慌しい艦内。

その一角にある医務室でスコールは目を覚ました。

 

「absoluteは……それにここは一体何処なんだ?」




「西地区の第一、第二小隊が転送されてきました!
 absoluteさんがいうにはこれで全員だそうです」


「そうか、先程タワーの方へ行ったチームから艦長に連絡があったそうだ。
 怪我人がいるから至急、タワーの下に人員をよこして欲しいそうだ」


「了解しました。それじゃあ……」




 

扉の外側からそのような会話が聞こえてくる。

absolute……聞き間違いじゃなければそう確かに聞こえた。

absoluteが何処にいるかはわからないがおそらく何かと戦っているのだろう。

 

「行かなければ……僕はabsoluteに酷い仕打ちをしてしまった……」

 

だから謝りたい。それで帳消しになるとは思えないけれど、とにかく謝りたい。

でも何処へ……?

 

「唯一の手がかりはタワーと呼ばれる場所か……」

 

行ってみよう。そう考えたスコールはベッドから這い出て、タワーと呼ばれる場所を目指し歩みを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法青年相沢祐一

27幕『本局(8)〜撤退〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……」

「ク、クロノッ!?」

「クロノ君!!」

 

糸の切れた人形のように倒れるクロノになのはちゃん達が駆け寄ってくる。

 

「クロノ君! クロノ君!!」

「落ち着いて、黒コゲになってるけど息はしてる。防護服のおかげだよ」

「ほっ……よかったぁ〜」

 

俺もほっと安堵の息をつく。そしてディアボルガの方を睨みつけた。

 

「ほぅ……まだ戦うというのか? その根性は見上げたものだが今の貴様では我には勝てぬ。

味方の制止も聞かずに一人で突っ走るような貴様ではな!」

「ぐっ……」

 

悔しいがその通りだ。

確かに今の俺は無力すぎる……だけど!

 

「それでも、お前は倒さなきゃいけない!」

「……ふん、呆れて興醒めしたわ。

貴様、命拾いをしたな……そこの青年に感謝しておけ」

「なっ!? 逃げる気か!!」

「見逃してやるといっている。しかし、貴様はまだ強くなる。

 お前が強くなり、再び戦えるその時を楽しみにしていよう。もっとも、それまでに生きていればの話だが……な。

行くぞ、copy」

「はっ」

 

ディアボルガはそういい残すとcopyを引き連れ、風の様に姿を消してしまった。

 

「くそっ!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

「!?」

「な、なんだ!?」

 

そこから湧き上がるかのような地響きに上からパラパラと降ってくる塵。

……こ、これは!?

 

「まずい!! タワーが崩壊する!?」

 

さっきの戦闘が影響したのか?

 

「ユーノ君、祐一さん! 壁から離れて!!」

 

Divine Buster――Stand by.

 

壁に向かってディバインバスターを放って、脱出口を確保する。

俺はこの時にクロノを背負い込むとユーノ君の近くに寄る。

 

「そういえば、ユーノ君はどうするんだ?」

 

俺となのはちゃんは飛行魔術があるから別に構わないんだが……ユーノ君は飛べるのだろうか?

 

「大丈夫です。ちゃんと手はありますから、やるだけやってみます。」

「二人とも、念話でリンディさんに連絡をつけたよ! すぐに救援が来るって!」

「それじゃ、飛び降りるぞ! 『wing』!」

 

Flier fin.

 

なのはちゃん、ユーノ君、俺の順番で穴から飛び降りる。

 

 

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォン!!

 

 

同時にタワーが本格的に崩壊を始めた。

 

「ユーノ君!?」

 

真っ逆さまに落ちていくユーノ君におもわず叫んでしまう。

 

「間に……合え!!」

 

 

トッ……

 

 

ユーノ君が何かを唱えると、見えない床のようなものが出現し、そこに降り立つとその後もピョンピョン落下静かに地面へと無事に着地した。

 

「ふーっ、フローターフィールド……なんとか成功したよ」

「そんな魔術もあったのか……」

こういうの見ると魔法というのは色々あるんだなと思う。

下を見るとなのはちゃんもとっくに着地しており、あとは俺だけ……

 

 

ガクン

 

 

「ぇ!?」

 

翼を具現化し続けられない!?

さっきの戦いで魔力を使いすぎたのか?

 

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「「祐一さん!!」」

 

翼が消え、重力の為すがままに落ちていく俺。

まずい、落ちる!

 

 

「『ウインドブロゥ』」

 

 

 

ブワァッ

 

 

 

「……えっ?」

 

激突の寸前で一陣の風が俺達の周りを優しく包み込み、そっと降ろす。

一体誰が?

 

「ふん、誰かと思えばお前だったか」

「この声……お前、スコールか!?」

「呼び捨てにするな……どうやら、救援とやらよりも先に到着できたみたいだな」

 

戦闘服とは違うラフな格好で俺の横に立っているスコール。

 

「まっ、一応礼はいっとくぜ」

「ふ、ふん。お前だとわかっていたら無駄に魔力など使わないで済んだものを……」

「『お前』じゃない、俺には相沢祐一って立派でかつ、素晴らしい名前があるんだ」

 

「みんな!!」

「祐一さ〜ん!! 無事でなによりです」

「なのは達も大丈夫?」

「あっ、エレナさんにフィアちゃんにフェイトちゃん! クロノ君が重傷で大変なの!!」

「うん、話は聞いてる。急いでクロノに治療を施さないと……」

「他の人は?」

「お留守番です。まだ何かが攻めて来る可能性も無いとはいい切れないですから」

 

確かに、あのディアボルガだ。何か仕組んでいるかもしれない。

 

「time!? それに神社に居た白い魔術師にフィアだと!?」

「って、あんたが何でここにいるのよっ! アースラで気絶してたんじゃないの?」

「そういえばそうです!」

「アースラというのがあの戦艦みたいなものの名前なら、確かにそこにいた。で、absoluteを探してここまで来たのだが……」

「absoluteならお留守番よ。アースラに戻ればいると思うわよ」

「そんな事より、今はクロノの治療を優先したいんですけど……」

 

エレナさんとスコールの会話を遮るようにユーノ君が話す。

スコールの登場で忘れてたけど、今クロノって結構危険な状態だったよな。

 

「そ、そうね。それじゃ急いで戻るわよ」

 

 

 

 

 

 

 

〜戦艦 アースラ〜

 

 

ウィィィィィン

 

 

「あっ、容体の方はどうなんですか?」

 

出てきた医者らしき人にユーノ君が代表として尋ねる。

 

「命に別状はありません。ですが当分は戦闘は愚か、日常生活も難しいと思いますね……」

「そう……ですか」

「……俺のせいだ。俺が熱くなって無謀な行動をしたから……」

 

自然と自虐の言葉が出てくる。

そう、俺があいつの挑発に乗せられなければ、大切な仲間であるクロノが重傷を負うことも無かったというのに……

 

「祐一君のせいじゃないわ。

クロノはその状況において、チームのリーダーとして最良の選択をしたの……確かに簡単に挑発に乗っかったのは頂けないけどね」

 

リンディさんはそういってフォローはしてくれるけれど、俺はリンディさんに頭が上がらなかった。

だって自分の不用意な行動がリンディさんの息子であるクロノを怪我させてしまったのは事実なのだから。

だから、逆にリンディさんのフォローは俺の心にグサリと突き刺さった。

 

「すみません。少し一人にさせてください」

「あっ、祐一さん!」

 

俺は耐えられなくなって、一人逃げるように医務室を立ち去った。

 





「あっ! 祐一さん……ちょっと私、見てくるです」

「わ、私も!」

「なのはさんはここで待ってるです。ここは私に任せてもらっていいですか?」

……うん」

「それじゃ、不肖フィア・クラッセ行って来るです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

J「当初の予定を総入れ替えしました!」

フ「もう、それくらい悩んだんですね」

J「折角のGWだというのに魔法青年の更新はコレだけになりそうな、そんな感じです」

フ「どっちかというと改訂重視になりそですね」

J「うむ」

 

 

 

 

 

魔術紹介

 

 

フローターフィールド 使用者:ユーノ・スクライア

 

不可視の足場を生成する魔法。

ユーノ達の世界では工事などにも使われる一般的な魔法。

 

 

ウインドブロゥ 使用者:スコール・スティナイト

 

風を下方から巻き起こして相手を吹き飛ばす魔法。(この魔法はwindを使用していません)

威力を弱めればクッションにもなる。

 

 

 

 

 

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2005年5月2日作成