「う・・・ん・・・」
窓から差し込む光の眩しさで祐一は目を覚ます。
「知らない天井だ・・・」
目を覚ました祐一は自分の家じゃないことに気づく。
「あー・・・そういえば昨日アリサの家に泊まったんだっけ・・・」
記憶を遡り今の状態に納得する。
そうして現状を確認しているとドアがノックされる。
「祐一様お目覚めですかな?」
「あ、鮫島さん?」
「ああ、お目覚めでしたか」
「ええ、今目が覚めたところです」
「それは丁度よかった。さ、お嬢様、祐一様はお目覚めですよ」
「アリサもそこにいるんですか?」
「ええ、おられますよ。さ、お嬢様」
「ちょ・・・ちょっとま・・・まって・・・や・・・やっぱり・・・」
様子がおかしいと祐一は思った。
あのアリサなら自分より遅く起きた自分を嬉々としてからかうはずだ、と祐一は思う。
しかし今の声を聞くと戸惑ってるような、恥ずかしがってるようなそんな印象を受ける。
今も鮫島が部屋に入れようとしてるのに、アリサは嫌がって部屋に入ろうとしない。
考えてても仕方ないので祐一はベットから降りてドアに向かう。
「何やって・・・ん・・・だ・・・?」
ドアを開けて鮫島とアリサを見た祐一は固まった。
「おはようございます。祐一様」
鮫島の挨拶にも祐一はピクリとも動かない。
なぜなら祐一の目の前には、スカートをぎゅっと掴み顔を真っ赤にして俯いている、メイド服に身を包んだアリサ・バニングスがいたからだ。
リクエストSS第1弾
『穏やかな日常』
あの後なんとか再起動を果たした祐一は鮫島に挨拶をして、アリサと一緒に部屋に戻った(押し付けられたともいう)。
しかし部屋に戻っても沈黙は続く。
(どうしたもんかな・・・)
アリサをみながら祐一は悩む。
アリサは相変わらず俯いて一言もしゃべらない。
悩んでても仕方ないと判断し、祐一はアリサに尋ねる。
「なぁ・・・なんでそんな格好を・・・?」
「お・・・お母様が無理やり・・・」
その答えを聞いて祐一は天を仰ぐ。
「なにやってんだあの人・・・」
同意見なのかアリサもため息をつきながらウンウン頷いている。
(それにしても・・・新鮮なんだが・・・似合ってるな・・・)
「どうせ似合わないとか思ってるんでしょ・・・うう・・・なんで私がこんな格好・・・」
祐一の視線を感じたアリサは睨む。
瞳に涙を溜め、スカートを握りながら睨むメイド姿のアリサをみた祐一は
(も・・・萌え・・・・じゃねええええええ。落ち着け落ち着け!落ち着くんだ!相沢祐一!)
暴走した。
「ちょ・・・ちょっと!何してるの祐一!?」
危なくなった思考をなんとか落ち着けようとテーブルに頭を何度も打ち付ける祐一。
それを見てパニックになりながらも止めようとするメイドことアリサ。
これなんて喜劇?
その後なんとか復活を果たした祐一にアリサは
「朝食持って来るわ」
と、いって部屋を出ていった。
一人になった祐一は考える。
「あの人は俺になにをさせたい・・・」
考えるのはアリサの母について。
「考えるまでもないか・・・あの人は絶対楽しんでる・・・俺をいじめて楽しんでるっ・・・!」
拳を握り天を仰いで泣く。
マジ泣きである。
「いつもそうだっ!あの人はいつも俺をおもちゃにしてっ・・・!」
アリサの母に弄ばれた過去を思い出しながら祐一はどんどん凹んでいく。
いったい過去になにがあった・・・。
そろそろ危ない発言が飛び出してきそうになったその時ドアがノックされる。
一瞬で気を取り直した祐一はドアに向かって声をかける。
立ち直りの早さからして過去にこんなことが幾度となくあったことが容易に想像できる。
「アリサか?」
「え・・・えと・・・朝食をお持ちしました、ご・・・ご主人様・・・もう嫌ぁ・・・・」
その言葉を聞いた祐一は
「あの人は俺になにをさせたいんだあああああああああ!?」
絶叫した。
その後二人はお互いを励ましあいながら朝食をとった。
そして食後のティータイムを終えた二人は、これ以上部屋にいると思考がやばいことになると判断して、今は庭を散歩している。
「あの人は俺を弄んでそんなに楽しいか・・・」
「お母様のことは・・・考えない方が賢明よ・・・」
「そうだな・・・」
「「はあ・・・」」
二人そろってため息をはく。
「それにしても・・・」
「な・・・なによ・・・?どうせ似合ってないとかいうんでしょ・・・わ・・・私だって好きでこんな格好してるんじゃ・・・!」
「お・・・おちつけアリサ!お・・・俺はただ似合ってるって言おうと・・・!」
今にも暴れだしそうなアリサを諌めようと発した祐一の言葉にアリサは固まる。
「ゆ・・・祐一・・・」
「な・・・なんだ・・・?」
信じられないものを見たかのようにアリサは、震える手で祐一のおでこに手を添える。
「ね・・・熱がない・・・」
「お・・・おま!?いうに事欠いてそれか!?」
「だって祐一よ!?あの祐一からほめ言葉が出てるのよ!?」
「お前の中での俺はどんな風に見られてるんだ!?」
「ひねくれものの女ったらし、将来は立派なヒモ」
「ちょっとまてえええ!?なにそのダメ人間!?」
「?」
「本気で不思議がるな!?それにお前今は俺のメイドだろ!?ご主人様にそんな口利いていいのか!?」
「祐一・・・そんな趣味があったのね・・・」
「悪かった、俺が悪かったからそんな哀れむような目で見ないでください。いやマジで・・・」
男はいつの時代も女には勝てないものである。
精神的に疲れた祐一は近くの木に背もたれながら座る。
アリサもその横に座る。
「朝から疲れた・・・」
「ふふん。私に勝とうなんて百万年早いわよ」
「いってろ・・・」
心底疲れたような声を出す祐一にアリサは勝ち誇ったようにいう。
「それにしても、なのは達が仕事でいないのは助かったわ。こんな姿見られたら立ち直れないわ」
「俺としてはいてくれたほうがよかったよ・・・ふぁ・・・」
「なに?さっき起きたばっかりなのにまだ眠いの?」
「昨日お前の親父さん達に夜遅くまでつき合わされたからな」
そういいながら祐一はあくびを噛締める。
「眠いなら無理しない方がいいわよ?仕事大変なんでしょ?」
「まぁ、そうなんだがせっかくの休みだしな、寝て過ごすってのも勿体無い」
「昼に起こすから少し寝たほうがいいわよ。なんなら膝枕してあげよっか?」
そういいながらアリサは微笑む。
「今日は祐一のメイドだしご主人様がお望みならね」
「開き直ったな・・・」
「当たり前よ。こうなったらこの状況をとことん楽しんでやるわ」
アリサらしい前向きな言葉に祐一は苦笑しながら
「ならお言葉に甘えるかな」
祐一はアリサの太腿に頭を預ける。
「それじゃおやすみ、祐一」
「ああ、おやすみアリサ」
暖かい陽気に包まれながら祐一は目を閉じる。
アリサは祐一の髪を撫でながら時間を過ごす。
そんな穏やかで幸せな日常のひとコマ。
どうも作者のRAKです。
今回はコガンさんのリクエストにお答えしたSSです。
リクエストされた内容はアリサのメイド物です。
しかしかなりの難産でした・・・。
メイドSSといえばギャグ物が多いので、ひねくれもののRAKはギャグじゃないメイド物を書こうとしたのがそもそもの間違いでした・・・。
書いては消して書いては消しての繰り返し・・・。
何度挫折しそうになったことか・・・。
それでもなんとか自分では満足のいくSSが出来上がったので、コガンさんこれで簡便してください・・・。
これ以上は無理ですので・・・。
こんなのアリサじゃない!とかいろいろ言いたいことがあるでしょうw
自分でも思いますもんw
そこらへんは次回があれば、精進して書いていこうと思います。
では、リクエストSS第1弾を読んで頂きありがとうございます。
こんなメイドSSもたまにはいいですよね?JGJさん
メイドはいるだけで正義です(何
というわけでありがとうございます。
メイドSSというとギャグ色が強いですが、結構純愛もあると思いますよw
あとアリサはツンがなければこんな感じだと思うんだ。