「はぇ〜、ここですか?」


水瀬家を見上げてそう口にするフィア。


「そう、ここが俺の居候先の水瀬家だ」


腕に付けておいた腕時計をふと見る

時刻は……9時30分……名雪はもう寝てる時間だな。


「さて、どう言い訳したもんか……」



さっきまで犬の化物に追いかけられていて忘れていたが、俺ってみんなから逃げてきたんだよな……
しかもこの時刻、まず怒られるのは確実だろう。


「さて、お手柔らかに頼むよ」

「ふぇ? 何かいったですか?」

「いや、寒いから中に入るぞといったんだ」

「そですね。それじゃあお邪魔しますです〜」

「違う違う、フィア。ここはもうフィアの家でもあるんだから、お邪魔しますなんて他人行儀な態度なら中には入れないぞ」


俺が宣告すると、フィアは地面に膝を付けてたそがれてしまった。(今は猫なのに)

きっと彼女の心の中では『昭和枯れすすき』がBGMで流れているに違いない。


「うぅぅ、だったらどうすれば良いですか?」


フィアが涙目(猫のはずなのに芸が細かいな……)になってきたのでヒントを与えてやることにした。


「ここは自分の家だと思うんだ。普通家に帰ったら何ていうんだ?」

「………あっ! わかったです!」


平らにした右手の上に握った左をポンと置いてそういう猫……もといフィア。

……だから猫にしては芸が細かすぎだから


「それじゃあ、もう一回いってみようか!」

「……ただいまです」

「正解だ、ようこそ水瀬家へ!」


あれ? なんか忘れてる気がするんだが……まぁ、気のせいだろう。


 

 

 

 

魔法青年 相沢祐一

第三幕「何か忘れている気が……」

 

 

 

 

ガチャッ……

 

「ただいま〜〜」

「祐一! こんな時間までどこ行ってたんだよ!」

「ひぃっ!……って名雪?」


俺が玄関を開けると同時に名雪の怒声が響く。

というか、俺じゃなかったらどうする気だったんだ?


「それで、どこへ行ってたんだよ!」

「き、北川に拉致られて……あっ」


そこまで口にしてはっと気付く

し、しまった! このネタ前に使ったやつだ!(プロローグ参照)

あぁ〜〜俺の馬鹿、俺の馬鹿、俺の馬鹿、俺の馬鹿、俺の馬鹿!

これで俺的予想では、イチゴサンデー3杯以上は固いな……グスン。

しかし、それに対する名雪の反応は意外なものだった。


「ふ〜ん、北川君がね……」


セリフだけでは無関心ぽいけど、俺にはわかる。名雪の周りには

『北川、謎ぢゃむの刑』オーラが滅茶苦茶滲み出ている。

あっ、ここでは片仮名じゃなくて平仮名で、「じ」じゃなくて「ぢ」なのがポイントだぞ?

まぁ、「じ」だろうと「ぢ」だろうと北川の死は確定だな……さらば北川……骨はミキサーにかけて斉藤の弁当にふりかけてやるから……だから安らかに眠れ。

 


≪眠れるかぁぁぁぁぁぁ!≫


 

幻聴だ。俺は何も聴こえない。

きっと奴のあのアンテナからこの思考を傍受したんだろうが、あいにく俺は電波じゃないのでな。

 


「心配したんだからね。これ以上帰って来なかったら探しに行こうと思っていたんだから」

「あぁ、心配かけて御免な」

「みんなも心配して来てくれたんだよ」


名雪に案内されてリビングに入ると、そこにはあゆ、真琴、栞そして舞が座っていた。


「あっ、祐一くん……よかったぁ……」

「祐一! 心配したんだからね!」

「祐一さん、心配させないで下さい……」

「祐一……ぐしゅぐしゅ」

「あぁ、本当に御免な……あれっ、そういや秋子さんは?」


確かにみんないたが、本来の家主がここにいない。


「お母さんなら、仕事が急に入っちゃったらしくて出掛けてるよ」

「ふ〜ん……」

「それより、祐一さん。お腹減ったでしょう? ご飯作ってありますから食べてください」

し、栞の作ったご飯……ま、まさか……

「あっ、大丈夫ですよ。今回は普通の量ですから」


ほっ……よかった……

俺が安堵していると、あゆが近づいてきて


「ボクが止めなかったら栞さん、きっと昼の二倍近くの量を作る気満々だったよ……」


サンキューあゆ


 

 

 

 

「はぁ〜〜、食べた、食べた」


栞の作った料理を食べ、風呂に入ると既に時計が10時を回りそうだったので早々に床に就くことにした。

 

ちなみに名雪達は風呂から出たらリビングにいなかったので、おそらくそれぞれの自宅や自室に帰ったのだろう。

秋子さんは仕事が長引いているのかまだ帰って来ない。


「ふわぁぁぁっ……なんか眠いな……」

「今日は、いろいろ遭ったですからね」


うんうんと頷きながら久々に口を開くフィア。

……誰のせいだと思ってるんだか。


「さて、封印のことは明日からにして今日はもう寝るぞ。明日も俺は学校があるしな」

「はいです。おやすみなさ〜い」


電気を消してベットに入り込む。


 

 

 

……一時間くらいが経っただろうか……

春になったとはいえ、まだ北国の夜は寒さがきつい。

俺は寝ぼけ半分物思いに耽っていた。

……おかしい、なにか忘れている気がする……

え〜〜と何だったっけな。何かとても重要な事を忘れている気がするんだが……

……………あぁ〜よくわからん!

俺は布団から起き上がって部屋をぐるりと見回した。

何の変哲も無い殺風景な部屋、ただ昨日とは違うことといえば


「すー……すー……むにゃむにゃ。ドーナツおいしいですぅ……」


ベットの下に置いた座布団の上で人の気も知らないでぐっすり眠っている魔法の国からやってきた少女……おっと今は猫だったな。

 

ん?

 

猫……ねこ……ネコ……


「そうか! 思い出した!」

 


ガチャッ

 

不意にドアが開く。そこに立っていたのは……


「な、名雪? どうしたんだ? こんな時間に」


まず、この時間に名雪が起きていることなんてあり得ない。

不思議になって問いただしてみると



「まだ、起きてたんだね……眠っていてくれれば楽に逝けたのに……」



それは、彼女の声だったけど彼女の声では無かった。

冷たい……そう、普段の彼女の声が毛布みたいなふわふわしてるとすれば、今の彼女の声は鋭利な刃物……


「な、何をいってるんだ? 名雪?」

「祐一自体は何も悪くは無いんだけどね……祐一が契約者(コントラクター)だから……だから祐一は死ななきゃいけないんだよ」

 


ブワッ


 

人知を越えたスピードで俺の方に向かってくる。


「うわっ!」

 

バキバキッ……

 

「逃げちゃ駄目だよ……逃げなければ一瞬で済んだのに……」


名雪がベットの上に着地をすると、ベットが着地した所を中心に真っ二つに折れる。


「マ、マジで殺す気か?」

「そうだよ、だから早く死んでよ! 祐一!」


再度、俺に向かって突撃をする名雪。


「あぶねっ」

 


ドゴォォォォォォォッ


 

間一髪すれすれでこれを避ける。

振り返ると壁に大きな穴が空いていて、穴を空けた張本人の名雪がゆらりと立ち上がる。

あ、あんなの喰らったら一たまりも無いぞ!


「フィア、おいフィア! 起きろよフィア」

 


ガクガクガクガクガク


 

思いっきりフィアの頭をシェイクする。


「あ、あぅあぅあぅあぅあぅ……な、なんですかぁ?」

「敵だ! とりあえず逃げるぞ!」


フィアを抱えて部屋の外に逃げる。


「……逃がさないんだよ。あゆちゃんに真琴ちゃん! 近くに待機してる栞ちゃんに舞先輩! 祐一は外に逃げたよ!」

「「「「了解!」」」」



そう、まだ今日は終わらない。

 

 

 

 

 






後書き:J「第三話でござ〜い」

フ「凄くあっさりと出来ましたですね」

J「今回は、ネタがガッポガッポ出てきたからな」

フ「それで、今回は何を説明するですか?」

J「ないっ!」

フ「……へ?」

J「ないっ! 今回は新しいキャラとか出なかったし」

フ「道理で速い訳です……」

J「それでは、感想・指摘・質問がございましたら」

フ「BBSかmailにてお待ちしてるです」

J・フ「それでは、さよーならー」

 

 

P.S.

フ「次回5対2って結構きついと思うです……」

J「なんとかなるさ」

フ「アバウトです……」

 

 

 

 

 

2004年11月1日作成