※この作品は、Kanonと双恋とクロスオーバー第2弾です。
あまりKanonキャラは出てきません。あくまで主人公は祐一と桜月姉妹ですので
双恋キャラは桜月姉妹のみで二人とも高校生という設定です。
あと、この双恋はゲーム版のストーリーを参考にしていますので、基本的にストーリーはゲームに結構似た感じに進んでおります……というかそっくりです。
あと、セリフの順番は指示が無い限り大体キラ、ユラの順です。
その点に気をつけ、または了承してお読み下さい。
Are you Twins?〈Part2〉前編
作:JGJ
キーンコーンカーンコーン……
「じゃあ今日はここまで、日直」
「起立、礼」
ガタタタッ!
『うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!』
4時間目が終わり、昼食を求めて次々に教室から購買、または食堂という名の戦場へと向かっていく(主に)野郎達
「ふっ……哀れなもんだ……」
「何をいってるんだ、相沢?」
少し同情を込めた目でそれを見守る。
そんな珍しく起きている(本当は遅刻で朝食を抜いてきた為お腹がすき過ぎて眠れなかったのだが)俺に対し、北川が意味わからんといった感じで聞いてくる。
「なに、人の愛情のこもった飯に縁の無い奴らが哀れに見えてな」
そういいつつ鞄から青い布で包まれたお弁当箱を取り出す。
「今日から出来る限り秋子さんが弁当を作ってくれることになってな。
これで学食・購買地獄から晴れて脱出という訳なんだ」
……正確にはそこに重箱弁当も追加されるが
「へーっ、羨ましいな相沢。水瀬のお母さんって凄い料理が上手いって聞いたぞ?」
「うん、お母さんの手料理は世界一だよ〜」
「そういう事だ、はっはっは、羨ましいだっぺ? 羨ましいだっぺ?」
「相沢君、語尾が変わって何か違うキャラみたいになってるから止めた方がいいわよ。
……それにしても栞には悪いけど、秋子さん相手じゃ勝ち目は無いわね」
名雪は、こちらはピンクの布で包まれてるお弁当箱を出しながら、北川は途中コンビニで買ってきたのか惣菜パンを、香里は女の子らしい少し小さめの弁当箱を広げながらいう。
「ん? そういや、栞はどうしたんだ?」
いつもなら『祐一さん、一緒にお弁当を食べましょう』とかいいながらやって来るはずなのだが
「栞なら当分は来れないわよ。この前材料の使いすぎでこってり絞られてね、当分料理はさせて貰えないみたいなの」
……危機は去った……のだろうか?
「そんな事より相沢、早く弁当箱を開けてくれよ。一体どんなおかずが入っているんだ?」
「おう、そうだな。それじゃあ開けるぞ?」
パカッ
「「「「…………………………」」」」
弁当箱を開けて、俺達は絶句をしてしまった。
中に入っていたのは白いおむすびと色とりどりのおかず達。
ここまでなら普通のお弁当だろう。
この甘ったるい匂いが無ければ……
「このおむすびってぽん菓子……だよな……? そりゃ元は米だが……」
「その横にあるキャンディーやチョコはなんだ?」
「後は、芋羊羹にモナカに甘納豆に……随分と味の傾向が偏ってるおかずね」
「う〜、イチゴジャムの挟まったラスクなんて羨ましいんだよ〜」
名雪、お前はこの弁当の突っ込む所を間違えてるぞ。
「というか、このある意味力の入った弁当はなんだ! しかもなんでご丁寧に和洋織り交ぜてあるんだ!」
秋子さんがもしかしてこれを……なわけないわな。
絶対にこれは真琴の仕業だ。
あぁ、間違いない。
くそっ、こんな甘ったるい物食ったら糖尿病になるぞ?
それ以前に空腹時にこんだけ甘い物を食うと胃がやばい。
ぐぅ〜〜〜〜っ
「……相沢、惣菜パン分けてやるよ」
「あたしも少しでいいならあげるわ……」
「ねぇ、祐一。このラスク貰っていい?」
名雪以外の2人がさっき俺が学食・購買組を見ていたときと同じような目で俺を見る。
「いや、いいや。みんなの食べる分が減っちゃうだろ?」
「で、でも……」
「デモもメーデーもストライキも無い! 俺は要らんといったら要らん!」
「……わかったよ。その代わり無理はするなよ?」
「ねぇ、祐一。ラスク食べるよ? 食べちゃうよ?」
……にしても、食えるかな、これ?
佐祐理さん達は卒業してここにはいないから弁当分けてもらうなんて無理だし……
「相沢、本当にそれを食うのか?」
「うっぷ、なんか俺……胸焼けがしてきた……」
周囲からそんな声が聞こえてくる。
え〜い、こうなったら武士は食わねどなんとやら! 昼飯は無かった事にしよう!
さすがにこの弁当を全部食べて無事でいられるほど体は非人間化してないし……
さて、俺のお腹の問題は解決したが、問題はこの弁当をどう処分するかだな。
「祐一さん、どうかしたの?」
俺がそんな事を考えていると後ろから黒のロングに赤いリボンをつけた綺麗な女の子―――桜月キラちゃんが話しかけてくる。
「祐一さん、そのお弁当……」
同じく後ろからキラちゃんと全く同じ風貌でただ一点、違う所はリボンの色が紫に近い青色なだけの女の子―――桜月ユラちゃんが俺の弁当を見て驚いていた。
もう既にこの時点で気付いている人もいるかもしれないが、キラちゃんとユラちゃんは双子である。
数日前にここに転校してきた2人は、転校初日いきなり俺に告白をしてきたのだ。
彼女達曰く『キレイなコートを着て、にっこり笑って私達に手を振った』らしいのだが、俺はそんな事をしたのかイマイチ覚えていない。
肝心の告白の方はあまりにもいきなり過ぎたので、ひとまず『友達から』という事でOKをもらい、今の関係が続いている。
閑話休題
「かわいいーー」
「きれい……おいしそうだね……」
「あっ、キラちゃんにユラちゃん」
「祐一さん、そのお弁当食べないの?」
「お昼はちゃんと食べないと体に悪いよ?」
2人が普通に食べないのか聞いてきた。
この弁当に対して驚かないなんてやるな! キラちゃんにユラちゃん!
でも、俺にとってはというか普通の人にとっては、これは正直きつい物がある。
「じ、実は食欲が無くてね……」
「「ええっ!?」」
「どうしたの?」
「もしかして病気なの?」
2人が本当に心配そうな声でいう。
な、なんか罪悪感が……
「あ、そういうのじゃなくて、ちょっと朝ごはんを食べすぎちゃってね〜。ははは……」
「えっ……祐一、今日遅刻で朝ご……」
ギュムッ!
本当の事を喋ろうとした名雪の足を無言で思いっきり踏んづける。
「痛い、痛いよ祐一。祐一の愛が痛い!」
本当に痛いのはそんな事いうお前の性格だと思うぞ?
「はぁぁ……よかった。病気じゃなくて」
「でも、それだとそのお弁当、残っちゃうね」
「そう、だからこのお弁当の処分を決めてた所なんだ。普通ならゴミ箱とかだろうけど……なんかもったいないし……」
「食べ物を残すと神様のバチが当たるって、昔ママがよくいってました」
「うん、パパも食べ物を粗末にする奴はろくな者にならない、って」
「そうだよな〜、本当にどうするか?」
「「だから、私達が祐一さんに代わって食べます!」」
うんうん、キラちゃん達は食べ物を粗末に扱わないいい子なんだなぁ……
「……って今なんと?」
「「私達がそのお弁当を食べます!」」
「な、なんですとーーーーーー!?」
食べるってこの蜂蜜練乳ワッフルも裸足で逃げ出しそうなこれをか?
「それじゃあ遠慮なく、いただきまーす」
そういってキラちゃんは、芋羊羹にかぶりつく。
「あーん! おいしい〜」
「本当においしい……このおむすびみたいなの、何かな?」
ユラちゃんもぽん菓子おにぎりを食べてご満悦のようだ。
「甘納豆とジャムがこんなに合うなんて思わなかった!」
「ユラちゃん、このラスクも美味しいよ! ほら、このジャムがすっごく甘いの」
「キラちゃん、このグミも美味しいよ。はい、あーん……」
「あーん……うん! 美味しい。じゃあ、お返しにこのマシュマロをあーん……」
「あーん……ほっぺが落ちそう」
弁当よりも甘ったるいオーラを振りまいているキラちゃん達。
……なんか、ちょっと羨ましいかも……
「「ごちそうさま!」」
そういいながら、すっかり空になったお弁当箱を俺に返してくる。
……凄い、あの甘ったるい物を全部食べてケロッとしてるなんて……
「これで祐一さんもバチが当たらなくてすむね」
「よかったね……でも」
笑顔のキラちゃんに対して、少し歯切れの悪いユラちゃん。
「でも……なんだい? ユラちゃん」
「でも、私達が全部食べちゃって本当に良かったのかな?」
「うん、確かにこのお弁当を作った人に悪い事をしちゃったかも……」
「だって、食べて欲しいと思ってお弁当を作ったのかもしれないもの……」
「そ、そう? 一生懸命作ったのは確かだろうけど……」
それは無いときっぱり断言できるが、二人の手前それはいわないで置こう。
「うにゅ、イチゴジャムをはさんだラスク…………」
「お前はまだそれをいうか!」
この後、家に帰って秋子さんに報告。
真琴は晴れて甘くないジャムの餌食になったらしい。
でも、二の舞を恐れた俺は、明日から弁当じゃなくて元々の学食・購買で買って食べることにすると秋子さんに伝えた。
はぁ……またいつもの生活に……いや、栞が弁当作れない分いつもより格下か……
2005年3月15日作成