―――――― 時空管理局本局 コントロールセンター ――――――


 


カタカタカタカタ……


 

よくわからない単語で埋め尽くされた画面と睨み合った一人の局員がキーボードを叩いている。


「ふぅ……こんなものかな?」


そういいながらぐっと伸びをする。どうやら長い間この作業を進めていたらしい。

 


シュィィィィン


 

「誰だ!?」


ドアが突然開いたのに反応して局員は振り向くと、そこには局員と同じ制服を着た一人の男が立っていた。


「おいおい、同じ釜の飯を食ってる仲間を誰呼ばわりか?」

「なんだ……お前か……それで何の用だ?」


来たのが知っている人だったため、安堵の息を漏らす。


「あぁ、交代の時間だ」

「交代? まだ早過ぎないか?」

「いや……」

 


がすっ!


 

「がはっ……な、なんで……」


深々と鳩尾に拳が入る。それを引き抜くと同時に膝をつき倒れる局員

それを確認するともう一人の局員はニヤリと禍々しい笑いを浮かべる。


「さぁ、戦争の始まりだ。時空管理局の魔術師の実力……見せて貰おうか」


 

 






 

 

魔法青年 相沢祐一

22幕『本局(3)〜新生〜』

 

 

 

 






「……うぅっ……感動でず……」


なのはちゃんと金髪をツインテールにした女の子――――――フェイトちゃんの再会にあてられたのか隣でフィアがもらい泣きしている。


「ほら、ハンカチ」

「ありがどでず……」

 


ち〜〜〜ん


 

「……ってかむなっ!!」


ぺしっとフィアの頭に突っ込みを入れる。


「ず、ずびばぜんでず」

「はぁ……いいや。そのハンカチ、フィアにやる」

「(ラッキーです)じゃあもらうでず」

「……さて、それじゃあそろそろ俺達も紹介してくれよ。なのはちゃん」

「……でず」

「あっ、はい……すいません。祐一さん達を忘れてしまって……」


俺がそういうとなのはちゃんは名残惜しく抱きつくのを止め、すまなそうな顔で、フェイトちゃんは誰? といった感じでこちらを見る。


「この人達は相沢祐一さんとフィア・クラッセさん。最近知り合ったお友達なの」

「……祐一に……フィア?」

「おう、祐一だ」

「はい、フィアです」


フェイトちゃんが俺達の名前を呼ぶので、各々返事をする。


「二人もフェイトちゃんとお友達になりたいらしくて……」

「あぁ、そういうことでよろしくな。フェイトちゃん」


警戒心を与えないようにと自分の中で一番の笑顔を浮かべて挨拶をする。

すると―――


「……」

―――何故か、顔を赤くして俯いてしまうフェイトちゃん。


「あはは、フェイトはこういう男の人の笑顔とかに慣れてないからね〜

恥ずかしかったのよ」

「ん?」


いつの間に隣に来たのかエレナさんのように頭から獣耳を生やした女性が笑いながらそういう。


「あぁ、なるほど……ところであんた誰?」

「私? 私はアルフ。フェイトの使い魔をしてるの、よろしくね」

なんか、エレナさんに似てるな……獣耳もそうだけど性格も似てるようだな。

 

 


ピーッ……ピーッ……


 

いきなり部屋に響き渡る、何かのタイマーが鳴ってるような音。


「なんだ? どうした?」

「大丈夫。ただの無線の音だから」


慌てる俺をそう宥めながら、クロノは無線に手をかけて通話する。


「はい……あっ、エイミィ。何? まだ集合時刻には……えっ! なんだって!」

「どうしたんだ?」

「時空管理局の本局から緊急入電があった。

本局のメインコンピューターが何者かに乗っ取られて警備用のガードロボが操られたらしい……アースラにもその軍勢が向かっているから、至急艦に戻って防衛に当たれって……」

「「「な、なんだって!(です)」」」

「なのはとユーノは急いで艦の護衛に、相沢さんとフィアさんは研究棟へ行って魔石の完成状況を確認するんだ。出来てなかったら一刻も早く完成するよう手伝うんだ!」


テキパキと俺達に指示を与えるクロノ

こういう時は場数を踏んでいる人が入るというのはありがたいことだよな。

俺がクロノの立場だったらきっと慌ててるだろうし……


「うん、でもクロノ君は?」

「……僕はフェイト達に話がある、話が終わったらすぐに護衛に向かう!」

「わかった。それじゃ、フェイトちゃん……」

「うん、私には何も出来ないけど……頑張って……」


最後になのはがフェイトちゃんに挨拶をして出ていき、再び静かになる部屋。


「それで、話って何?」

「2つ目のニュースだ。1つ目のニュースよりもとびっきりの……ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!」


正拳突きで、飛び掛ってきた犬型のガードロボを思い切り殴りつける。


「……キリがありませんねtime……」

「えぇ、本当おちおち寝てもいられないってね!」


口は動かしつつ腕はもう何体目かわからないガードロボをガラクタに変えていくあたしとabsolute

今から10分位前、突如アースラを取り囲むように現れたガードロボ達。

リンディっていう女の人がいうにはそれは何者かに操られているらしく、その何者かの特定が出来るまであたし達に戦艦を守ってくれるようお願いをされた。

あたし達は、戦艦が潰されれば元の世界に帰れない上にスペリオル・ブレイドを修復してもらうという借りがあったので快く引き受けたのだけど


「あーーん、もう何時になったら途切れるのよっ! もう!」

「でも、おかしいですね……」

「何かおかしいの?」

「えぇ、その何者かの目的がこの要塞の制圧だと考えれば、ここにこれだけの戦力を当てるのはおかしいと思うのです。普通ならもっとここよりも重要な拠点に戦力を送ってくるでしょう」



absoluteは腑に落ちない表情で更に話を続ける。


「それなのに……確かにアースラは重要な戦力となってはいますが、だからといってこんなに戦力が集まるのは変なのです。
 ここにはガードロボに頼らなくてもいい位の戦力がある筈ですからガードロボがそんなに配備されてるとは思えません」

「ということは、こいつらは一体……」

「もし……もしも、このガードロボが全て第三者が作ったものだったら……

「まさか、そんな簡単にメカを作ることなんて出来るわけないじゃない」

「time、覚えていますか? このような芸当が出来るユンカースが一つだけあります」




「確かに一つだけ心当たりがあるわ……だけど」


そうだとしてもいつの間にここまで来たっていうの?


「……確証はありませんけど、奴がアースラに取り付いてここまで来たという事ならば、ここに量産した戦力を集めたのも私達の足止めと考えれば納得いきます。
 ですから一応そういう考えも頭の中に入れて置いてください」

「……わかったわ」

「エレナさ〜ん」


向こうから魔法でガードロボを吹き飛ばしながら、なのはとユーノがやってくる。


「おかえり、祐一は?」

「祐一さんはスペリオル・ブレイドを受け取りに行ってます。それまで戦艦を守るようにいわれました」

「そうなの、それじゃあいつが来るまであたし達はここを死守しないといけないわね……じゃ、あたしとabsoluteは前衛。


後衛は一人で大変だろうけどなのはに任せるわ。

ユーノは最後の砦としてあたし達が仕留めそこなった敵の排除。相手は犬型だからスピードがあるけど装甲が薄いわ。威力より命中重視で行くのよ……わかった?」


「……行きましょう」

「はい!」

「わかりました」


あたし達は各々の役割を果たすために、ガードロボが群がる集団へとそれぞれ突っ込んでいった。


 

 

 

 

 

 

 

「ノイルさん! スペリオル・ブレイドは!」


研究棟の研究室に飛び込むなり俺は叫ぶ。


「あぁ、君か……大丈夫だ。ここのコンピューターはメインコンピューターとは独立しているからまだ乗っ取られてはいない。だが、魔石の方はまだ完成はしていないのだよ……」

「そんな落ち着いていえる事かよ! ここだってそう長くは持たないんだろう!」


急がなければいけないのに落ち着いた態度をしているノイルさんに苛立ったのか、それとも自分が戦えないイライラからか……つい声を荒げてしまう。


「祐一さん! こんな時だからこそ落ち着くです。本来ならまだスペリオル・ブレイドは完成してないですから」

「そ、そうだよな……こういう時だからこそ落ち着くんだよな……すみません……」

「いや、君のいう事ももっともだ。最新鋭と自負していた我が研究所の技術が……情けないよ」

「2人とも、謝りあってる暇はないですよ。ノイルさん、私達も手伝うですから早く作り上げるです」

「「あぁ、そうだな」」

 


そういうと、ノイルさんはコンピューターに向かう。


「では、まずこの資材を……」

 


ドォォォォォォォォン!!


 

「!?」


なんだ!? 今の音……遠くから聞こえたみたいだが……


「くっ、ここにもやはり追っ手が来たか……」

「それって……」

「大方、ここのデータだけ占領できなかったから実力行使に来たのだろう……
祐一君、フィア君、今使ってるこの機材以外を何でもいいからドアに積み上げるんだ。
データのバックアップはうちの所員がここから持ち出してあるから心配はしなくていい」

「わかったです」


いわれた通り、俺とフィアはそこら辺の機材をぽんぽんドアの前に置いていく。


「さて、こちらも最後の仕上げだ」

 


ガシィィィィィィィィン!!


 

ちゃんと押さえてないと機材が崩れてきそうな程ドアが大きく揺れ出す。


「うわっ!」

「な、なにが起きたです!?」

「ドアの向こうでガードロボが体当たりをしているのだろう。どうやらここが突破されるのは時間の問題のようだな」

 


ガシィィィィィィィィィン!!


 

ガードロボの体当たりを受けて、ドアに亀裂が走る。


「ノイルさん、これ以上はもたないです!」

「早く! ノイルさん!」

「あと少し……あと少し待ってくれ……
 魔力回路、再生装置正常作動確認。スペリオル・ブレイドとレイバルト・ハーティッシュの相性は良好……よし、出来たぞ祐一君」

「本当ですか!?」

「祐一さん、ここは私に任せて早く魔石を取りに行くです!」

ドアを押さえるのをフィアに任せ、ノイルさんの下へ走っていく。

「本来ならばこれから3、4時間をかけてじっくりテストをする所なのだが……状況が状況だ。そうはいってはられまい?」


そういってノイルさんは、スペリオル・ブレイドの青よりも澄み切った青色の宝石を渡してくれる。


「それが、君の新たな杖『レイバルト・バリアント』だ」

 


ガシィィィィィィィィィィン!!


 

と同時にガードロボがドアを体当たりする音。

ドアに入った亀裂がさらに大きくなる。

もって、あと一撃といった所か……急がないと!


「さぁ、君の新たな力。見せてやるんだ!」

「はい! 『レイバルト・バリアント』 うぐぅ〜〜〜〜〜〜!


俺が呪文を唱えると、レイバルト・バリアントは二つに割れて一つは杖に、もう一つは馴染みのある強化服の胸元に貼りつく。

う〜〜〜ん、なんか大して時間が経ってない筈なのにこの服が凄く懐かしく感じるな……

フィアと出会ってからはほとんど戦いっぱなしだったしなぁ……たまには休憩をしたいもんだ


「祐一さん、しみじみする気持ちはわかるですけど、今はガードロボをやっつける方が先です!」


おっと、少し感傷に浸ってたみたいだな。

それじゃあ、早速


「『fire』!」

 


シーーーーーーーーーーン……


 

炎の魔石を唱えたはずなのに杖からは炎はおろか反応すらない。


「ありっ? 『fire』!」

もう一度高らかに魔石の名を叫ぶが、杖から全く反応が無い。

「祐一さん! 魔石はアースラに置いてきた事を忘れたですか!」

「ああああああああっ!!」


すっかり忘れてた!


「はぁ……です」

 


ドゴォォォォォォォン


 

ついにドアが完全に打ち砕かれるが、積み上げた機材が進路を塞いでいるので、ガードロボはそれ以上進む事ができない状態だ。

おそらくこれもすぐ取り払われてしまうだろうから時間稼ぎ位にしかならないだろうが


「どうする〜? アイ○ル〜?」


 

ポカッ!

 


……痛い


「オヤジギャグいわないの!! 真面目に考えるです!!」


フィアに頭を殴られる。

とまぁ、冗談はさておき本当にどうする……

といってもshotじゃ威力はたかが知れてる。連発してたら魔力が無くなってしまっておしまいだ。

だからといって多人数相手に肉弾戦をするのは自殺行為だしなぁ……


「安心したまえ、祐一君。レイバルト・バリアントにはこのような時のために新しい機能を付けてあるのだよ。

……まったく不思議だよ。技術は素晴らしいが、戦闘用の魔術が全くインプットされてない杖なんてな……向こうの技術士にそう伝えといてくれたまえ」

「「えっ……」」


新しい機能? 変わったのは見た目だけじゃないのか?


「では、杖を前に構えて『サンライズモード セットアップ』と叫ぶんだ」

「えっ?」

「急げ、早くしないとガードロボが機材を退かしてしまう」

「は、はい……えっと、サンライズモード セットアップ!」

 

Sunrise mode set up

 

俺がそう叫ぶと杖の方についたレイバルト・バリアントの上にこのような文字が浮かび上がり、杖の形がレイジングハートのShooting modeに似たようなフォルムに変形する。


「これは……レイジングハート?」

「いっただろう?


レイバルト・ハーティッシュはレイジングハートとバルディッシュのデータを参考にしたと

そのフォルムは『サンライズモード』。レイジングハートのデータを参考に射撃・防御用として搭載されていたものだ……といってもオリジナルには遠く及ばないがね」


「それじゃ、レイジングハートと同じような魔術を使用出来ると?」

「若干威力は劣るが、似たようなものを放つことが可能だ」

 


ガシャァァァァァァァン!!


 

「き、来たですっ!?」


ついに機材で作ったバリケードが突破され、その姿を眼前に見せるガードロボ。

その姿は体長が2メートル近くもある巨人であった。


「幸い廊下は狭い。ここから廊下に向かって魔術を撃てば一撃で事は済むだろう。レイバルト・バリアントのテストだ、一つド派手に頼むよ」


一応ここは研究棟なのだし、ド派手に撃ってはいけないのでは?


「でも、そういう事なら」


杖を廊下に照準を向ける。

確か、なのはちゃんのディバインシューターは威力が調節できたな。

それなら、威力をなるべく調節して速射性を高めて……よし!


「いけっ! Sunrise Arrow straight(サンライズ・アロー ストレート)』!」

 


キィィィン……ズガガガガガァァン!!


 

放たれた光線は先頭のガードロボを貫通すると、そのまま後続のガードロボも巻き添えにして爆発を起こす。

爆発の連鎖が終わった後にはガードロボの姿は無く、代わりに大量の残骸が残されているだけになっていた。


「やったぁ! です!」

「ふぅ……何とかなったか……」

「ふむ、これは思った以上の威力だな……祐一君の魔力が関係しているのだろうか?」


戦闘を終え、三者三様に言葉が口をつく。


「ところで俺達はアースラに戻りますが、ノイルさんはどうします?」

「そうだな……私もアースラへ行こう。下手に単独行動はしない方が良さそうだしな」

「わかりました。それじゃ、急ぎましょう!」


俺達は壊されたドアをくぐりアースラへと向かって走った。

 

 

 

 

 







後書き

 

J「長かった……考察に3日……いや4日か?」

フ「無計画なJGJにしては結構考えた方です」

J「そうだな。いつも1日か長くて2日足らずでストーリーなんて考えてるからな……」

フ「だからいつも欠陥が出てくるんです」

J「ぐはっ……」

フ「きっと今回だってただ考えるのが長いだけで欠陥の一つか二つはあるはずです」

J「まさか、そんな事は無いと思うぞ………………多分」

 

 

 

 

用語説明

 

レイバルト・バリアント

 

スペリオル・ブレイドとレイバルト・ハーティッシュを掛け合わせて作られた魔石。 
色は青と水色の間くらいの色


基本的にはスペリオル・ブレイドと同じ性能(同じデザインの強化服)で当初は、ただ自己再生能力の修復の為に掛け合わせようとしたのだが、戦闘能力の低さという弱点を見つけたノイルがレイバルト・ハーティッシュに元々備え付けてあった二つの能力を追加した。

 

一つはサンライズモード

サンライズモードはレイジングハートのShooting modeをモデルに作り上げた射撃用の能力である。

 

もう一つはムーンライズモード

こちらはバルディッシュのScythe form(サイズフォーム)をモデルにした格闘用の能力である。

 

基本的にオリジナルと変わらない魔術を放てるが、オリジナルと比べると若干威力が劣る。(祐一の場合は魔力が高いため、威力が結構あるが実際はもっと威力が低い)
ちなみに意志みたいな物はあるが、電子音声機能は備わっていない。

 

 

 

 

魔術設定

 

 

Sunrise Arrow straight(サンライズ・アロー ストレート) 術者:相沢祐一

威力:C〜A 命中:B 魔力:S〜B

 

レイバルト・バリアントのサンライズモードが使用できる。

なのはのディバインシューターと同様の性能を持つ魔術。

魔石(主にfire、ice等)の能力を付加させる事もできる。

 

 

 

 

 

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2005年2月17日作成