※この作品は一応ALLエンドで「双恋」とのクロスです。

祐一達は一年進級しています。

双恋のヒロインは高校生という設定です。

……あんまり、Kanonキャラは出てきませんが、そこん所をご了承ください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドドドドドドドドドッ!!

 

始業式の朝、登校のピークを終えて人の少なくなった道路に響く地響き。

その震源は、コンクリートの道路のはずなのに、砂煙が巻き起こりそうなスピードで走る2人の男女だった。

 

「だぁ〜〜っ! 名雪! もう少し早く朝食を食えんのか!!」

「努力はしてるよ〜」

男の方は必死に、女の方はポケポケした感じでいう。

「後、何分だ?」

「えっ……と、100mを7秒で走ればまだ間に合うよ」

「そりゃ、世界新だ」

そういうと、男の方はゆっくりゆっくりと走りをやめて歩き出す。

もう遅刻なのだから走るだけ体力の無駄だと感じたのだろう。

 

……これが、相沢祐一の日常である。

 

朝――――――万年寝ぼすけの従兄妹を叩き起こし、ダッシュで学校に向かい

 

昼――――――先輩や後輩の作ってくれたお弁当を食べ

 

夕方――――――たまに会う、食い逃げ犯をからかい

 

夜――――――居候の少女の悪戯に対抗する

 

一見、非日常的だがこれが相沢祐一の日常だ。

この日常がこれから更に非日常になるなんて、この時相沢祐一は思いもしなかった。

 

 

 

 

Are you Twins?

By.JGJ

 

 

 

 

ププーッ

 

「ん?」

そんな俺の目の前にクラッションを鳴らして止まる黒塗りのリムジン

佐祐理さん……じゃないよな。いつも佐祐理さんが乗ってるリムジンとは微妙に違うし。

 

ガァーッ

 

音を立てて窓が開くと、電車の運転手が被ってそうな帽子を被り、びしっとしたスーツを着た初老の運転手らしき人が顔を出して

「すみませんが、花音高校はどちらへ向かえばよろしいですかな?」

と聞いてきた。

花音高校――――――俺の通ってる高校の名だ。

それなら、まだここに来て間もない俺でも教えられるな。

「えっと、花音高校は…………です」

「なるほど……わかりました。本当にありがとうございます」

そういって一礼をする運転手。

……もしかして転校生か? ……まぁ、そうにしろ、そうでないにしろ、こういう人達とは縁は無いだろうな。

 

「ねぇ……ちゃん、もしかして……」

「あぁ〜……ちゃん、あの人だよ」

 

ん? リムジンの後ろの方から何やら声が聞こえるが……

「祐一! 早く行かないと遅刻だよーー!」

そっちの方に耳を傾けようとする直前で、名雪が急かす声が聞こえてきた。

早く行かなくてももう遅刻なんだが……

むぅ……だからといって無視は出来ないよな……

別に今わからなくても、どうせこんな凄いリムジンに乗ってるような人だ。もし転校生なら否応無しにわかるだろうな……まっ、今知らなくてもいいか。

「すみません。今、急いでるんでこれにて失礼します。ではーーー!」

「「あっ……」」

後ろで誰かが呼んだ気がしたが、気のせいと割り切って名雪の下へ走っていく。

「遅いよ」

「悪い、名雪。飛ばすぞ!!」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

ガララララララッ!!

 

「ごめんなさい!!
またこの寝ぼすけがなかなか起きなくて『うにゅ?』だの『だお〜』だの『イチゴジャムおいし〜よ〜』とかいいながらゆっくり朝食を食べていたもので
一生懸命走ってきたんですがこのように遅れてしまったんです!

だから、俺は悪くありません!
悪いのは全部名雪なんです。
だから、どうか……どうかっ!!

内申だけは……内申だけはぁぁぁぁっ!!

速攻でクラス表を見て(幸い俺達2人ともA組だった為、短縮できた)教室にそのままなだれ込んで一声、早口でまくしたてる。

「ず、ずるいよっ! 極悪人だよ祐一!」

後ろで名雪が何か叫んでるがそれを完全に遮断する。

「いつもながら心臓に悪いわね……ところで……誰に喋ってるの? 相沢君」

「……へっ?」

髪をウェーブにした女生徒、美坂香里の言葉で我に返る。

辺りを見回すと、まだ席を立ってグループで久しぶりに会った級友と話を楽しんでる人と、香里のように何事かと怪訝な表情で俺達を見る人が半々位の割合でたむろっている。

「まだ、先生なら来てないぞ。よかったな、相沢」

「ま、まじか……」

金髪に一本癖毛の男子生徒、北川潤はぽんと肩を叩きつつ奇跡が起こった事を告げてくれた。

「あぁ、噂じゃ今日ここに転校生が来るとか何とか……その準備じゃないか?」

転校生? もしかしてさっきのリムジンの人か?

でも、そうにしろそうでないにしろ転校生には感謝だな。

 

ガラララララッ

 

「席に着け〜HRを始めるぞ〜!」

今年も担任なのか石橋がやってきた。

石橋が来たことにより各々が各自、席に着き始める。

俺も慌てて席に着くと走ってきた疲れか、それとも春眠暁を覚えずか、急に眠くなってきた。

HRの後、確か始業式があるとかいっていた気がするが、眠気には勝てない。

俺は既に爆睡している名雪と同様に惰眠を貪る事にした。

……しかし、ここで名雪のようにあからさまに寝るような馬鹿な真似はしない。

俺は頬に手を添え、起きているフリをして寝る事にした。

 

 

 

 

 

「よし、全員いるな。それじゃ、早速噂の転校生を紹介する……男子は喜べ! 凄いかわいい女の子だ! しかも2人!」

 

『うおおおおおおおおおおおおっ!』

 

石橋の言葉に男子達が喜ぶ。

「zzz……く〜」

……煩いなぁ……もう……

「それじゃあ、入って来るんだ」

 

ガラララララッ

 

『おおおおおおおおっ!!』

 

歓喜に渦巻く教室。どうやら転校生は当たりだったらしい。

全く、おちおち寝ることも出来ないな……

「zzz……く〜」

「あれっ?」

「2人とも顔がそっくり……?」

「も、もしかして……」

「さて、それじゃあ自己紹介を……『あぁーーーっ! あなたは!』

「んぁ?」

突然、先程の歓喜の声よりも大声量で転校生の一人とおもわしき人が叫ぶ。

その声でもう少しで夢の世界といった所から一気にこっちに引き戻される。

「わぁ……やっと会えた!」

そういいながら転校生らしき黒いロングの脇をそれぞれリボンで止めた2人組がこっちに近づいてくる……って!

「そ、そっくり!? ぶ、分身の術か!?」

唯一違う所といえばリボンの色くらいだろうか。
それ以外はクローンなんじゃないかという位そっくりだ。

 

『おおおおおっ!』

 

「くーっ……」

「相沢君、彼女達と知り合いなの?」

香里が俺に聞いてくる。

「いや? 俺は知らないぞ? こんな可愛い女の子なんて」

「可愛いだなんて……」

「嬉しい……」

俺の「可愛い」だけに反応して頬を赤らめる2人。

「いや、可愛いんだけど論点はそこじゃなくて……人違いなんじゃないか?」

「いいえ!」

「あなたです!」

……ここで「間違えました。人違いです」といってくれればどれだけ楽な事か……

「えっと……それで、キミ達は一体……」

「私達、あなたを捜してここに来たのっ!」

「あなたを捜して、双葉町から……でもよかった……あなたに出会えて……」

微妙に話がかみ合っていない俺達

「俺に会いに? 確かに数ヶ月前まで双葉町にいたが……君達の事は知らないし、やっぱし人違いなんじゃないか?」

あの街で双子というと、親戚のみやびさんの所と幼馴染の女の子の2組しか知らない。

……いや、『2組も』といった方が世間一般的には正しいのだろうが」

「……相沢……お前なんて羨ましい奴なんだ……水瀬さんやこの人達だけでなく他にも幼馴染がいるだとっ!」

北川が、いや教室中の男子全員が恨みの篭った視線で俺を睨みつける。

……どうやら声に出てたみたいだな。まぁ、既に諦めているけど。

「あっ、ごめんなさい……ちょっと慌てすぎたみたい……」

「ごめんなさい……あなたを見て、本当に嬉しかったから……」

その視線に気付いたのか、ばつが悪そうに謝ってくる2人。

「君達は一体……? どうして俺の事を……」

「彼女達は、月華学園からこの学校にやってきた桜月キラさんにユラさんだ。

 今日からうちのクラスで勉強をする事になった。よろしく頼むぞ、みんな」

「相沢、月華学園ってどんな所だ?」

前の席の斉藤が俺に聞いてくる。

……お前いたんだ。

「月華学園ってのは、俺の前にいた街じゃ有名な高校だな。

小・中・高・大の一貫教育をやってる女子校で、偏差値もうちの方じゃトップクラスの超お嬢様学校だ」

「道理で高貴なオーラがすると思った……それにしても、なんでまたそんな所からわざわざこんな所へ?」

「俺が知るか!」

「はっはっは! 相沢、青春だな〜。だが、まだお前らは学生なんだから健全な付き合いをするんだぞ?」

ここが学校じゃなかったら間違いなくぶん殴るであろう位、むかつく笑顔でそんな事をのたまわりやがる石橋。

「うわーーっ」

「付き合うだってよ、おい!」

再び喧騒に包まれる教室。

「お前ら、静かにしろ! そろそろ時間だからとっとと廊下に並べ!」

『はーーーーい』

石橋がそういうと生徒達はおとなしく教室を出て行く。

「く〜〜〜っ……」

……一人を除いて

 

 

 

 

 

「あの……」

「さっきはごめんなさい」

始業式も帰りのHRも終わり、帰ろうかとした時に例の2人に呼び止められる。

ちなみに名雪と香里は部活があるらしいので(名雪は半強制的だが)この場にはいない。

「いや、別に気にしちゃいないから」

「……やっぱり優しい」

「想像通り……ううん、それ以上だね。キラちゃん」

「うん! あっ、それじゃあ改めて自己紹介しますね」

そういうと、2人の内の赤いリボンで髪を止めた方が一歩前に出て、

「私は桜月キラです。そして……」

「桜月ユラです」

その後、紫に近い青のリボンで止めた方が挨拶する。

「俺は、相沢祐一。よろしくな……ところで桜月さん」

「「はい?」」

あっ……そういや、2人とも苗字が一緒だったな。

「あの、私達も祐一さんと呼びますから、祐一さんもキラ、ユラと名前で呼んでくれませんか?」

キラちゃんがそう提案してくる。

そうだな。どっちみち苗字じゃ区別つけられんし……

「じゃあキラちゃん、ユラちゃんと呼ぶな……それで、もしかして2人って双子?」

「「はい」」

「でも、俺、本当に2人とも知らないんだけど……」

「はい。あの……私達、冬休みの初め頃にあなたを見たんです」

冬休みの初め頃? 確かにその時は双葉町にいたな。

「あの日、あなたはキレイな黒のコートを着て、にっこり笑って私達に手を振って下さったんです……嬉しかった……」

そんな事したかな? 俺。

「それ以来、ずっとあなたに会いたくて……」

「家の人にお願いして、あなたを捜してもらったの、そしたらあの街を引っ越してこの学校に通ってるってわかって……」

「思い切って、転校すると決めてから、今日までずっとドキドキしていました」

ユラちゃん、キラちゃん、ユラちゃんの順で訳を話してくれる。

「もし、間違ってたらどうしよう……私達の手の届く人じゃなかったら……って」

「でも……でも……やっと会えました」

うーん、こんな可愛い女の子に手の届かない男の人っているのか?

逆に俺の方が手が届かない気がする。

「私達のこと、全然知らないのはわかってます。でも……それでも……」

「「私達はあなたの事が大好きです。

だから……私達をあなたの彼女にしてください」」

「な、なにぃっ!?」

可愛い顔をトマトのように真っ赤にしてそう告白してくる2人。

た、たったそれだけでそこまで考えが進むのか?

 

 

「「あの……私達、2人一緒じゃダメですか?」」
 

 

 






これが俺、相沢祐一の非日常的な日常が更に非日常的になった瞬間であった。

 

 

 

 

 

〜たぶん、続かない〜

 

 

 

 

 

2005年2月12日作成