「あの娘は……」


戦闘の合間、ちらとなのはの方を見ると黒い服を着た見覚えのない少女が立っていた。

ちなみにユーノはその間でビックリした様子で立ちすくんでいる。

それにしてもあの娘、今見る限り危害は加えなさそうだけど……


「きっと、なのは様のご友人なのでしょう。リンディ様が話していました」

「ふーん……ってか心を読むのをやめなさい」


あたしの思考を読んでそう話すabsolute。

当然ここまでの会話中、一度も手は止めていない。

まぁ、味方ならこの状況も楽になるから願ったり叶ったりなんだけど


「そうじゃなくても、なのは様の心から満ち溢れるような嬉しさが感じ取れます。

少なくとも敵ではない事は確かでしょう」

「さて、これでいないのは何人だっけ?」

「祐一とフィア、それとクロノの3人よ」


absoluteがそう即答する…………ってあれ?


「absolute、あんたそんなに口調が砕けてたっけ?」

「いいえ、私は何もいっていませんが?」

「じゃ、誰?」


と振り向くと

 

「やっほ〜」


本気のあたしみたいに耳から獣耳を生やした女の人が立っていた。

 


…………あたし?


 

って違うわよね。あたし幽体離脱なんてしてないし


「あなたは……?」

「私? あたしは私。

フェイト―――あっ、あの黒い服着た女の子なんだけど、あの子の使い魔をしてるんだ」

「そうなんですか、私はabsoluteです。そしてこのあなたに似ている人がtimeです」

「ちょっと! 今のあたしの名前はエレナよ! エ・レ・ナ!!」


といいながら飛び掛ってきたガードロボを思いっきり殴りつける。

力を入れすぎたのかガードロボは10mくらい先の他のガードロボ達を巻き添えにして吹っ飛んだ。


「あはははっ、面白いね。あんた達」

「それでクロノって初めて聞く名前だけど、一体誰なの?」


その光景を見てケラケラ笑っているアルフ。

なんかムカッとしたので話題を変えてみる。


「あぁ、クロノは……『僕の事を呼んだかい?』」

「!?」

「……びっくり」

「クロノ、あんたはもう少し伏線とか考えて登場した方がいいよ?」


気配も無く背後から聞こえた声に振り返ると、先程の少女のように黒い戦闘服に似た感じの服を着た青年が立っていた。

年齢からしてなのはよりも年上そうだけど、祐一よりは年下っぽい感じね。

それにしても、守護者に気配を感じさせないなんて相当の腕前か、それとも幾つもの死線を潜ってきたわね……


「absoluteさんには自己紹介したけど、僕は時空管理局戦艦アースラの執務官をしているクロノ・ハラオワンだ。

艦長から話は聞いてる。船を守ってくれて感謝するよ」


クロノは年齢とは似つかわしくない喋り方で私達に軽く礼をすると、すぐにガードロボの大軍の方を向く。


「疲れている所本当に悪いと思うけど、もうひとふん張りよろしく頼むよ」

「ま〜かせて!」

「了解しました。夫の帰る所を守るのが……妻の使命ですから」

「ちょっ、あんたドサクサに紛れて何いってるのよっ!」

「……近い将来の話です。私と相沢様の……」

そこでポッと顔を赤らめるabsolute。

というか、いつの間にabsoluteを落としたのかをあたしは知りたい。

「……」

「あっ、ゴメンゴメン」

「直に相沢さん達も戻るだろうから無理に前に出ない無い方がいいか」


クロノはガードロボの大群に杖を向ける。

 

『スナイプショット』

 

リンディさんの声に似た電子音声と同時に杖から発生した魔力の線のような物が犬型ガードロボを的確に射抜いていく。


「凄い威力ね……」

「魔力を圧縮して貫通力を上げた魔術なのでしょう。

そして線状にする事で弾道を曲げる事もできるようです。

なにより……圧縮すればそれだけ小さくなりますが、使用魔力は少なくて済みます」

「なるほど、この状況には打って付けの魔術というわけね」


とはいうけど、この現状から考えてあたしはそれでも魔力が足りなくなると思うんだけどね。


「こう多いと……空間の穴(ブラックホール)を作って全部吸い込んじゃいたくなります」

「それはちょっと……やばいかな?」


さらっとやばい事をいいのけるabsolute。

確かにabsoluteの能力なら空間を超超高密度に圧縮することにより非常に小さいが人工的なブラックホールを作る事が可能である。

この状況ならそれが一番いい策なんだけど、それをやるとここら一体荒地と化しそうな気が……いや、この本局は戦艦のようなので、最悪ここが崩壊する。


「……って、きゃっ!」


そんな事を考えていたら、犬型のガードロボが飛び掛ってきた事に気付かず、反射的に体を避けてしまった。

しまった!! 抜かれた!?


「time! 迂闊ですよ!」

「わかってるわよ!」


absoluteがあたしに向かって叫ぶ、どうやら手が離せないから自分で対処しなさいという事らしい。

あたしが追撃の体勢を取った時、ガードロボとあたしの間は約10mくらい。

ほんの数秒でこれだけ離すのだから相当足は速いのだろう。

これじゃ、追いかけても間に合わない。

足に魔力を貯めながらそう考えたあたしは足に魔力を貯めるのを止め、時間停止の魔術を発生させる為に腕に魔力を貯める事にする。


「間に合えっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

魔法青年 相沢祐一

24幕『本局(5)〜合流〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチン……

 

エレナさんが指を鳴らすと瞬く間にガードロボの周囲の空間の時間が止まる。

続けて肉薄してグーで殴りつけ、ガードロボを吹き飛ばす。

時を操る魔術なんてそうそう易々とできる物じゃない。

それにここに来るまでの戦艦の中にで彼女の姿を見かけなかった。

一体、彼女は……



「危なかった……」

全く間抜けみたいにぼけっとしてたからよ。

「悪かったわね! 間抜け面で!」

「2人とも喧嘩しないで……」

「あ、あははは〜」

「……」


いつの間に自分の配置(エレナさんがいる所)に戻ってきたのかエレナとアルフの喧嘩をユーノが宥めている。

その少し離れた位置でなのはは苦笑い、フェイトはこの人は誰といった感じでその言い合いを見つめていた。


「これで、あと揃ってないのは2人か……」

「祐一さんとフィアさん、魔石は無事に直ったのでしょうか……もしかして、ガードロボに襲われて……」

「え、縁起でもない事いわないでよ、ユーノ君」

「ご、ごめん……なのは」

「それにしても、ガードロボが向かって来ない……」


なのはとユーノの掛け合いはともかく……だ。

フェイトのいう通り犬型のガードロボはさっきのエレナさんの一撃に恐れをなしたか無闇に突っ込んでくる事はしなくなっていた。

このように手を休めて無駄話をしているのが何よりもの証拠だろう。

でも、こんな大量のガードロボは一体どうやって作ったのだというんだろう?


「……ん? なんだあれは?」

「どうかしたの? クロノ」

「いや、あそこに何か光る物が浮いているんだ」


そういって僕はその青白く光る物を杖で指し示す。

光る物はガードロボの間を縫うようにふわふわ浮いている。


「宝石? ジュエルシードに似てるけど……微妙に違う」

「あぁ、あれが何か解れば、もしかしたらこの大量のガードロボ達の正体も解るかもしれない」

「time」

「えぇ、あれは間違いなく『copy(コピー)』のオプションね」

『オプション?』


聞き慣れない単語に僕達は声をそろえて聞き返す。

それにエレナさんのいっている『copy』というのも気になる。


「はい、確信が持てました……この騒ぎの元凶はユンカースNo.7『copy』です」

「『copy』の能力は文字通り魔力を使用しての物体の複製。

あと複製物の拡大と縮小もできるわ。

当然魔力がなくなれば作れなくなるし、構造がすごく複雑な物体は詳しい資料が無いと無理みたいだけど、大抵の物体は複製可能というシロモノよ」

「なるほど、それがこの大量のガードロボの原因か」


ガードロボを相当数倒している筈なのにガードロボの残骸は数えるほどしか残っていないのはそれらのほとんどが魔力の塊で作られた物だったからなのか。


「それで、オプションというのは?」


微妙にズレかけていた話題を戻すユーノ


「そうでしたね。少し本題からズレてしまいました。

オプションというのはその『copy』が魔力で作る遠隔操作端末です」

「それらに魔力を注ぎ込む事で、copyと同程度の能力を発揮する事ができるの。

しかも本体はそれに指示をしたり、通して見た映像を視認をする事も出来るのよ」

「じゃあ……あれを壊せばこのコピーは消えるの?」

「すぐに同じような物を作られれば変わらないから時間稼ぎくらいにしかならないけれどね」

 

 

 

「……でも、時間稼ぎにはなるんだよな?」

 

 

 

『えっ?』

 

 

「うぉぉぉぉっ! いっけーー!!『Sun Light Flasher (サンライト フラッシャー)』」

 

 


カアッ!!


 

 

突如どこからともなくそのような声が聞こえると、目も眩むような閃光が周囲に広がる。

 

 


ドドドドドドドドドドドドォォォォォォォン!!


 

 

続けて凄まじい音と共に爆発が巻き起こった。


「な、何が起こったんだ!?」

「クロノ君! ガードロボ達が」


なのはにいわれて見ると、煙で少ししか見えなかったが、ガードロボの大群は跡も形も残ってなく、代わりに三つの影がそこに立っていた。


「うっし! 間にあった!」

「はぁ……はぁ……全く……道に迷ったときは……どうなる事かと思ったです……」

「……………………」


レイジングハートのシューティングモードのようになった杖を携えた相沢さん。

肩でゼイゼイ息をついているフィアさん

そして疲れ過ぎてもう声も出せない状態のノイルさんだった。


「祐一さん!」

「おう、遅くなったな!」

「本当、遅すぎよ……それが新しい杖?」

「綺麗な色ですね……」

「あぁ、レイバルト・バリアントっていうんだ」


レイバルト……?

そうか、レイバルト・ハーティッシュを使ったのか……

あれは僕でも扱えないくらい凄く癖のある杖だったっていうのに……

 


『こちらアースラ。クロノ、応答願います』


まだ若い女性の声が頭の中に響き渡る。

ん? これは念話?

念話というのは魔法の素質を持っている者が使える一種のテレパスとでも思ってくれればいい。

……って誰に説明してるんだろうな僕。


『はい、こちらクロノ。どうしたんだ、エイミィ?』


応答に答えるべく頭の中でそう思い浮かべる。


『クロノ君? 怪しい魔力の反応をキャッチしたからすぐにアースラに戻ってくるように艦長がいってたわ』


ガードロボもひとまず一時的だが片付いたし、相沢さん達も来たから丁度いい。


『了解』


僕は答えとしてそう頭に念じて念話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






「皆揃ったわね。それじゃ、作戦会議を始めるわ」


リンディさんは俺達が揃っている事を確認すると作戦会議の開始を告げる。

その後ろにはコンピューターの画面みたいなのが置いてあり、そこには本局の略図とおぼしき図が描かれていた。

お〜、なんかラー○イラムみたいだ……


「侵入者―――これからはユンカースと呼称します―――は本局の厳重な警備をかいくぐってコントロールタワーを占拠。

そこからメインコンピューターにアクセスし、ガードロボを操ってアースラを襲ってきました。

それは祐一君達の活躍のおかげでなんとか退けることに成功はしたけど、エレナさんやabsoluteさんがいうには、すぐに同じような軍勢が来ると想定されます」

「えぇ、オプションというのは魔力の塊だから魔力があれば理論上幾つも作れるから」


リンディさんの説明にエレナがそう付け加える。


「そこで、私達は敵の本陣一点に攻撃を仕掛けます。

そのため、敵の中枢であるコントロールタワーに強襲をかけます。なるべく戦闘は避けたいので、侵入と離脱は転移魔術を使用します。

だから帰りに転移魔法が使えるユーノ君、封印の為に祐一君、2人の護衛役としてクロノとなのはさんの4人で行って貰おうかと思います」

「それじゃあ、他の人達は?」

「フェイトさん、アルフさん、フィアちゃんの3人はアースラの防衛に当たってもらうわ。作戦終了までの時間稼ぎだけで十分だから」

「わかりました」

「エレナさん、absoluteさんは2人で遊撃をして行ってもらいたいの。襲われているのはここだけでは無いでしょう? 押されている所があったら各個撃破をしていって欲しいの」

「あの……いっていませんでしたが、私も空間転移が扱えるので強襲組に入れるんですが……」


確かにabsoluteはそういうことが出来るからな。戦闘力もユーノ君より高いと思えばこちらが適所か?


「あら、そうなの? なら都合がいいわ。潜入した3人に何かあったら、2人は祐一君達の救援に行ってくれないかしら?

それとabsoluteさん、そういう切り札は最後まで取っておく物よ?」


それを聞くとabsoluteは少し渋い顔をしたがすぐにいつもの無表情に戻り


「……わかりました」

「それじゃ、作戦は10分後に開始。各員の健闘を祈るわ」

『了解!』

 

 

 


そして10分後――――――本局基地奪還作戦は開始された。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






後書き

 

J「ダメだよもん……」

フ「テストもイマイチですもんね」

J「いっぺん、ストーリーを練り直そうかと思った24幕いかがだったでしょうか?」

フ「ここまで長引くとは作者本当に思ってなかったらしいです」

J「その割にクオリティは段々下がっていってる気がするし……」

フ「不憫……です」

 

 

 

魔術説明

 

スナイプショット 術者:クロノ・ハラオワン

 

魔力を圧縮した物を糸に似た感じに放つ魔術。

一点突破性能に非常に高い上に弾道を曲げる事も可能。

 

 

Sun Light Flasher (サンライト フラッシャー) 術者:相沢祐一

 

広範囲射撃魔術。

ただ単にSunrise Arrowを拡散させた魔術。威力は注ぎ込む魔力の量で調節可能。

 

 

 

※感想・指摘・質問がございましたらBBS・mailにてよろしくお願いします。

 

 

 

 

P.S.

J「さて、次はどうしようか?」

フ「……先は長そうです」

 

 

2005年3月15日作成