「後は名雪。お前だけだ!」

「ふふふ……」


名雪は起き上がると不敵な笑みを漏らす。


「!? 何がおかしいんだ! もう、お前らの負けは決まったようなものだ。とっとと名雪から出て行け!!」

「そう……だけどね。祐一は重要な事を忘れているよ」


抑揚の無い、感情を捨てたような声で名雪はいう。


「!?」

「それは、最後に残ったのがこの私だっていうことだよ!!」

 

 

 






魔法青年 相沢祐一

七幕「共鳴」






 

 

 

「さぁ、本気を見せてあげるよ!!」


名雪の周りに異質とも呼べるほどの魔力が集まっていく


「な、なんだ。この嫌な寒気は……」


さっきから冷や汗が止まらない。


「それは、恐怖だよ……いくら心が強がっても、体は正直に反応しちゃうものなんだよ」

「お、俺は怖がってなんかいない!!」

「ふふふ、その強がりもいつまで続くかな?」

「冗談! 先手必勝で決めさせて貰う!!」


俺は杖を構えて呪文を唱える。


「『fire』!」


杖から出された火の玉は真っ直ぐに名雪の所に……行かなかった。

なぜなら


「い、いない」

「それが先手必勝? 遅すぎるよっ!」

「う、後ろ!?」

「だから、遅いんだよ!!」

 


ドガッ


 

「へぶっ!」


名雪に気付き、振り返った所に名雪の顔面パンチが直撃する。

くそっ……顔は主人公の命だってのに


「まだ、終わらないんだよ!」

「ちっ、地上じゃ不利か」


なら、空からだ!


「『wing』!」

 


ぶわぁぁぁぁぁぁっ


 

俺の背中から天使のような真っ白な翼が生え、地面を蹴り上げて上空に舞う。


「空に逃げたの? 確かに地上よりはいいかも知れないけど私にとっては意味のないことだということを教えてあげるよ!」


名雪も地面を蹴り上げ、人間技を超越した跳躍力で俺に向かって飛んでくる。


(しめた……)


うまく作戦に引っかかった。


「空中からなら動きが取れないだろう! 喰らえ! fir『だから遅い!!』……は、速い!」

 


ガスッ!


 

俺が呪文を唱えるより速く、名雪の膝蹴りが俺の鳩尾に決まる。


「げほっ……」

「地上に……落ちるんだよ!!」

 


バシィィィィッ!……ドゴォォォォォッ!!


 

名雪は身動きが止まった俺を地面に叩きつける。


「がはっ……な、なんなんだ……さっきとはスピードが全然違う……」


い、息が……出来ない……


「祐一は『共鳴』って知ってる?」

「共……鳴……?」


何とか声を絞りだして名雪の魔石に問う。


「稀に魔石と魔石に乗っ取られた人の相性が抜群だと、魔石の力が二倍にも三倍にも膨れ上がるんだよ。それが共鳴」


名雪は陸上部。速度を調整する能力の魔石とは相性抜群という事か……


「少し、お喋りが過ぎたみたいだね。それじゃ、その体もらうよっ!!」


名雪が俺に向かって疾走してくる。

やばい! 回避も防御も間に合わない!

 


キィィィィィン


 

「ス、スペリオル・ブレイド……」

「だ、だおっ、無詠唱でバリアを展開したっ!?」

「スペリオル・ブレイドが思考を読み取って自動発動したですよ。祐一さん、怯んでる今がチャンスです!」

「フィア、栞は?」

「大丈夫です。気絶させて家に運んでおきましたです」


No.16『ice』と彫られた魔石を祐一に手渡すフィア


「そうか、よかった」

「加勢しましょうか?」

「いや、いい。これは俺が倒さなければいけない気がするから」


俺がそう答えると、フィアはニコッと微笑み


「ただ聞いただけです。そういうと思ってたですから」

「よし、これからが勝負だ! 名雪」


杖を名雪に向けて呪文を唱える。


「shot(ショット)!!」


杖から発された魔力の弾が次々に名雪に襲いかかる。


「すろぉ〜りぃ〜なんだよっ!」

 


ズダダダダダダダッ!


 

よ、避けた……あれだけの弾を


「祐一さん、休んじゃ駄目ですっ!」


そうはいわれても闇雲に撃っても当たらないし、長期戦に持ち込まれれば魔力が切れて狙い打ちにあう……どうすればいいんだ? 考えろ……考えるんだ祐一


「そうかっ! これなら」

 


ドムッ!


 

「祐一さん!!」

「がはっ……」


名雪のボディブローが俺の鳩尾に深々と突き刺さる。


「考え事してるほどの余裕なんてない筈だよ……」

「祐一さーーーーーん!!」

「大丈夫だ……」

「で、でも」


飛び出そうとするフィアを声で征する。

ふぅ……強がってみたもの正直体のあちこちが悲鳴を上げてる。


「ふ〜ん……まだ口が聞けるほどの元気があるみたいだね……」

 


ドゴォォォォォッ!!


 

名雪によって、壁まで渾身の一撃で叩きつけられる。


「ゆ、祐一さん!!」

「あ〜っはっはっはっ、これで祐一の体は私の物。あ〜っはっはっはっ」

「祐……一……さん……」


ペタリと膝を付くフィア。


「さぁ、それじゃ祐一の体を頂くとするよ」

 

 

 

 






叩きつけられた方へゆっくりと歩みを始める名雪さん。

だけど、祐一さんのため、魔石のため、自分の使命のため、私が命をかけても阻止してみせる。


「祐一さんには指一本触れさせません!」

「うざいんだよっ!」

 


ばしぃぃぃん……


 

超高速に振り切られる腕によって吹き飛ばされる私。


「はぅ……」


……やっぱりさっきの戦いで力を使いすぎたかも……


「祐一に取り付く邪な悪魔なんて私が殺して……」


そういって名雪さんが私に向かって手を降り上げて―――


「あげるんだよっ!!」


―――降ろした。


「さ、させるかよ!」

 


バシュン、バシュゥゥゥン……


 

振り下ろされた手は寸での所で祐一さんの魔力の弾によって止められる。


「祐一、まだ意識があったんだね……やっぱり祐一の体はいらないや……この手で殺してあげるよ!!」


祐一さんに向かって疾走する名雪さん。


「かかったな。いくぜ『fire』!」


祐一さんは、杖から炎を生み出す。


「それはもうとっくに見切ってるよ!『まだ俺の呪文は終わってない!』……なに?」

「そして『wing』! 二つの魔石の力を融合し今、新たな魔法として生まれ変われ!!」


『wing』によって杖から出てきた翼にさっきの炎が纏わり付く。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 『アカシックバスタァァァァァァァァァ!!』」


その杖を名雪に向かって放り投げる祐一さん。

杖は炎に包まれる。その姿はまるで―――


「不死鳥(フェニックス)です……」


火の鳥となった杖が名雪に襲いかかる。


「だ、だおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 


ボォォォォォォォォォン


 

火の鳥は名雪に当たり大爆発を起こす。


「これで、終わりだっ! 『seal』!」

「あと、少しだったのに……うにゅう……」


 

キィィィィィィン


 

名雪の体から魔石が浮き出てくる。


「No.11『speed(スピード)』……か」

「やったです! 祐一さん」

「おう、俺はやる時はやるお……と……こ……」

 


バタッ


 

セリフをいい終えぬうちに祐一さんが倒れる。


「あ〜っ、あ〜っ、祐一さん。祐一さん大丈夫ですか!?」

「すまん、さすがに体が限界みたいだ。少し休ませてくれ」


そりゃ、あれだけの攻撃を喰らってピンピンしてたら私、あなたを人間として認めませんよ。


「あっ、名雪の事頼むわ、それじゃおや……す……み」


それだけいうと祐一さんはすぅすぅと寝息を立てて眠ってしまった。

その安らかな寝顔を見る。



「すぅ……すぅ……」




少しだけ、あと十分位その寝顔を堪能してから祐一さん達を家に運ぼう


「……おやすみなさいです。祐一さん」

 

 

 

 

 

祐一たちの戦いを遠くから見つめる四つの目……

片方は少年、もう片方はまだ年端もいかない少女のようだ。


「どうやらあの男の人と女の子は六つ集めたみたいだね……」


少年が喋る。


「うん、私たちも負けられないね『   』君」

「そうだね『   』」


 

彼ら達と祐一たちが合間見えるのは近いかもしれない……

 

 

 






後書き:J「やっと、終わった……」

フ「お疲れ様です」

J「あぁ、またテストが近いのに頑張っちゃったよ」

フ「なんか、もう人生諦めてるっぽいです」

J「そこまで堕ちてはいない……と思う」

フ「はぁ……です」

J「今回は、技の解説だ。フィア、説明よろしく」

フ「はいです」

 

説明要項

威力:技の威力

命中:技の命中率

魔力:技の使用魔力

S、A、B、Cで表し、Sにいくほど優れている。

 

アカシックバスター 術者:相沢祐一

威力:A 命中:B 魔力:B

「fire」と「wing」の魔石の複合魔術

複合魔術というのは魔法と魔法を掛け合わせて別の魔法を作る事であり、祐一みたいにぶっつけでできるほど簡単なものでは決して無い。

この魔術は杖に翼を具現化し、その杖に炎を纏わせた物を相手に向かって放り投げる魔術。

その姿は不死鳥、火の鳥を彷彿とさせる。

 

 

shot 術者:相沢祐一、???

威力:C 命中:B 魔力:S

スペリオル・ブレイド等に最初から入れられている基本魔術

魔力の弾をただ相手に飛ばすだけ

魔力消費が少なく、連射も効くので祐一は気に入っているらしい

 

 

マグナムファントム 術者:水瀬名雪(憑依状態)

威力:B 命中:C 魔力:S

「speed」に取り付かれた名雪が祐一に放っていた技の名前。

名雪は実際には技名を発してないので基本的には楽屋ネタ(

超高速で相手の主に腹部に拳を入れる技。

アカシックバスター等と比べれば地味だが威力は本物

 

 

フ「……です」

J「結構、今回は魔法が出せたな。では感想・指摘・質問があったらBBSかmailまで」

フ「よろしくです」

J・フ「では、さよ〜なら〜」

 

 

 

P.S.

フ「最後の二人は一体なにですか?」

J「まぁ、そのうちわかるさ……」

フ「も、もしや……」

 

2004年12月4日作成