「さて、皆に連絡しなければいけない事項はあと一つだ」

 

 今はHRの時間。

 

 今日は『黄金週間』と呼ばれる、世の全ての学生にとって夏休み等の長期休暇に匹敵するほどの贈り物の日々の前々日。

 

 周りの生徒たちも明後日の予定話に花を咲かせ、殆どの生徒たちが先生の話を聞いていなかった。

 

 聞こえてくるのは、やれ遊園地へ行くだの、やれ水族館へ行くだの、ショッピングへ行くだの、遊びの話ばかり。

 

 その声もどことなく楽しげであり、幸せそうであった。

 

 謂わば“世の幸福は自分のもの”“この世の春真っ盛り”と言ったところだろうか。

 

 そしてそれは七瀬八重にとっても例外ではなかった。

 

(やっと来たG.W. 何処行こうかな〜? あそこも良いな〜?)

 

 既に頭の中は来たる長期連休の事一色であり、教壇に立つ担任の言葉なんぞ左から右へと抜けていってしまっている。何を言っていたかすら思い出せない。

 

 まあ、それも仕方のないことだろう。

 

 つい最近、本当につい最近のことだが、とある男子生徒から告白され“彼氏いない歴=自分の年齢”に終止符を打ったのだから。

 

 しかも、その男子生徒が自分の想い人。

 

 浮かれないはずがない。

 

(初めてのデート、何処に行こう? どんな格好をしたらいいかな?)

 

 既に脳内では初デートのシミュレーションを行っているようだ。

 

 顔が真っ赤になりながらも、その頬は弛みきっている。

 

 時折「ふふふふ」とか漏らしたりしている。

 

 どことなく不気味だが、まあかなり浮かれていると言うことだろう。

 

 しかし、表が有れば裏がある。 

 

 光が有れば闇がある。

 

 『黄金週間』に対する闇であり裏である、学生にとって必殺の言葉が、今まで無視され続けてきた担任の口から放たれる。

 

「今まで言っていませんでしたが、明日テストをします。万が一赤点だった場合、G.W.中に補習を行いますので、しっかり勉強してくるように」

 

「………………………………え?」

 

 瞬間、この教室で時が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

                                 Happy stories

                                       トリコロ:八重編

                                 「彼が傍にいてくれるわけ」

 

 

 

 

 

 

 

「わーん!!」

 

「八重ちゃん、諦めや。決まってしもうたもんはしょうがないんやから」

 

 親友であり、同居人の一人である青野真紀子が、机に突っ伏している八重に声を掛けてくる。

 

 何気に成績優秀者の彼女にとっては、いきなりでもさほど問題無いのか、声に幾分か余裕が感じられた。

 

「けど、抜き打ちじゃったらそれ程難しく無いんじゃない? 範囲もそれ程広くないし」

 

「そうよ、しかもつい最近習ったやつだし、大丈夫よ」

 

 同じく親友兼同居人の由崎多汰美と、潦景子が先程配られたプリントを見つつ呟く。

 

 彼女たちは真紀子と比べては成績は良い方ではないものの、その表情からは不安の色は見えない。

 

 どうやらその言葉通り、それ程厳しいテストではないようだ。

 

 ……只一人、八重を除いて。

 

「そんなことで赤点が回避できるなら、今までもやってますよ」

 

 そう。

 

 八重の成績は非常に悪かった(家庭科除く)。

 

 10段階評価のはずなのに、5以下しか評価をもらったことがないほど。

 

 その事実を知っている親友一同が顔を見合わせ、苦笑いを浮かべている。

 

 彼女たちも、自分たちの言ったことの困難さを理解しているらしい。

 

 その時……。

 

「どうしたんだ? 深刻そうな顔して」

 

「あ、祐一さん」

 

 教室の入り口から聞こえてきた、最近いつも傍で聞いていた声に反応して八重は顔を上げる。

 

 そこには彼女の想い人兼恋人、相沢祐一が不思議そうな顔をして立っていた。

 

 

 

 

 

「そうか、テストか……きついな」

 

 祐一は八重や真紀子たちから事の次第を聞き、腕を組んで唸っていた。

 

 八重のことは好きだ。その気持ちは日に日に強くなってさえいる。

 

 それに、教室へと来たのはG.Wでの予定を話すつもり出来たのだ。

 

 だが祐一は彼女の成績のことも知っていた。

 

 それが目も当てられないものであることも。

 

 それがイコール彼女と連休を過ごすことが出来なくなるということも。

 

 だからこそ悩んでいた。

 

「そうなんですよ〜。折角のG.Wなのに……」

 

 八重の声が暗く、そして沈んでいく。

 

 それ程までに楽しみだったのだろう。

 

(いや、ここで諦めてどうする? 何か手はないか……?)

 

 諦観しかけた思考を強引に再起動させ、祐一は普段使わない頭を必死に回転させる。

 

 その理由が愛しき恋人と休みを一緒に過ごしたいだけというのがあれだが。

 

(八重は決して勉強を疎かにするような娘じゃない。ならおそらく勉強の効率が悪いんだろう。……だったら)

 

 しばしの間沈黙していた祐一の頭に、閃いた一つの案。

 

 そしてそれは非常に魅力的であり、自分が以前から考えていたものでもあった。

 

「だったら、俺が八重に勉強を教えればいい」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 祐一のその言葉に、八重を含む全員が驚きの声をあげた。

 

(そんなに意外か? 俺がこんな事言うの)

 

 何気に傷ついた祐一だった。

 

 

 

 

 

 場所は七瀬家、八重の部屋。

 

 祐一と八重は机を挟んで向かい合って座っていた。

 

 机の上には参考書が数冊と、ノート、筆記用具が一式。

 

 部屋には二人きり。

 

 因みに、時計の方は祐一によって外されている。

 

 彼曰く『時間を気にしていたら集中できない』とのこと。

 

「さ、始めようか」

 

 祐一がさっそく鞄から自分用のノートを取り出した。

 

「えっと、ホントに勉強するんですか?」

 

 八重は嫌そうに顔を歪める。

 

 出来るなら止めたい。せっかく二人きりなのだからいろいろ話をしたい。

 

 クラスが違うから、休み時間と下校中くらいしか話すことが出来ないから。

 

(でも祐一さんの顔を見る限り、何を言っても聞いて貰えそうもないですね)

 

 祐一に分からないようにこっそり溜息を付く。

 

 彼の表情にはやる気が満ちていた。余程やる気があるのだろう。

 

 何となく生き生きしているように見える。

 

「もちろん。さ、このノートの問題を解いてみてくれ」

 

 そう言って祐一は、取り出したノートを開いてきた。

 

 そこには……。

 

「えっと……こんな簡単なのを解くだけで良いんですか?」

 

 そう。

 

 非常に簡単な問題しか書いてなかった。

 

 その上、細かい単語の説明がイラスト付きで添えられている。

 

 八重でもこのくらいの問題、問題なく解答できる。

 

 ちょっと難しそうなものもあるが、添えられている解説等を読めば十二分に解答できるものばかりだった。

 

「そう。さ、早く」

 

 祐一はそう言いつつ別のノートを準備していた。

 

 筆記用具を取り出し、なにやら書き込み始めている。

 

「はあ、分かりました」

 

 何となく彼の行動に疑問が残るが、大人しく従うこととしよう。

 

(このくらいなら別に苦痛じゃないですしね)

 

 そんなことを考えながら、八重は目の前の問題に手を付け始めた。

 

 それからどれくらい時間が経っただろうか。

 

 八重は祐一作のノートを黙々と解いていく。

 

 ページが進むごとにちょっとずつ難しくなっていっているようだが、どの問題にもヒントや解説、もしくは今までの問題で使ったやり方で理解できるものばかり。

 

 その上似通った解き方の問題が多く、八重にとっては取りかかりやすかった。

 

 そして、15ページは終わっただろうか、祐一が次のノートを取り出し、手渡してきた。

 

「え? まだこのノート、全部終わってないですよ?」

 

「ああ、それ以上は今回の範囲から外れるからな。それ以上はしなくて良い」

 

「そうなんですか」

 

「ああ。で、次はこのページを解いてくれればそれで今日の勉強は終わりだ」

 

「え?」

 

 一瞬、祐一が言ったことが理解できなかった。

 

 あんな簡単な問題を解いただけで終わりなのだろうか?

 

 テストは明日で、自分は成績が壊滅的だというのに。

 

 八重は思わず祐一の正気を疑ってしまう。

 

「時計が無いからどれくらい勉強したか、分からないからな。今まで5時間は勉強してたんだぞ」

 

「な!?」

 

 驚いた。

 

 まさか、そんなにも長く勉強していたなんて。

 

「ま、集中すればこんなもんだろ。さ、早く解いてみてくれ」

 

「は、はい」

 

 促され、問題に取りかかる。

 

(あれ?)

 

 取りかかって数分も経たずに気付いた。

 

(今までと傾向が違う?)

 

 “単純な”問題もあれば“ちょっと複雑な”問題も存在する。

 

 ただ、どの問題も先程のノートで解いたようなパターンのものばかり。

 

 解く分には何の問題はない。

 

 だが、問題傾向の連続性が先程より少ないような気がする。

 

 それに、いろいろな傾向の問題が散りばめられているような……。

 

 そんなことを考えながらも、問題なく解答していく八重。

 

 先程よりちょっとだけ難しいが、所詮はその程度。

 

 それ程問題なく解き進めていける。

 

 そして数十分が経過する。

 

「はい、解けましたよ」

 

 多少時間が掛かったが無事全問解答し、祐一にノートを手渡す。

 

「ちょっと待っててくれよ?」

 

 祐一が早速答え合わせを始める。

 

 しゃっしゃっと、ペンがノートを走る音が響く。

 

 淡々と。

 

 八重も黙ってそれを見つめているため、その音だけが部屋に響く。

 

 ややあって、祐一が顔を上げた。

 

 その顔には真剣な表情が浮かんでいる。

 

 そのまま暫く沈黙している。

 

「おめでとう、満点だ。これで明日も大丈夫だ」

 

 その言葉と共に祐一は八重に微笑みかけた。

 

「え……?」

 

 満点と言われて確かに嬉しい。嬉しいが祐一の言葉に疑問が残る。

 

「満点って……どういうことですか?」

 

「文字通りさ。今の問題、気付かなかったか? 今までのと違っていたことに」

 

「気付いてましたけど、それが?」

 

 いまいち祐一の考えが理解できない。

 

 それに彼らしくない。こんな回りくどいのは。

 

「今のは予想問題のようなやつさ。問題集からいろいろ寄せ集めた、な」

 

「予想……問題……?」

 

 思考が追いつかない。

 

 今解いたのは練習問題じゃなく、予想問題……。

 

「と言うことは、私普通に問題が解けたんですか?」

 

「ああ、そう言ったが?」

 

「ちょっと、ちょっと待ってください。な、何で解けたんですか?」

 

 いつもなら解けないはずなのに。

 

 満点なんか、夢のまた夢のはずなのに。

 

「最初に解いて貰ったのは、いろいろなパターンの問題を、いっぱい集めたやつでね。それをたくさん解いて貰うことで、そのパターンを覚えて貰ったんだ」

 

「はあ……」

 

「学校のテストなんて、パターンを覚えれば解けるからな。だからこうしたんだ」

 

「つまり、私がそのパターンを体で覚えられるように……?」

 

「そういうこと。さ、終わったんだから休憩して明日に備えようぜ?」

 

 祐一はあっさりと言い切り、鞄にノートや筆記用具を片付け始めた。

 

「……」

 

 八重はそんな祐一を黙って見つめる。

 

(なんで……)

 

「ん? どうした?」

 

 その視線に気付いて、祐一は顔を上げる。

 

「一つ、聞いても良いですか?」

 

「ああ」

 

 八重のいつもと違う雰囲気に、祐一の表情が真剣なものへと変わる。

 

 それを確認し、八重はかねてから疑問に思っていたことを口にした。

 

「何でそんなにもいろいろとしてくれるんですか?」

 

 今回の勉強会も。

 

 今までの失敗のフォローも。

 

 確かに嬉しい。

 

 この人に想われていると実感できるから。

 

 八重はあまり祐一からそういった台詞を聞いたことがない。

 

 それは彼が口下手な為でもあるのだろう。

 

 決して信じていないわけではないが、彼はもてる。

 

 プロのモデルもかくや、という非常に整った容姿をしており、以前いた学校でもかなり女子生徒に人気があったと聞いている。

 

 だから不安になる。心配になる。

 

 本当に自分の傍にいてくれるのかと。

 

 だからこそ、今日のような行動は安心させてくれる。

 

 だが……。

 

「私は祐一さんに何もしてあげたことがありません。勉強を教えるなんて論外だし、貴方に釣り合うような綺麗じゃありません。以前の学校の女の子たちの方が似合ってるとさえ思っています」

 

 一度だけだが、祐一がこの街に来る前の写真を見せて貰ったことがある。

 

 そこに写っていたのは、見た目麗しい女性たちの姿。

 

 どの人も自分よりも可愛く見えてしまう。

 

 自分よりも彼の隣が似合っているように思えてしまう。

 

「決して祐一さんを信じていない訳じゃありません。でも気になるんです! 貴方に何も返してあげられない、隣にいてお似合いと言われるような容姿でもない私に、ここまでしてくれるのかが!!」

 

 だから思わず八重は叫んでしまった。

 

 誰にも、親友たちにさえも話したことのない、自分の心に巣くう黒い感情を。

 

 彼から光を受けたが故に。

 

 「……」

 

 祐一はそれをただ黙って聞いていた。

 

 一度も口を開かず、じっと八重を見つめたまま。

 

「……」

 

 八重も黙って祐一を見ている。

 

 ここまで話してしまったら、もうどうしようもなかった。

 

(どうしよう……祐一さんに嫌われたかも)

 

 頭の中を後悔の念が渦巻く。

 

 嫌な想像が頭から離れない。

 

 涙が込み上げてくるのが、止められない。

 

「……」

 

 祐一が沈黙を保ったまますっと立ち上がった。

 

 そのまま八重の横を通り過ぎる。

 

「……」

 

 八重はただ黙っているしか出来なかった。

 

 全ては自分の抱いた劣等感が生んだ結果。

 

 これはどうしようもない。

 

 だけど…………涙が零れてしまう。

 

 悲しみによって。後悔によって。

 

“ふわっ”

 

 それは突然だった。

 

 八重は祐一に、後ろから抱きしめられていた。

 

 優しく、しかし決して離さないようしっかりと。

 

「ゆ、祐一……さん?」

 

「ゴメン」

 

 耳元で聞こえる謝罪の声。

 

「俺は口下手だから、八重には辛い思いをさせてしまったみたいだな」

 

 そこからは、祐一の申し訳ないという感情が篭もっている気がする。

 

「だが、これだけは言っておきたい。俺は八重に、返しきれないほどのものを貰っている。こんなことでは返せないほどの、な」

 

「え?」

 

 八重はその言葉に思わず祐一の方に振り向く。

 

 勿論、そんなことを彼にした覚えは全くない。

 

「……八重、君が俺に初めて話しかけてくれたことがあっただろう? 昼休みの、屋上でのことだ」

 

 そのことは覚えている。

 

 その日は凄く天気が良く、偶には外で食べようという話になり、屋上に上がった。

 

 その時、屋上で只一人パンを囓っている祐一を見つけたのだ。

 

 じっと空を見上げつつ、黙々と、まるで機械のように食事を取っている姿を。

 

 その姿がまるで以前の景子の様に見え、つい声を掛けてしまったのだ。

 

「あの時俺は転校してきたばかりで、同時に疲れ切っていた時だったんだ」

 

 その言葉に、口にこそ出さないものの内心同意を示す八重。

 

 あの時の祐一の瞳はどこか虚ろだった。

 

 まるで、全ての絶望を体験したような。

 

 この世の地獄を垣間見てきたような、そんな瞳。

 

「だから、あの時八重に食事に誘って貰えて、嬉しかった」

 

 そうだ。

 

 八重は祐一の言葉によって、その時の事を鮮明に思い出した。

 

 自分たちのお弁当を分けてあげると、突然涙を零し始めた祐一の姿を。

 

 本人は何でもないと言っていたが……。

 

「あの食事で、いやあの時声を掛けてくれた八重のおかげで、俺は救われた。そして恋をして、こうして今付き合っている。……俺は八重に告白したときから考えていたんだ。俺を救ってくれた君に、一生掛かってでも、八重が俺にしてくれた分だけ君に何かしてあげよう、と」

 

 まだまだみたいだがな、と祐一は苦笑する。

 

「だから、自分は可愛くないとか、釣り合わないとか、そんなことを言わないでくれ。俺は優しくて、いつも笑顔でいる八重のことが好きで、そんな八重だからこそ傍にいて欲しいんだ」

 

「祐一さん……あ、あれ、どうしたんだろ……? 涙が……」

 

 突然八重の瞳から涙が溢れ出し、止まらなくなった。

 

 理由は分かっている。

 

 祐一が、どれほど自分のことを大切に想っていてくれているのかが分かったから。

 

「八重……」

 

 祐一の指が、そっと涙を拭う。

 

「祐一さん……」

 

 八重は自然とその瞳を閉じた。

 

 

 

 

 その時、二つの影が一つに重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テスト当日。

 

 祐一は校門で八重が来るのを待っていた。

 

 ちょうど今頃テストが終わったはず。

 

 この結果で、G.Wがどうなるかが決まる。

 

 昨日のうちに出来ることは全部したつもりだ。

 

 あとは八重次第。

 

「祐一さ〜ん」

 

 その時、玄関に八重の姿が見えた。

 

 彼女はこちらを確認するなり、全速力で走ってくる。

 

「はあ、はあ、はあ、ゆ、祐一さん……えっと……」

 

「慌てなくて良いから、とりあえず息を整えたらどうだ?」

 

「は、はい」

 

 深呼吸して息を整えようとする八重を可愛く思う。

 

 それ程まで焦らなくても、とも思うが。

 

「落ち着いたか?」

 

「は、はい」

 

 とりあえず、呼吸は落ち着いたようだ。

 

「で、どうだった?」

 

 さっそく核心を尋ねてしまう。

 

 ……どうやら自分も落ち着く必要がありそうだ。

 

「えっとですね……」

 

 八重が鞄の中からファイルを一つ取り出す。

 

 そして、ゆっくりと問題のテスト用紙を取り出すと、祐一に手渡した。

 

「……ゴク」

 

 思わず息を呑み、ゆっくりと視線を点数欄に持って行く。

 

 そこには………………燦然と輝く100という数字。

 

「やりましたよ、祐一さん!!」

 

 八重が感極まったように飛びついてきた。

 

 それをしっかりと抱き留める。

 

「やったな。これでG.W.はゆっくりと遊べるわけだ」

 

「はい!! ……あ、そうだ」

 

 八重は何か思い出したのか、一旦祐一から離れると、再び鞄を漁り始める。

 

「これ見てください!」

 

 ややあって取り出したのは、一冊の雑誌だった。

 

 そこには最近オープンしたテーマパークの特集が為されている。

 

「ここに行きたいのか?」

 

「はい! それに、そのテーマパークの特別パスポートも持ってますよ」

 

 いつの間に。

 

 用意周到というか何というか。

 

 八重の行動力に思わず呆れる祐一。

 

「なら俺から言うことは特に無いな。で、いつ行くんだ?」

 

「これの期限が明後日で終わりなので、さっそく明日行きましょう!!」

 

「了解。……やれやれ、昨日あんなに不安がってたのが嘘のようだな」

 

 思わずそう呟く祐一。

 

 すると、八重はぱっと祐一の腕にその細腕を絡めてきた。

 

「ええ、勿論です。もう、自分のことやここにいない人のことで悩むのは止めました」 

 

 そして、にっこりとひまわりのように微笑む。

 

「だって、今貴方の傍にいるのは私なんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fin

 

 

後書き

 

 どうも、天信です。

 今回初めて短編に挑戦してみました。

 しかも、恋愛もの。いやはや、難しいものです。

 なにせ、経験値が全くないのですから。

 しかも、ほのぼのにする予定が、何故かシリアスに。何故でしょう?

 そして最後の方は書いていて体がかゆくなると言うおまけ付き。

 やっぱり、慣れないものは書くものじゃないですね。

 

 

 さて、この作品は題名を見たら分かるとおり、トリコロ編の最初です。

 一応、他の様々な作品を使っても行おうと思っています。

 今のところ予定しているのは『らきすた』『東方プロジェクト』ですね。

 その他、リクエスト、感想、意見等は随時募集しておりますので、よろしくお願いします。