コンコン……

 

食事を終え、アルフと一緒に食休みをしている最中にふとドアを叩く音。

「……誰?」

「フェイト、私が出てくるよ」

アルフがドアに近づき、開けると黒を基調とした服を身に纏った少年――――――私達にこの部屋を貸してもらっているリンディ艦長の息子であるクロノが立っていた。

「しばらくだね。フェイト、アルフ」

「……裁判が始まるの?」

「始まるんなら、ちゃっちゃとやっちゃおうよ! どうせ裁判は無罪でほぼ決定なんだろ?」

「裁判はまだ準備があるから出来ない……だけど、今日は良いニュースを二つ持ってきたんだ」

「そのニュースって?」

クロノのまだ裁判が始まらないという報告にはがっかりしたけど、良いニュースというのが何なのか気になったから聞いてみる。

……まぁ裁判が始まらない以上、私の望む物は手に入らないだろう。

そう高をくくっていたのだけど、クロノの持ってきたニュースは今の私を狂喜乱舞させるのには十分過ぎるほどのニュースだった。

「なのはがここに来ている。これから君達に会いに……ね」

 

 

 

 

 

魔法青年 相沢祐一

21幕「本局(2)〜再会〜」

 

 

 

 

 

「そういえば、なのはちゃん。そのフェイトちゃんって女の子はどんな子なんだ?」

魔石を預け、研究所の廊下を引き返しながらなのはちゃんに聞いてみる。

「そうですね。そういえば、祐一さん達にはフェイトちゃんの事はほとんど話してませんでしたからね……わかりました。それじゃあ、私とフェイトちゃんのこれまでのお話しをしますね」

なのはちゃんはそういうとゆっくりと話し始めた。

 

 

 

 

 

「私とフェイトちゃんの出会いは友達の家で起きたジュエルシードの事件の時の事です……その頃はジュエルシードを巡って、何度かぶつかりあったライバルだったんです」

ジュエルシードってのは凄い力を持つ魔石のことだったよな。以前、なのはちゃん達がいっていた気がする。

「私は、フェイトちゃんと戦う内にフェイトちゃんと友達になりたいって思って、『お友達になりたい』っていったんです。

だけど、フェイトちゃんは心を開いてくれなかった……

あくまで私の考えですけど、フェイトちゃんはお母さんのプレシア・テスタロッサさんの事が大好きな女の子で、その人の命令で動いていたから……いきなりそういわれて戸惑っていたのかもしれません」

「プレシア・テスタロッサですか? それって確か……」

「ノイルさんがいってたあの次元断層未遂事件の首謀者だよな?」

フィアの言葉を引き継ぐように俺が言葉を付け加える。

「はい、想像の通りフェイトちゃんはその次元断層未遂事件のお手伝いをしていたんです。

フェイトちゃんはそれが善なのか悪なのかなんて関係無かったんだと思います。

ただ、お母さんの命令だから……お母さんに褒められたいから……その一心で忠実に遂行していたんです……でも」

「「でも?」」

「プレシアさんから見れば、フェイトちゃんはただのジュエルシードを集める為の道具としか思ってなかったんです」

「「!?」」

「な、なんだって!?」

少しばかり声量が大きくなってしまう。

でも、そうなるのも無理ないと思う。

だって、信じられるか? 実の子供をただの道具にしか見ていないなんて……

「実はフェイトちゃんは……いえ、これはいってはいけない事ですね。

いくら、過去と決別したといっても心の傷は消えないですから……」

なのはちゃんが何かいおうとしたのだが、寸での所で自己完結してその先をいうのを止めてしまう。

そうだな、内容は聞かずじまいだけど、人には触れられたくない過去というの物がある。

偶然知ってしまったなのはちゃん達はいいとしても、事件に何の関係も無い俺達が出しゃばってむやみやたらに知って良い事ではないだろう。

「理由がわからないですけど、人の命を道具みたいに扱うなんて許せないです!! 絶対に、許しちゃいけないです!!」

その脇でフィアがこれ以上ないくらいの激昂っぷりで怒る。

ここまで怒るのなんて、フィアにも過去に何かあったのだろうか……いや、考えるのはよそう。

だけどフィアのいう通りだ、これは許せない……

いや、許してはいけない……

それが例え親であろうと、人を道具として扱う権利なんて絶対に無い。

「フェイトちゃんはプレシアさんへの思いを貫こうとしたんだけど、最後までプレシアさんはフェイトちゃんを認めずにそのまま……」

「「……」」

そこまでいって言葉を切るなのはちゃん。

なんとなくだけど、なのはちゃんの表情にも陰りが生まれていた。

多分、こんな暗いムードにしてしまったのが自分のせいだと思ってるのだろう

悪いのは話を振った俺達だというのに、責任感が強いというか、なんというか……

 

 

それに、なのはちゃんは最後までいわなかったけど、その後の展開は何となくわかる。

多分、もうこの世の人では無いということなのだろう。

 

でも……

 

「でも、それは……フェイトちゃんには悪いかもしれないけど、新しい自分を踏み出す為のいい機会だったのかもな……」

「……えっ?」

「だって、これからは母親のためじゃなくて自分の為の人生を生きていくんだから」

そう、フェイトちゃんはもう母親の道具なんかじゃないのだから……自分の為にこれからを生きて欲しい。

きっかけとしてはあまりにも悲しすぎるきっかけだけど……それを乗り越える事によってフェイトちゃんは一回りも二回りも人間として大きくなれるんだと思う。


そしてそのきっかけを与えた人になったのが、やはりなのはちゃんなのだろう

純粋で、友達思いのなのはちゃんだったからこそ、フェイトちゃんは母親との決別を決意できたのかもしれない。

「えへへ……ありがとうございます。祐一さん」

なのはちゃんの陰りがあった表情からいつもの笑みがこぼれる。

「いや、俺達が悪かったんだ。

興味半分でこんな事を聞いちゃって、ムードも暗くなっちゃったし……それに……」

「?」

「それに、なのはちゃんは笑っていた方が可愛いしね。陰った顔なんてなのはちゃんらしくないぞ?」

「はにゃ!?」

俺がそういうと顔を真っ赤にして慌て始めるなのはちゃん。

「もがもがもがもが〜〜〜!!」

「まぁまぁ……」

その後ろで何故か暴れているフィアとそれを取り押さえてるユーノ君。

「なのはちゃん?」

「は、はいっ! そ、そろそろフェイトちゃんの所に向かいませんか?

「ん、そうだな。時間もそんな余ってる訳でも無いし……」

というわけで、そこで俺達は話をやめてフェイトちゃんの所に足を進めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「え〜と、確かクロノ君が教えてくれた情報によるとこの建物の最上階にいるっていってたんだけど」

俺達はなのはちゃんがクロノに事前に教えてもらった情報を頼りに、上が何階あるかわからない位の高さの高層マンションのような建物の前に立っていた。

「おいおい、フェイトちゃんは裁判を受ける身なんだろ? だったら、こんな高級そうな場所にいる訳無いじゃないか?」

普通、勾留とかそういうのにはこんな高級そうな場所は使わんだろ?

「その点は、リンディさんが対処してくれたらしくて……さすがに年頃の女の子を拘置所のような汚い場所に入れるのは抵抗があるって……」

「それにしても大きすぎだろ? これは……」

東京にもこんな高層ビル少ないぞ?

「実はここは局員の宿舎で、フェイトの勾留されてる所はリンディさんの家らしいです」

「凄いんだな、時空管理局って……」

俺も、時空管理局に入ろうかな?

「それより、こんな所に立ってないで早く入ろうです」

 

ガァァッ……

 

自動ドアをくぐると、内装は高級ホテルを彷彿とさせるようなロビー

奥には上へと繋がるエレベーターがある。

俺達は真っ直ぐにエレベーターへ乗り込み、最上階へと向かう。

 

チーーン……

 

「皆、待っていたよ……相沢さん、魔石の修復は?」

最上階に着くと先程別れたクロノが出迎えてくれた。

「あぁ、6時間位で出来上がるっていってた……本当に助かったよ」

「僕は何もしていない。お礼をいうなら艦長にいってくれ……それじゃ、案内するね」

体を反転させて奥へと向かうクロノ、俺達もその後に続く

廊下は曲がり角の無い一本道で、両壁には番号の書かれたドアが幾つも連なっている。

目的地はエレベーターホールから3分位歩いた所の左側――――――ドアの目の高さ辺りに『3208』と書かれたプレートが貼ってある部屋だった。

「準備はいいかい?」

「……うん」

なんか、俺もドキドキしてきたな……

「それじゃ、開けるよ」

 

ピーーーッ……カチャッ……

 

クロノが持っていたカードキーでドアの鍵を外す。

ドアはゆっくりと開いていく……

 

 

 

 

カチャッ……

 

ドアの鍵が開きドアが開く音がする。

私は椅子に座り、リビングと玄関を繋ぐドア越しにその音を聞いていた。

多分、なのはが私に会いにきてくれたのだろう。

「フェイト、迎えに行かなくていいの? すっごく会いたかったんだろう?」

隣でアルフがそんな事をいったので、私は首を横に振ることで答えを返した。

……私がなのはを迎えに行っても、頭がぼうっとして何がなんだかわからなくなってしまうだろうから

 

ガチャッ……

 

リビングのドアがゆっくり開いていく……

 

「……フェイトちゃん」

そこから現れたのは、なのは、ユーノ、クロノ、そして私の見たことの無い――――――歳はクロノと同じ位の緑髪の少女と、見た目は私よりも年上な痩せ型の茶色みがかった髪の青年の五人だった。

「……フェイトちゃん」

「…………」

なのはが一歩歩みでてきて呟く。

返事をしたいのだけどうまく声が出せない。

「ほぉ〜らっ! 行ってきなさいよ。フェイト! ……約束、したんだろう?」

「……うん」

アルフに押し出される形で私も一歩歩み出る。

「……」

「……」

「……なのは」

それだけを何とか声を振り絞る。

他にも話しかった事もあったはずなのに、そんな物は頭から綺麗さっぱり吹き飛んでしまって――――――今度会った時にお互いで名前を呼び合おう。その約束だけが私の頭に残っていた。

「うん……フェイトちゃん」

「なのはっ!」

 

がばぁっ!

 

我慢できずにおもわずなのはに抱きついてしまう。

込み上げて来る涙を止める事が出来ない。

「うっ……うっ……うぅっ……ぐす」

「久しぶりだね……フェイトちゃん……元気だった?」

「うぅっ……」

赤ちゃんをあやす様に優しく抱きとめてくれたなのは

私は嗚咽が止まらない口の代わりに首を縦に振る事で肯定を表す。

「………………」

それっきり、ピタリと喋らなくなったなのは

「うっ……ぐすっ……な……のは?」

「あ、あはは〜……まただよ……フェイトちゃんにいっぱい、い〜っぱい話してあげたい事があったのに……フェイトちゃんと会ったら……忘れちゃった……」

「……その気持ちだけでも……ぐすっ……嬉しい……

私は……なのはに会えただけでも、声を聞けただけでも凄く嬉しいから……」

「フェイトちゃん…………私もだよっ!」

そういって私の体をぎゅっと抱き締め返してくれる。

たったそれだけ……たったそれだけだけど、私がここで暮らし始めて一番安らげた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 
















後書き:

J「申し訳ない!!」

absolute(以下 ア)「どうしました? 藪から棒に?」

J「……いや、とても感動できるようなものじゃない話になってしまった気がしてな」

ア「……あなたにも謝るなんて人並みの事が出来たんですね……」

J「なんか、凄い失礼な事を……」

ア「……まぁ、誤字と脱字が無ければそこそこ……じゃないですか?」

J「まぁ、俺にしては上出来な方か?」

ア「これ以上の作品をこの駄作者に求めるのは酷……かと」

J「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

<作者逃亡につき強制終了>

 

人物説明

 

フェイト・テスタロッサ

 

9歳

無口で無表情な女の子。

アニメのリリカルなのはではジュエルシードを争うライバルだったが、プレシア・テスタロッサ事件の終盤ではなのはと共に戦った。

その事件が終了した事により、重要参考人として、荷担していたという事に対する罪人として本局に出頭していた。

魔術師としての実力はなのはに負けず劣らずの強さで閃光の戦斧『バルディッシュ』のマスターである。

 

容姿を書けなかったのでここで補足。

髪の色は金髪で髪型はなのはと同じツインテール。

これで想像し辛いようでしたら公式サイトのキャラ紹介を見てください。

 

 

アルフ

 

16歳(知らんかった……)

フェイトの使い魔。女性と大型の犬のような形態の二つの姿に変身出来る。

性格は明るい性格だが、犬のような形態を持つからか主人に対しての忠誠が厚く、マスターであるフェイトを第一に考えている。

ちなみにドッグフードが大好き。

 

 

 

 

 

 

 

感想・指摘・質問がありましたらBBSかmailにてお願いします。

 

 

 

P.S.

ア「結局、大して作品は向上しなかった気がします」

フィア「absoluteさん、追い討ちをかかないでやって欲しいです」

 

 

2005年2月9日作成

〃2月10日修正