「ちっ! まだ出て来る!」
戦い始めて既に20分近く、もう何十匹目かもわからないガードロボを殴り飛ばすエレナさん。
「……いい加減疲れましたね」
「とはいっても一向に減る気配が無いですね」
「みんな、頑張って!」
確実に一匹一匹潰しているはずなのに全く減る気配の無いガードロボ。
私達四人もその軍勢に押されてはいないが、全員に疲れの色が見え始めていた。
「後ろから新手よ! 今度は人型っ!」
「また出て来たんですか?」
「……全く、数さえいれば良いという物でもないと思いますが……」
犬型ガードロボの後ろからゆっくりとこちらに向かって歩いてくる巨人のようなガードロボの団体を見つけたエレナさんが叫ぶ。
「……すみません、なのは様。ここは私とtimeが抑えますので人型の方へ行ってもらえますか?」
「わかりました!」
『Flier fin.(フライアー フィン)』
靴から光の翼が生え、私の体を宙に浮かす。
宙に浮いた私はすぐさま杖をShooting Modeに変え、照準を新手の団体に向ける。
「一気に決めるよ! レイジングハート!」
『Divine Buster――Stand by.』
掛け声を引き金に、充填完了した杖から極太の光線が団体に発射される。
だが――
バシュゥゥン……
「えっ?」
直撃したはずの光線を弾き、尚且つこちらに近づいてくる。
「強力な対魔術コーティングだ! 魔法の効果は薄いよ。気をつけてなのは!」
「そういう事は早目早目にいう物だと思うよ、ユーノ君!」
とはいっても基地でスターライトブレイカーを撃つのはまずいよね……でも肉弾戦はもっとまずいし……
ちらっとエレナさんの方を見る。
エレナさんの方はどちらも一杯一杯の状況で、交代や援護というのは期待できなさそうだ。
「結局、直接魔力をぶつけるしか無い……って事なの?」
私の出した結論は、至近距離からのディバイン シューター。
これならいくら魔術コーティングを持っていたとしてもダメージはあるはず。
『Flash move.』
すぐさま瞬間移動魔法でガードロボの団体の背後につくと
『Divine shooter.』
「いっけぇぇぇっ!!」
ドゴォォォォォォォン!!
至近距離からの直撃を受け、爆発を起こしながら倒れるガードロボ。
「よしっ!」
「なのは! 敵の反応が早い。反撃が来るよ!」
「わかったよ、ユーノ君!」
いち早く反応したガードロボが繰り出すパンチを跳ねるように巧みにかわし、至近距離からディバインシューターを当てて爆発させる。
一体、また一体と倒れていくガードロボ。
……どうやら、この機体には限りがあるのか犬型のように次から次へとは出てこないみたい。
そうこうしているうちに、残すところはあと一体となっていた。
「あと、一体!」
残り一体のガードロボには先程のガードロボ達のような反撃が来ない。
だったらこっちから!
「行くよ!」
『Divine shooter.』
レイジングハートの声と同時に一気に肉薄する。
そして、至近距離からのDivine shooter.を放……とうとしたその時、突然沈黙していたガードロボを光が包み込む。
「防御魔法……違う!?」
魔力を持たない機械が魔法を発動させられる訳が無い。
じゃあ、この光は?
……って躊躇ってもわからないよね!
『Divine Buster.』
この魔法にはバリアを貫通する能力がある。
もしもあの光がバリアなのならばこれで打ち抜くことが出来るだろう。
「えーい!!」
ガードロボに光が直撃する。
同時に爆発。
しかし―――
「えっ……」
直撃したはずなのに無傷で佇むガードロボ。
えっ? なんで? 確かに攻撃が直撃したはずなのに
いくら対魔術コーティングを施していたとしても、いくら強力なバリアを備えていても、Divine Buster.を受けて無傷なんて……
ブォン!!
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「「なのは(様)!!」」」
無意識に発動した防御魔術も虚しく、腕の一振りで壁に叩きつけられる。
ゆっくりと私に近づいてくるガードロボ。
いくら強化服に防御魔術を重ねたといえど、先程の攻撃の前には紙の盾の様な物だろう。
もう、ここまでなのかな……
半ば諦めて私はぐっと目を閉じ――
『Photon lancer Full
autofire』
――ようとすると、どこからともなく聞こえてきた電子音声。
レイジングハートとは違う男性のような低めの声。
それと同時に、無数の魔力の槍がガードロボに向かって襲いかかる。
それらは、ガードロボの魔力の壁、あるいは鎧に遮られるが、威力を更に高め、一点に集中する事によって、ついに壁を鎧を貫き、着弾して爆発を起こす。
相変わらずダメージは無いようだが、衝撃で倒れるガードロボ。
えっ!? 今の音声……それにこの攻撃は……まさか
そして何処から来たのか、私の前に颯爽と現れる一人の少女。
「なのは、大丈夫……怪我は無い?」
漆黒の杖を構えた黒衣の少女――さっき会ったばかりのフェイトちゃんが微笑み、私に手を差し伸べてくれていた。
魔法青年 相沢祐一
23幕『本局(4)〜参戦〜』
「それで、その話ってなんなのさ?」
「落ち着いてアルフ。別にニュースは逃げはしないから」
今にも身を乗り出さんとばかりなアルフを宥めながら私はクロノに話を続けるように促す。
「ありがとう。それで、ニュースの事だけど……その前に一つだけ聞きたい事があるんだ」
「……それは何?」
「君達にとって魔法ってなんだい?」
突然クロノが問いかけたそれは、以前の私だったら『母さんを手伝う為の力』と即答できた質問。
だけど、今の私は違う……私はもう代わりの人形なんかじゃないのだから
「……魔法は人を傷つける為の道具じゃない、みんなの笑顔を守るもの。
……それが私がここでずっと考えて出した答え」
「あたしはフェイトがそういうのなら、あたしもフェイトと同意見だよ。
フェイトがあたしの全てだから」
「……OK、合格だ」
「「えっ!?」」
「時空管理局執務官クロノ・ハラオワンが時空管理局提督リンディ・ハラオワンの名において、君達を条件付で保釈する事を許可するという事を伝える」
「保釈? あのお金とか払って一時的に身柄を開放するってやつ?」
「お金なんて動いて無いけどね、そして条件というのは君達の身柄を一時的にアースラで引き取り、裁判まで監視付きで働いてもらうという事。
その監視役にはなのはを予定してる……監視は時空管理局に一時的だろうと所属していれば誰でもOKだからね」
クロノは黄色い三角形の宝石のような物を私の手に握らせる。
私の手に自然と馴染むその宝石、それは間違いなく私が使っていたインテリジェントデバイス『バルディッシュ』だった。
「使って欲しい。その子を使えるのはきっとフェイトだけだと思うから」
「……」
「フェイトそしてアルフ、僕達に力を貸してくれないか?」
右手を出すクロノ。OKなら握手をしようという事なのだろうか?
なら答えは決まってる。
「こっちがお願いしたいくらい……この力がなのはや皆の役に立つのなら……私とこの力を使ってあげて」
私にも出来る事が見つかった。
私にもなのはに何かしてやれる。
私の胸にはそんな思いが次々に込み上げてきた。
だからその手をぎゅっと握り締めて私はそれをOKの答えとした。
「アルフは?」
「愚問ねぇ〜、クロノ。私はフェイトの使い魔よ? フェイトの行く所が私の行く所よ」
そういうと、アルフは握手を包み込むように手を添える。
「ありがとう……2人とも。
仲間として歓迎するよ。それじゃあ早速の仕事だけど……手伝ってくれるかい?」
「手伝いって、なのは達の援護……だよね。まかせてよ! ねっ? フェイト」
アルフの言葉にしっかりと首を縦に振って肯定する。
「わかった。案内する」
バルディッシュを杖の形に変身させると、先程までの生活感のあった服が一変して、同じく黒を基調とした戦闘用の動きやすい服に変身する。
同じく魔法で生み出した漆黒のマントを羽織り、玄関から外へと出て行くクロノの後をついて久しぶりに玄関の外へと出る。
さぁ、行こう。これが『時空管理局戦艦アースラ臨時局員』という肩書きになった私、フェイト・テスタロッサの初仕事だ。
「えっ……あの、その……フェイトちゃん?」
「うん、そうだよ……なのは?」
「嘘……なんで? なんで、フェイトちゃんがここにいるの?」
「話は後、今はあいつを倒す事だけを考えて」
先程のダメージも全く残ってない様子で立ち上がるガードロボを見やってフェイトがいう。
「う、うん!」
「今度は私がなのはを助ける番……協力してくれる? バルディッシュ」
『Yes, Sir.』
先程聞いた、レイジングハートとは違う男性的な音声で答えを返すバルディッシュ。
と同時にフェイトも杖を構えて戦闘可能な状態になる。
「……おそらくガードロボが放っているあの光はオーバーロード。自分のリミッターを解除したんだと思う」
「それじゃあ、ディバインバスターを撃っても弾かれたのは?」
「多分、原動力は他にもいろいろとあると思うけど主に魔力だと思うから、リミッターを外した時に溢れ出て来る大量の魔力が盾になったせい。簡単にいえば、Divine Buster.を同じような魔力の流れで防いだと思えばいいと思う」
「じゃあ、どうすれば……」
「世の中には完璧な物は存在しないから……それがどんなに魔力密度の高い壁があったって」
『Scythe form Set up(サイズフォーム セットアップ)』
バルディッシュの杖の上部分が90度曲がり、エネルギーの刃が付いて鎌のような形になる。
『Scythe slash(サイズ スラッシュ)』
続けてフェイトは接近、その鎌の刃の刃渡りを大きくし、瞬間的なバリア貫通能力を付加して魔力の壁を横一文字に切り裂く。
「どんなに高い対魔術コーティングをしていたって……」
『Photon lancer(フォトンランサー)』
切り裂いた所から四肢の駆動部を狙って素早くさっきのような魔法で作った槍状の物を4発放つ。
ズドドドドォォォォン!!
狙い通り当たり、爆発を起こすフォトンランサー
駆動部をやられ後ろに倒れていくガードロボ。
「この世の全ての物には必ず穴がある……そこをつけば強硬な装甲も紙に等しいの」
後書きという名の反省会
J「また考察に時間がかかった」
フ「最近、ペースが落ちてきた気がするですよ? あなたいつの間にそんな偉くなったですか?」
J「うぐぅ……だっていろいろ忙しかったんだもんもんもん」
フ「JGJがいっても萌えないですよ? これは私がいうから萌えるですよ!」
J「……別段、萌えもしないだろうに……(ポツリ」
パァァァァァァッ
フ「一介の駄目作者如きが私に口答えしようっていうの?」
J「た、種開花モード!?(第6話参照)」
フ「ふふふふふふっ……その言葉をほざいた事、後悔させてあげるわ!」
J「お、お助けぇーー!」
魔術説明
感想・指摘・質問はBBSかmailにて
P.S.
J「今回の魔術説明はRyoさんから頂いたリリカルなのはの魔法辞典を参考にしている部分があります」
フ「Ryoさん、ありがとうです」
2005年2月26日作成
〃年3月1日修正