ドンドンドンドン……


 

階段を二段抜かしで駆け下り、一階に出る。


「くそっ……」


なんで、猫に化けてるフィアに猫ジャンキーの名雪が反応しないのに気が付かなかったんだ!


「どうするですか?」

「とにかく、外へ逃げる!」


幸い階段から玄関まではすぐ近くだ。

玄関まで一気に走りぬける。

しかし―――


「ぽんぽこたぬきさん」


 

ジャキッ

 


「うおっ!」


玄関の前には舞が立ちはだかっていた。


「……祐一、逃がさない」


名雪と違って地がクールな舞だったので、声にはさほどの変化は無いがその一語一語からありふれるほどの殺気が感じられる。


「ま、舞もか!?」

「に、逃げるです!」


玄関を押さえられては退くしかない。

仕方なくリビングへと退避する。


「ここまで来れば大丈夫か!?」

「は、早く変身するです!」

「お、おぅ……」

「させません!」


隙を入れずに窓を破って無数の氷の粒が俺たちに襲いかかる。


「はわわわわ……」

「のわっ!」


たまらず台所に転がり込むように入る。


「うぐぅ、祐一君もらったよ!」

「祐一、くたばれぇ!」

「今度はお前らか!」


転がり込んだ台所では待ち構えていたとばかりにうぐぅとあう〜が俺に攻撃する。

台所で調達したのか、2人とも片手にはその容姿に不似合いな刃物を握っている。

しかし刃物を持とうが所詮うぐぅとあう〜。簡単にいなして距離を開け、近くにあった裏口から外に出る。


「フィア、名雪達がこうなった原因はわかるか?」


腕に抱えたフィアに聞いてみると


「おそらく、魔石のせいです。さっき話した通り、暴走した魔石は使用者の意識を乗っ取るですから……」

「なら、封印すれば名雪たちは元に戻るんだな?」

「はいです」


俺はポケットに手を突っ込み、青い宝石を取り出す。


「なら、やるしかないか……いくぞ! スペリオル・ブレイドッ!」






 

 

魔法青年 相沢祐一

第四幕「VS.ヒロインズ」

 

 






真琴ちゃんと祐一君が逃げた裏口から外に出る。

肝心の祐一君は少し離れた場所で青い宝石を構えている。

あれは、魔石の記憶にあった気がする、確かスペリオル・ブレイド……だったっけ?


「まずいわよ! あゆあゆ」


真琴ちゃんもあれがスペリオル・ブレイドだと気付いたみたいだ。

でも、そんなことより


「うぐぅ……ボクはあゆあゆじゃないよ……」


月宮あゆや沢渡真琴という人格は今はない筈なのに、そんな会話をやってしまう。


「とにかく! 祐一があれを使う前に殺るわよ」

「う、うん」


真琴ちゃんは持っていた刃物を放り出し、自慢のスピードで祐一に向かって炎を纏った拳を放つ。

ボクは背中から翼を生やし、空中から真琴を追撃するように飛びかかった。

 

 

 


「来たですよ!」


私は祐一さんに叫ぶ。

あのツインテールの少女に取り付いてる魔石は十中八九『fire(ファイア)

その名の通り炎を出すことが出来る能力。

あのダッフルコートの少女に取り付いている魔石は『wing(ウィング)

これもその名の通り、翼を具現化させ空を飛ぶことが出来る能力。

さすがに5対2……いや、私は魔力が戻ってないから5対1か……だったら戦えるかどうか微妙な所だったけど、2人ならスペリオル・ブレイドで十分だろう。


「祐一さん、早く呪文をいうです!」

「あぁ、『うぐぅ〜〜〜〜!』


青い宝石から放たれた光が祐一さんの体を包み込み、スペリオル・ブレイド独特のコスチュームに着替えさせる。


「スペリオル・ブレイド! メタモルフォーゼッ!」


戦闘服に着替え、ポーズを決めた祐一さんはとても似合っていた。

製作者曰く、『あのコスチュームは人間界の小学3年生から6年生位の少女が見るアニメと深夜に偶然見たアニメを服装デザインの参考にした』っていってたけど……
確か、
ふたりはプリキ○アカードキャ○ターさ○らだったっけ?


「wall(ウォール)!」

 


ビィィィィィィン


 


「うぐぅ〜〜〜」

「あう〜〜〜」


祐一さんの出したバリアによって見事なカウンターを喰らった2人。

あれだけのスピードで突撃したんだから相当ダメージがあると思う。


「seal(シール)!」

 


キィィィィィィン……


 

祐一さんが封印を唱えると、2人の体の中から一つづつ宝石が出てくる。


「No.12『wing』、No15『fire』封印完了ですぅ!」

「ふぅ……これであと3人か……」


祐一さんはくるっと水瀬家の方を向き、誰と無しに呟く。

 


くらっ……


 

「うっ……」


それは突然だった。

祐一さんが膝を崩して倒れこんでしまった。


「ゆ、祐一さん! どうしたんですか!?」


猫から人間に戻り、倒れこむ祐一さんを支えるように押さえる。


「はぁ…………はぁ…………」


さっきとは打って変わって息遣いが荒い。


「い、一体どうしたですか?」

「どうやら、効いてきたみたいだね……」

「そのようですね」

「……はちみつくまさん」

「誰です!」


声に反応して辺りをぐるっと見回す。すると、水瀬家の裏口の所にいる3つの影。


「予定とはちょっと違っちゃったけど、これで終わりだね! 祐一」


玄関で祐一さんを叱ってた、青髪の女の子。確か祐一さんは名雪といっていた気がする。


「ふふふっ……念の為、祐一さんのご飯に痺れ薬を入れて置いてよかったです。全く往生際が悪くって困ったものです」


祐一さんの晩御飯を作ったっていってた、ストールを羽織っているショートボブの女の子。


「でも、祐一が死ねば全てが終わるから……だから死んで、祐一


どこか神秘的な長い黒髪をなびかせている無表情な女の子。

三人が祐一さんとどういう関係なのかは出会って間もない私にはさっぱりわからないけど、今は三人ともスペリオル・ブレイドと祐一さんの命を狙っている敵だってことは確かだろう。


「そこの君、誰だかわからないけど祐一から離れれば命までは取らないよ」


名雪さんが私に最終通告をする。

祐一さんの方を見る。


「はぁ……はぁ……」


幸いスペリオル・ブレイドには体内の毒を消し去る効果があるからか、さっきよりは落ち着いてきたみたいだけどまだ戦闘はおそらくあと5分は無理だろう。


「さぁ、早くどくんだよ!」


痺れを切らした名雪さんが叫ぶ。


「……嫌です」


まだ体力が全快な訳じゃないけど、今ここで祐一さんとスペリオル・ブレイドを失うわけにはいかない!


「……バカな女だよ。逃げていれば死なないで済んだのにね……じゃあ、死ね!」


 

ビュォッ!

 


「遅いです!」

 


ばしぃぃぃぃっ


 

「きゃあっ!」


名雪さんの電光石火の一撃をかわして空いたボディに一撃を叩き込む。

速攻腕力強化魔術をかけたため、女の細腕から繰り出したとは思えない力で吹き飛ばす。


「祐一さんには指一本触れさせないです!」

「名雪さん!」


ストールの子が氷を空中に精製し私に投げつける。

さっきは寝てたからわからないかったけど、名雪さんに取り付いている魔石は速度を操る物の様だろう。

そしてあの子の能力は氷を生み出す能力なのだろう。


「甘いです!」


今度は速攻脚力強化魔術をかけてこれを避ける。


「ならこれでどうですか!」


さっきより大型の氷塊を投げつけてくる。

私は最小限の動きでそれを避けると一気に間合いを詰めて蹴りを入れる。


「えぅ!?」


その場に崩れるストールの少女。


「……もらった!」


いつの間にか接近していた黒髪の少女が剣で袈裟に斬りかかる。


「くっ……」


すれすれでこれを避けて反撃を試みる。


「甘い、リーチならこっちの方が上」

「でも、スピードならこちらが上ですっ!」


しかし、どんなに攻撃をしても決定打に至らない。

速攻魔術なのでそろそろ、魔術の効果も切れてしまう。私は焦っていた。

相手は予想以上の強者、どんな魔法を持っているのかはわからないけど実力なら魔術を使用してない私よりもずっと上だろう。


「これで決めるですっ!」


私は痺れを切らして、隙が大きくなる攻撃を放つ事にした。

しかし

 


ツルッ……


 

「はにゃ!?」


力を込めるために地面を蹴ろうとした矢先、路面が急にツルッと滑った。


「舞さん! 今です!」


どうやら、ストールの子が倒れたフリをして隙を伺っていたらしい。地面が滑ったのは彼女が地面を凍らせたのだろう……私とした事が詰めを誤ったようだ。


「はちみつくまさん!」


舞と呼ばれた黒髪の少女が大きく振りかぶり私に斬りかかる。

……もう駄目、やられる。

僅かしか無い人生から楽しかった思い出を探そうとしたその時


「wall!!」


 

ガキィィィィィン……

 


「!?」


無表情の舞さんの顔が強張る。


「ですっ!?」


私は何が起きたのかさっぱりわからないまま、誰かにひょいっと体を持ち上げられる。

きっと、祐一さんが初めて魔法使いになった時もこんな気持ちなのだろう。

さっきまでいた所に注目すると、薄い膜状のものが舞さんの剣を阻んでいた……そして今ここにいる人物の中でこのような魔術が使えるのはただ一人……


「っだ〜! 完全回復〜!」


そう、祐一さんが片手に私を抱きかかえ、もう一方の手には青い宝石の杖を構えて佇んでいた。

 

 

 

 






後書きというより被害状況報告:

J「ピンチです」

フ「何がですか?」

J「ついにKanonSS−Linksの新規登録フォームがページ上から消えた……」

フ「なるほど……HP存続の危機という訳ですか……」

J「そう、自分のHPってここからの来客者が大多数を占めるからさ……」

フ「交流関係(相互リンク)も大して広くないですから余計ですね」

J「実際問題、BBSとかに感想が滅多に来ないから作品を見られてるのかどうかさえ怪しいしな! 案外TOPみてすぐ戻りとかありそうだしな!」

フ「……自慢じゃないです……」

J「あぁ……新しい小説リンクサイトを探すか?」

フ「まぁ、バブルが弾けたとでも思えばいいんじゃないですか?」

J「そうだな、もともと来客数なんて期待してなかったサイトだったし、少ない皆様のために筆を振るうのも悪くないな!……というわけで今回はスペリオル・ブレイドについてパート2でもお送りするか? んじゃま、よろしく」

フ「はいです! 前回は効果を説明したですから、今回はもっと詳しくスペリオル・ブレイドが使うことの出来る魔術を紹介するです」

 

wall(ウォール):祐一が初めて使用した魔術、魔術の塊を膜状にして壁を作る。

使用者の魔力が高ければ高いほど膜は頑丈に作られる。

 

seal(シール):魔石を封印する為の魔術、本来魔石の暴走は憑依者に一定のダメージを与えなければ本体が出て来なかった為、憑依者は運が良くても怪我、最悪死に至るケースもあった。

さすがに外界の人達を大怪我させる訳にはいかないと思った魔石の製作者が、憑依者に全く害の無い魔術として考案した魔術。

 

 

 

J「少なっ!」

フ「だって、まだ出来きってないんですもんもんもん♪」

J「音符をつけるな! 某見習い天使の真似するな! あと、ネタがマイナー過ぎる!」

フ「……それは、その見習い天使をベースに作ったあなた自身にツッコミしてると同義ですよ?」

J「痛い所を掘り起こしやがって……」

フ「では、感想・指摘・質問がありましたらBBSまでよろしくです」

J・フ「さよ〜なら〜」

 

 

 

P.S.フ「なんか、名雪さんのキャラだけ激変してる気がするです……」

J「あゆなんか前後の前後の性格の差が全く無いしな……」←後悔中

 

 

 

 

 

2004年11月7日作成