのはが怪しい魔力の波動を察知したので、祐一さんに報告をしようと思いまして』

『あー、残念ですけど、レイバルト・バリアントは帰って来たですけど、祐一さんは帰ってきてないです。

たしか携帯を持ってた筈ですけど、番号を知らないです』

 

祐一さんは念話も使えませんし……と後に続けた時に、ユーノが爆弾を落とした。

 

『あ、それならなのはが教えてもらったって嬉しそうにいってました。

 それじゃ、こっちで祐一さんに連絡を入れますね』

『嬉しそう……?』

 

その時、空気は確かに変わった。

なにせ、強者と弱者で分類すれば間違いなく強者に入る守護者の三人がブルっと寒気を感じたのだから。

そして、その空気は向こうにも伝わったらしい。

 

『え、え〜と……場所は―――の辺りです。多分、距離的にはそっちの方が近いと思います。じ、じゃ』

「……ふ、ふふふっ」

「ふ、フィア? ど、どうしたの?」

「なんか、赤ちゃんが見たら泣き出すこと必至な顔をしていますが?」

「……修羅場が見えるわ」

「そ、それって予知?」

「…………女の勘よ」

 

「あ〜っはっはっは、どうやらこの私を本気で怒らせたみたいね」

 

完全にキャラが変わったフィアにドン引きな守護者―ズ。

それに構わず、そそくさと窓を開けて外に飛び出るフィア。

 

「あなた達! 速く行くわよ!!」

「「い、イエス・マム!!」」

 

とりあえず、この戦いが終わったら祐一に念話くらいは教えよう。

守護者である三人はそう心に誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

J「おーはー」

なのは(以下な)「おーはーってなにをやらせるんですかっ!!」

J「いや、起きて間もないしw」

な「それ(午前11時起床)は人としてどうかと思うんですけど……」

J「うるさぃなぁ。スパロボやっててそれどころじゃないんだよ!」

な「光竜と闇竜はでました?」

J「……そのネタは危ないからやめような」

な「?」

J「あー、で、遅くなりましたが、今回フィアが上の様子(激ギレ)なので、今回はなのはさんに来てもらいました」

な「これはメインヒロインの交代と見てもいいのかな?」

J「この状況でそれをいえと? 下手したらぶっ飛ばされるぞ(フィアに)」

な「構わないです。それで私が結ばれるなら!」

J「ぅゎ、黒い」

 

 

 

 

 

 

 

人物紹介

 

 

ミナ

 

公園で疲労困憊のところを佐祐理に拾われた少女。今は倉田家で恩返しの為に働いている。

正体は守護者であるのだが、今のところその力は見せていない。

性格は真面目一本槍で、武士道や忠義を重んじる。

 

 

ルドラ

 

ミナを追っている魔法使い。

偶然会った祐一に自分の理想としている王子様像が重なり、『祐一様』と呼び慕う。

年齢は16歳くらいだが、精神年齢は小学生以下という逆コ○ン君。

いわゆるポンコツ。

好きな食べ物はオムライス

 

 

アグニ

 

ミナを追っている魔法使い。20歳くらい

性格は大雑把で非常に好戦的。

言葉の所々にカタカナが入っているところから精神状態は不安定らしい。

好きな食べ物はタマゴかけご飯。

 

 

 

 

 

 

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2005年7月31日作成