「ガ……ガァ……」
「さっ、封印したら?」
「あっ、あぁ……」
エレナさんの一言で我に返る。
「『seal』」
キィィィィィン……
封印を唱えると黒い影から魔石が現れ、黒い影は徐々に小さくなっていき最後には消えてしまった。
「ふぅ〜、準備運動にもならなかったわね」
「エレナさんって一体何者なんだ?」
ユンカースを完全に圧倒してたし……獣耳生えてるし……
「あたし? あたしは『守護者(ガーディアン)』よ」
「だからその『守護者』というのがわかんないんですけど」
「ユンカースの中のユンカース……それが『守護者』。私達はユンカースであるけどユンカース以上の存在。私はその一つなのよ」
「ユンカース以上の存在……」
強力な魔石といわれているユンカースの更に上の存在……
「祐一さん……」
「あぁ、わかってる」
スペリオルブレイドを再び構える。
「そう……やろうってのね……」
一瞬で漂っていた空気が変わる。
なんてオーラだよ……これが『守護者』の実力ってやつか……
「行きますよ。祐一さん」
なのはちゃんも臨戦態勢を取る。
「さぁ、あたしを楽しませてよ? すぐやられないでよね」
エレナさんがこっちに疾走してくる。
ほぼ同じタイミングでなのはちゃんと俺も駆ける。
そして、三つの影が交わろうとしたその時……
「あなた達はここで何をしているんですか!」
魔法青年 相沢祐一
12幕「孤独」
「「「誰!?」」」
俺達が振り返ると、そこにいたのは巫女装束を纏った見覚えのある赤い髪の少女。
「ここは神を祀る神聖な場所です。そこであなた達は……って相沢さん?」
「あ、天野?」
「祐一さん? この人は?」
少しドスの効いた声でなのはちゃんが聞いてきた。
「あぁ、天野美汐っていって俺の一年後輩だよ。天野、こっちは高町なのはちゃん。この前うちのクラスに転校してきたんだ」
「そうですか……天野さん、よろしく」
「えぇ……こちらこそ。それで、こんな所で魔法少女のコスプレをして何やっているのですか?」
「ま、まぁいろいろあってな」
どういろいろあったかは聞かないで欲しい。
「それで、天野はなんでこんな所で巫女装束?」
妙にマッチし過ぎてるぞ。
「ここは私の家ですから」
へぇー、普段から雰囲気が和風っぽいと思ったら神社の娘だったのか……
「ねぇ、あたし達どうしようか?」
くいくいと袖を引っ張ってくるエレナさん。
どうやら、天野の登場によって戦う気が無くなってしまったらしい。
かくいう俺もそうなのだが
「……とりあえず、事情は中に入って聞きましょう」
「なるほど、劇の練習ですか……」
「あぁ、なのはちゃんと同じ劇団に入っててな。それで今度舞台があるから役の練習をしていたんだ」
神社の裏にある天野の家に来た俺達は結局、正直に話すことができず劇の練習と嘘をつくことにしてしまった。
「……まぁ、いいです。そういうことにしておきましょう」
まだ疑いの眼差しをこちらに向けているが、一応は納得してくれたみたいだ。
「それで、こちらの方は?」
「あたしは、エレナっていうわ。2人の先輩よ」
エレナさんも正直に話すのは拙いと思ったらしく、俺達の話題に会話を合わせる。
「そうなんですか」
『祐一となのはだったっけ……名前』
「!?」
なんだ? 頭の中にエレナさんの声が?
「祐一さん、落ち着いてください。これはテレパシーです」
なのはちゃんが小声で教えてくれる。既に経験があるのだろう、妙に落ち着いている。
『そうそう、そういうこと。こんなの『守護者』のあたしには朝飯前だということ。この天野さんには聞かれると困るんでしょ?』
「まぁ、そうだけど……」
『なら、こういう風に会話をすれば彼女にもばれないしね……あたしが上手く祐一には話が回らないように喋るから、こっちの会話だけに集中していいわ。頭に言葉を思い浮かべればこっちにもテレパシーが届くから』
それは、ありがたいな。俺って二つのことを一度にできる程器用じゃないからな。
『で、何から話そうかな……何か聞きたいことある?』
『エレナさんの能力って何です?』
俺は一番気になっていた事を聞いてみることにした。
『あたし? あたしの能力はNo.5『time』、時を司ってるわ』
『なるほど、だからあの時、空間が止まっているように見えたんですね』
あの時……おそらく『worp』が奇襲をかけた時の事だろう。もっとも奇襲なんてさせてもらえなかったのが実情だが
『まぁ、そういう事ができる奴もいるんだけどね……他には?』
『それじゃ、『守護者』って何人いるんですか?』
今度はなのはちゃんが質問する。
『ちょっと、違うわね……あたし達は魔石。だから単位は『人』じゃなくて『個』よ。……21個の内のNo.1〜5の5個が『守護者』と呼ばれているわ』
あんなレベルの奴があと4個もあるっていうのか
『更にその上もいるわ。No.21の魔石……この魔石は『守護者』のあたし達よりも一線を画しているわ』
『そうなんですか……』
なのはちゃんも相当気を削がれた様子だ……そりゃそうか、このレベルがまだ沢山いるなんて聞けば。
『まぁ、あなた達ならそれなりには戦えると思うわ。それは保証する』
そんな事いわれても、慰めにもならないですよ……エレナさん。
「それじゃ、そろそろ帰るわ」
その後30分くらい話し込んでから、俺達はお暇する事にした。
「お茶、ご馳走様でした」
「美味しかったわよ」
「はい、それじゃ」
天野に別れを告げて俺達は上ってきた階段を下りていく
「なんか、羨ましいな……」
階段ももう下り終わるといった辺りに差し掛かった時、エレナさんがポツリと呟く
「えっ?」
「……あたし達ってね。魔石として作られた兵器だから……あぁいう風に皆で囲んでお話したり、お茶飲んだり……そういう事なんてした事無かったから……凄く憧れてたんだ」
「……」
考えた事も無かった。いつも誰かと一緒にお茶を飲んだり、お話をしたり、イチゴサンデーを奢ったり(?)するのが当たり前と考えていたから……
「私は……わかります……私も……昔は一人だったから……」
なのはちゃんも……そういえば天野も……みんな孤独と戦った時があったんだ。
「うん、だから今のあなた達がとても羨ましいの……殺したいくらいに」
「「!?」」
「はははっ、冗談よ。冗談。でも羨ましいのは本当……ねぇ、あなたもそう思うでしょ?」
突然、殺気を滲ませながらエレナさんがいう。
「ふふふっ……さすが『守護者』……ちゃんと気配を隠していたのに……」
声がしたと思うと、何も無い所からすうっと年齢15、6位一人の少年が現れる。
「誰だっ!」
「君達には用は無い、僕が用があるのは『time』……君を封印させてもらう」
「あらら、あなたは魔法使いね?」
「えぇ、僕の名前はスコール・スティナイト。世界最強の魔法使いです」
後書き
J「終わっちゃったな……」
フ「終わっちゃいましたです……」
J「あっという間だったな……」
フ「去年はいろいろあったですよね……」
J「あぁ、終わったなぁ……リリカルなのは」
フ「そっちかぁぁぁぁぁぁぁぁ……です」
J「フィア、マンネリは芸人の敵だぞ?」
フ「誰が、芸人ですか……」
※感想・指摘・質問がありましたらBBSかmailにてよろしくお願いします
P.S.
フ「そろそろ……私を出して欲しいです……」
J「わかったから……わかったから泣くな!」
2005年1月1日作成