チュンチュン……

 

「ん?」

目が覚めると俺は自分のベッドに寝かされていた。

もう朝か? え〜っと昨日は何があったんだっけ?

とりあえずは起きようと体を起こすが

「痛っ!」

体中がきしむような痛みが走る。

「……そうだ、昨日……」

北川と別れた後、いろいろあったもんなぁ……

生きているだけよかったという事か。

「むにゃむにゃ……ドーナツですぅ……」

で、なんで隣でフィアが寝てるんだ? しかも変身しないで。

 

 

 

魔法青年 相沢祐一

第八幕「転校生」

 

 

 

OK、落ち着け俺。び〜くるだ、び〜くる。

まず、状況整理だ。

まず、ここは俺の部屋だな。それで俺がいるのはベッドの上。

で、横にいるのが昨日会った自称凄腕魔術師のフィア。

……ふむ、何かおかしい所があったか…………………………あぁぁぁぁぁっ!!

「おい! 何でフィアがここで寝てるんだ!!」

俺は、憎たらしいくらいに良い表情で爆睡しているフィアをガクガク揺さぶって起こす。

「ふにゃ? おはようございまふでふ」

「朝の挨拶はいい! なんでここで寝てるんだ!」

「……ふにゃ? あぁ、みんなを運んだ途端に疲れて眠くなって……
 丁度祐一さんが最後だったから、ここで寝ちゃいましたです。てへっ」

『てへっ』じゃないよ……

「とりあえず、早く猫に戻れ! 幾ら秋子さんの懐が深かろうと俺はまだロリコンの烙印を押されたくない!」

大体こういう状況だとお約束で……

 

コンコン

 

「祐一、起きてる〜」

ほら、やっぱり……

間延びのしたまだ寝ぼけている声、まさしく名雪の声だ。

「祐一くん」

「祐一さん」

「祐一、起きなさいよぅ!」

「祐一……早く起きる……」

 

じ、状況悪化っ!!

 

名雪だけならイチゴサンデーで済むけど、
さすがに五人にロリコンロリコンと責められるのは勘弁だ。
なんというか精神衛生上よくない。

「フ、フィア!? 早く、早く猫に変身しろって」

「ふぁい? 猫ですか?」

「そうだ! だから早く猫になれっ!」

「わかったでふ……」

 

ボォォォォォン

 

「祐一、入るよ〜」

名雪を先頭に五人が次々に入ってくる。

どうやら、みんな怪我は無いようだ。

「や、やぁ。おはよう名雪」

「おはよう祐一」

昨日あんな激しい戦いをしたのが嘘みたいにのほほんとした様子の名雪。

「にゃあ〜」

「!! 猫っ!!」

し、しまった!? すっかり忘れてた! 奴は……名雪は……猫ジャンキーだった!

「逃げろ! フィア!!」

「にゃ?」

「ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!()

やばい、暴走した!

フィア目掛けて一気に飛び掛る名雪

「にゃ、にゃ、にゃあ?!

一目散に空いてたドアから外に逃げ込むフィア

「ちっ、逃がしたんだよもん」

名雪……それキャラ違う……

「それより、お前ら大丈夫か?」

「何の事? ボク達はさっきまでずっと眠ってたよ」

どうやら、俺と戦った記憶は無いようだ。

「……でもなんか体が痛い気がします」

「き、気のせいだろ……あ、あはははは」

……記憶が無いんだったら昨夜の事は話さなくてもいいな……
話した所で理解できるかどうか解らないし。なによりこいつらまでこの戦いに巻き込みたくない。

「祐一、そんな事よりもう学校の時間……」

舞が時計を指差す。

時刻は……八時十分……ちなみにうちの学校は八時半を過ぎたら遅刻でここからは歩いて約二十分いった所にある。

ほぅ……

「「「「ち、遅刻だぁ!」」」」

その時、俺は風になったとだけ追記しておこう。

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン……

 

「な、何とか……間に合った……」

体中痛いのに加えての全力疾走は体に堪える……

「相変わらず心臓に悪い登校だな。相沢」

机に突っ伏している俺に、北川が声をかける。

 

ガラララララッ

 

「おっと、石橋が来たみたいだから戻るわ。じゃあ、また休み時間に」

俺は、返事の変わりに右手を上げてそれに応じる。

「あ〜、みんなおはよう。今日は珍しく相沢もいるんだな……明日何か起こらなきゃいいが……」

なんか失礼だな。大体いつもの遅刻は名雪のせいで、俺のせいでは無いのだが

「まぁ、いい。今日は転校生がこのクラスに来た。男子は喜べ! 転校生は女性……しかも二人でかなりの上玉だ」

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

石橋の発言に一気にヒートアップするクラスの男共

……うるさい、落ち着いて寝られんじゃないか。

「おい、相沢。転校生だってよ! しかも女だぞ!」

前の席にいる北川が唾を飛ばしながら熱弁をふるう。

気のせいか? 唾が飛んだところからが出てる気がするんだが……

「もまえら、もちつけ!」

何故か2ちゃんねらー風に生徒を落ち着かせる石橋。

……案外住人なのかも

「それじゃ、転校生。入ってこ〜い」

 

ガラララッ

 

石橋にいわれてドアから二人入ってくる。

一人は艶のある茶色の長髪にそこはかとなく神秘的な雰囲気を漂わせるの女の子。

もう一人も茶色の髪を左右二ヶ所をリボンで結んだ、まるで小学生のような風貌の少女だった。

「それでは、自己紹介をしてもらおうか」

石橋がそういうと茶髪の女の子の方が一歩前に出て

「愛知 満月(あいち みつき)です。よろしくお願いします……」

と一通りの自己紹介をして礼儀正しく礼をする愛知さん。

「よし、次は高町(たかまち)だ」

「はい、高町なのはです。年齢は九歳。まだ未熟ですけど、みなさんよろしくお願いします!」

「高町は九歳だが、飛び級してこの高校に来たほどの秀才だ。
下手に知識をひけらかして逆に恥をかかんように、じゃあ二人の席は……ちょうど相沢と北川の隣が空いてるな。北川……あの金髪アンテナ男だ。そこに愛知、相沢……あのたるそうにしている奴だ。そこには高町が座ってくれ」

「「はい」」

石橋に指示され北川の席の隣に愛知さん、俺の隣に高町さんが座る。

にしても北川、先生までにもアンテナって呼ばれてるぞ……

「よろしくお願いします。相沢さん」

「あぁ、よろしく高町さん」

「別に相沢さんの方が年上ですし、呼び捨てでいいですよ」

「そうか? なら高町……じゃあ味気ないから……なのはちゃんでいいか?」

「はい、それでいいです」

「わかった、俺は相沢祐一、よろしくな。あと俺には敬語を使わなくていいし、名前も呼び捨てで構わないぞ」

「あっ、はい……でもやっぱり呼び捨ては気が引けるので祐一さんでいいですか?」

「う〜ん……まぁ、いいや。自分の呼びやすい名前で呼んでくれ」

「はい、祐一さん」

「さて、じゃあHRを始めるぞ〜」

 

 

 

「ふひ〜疲れた……」

昼休みに入ると机にうっ伏す俺

「あぁ、めちゃくちゃ疲れたな……」

振り向いた北川もそれに同意する。

「あはは、ごめんなさい」

「すみません……私達のせいで……」

その脇で俺達に謝る二人。

「まさかあんなに人が来るとは思わなんだ」

ここまでの会話で解る人は解ったと思うが、休み時間に恒例の質問攻めという名の隣人迫害が起きた。まぁ、そんな所である。

「それにしても、二人共良くあんな質問攻めに疲れないよな?」

「本当、本当。隣人はこんなに疲れてるっていうのにな」

「あはは、私は人とお話するのが好きですから」

「私も、こういう物が起きるとある程度予測してましたので……」

「ははは、そうなんだ」

「はははは」

「あははは」

「ふふふふ」

 

「『ははは』じゃないんだよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

伏線も張らずにいきなり現れた名雪によって、俺の平穏な昼休みは泡となって消えてしまった。

 

 

 

 

おまけ

その頃フィアはというと

「ふにゃぁ〜、ここはどこですかぁ〜」

もちろん道に迷っていた。

手を目にやってわんわん泣いてるフィア

「おい、見ろポテト。あれは本当に猫か?」

「ぴこぴこ」

「ふむ、猫にしては随分芸が細かい気がするんだが……」

「ぴこ?」

「そうだな、俺も負けてらんないな!」

「ぴこぴこ!」

 

 

 

 

後書き:

J「テスト〜〜テストだよ〜〜」

祐一(以下祐)「作者が壊れた……」

J「あははは〜」

祐「しょうがない。『wing』『fire』いっけぇぇぇぇぇアカシックバスタァァァ!!」

 

ズガガガガガガガッ

 

J「のげふっ!」

祐「やっと、目が覚めたか」

J「死ぬわ〜〜〜!!」

祐「全く、さっさとしろ」

J「あれっ? フィアは?」

祐「上の状況を見りゃ解るだろ。あの状況だから今回は俺が代打だ」

J「ふ〜ん、まぁいいか。じゃあ今回は追加設定の紹介だ」

 

追加設定

美坂チームは高校三年生ですが、祐一と北川、名雪と香里でクラスがバラバラ。

あゆ、真琴は高校一年生に編入。ちなみに同じクラス

栞、天野は高校二年。これも同様

舞、佐祐理は近くの大学に進学しています。

 

J「こんなものかな?」

祐「少しありきたりな設定に見えてちょっと普通とは違っているな」

J「ちょっとだけね」

祐「今回はこれ位でいいんじゃないか?」

J「そうだな、感想、指摘、質問があったらBBSかmailまで」

祐「よろしくな」

J・祐「「では、さよ〜なら〜」」

 

 

 

P.S.

祐「ところで、なのはってあんな感じで良かったけか?」

J「ちょっと……自信ないかも、というかフィアとキャラが被ってしまうな」

 

 

2004年12月10日作成