日が落ちてから数時間の時が流れ、既に夜と呼ばれる時間帯。ビルや商店の明かりも消えはじめ、道を走る車もまばらになる。

 ――しかし、そこは車どころか人さえ存在していない

 人の気配が途絶え、街灯やビルの光がその輝きをうしなわずに存在する。その異常と呼べる空間に、二つの影が踊っていた。



第一幕   ――発端――



「はぁっ!!」


 上段から繰り出される斬撃、切っ先が触れる直前、私はそれを右足を軸に回転、回避。そのまま回転力を利用し斬りつける。


「疾ッッ!」


 放った斬撃は相手の剣によって阻まれた。自己強化により普段の何倍もの衝撃が発生し、ひるんだところを力ずくで弾き飛ばす。
 体の動きが少し鈍い感じがする。最近あまり鍛錬をしてなかった……やっぱりサボるのはよくない。 少し意識がそれた隙に、相手は既に体制を整えていた。やっぱり強い、祐一もこれくらい強くなれば……さすがに無理?


「くっ、並外れた力だな。しかし魔法を使っているわけではない……お前は魔導師ではないのか?」

「さっきから言ってる。私は一般人」


 私はそんな怪しいものではない。……確かに変な能力を持っているけど、それ以外では普通の人間で、大学生だ。 魔導師なんてあやしい職業と間違えられるいわれはない。そしていきなり襲われる理由も…………多分ない、と思う。
 
 でも、こんなことをする人に――遠慮はしない!


「……行くっ!」


 アスファルトにヒビを残す踏み込み、一瞬で間合いを詰める。
 相手の間合いのに入った瞬間、再度踏み込み――真横に無理やり方向転換し、そのまま後ろに回りこみ横薙ぎに斬りつける。


「あまいっ!」


 剣閃が交わり、弾かれる。
 防がれることは予想済み、このくらいでは相手の注意をはずせるとはおもっていない。だから一撃ではなく、さらに斬撃を繰り出す。 袈裟斬りから斬り返し、そして息を継がず連続で切りかかり……その悉くは弾かれ、そしてかわされていく。
 攻守が逆転し、攻撃を避けながら反撃の機会をうかがう。何撃かは避け切れず、受け流しそのまま反撃を試みる。
 

 剣戟の後、刃を合わせたまま硬直――視線が交わる。


「どうした、お前の実力はこんなものか?」

「……ぽんぽこたぬきさん、私はまだ本気じゃない」

「たぬきだと? 貴様、私を侮辱する気か!」

 …………なんだか変な勘違いをしたみたい。

「別にそういうわけじゃない。けど、いきなり襲い掛かかる様な人は……ふっ!」

 四肢に力を込め、硬直状態を抜け出す。そしてすぐさま間合いを離し

「侮辱されたって……文句は言えない」

 片手で剣を構え、相手をにらみつける。

「……そうかもしれないが、やはりいい気分ではないな」

「侮辱じゃない……否定の言葉なだけっ」


 そこまで言って私は行動を開始する。近くにあった大型バイクをもう片方の手でつかみ


「飛べっ!!」


 ――全力で投げつけた


「なっ!?」


 相手は戸惑い一瞬動きを止めるが、すぐに立ち直り飛んできたバイクをかわす。それは勢いをとめず、後ろのビルの中に突っ込んでいった。


「っ、どこに!」


 相手は周りを見るがまだ姿を見失っている。私は隣の「ビルの壁」を足場にして、踏み込み。その地点を中心に蜘蛛の巣状にヒビが入り、ガラスが砕ける。
 直前、私に気付いた相手はかわせないと悟り、剣先の峰に手を置き受け止める姿勢をとった。


「ハァァァ!!」


 距離はゼロとなり――衝突

 落下と踏み込みのエネルギーを込めた一撃は、そのまま後方へ数十メートル進み続ける。


「くぅぅ! レヴァンティン、甲冑を!!」

『Panzergeist』


 剣がしゃべったと思ったら相手の身体を何かが纏い始め――ビルに衝突、そのまま貫通し二つ目のビルに衝突したところでようやく止まった。
 



「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ〜」


 息を整え、正面を見る。煙で相手は見えないけど、あれだけで終わるはずない……
 

「大した物だな」

「…………無傷」


 煙の中から声が響き、視界が晴れる。その中から現れたあの人は、所々服が破けてはいるが傷らしい傷はなかった。


「デバイスを使わず、魔法を使った形跡もない。それでいてこの戦闘力か……やはりその魔力は蒐集させてもらわねばならんな!」

「っ!?」


 何かいやな予感がする。相手はまだ本気じゃない、それはわかってはいたし、それでも……この悪寒は何?


「レヴァンティン! カートリッジロード!!」

『Explosion!』


 相手の剣のギミックが動き、薬莢のようなものがとびだした。
 その瞬間、剣は炎をまとい――あれは……いけない。こっちも本気を出さなきゃ終わる!


「紫電一閃!!!」


 一瞬で間合いを詰められ、回避行動は取れない。力を剣に集中し――接触


「ぐぅっ!!」


 爆発したような音、それと共に衝撃波が発生し周辺一体のガラスを根こそぎ破壊する。
 先ほどまでとは一味も二味も違う斬撃、受け流す余裕なんてない。

 ……なら、力をさらに集中させ対抗し


「はぁぁぁ!!」


――能力行使 [破壊の爪]――



 一気に解放、前方にのみ破壊を目的とした力を叩き込む。


「なにっ!」


 そこにいてはまずいと思ったのか、すぐにその場から離れる。放たれたそれは純粋に破壊だけを起こし、先ほどのような衝撃は発生しない。
 しかし、直前まで相手がいた場所は巨大な獣の爪痕のような形で地面が抉られていた。
 かわされた……やっぱり発生まで時間がかかりすぎる。それに急激に力が抜ける感覚が襲ってくる、多用はできない。 ……でもあのまま続いてたら危なかった。まだ手が痺れてる、あの攻撃は危険。あれがあの人の切り札であってほしいけど……



「今のを受けきるか。……そしてこの力」


 そこでその人は表情を変えた。

 それは――笑み

 会ったばかり、そして襲ってくる人がなぜ笑うのかは私にはわからなかった。


「強いな……、お前の名は?」

「………名前を聞くときはまず自分から」


 これは祐一から教えてもらったこと。自分から名乗らなければならないのはルールといっていた。いつもの冗談かもしれないけど……気にしない。


「ふっ、そうであったな。私はベルカの騎士、ヴォルケンリッターの将、シグナム」

 
 どこかのゲームに出てくるような名乗りだった。ヴォルケンリッターってなんだろう? 職業もいわれたなら自分もいわないといけないかな?





「………舞、川澄 舞。……普通の大学生」









あとがき


 え〜、初めまして。遥か彼方というものです。この度は[KANON 消えない想い――新たな絆]を読んでいただきありがとうございます。
 まず断っておきます。この物語の主人公は舞、そして祐一です。しかし!! 祐一君が活躍するのは序盤が終わるころになると思います。 主人公の一人なのでちゃんと活躍はしますよ、それがちょっっっと遅くなるだけです。それまで見捨てないでくれるとうれしいな〜、……なんて言ってみたり
 本当はもうひとつ断ることがあるのですが、それは次回明らかになるのでそちらのほうで説明します。


 今回、最初っから戦闘シーンですが……難しいです、ハイ。頭の中には戦闘シーンが絶賛妄想中、しかしなかなか文章にあらわせない。 書き直しに継ぐ書き直し、それでいて尚このデキです。自分の文才のなさには頭があがりませんなぁ、ハッハッハッハッ………はぁ
 舞の能力につきましては後ほど明らかになります。とりあえず現段階でも十分強いっていうことだけわかってもらえれば幸いです。
 まだまだ未熟者故、不出来な部分もありますがこれからヨロシクお願い致します。

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