拾い上げた宝石にはアルファベットでこのように書いてあった。
「No.13『claw』?」
「はいです。それがさっきの化物……『ユンカース』の正体です」
魔法青年 相沢祐一
第二幕「魔法世界のシステム」
「ユンカース?」
聞き慣れない単語におもわず聞き返す。
「ユンカースというのはですね、非常に高い能力を持っている魔石の事です」
フィアは、そこでふぅと一息ついてから語りだした。
「実は、私はこの世界の人間じゃないんです。ここの世界で異世界と呼ばれる場所から来たです」
「へぇ〜」
自分的には10へぇ〜位か?
「な、なんか想像したリアクションと違うです……」
まぁ、色々あったし……な。生霊とか妖狐とかが実在するんだから、こことは違う別の世界なんてものがあったって別に不思議じゃない。
「ま、まぁいいです。続けるです……そこにはこの世界と同じように街があって人が住んでるです。ただ、そこの住人は魔術を行使することが出来るです」
つまり、フィアは魔法の世界というメルヘ〜ンチックな場所から来たというわけだ。
「でも、一人で全ての魔術を使用できるかというと答えはNOです」
「どういう意味だ?」
「同じ人間でも頭が悪くて運動が出来る人や、頭が良くて運動が駄目な人がいるように、一人一人得意な魔法とそうでない魔法があるです。
大まかにいうと炎や光みたいな不確定物を扱うことが出来る『realize magic(リアライズマジック)』
魔物や動物を召喚することができる『summon magic(サモンマジック)』
自分の身体を強化する『equip mugic(イークイップマジック)』
リアライズとは違って確定物……主に道具です……を作成する『creation magic(クリエィションマジック)』があるです。
でも、それは生活に対して優劣を付けてしまうと気付いたある魔法使いが、魔力を持っている者なら誰でも使える魔道具を発明したです。それが魔石です」
「それが、なんであんな化物になるんだ?」
今の話からでは、あんな犬の化物になるなんて思えない。
「それは非常に便利な物です。普通の魔術を使用するよりも少ない魔力で使用することも出来ますし……でも、そういう物は必ず悪事に使われる、人間というのは悲しいけれど、そういう生き物です。
そこで、悪事の防止の為に魔石に意思を持たせたです」
「なるほど……意思を持たせて、悪事に使用する時のストッパー代わりにしたのか……」
「そうです。でもその意思自体が悪意を持ってしまうことがあるのです。これを魔石の暴走と呼ぶです」
「暴走……」
「暴走した魔石は使用者の意識を乗っ取ってしまうです。
そして使用者の体を化物みたいにしてしまうことがあるです。今回のケースはこれに当てはまると思うです」
「じゃあ、その化物の素体となった奴はどうなるんだ?」
「だいじょぶです。今回は犬を素体にしていたみたいですね……ほらそこで倒れてるです」
フィアが指差した所には、確かに見渡せばそこら辺にいるような野良犬が倒れていた。……生き物は殺してはいないのか……よかった
「それを危惧した人達が戦闘用の強力な魔石を21個作ったです。それがユンカースです」
「そして、それが暴走したと……」
ミイラ取りがミイラになってどうするよ! 魔法世界の人達!
「はいです……でもでもユンカースには強力なロックがかかっている筈でしたのに、何者かによって悪意を含まれたのです。そしてユンカースは次々にこの世界に降りて来たです。
そしてそれを止めるために魔法界の人達は、最高峰の魔石を3つ作ったです」
「それが、これだと」
杖と自分の首に付いている青の宝石を指差す。
「それは、スペリオル・ブレイドという魔石です。ただ、この魔石は癖が多くって……扱える人が殆どいなかったです」
「じゃあ、それを使える俺は凄いということか?」
「そういうことになるです」
そう簡単に肯定されると……踊りたくなっちゃうじゃないか〜
「……で、なんでいきなり踊りだしてるですか?」
「……はっ!」
「話を続けるですよ」
「……あぁ」
相沢祐一、一生の不覚だ……
「その魔石はそれぞれ3人の凄腕魔術師に与えられてユンカースの奪還任務を受けたです」
……今、凄腕のところだけ異様に強調しなかったか?
「……なんですか? その冷ややかな目は」
「……そ、それでこの『claw』っていうのはなんなんだ?」
フィアの出す冷たいオーラに耐え切れずについ会話を反らす。
「……それはユンカースの名前です。名前が人を表すように、この名前はユンカースの効果を表すです。このclawは『爪』の効果を持ってるです」
「なるほど……」
「そこで、祐一さんにお願いがあるです」
ずずいっと寄って来るフィア。
「あぁ、わかってるよ。あと20個、一緒に封印を手伝えばいいんだろ?」
「はいです……できればこっちの世界の人を巻き込みたくなかったですけど、私だけではどうやら無理みたいです……お願いできますか?」
そういってペコリと頭を下げるフィア。
「了承だ。ここではい、さよならとできるほど人として不出来になった覚えは無いからな。
だから、頭を上げてくれよフィア」
「は、はいっ! ありがとです!」
「あぁ、短いかもしれないがよろしくな。フィア」
俺がニコッと笑うとフィアは顔を真っ赤にして
「よ、よろしくです……」
その後、変身の解き方や封印した魔石のしまい方とかその他いろいろな説明を受けると、もう夜も遅い時間になっていた。
「さて、時間も遅いしそろそろ帰るか! 送っていくぞ」
俺がいうと、フィアは申し訳無さそうに
「私は帰る所が無いですから、祐一さんは先に帰っていいですよ」
「何をいうか。帰る場所が無いなら俺も居候の身だが家に来い!
秋子さんなら一発で了承だと思うし」
「でも、ご迷惑になるです! 私は野宿もできますから」
「年頃の女の子がそんなこといってはいかん!」
世の中にはこういう女の子に発情するようなお方もいるからな(人それを変態という)
「わかったです……そこまでいうならお世話になるです。でもやっぱり迷惑になるですから」
ボォォォォォォォン
フィアが呪文をぶつぶつ唱えたかと思うと、フィアの体が見る見るうちに小さくなっていき、最終的には縞々の模様の猫になってしまった。
「すごっ!」
「これならペットとしてすんなり入れるですし……これでは駄目ですか?」
まぁ、秋子さんなら人の姿でも一発了承だと思うけどな……
でもそれはこちらの意見を一方的に押し付けているだけなのだろう。
フィアにしてみれば、あまりこっちの世界の人にあまり関わりたくないのかもしれないし
これが、フィアに出来る最大限の譲歩なのだろう。
「わかった、それじゃあ家に案内するからついて来い、フィア」
「はいです!」
この時はまだ、二人ともこれで今日は終わると思っていた。
だけど、まだ今日は終わらない……
これからが本番だったのだ……
後書き:J「いや〜久々です」
フ「テストも悪かったですし、パソコンも逝って大変だったです」
J「本当、本当。もう何が起きても驚かないぞ〜みたいな」
フ「死地を潜り抜けたSS作家は何かが違うです……」
J「ははは、じゃあ今回は、フィア君のことを教えてやってくれたまへ」
フ「はいです!」
名前:フィア・クラッセ
年齢:外見上から13くらい(フィアの世界には年齢という物が存在しない為)
身長:152cm
体重:企業秘密です
性格:自己犠牲心が強い。
口癖:「です」
好きなもの:ドーナツ、牛乳、動物
嫌いなもの:お化けのような実体が無い物、子ども扱い
趣味・特技:読書、料理
備考:フィアの世界では、指折りの魔術師で使える魔術は「equip magic」、その為、動物に変身したりすることが出来る。
当初は、ユンカースを封印する為の奪還任務を受けていたが、人間界に来るのに魔術を大量に消費した所をclawに襲われる。
フ「こんなものです」
J「これ以外に聞きたいことがあったらBBSやmailに連絡してくれ、誠心誠意お答えしましょう」
J・フ「「それでは、さよ〜なら〜」」
2004年10月30日作成