闇の書事件から5年近くが過ぎていた。

 

 高校の入学式を間近に控えた3月13日の夜、祐一は部屋でメールを送っていた。

 

 「送信っと」

 

 メールを送り終えた祐一はベットに倒れこむ。

 

 考えるのは明日のこと。

 

 「このままじゃ、駄目だからな・・・

  自分の優柔不断のせいで彼女たちに迷惑をかけるわけにはいかない・・・

  はっきりさせないとな・・・」

 

 そういって目を閉じる。

 

 思い浮かべるのは、これまでに出会ったたくさんの仲間たち。

 

 まどろみの中、大切な仲間たちのとこを思い浮かべながら、祐一は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

ホワイトデー特別

 

『新たな一歩』

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・鳴海臨海公園の時計のところに13時で・・・ああ・・・じゃあ、待ってるから・・・」

 

 次の日、バレンタインのお礼と心に決めた人に告白するため、祐一は鳴海市に来ていた。

 

 待ち合わせ場所に着いた祐一は考えにふける。

 

 この日に告白をしようと決めたのは、バレンタインデーの次の日だった。

 

 みんなが自分に好意を持ってくれてるのに、祐一は気づいていた。

 

 (みんなかわいくていい子で、自分には勿体無いくらいだ・・・)

 

 ホワイトデーのお返しはなにがいいかと聞いても、気持ちだけで十分ですと言ってくれた。

 

 そんな子達を、他でもない自分自身が縛っている事に祐一は耐えられなかった。

 

 (だから・・・決めたんだ・・・)

 

 それならホワイトデーのお返しは告白にしようと・・・。

 

 1人には自分を・・・他の人達には新しい道を与えるために・・・。

 

 (やっぱ緊張するな・・・

  でも、このままってわけにもいかないしな・・・

  他のみんなには悪いけど・・・もう・・・決めたから・・・)

 

 そんなことを考えていると自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

 声のするほうへ目を向けると、待ち人の少女がこっちに向かって走ってきた。

 

 かなり急いで来たのか、祐一の所まで来た少女はかなり息を切らしていた。

 

 「そんなに急いで来なくても・・・待ち合わせにはまだ時間はあるぞ?」

 

 「そういう問題じゃないの!」

 

 「そ・・・そうか」

 

 「そうなの!まったく・・・祐一は女心がわかってないんだから」

 

 少女の言葉に祐一は苦笑するしかなかった。

 

 「それで・・・大事な用事って?」

 

 息を整えた少女は祐一に聞く。

 

 「ここに呼び出した時点で、もうわかってると思うけど?」

 

 「それでも・・・女の子は言葉で言ってほしいものなのよ」

 

 「そういうもんか・・・」

 

 「そうよ」

 

 二人で笑いあう。

 

 そして祐一は、ひとつ深呼吸した後、口を開く。

 

 「いつからかは覚えてないけど」

 

 ---そう、いつの間にかだった。

 

 「気づいたら君の姿を追っていた」

 

 ---君の笑った顔、怒った顔、悲しい顔

 

 「気づけば君のことを考えていた」

 

 ---朝起きたとき最初に思い浮かべるのは君の事

 

 ---他の誰かと一緒にいるとき君だったらと思うときもある

 

 ---夢でも君に会う

 

 「そして気づいたんだ」

 

 ---自分の気持ちに

 

 「俺は・・・相沢祐一は君のことが」

 

 ---さあ、勇気をだして言葉を紡ごう

 

 「好きです」

 

 自分の気持ちを伝える祐一。

 

 その言葉を聞いた少女は

 

 「やっと・・・やっと・・・言ってくれたわね・・・」

 

 涙を流しながらそうつぶやく。

 

 「ちょ・・なんで泣く!?」

 

 いきなり泣かれてあわてる祐一。

 

 「うれしいから・・・祐一が・・・私を選んでくれて・・・うれしいから・・・」

 

 少女は祐一に抱きつく。

 

 祐一は少女を受け止めて「待たせて、ごめん」といいながら少女の頭をなでる。

 

 そして返事を聞く。

 

 「返事・・・聞いてもいいか?」

 

 「こう・・・してる時点で・・・わかって・・・ると思うけど?」

 

 未だ泣き止まない少女は、返事の変わりに先ほどの祐一の言葉を返す。

 

 「それでも男の子は本人の口から聞きたいんだ」

 

 祐一も先ほどの少女の言葉を返す。

 

 そして二人は笑いあう。

 

 泣き止んだ少女は

 

 「私もあなたが好きです」

 

 そういって祐一にキスをした。

 

 キスが終わったあと

 

 「唇を奪われるとは思わなかったな」

 

 「ふふ、私のファーストキスよ。ありがたく思いなさい」

 

 「へいへい」

 

 また笑いあう。

 

 「それじゃあ・・・みんなに報告しないとね?祐一」

 

 「そうだな・・・それじゃあ行こうか。アリサ」

 

 祐一と少女は腕を組み、公園を後にする。

 

 ---祐一とアリサ

 

 ---二人が出会ったこの地で

 

 ---今、新たな一歩を踏み出した。

 

 そして

 

 ・・・

 

 ・・

 

 ・

 

 リビングのドアが開かれる。

 

 「まだ、起きてたのね」

 

 「ん、もうこんな時間か・・・悠亜(ゆあ)は?」

 

 「もう、寝たわよ」

 

 「そっか」

 

 「それで、なにしてたの?」

 

 「5年前の事を思い出してた」

 

 「そう・・・明日でちょうど5年になるのね・・・なつかしいわね」

 

 「いろいろあったな」

 

 「そうね・・・いろいろあったわね」

 

 「でも、無事に明日を迎えられてよかった」

 

 「私たちの晴れ舞台だからね」

 

 二人は微笑み会う。

 

 「さて・・・明日の為にもそろそろ寝ようか」

 

 「そうね、おやすみ・・・祐一」

 

 「ああ、おやすみ・・・アリサ」

 

 そういって二人は口づけを交わす。

 

 二人の指輪にはめ込まれた青い宝石が、新しい門出を祝福するかのようにキラリと光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                  

 

 どうも、作者のRAKです。                                                

 このSSはAGAINの前の作品の短編だったのですが、WEB拍手で要望があったので掲載しました。

 読み返してみるとめちゃくちゃ恥ずかしい作品ですね…。

 やっぱり自分には甘い作品は無理っぽいです。

 でもまた読みたいといってくれる読者の方々がいるのは素直にうれしいです。

 これからもまた読んでみたい、と思えるような作品を書いていきたいと思いますのでみなさんよろしくおねがいします。

 

 

 

 

 −WEB拍手お返事ー

  

 >祐一×アリサでバレンタインのssが読みたいです

  このSSのことですかね?間違ってたらごめんなさい

  

 >前に掲載されていたと思うんですが祐一×アリサの夫婦もののSSが読みたいです。

  もしかして上の人と同じ人ですかね?もしそうならお待たせしてしまってすいません

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                   

                                                                                    

 

 なんかアリサって書きやすいと思いません?

 

 

 

ツンデレは書きやすいってばっちゃが言ってた!

季節はずれのホワイトデー作品ありがとうございます。

まさかあの続きが読めるとは、いい時代になったものだ。ありがたや、ありがたや(ぇ

AGAINの前の+αも個人的に好きだったんですけどね。拍手SSでいいから復活しないかなw