| 機動戦ガンダムSEED LYRICAL |
クルーゼは不敵な笑みを浮かべながら、立ちはだかるフリューゲルとガイストに向かって接近する。
「今のうちに沈んでもらう! まずはそちらの2機からだ!」
フリューゲルとガイストに接近するシグーから眼を離さず、ランチャーパックをアジャストさせて、
OSを再設定すると、その装備による追加武装が表示される。
120mm対艦バルカン砲
350mmガンランチャー
320mm超高インパルス砲・アグニ
「ビーム兵器!?」
新しい武装を確認した直後、凄まじい爆発と共に壁は破壊される。
その爆発に驚き、上方の3機は動きを止める。
戦場に姿を現わした白い戦艦を見て、クルーゼは軽く舌打ちした。
「新型・・・仕留めそこなったか!?」
「アークエンジェル!?」
その戦艦を見て、零したマリューの表情は、驚きに彩られていた。
コロニー内に姿を現わしたアークエンジェル。
クルーはモニター越しに、現状を確認して告げる。
「隔壁突破! コロニー内に侵入」
「モルゲンレーテは大破」
「MS反応・・・5機!? うち一機はストライクは起動中・・・いえ、戦闘中です!」
その報告に驚くナタル。
シグーが目の前のフリューゲルとガイストから、アークエンジェルに向かって軌道修正して、
真っ直ぐにアークエンジェルに向かって機体を加速させてきた。
「回避! 面舵!」
ナタルの指示にノイマンは慣れない動作でハンドルを回し、それに連動してアークエンジェルはシグーの攻撃を避ける。
クルーゼは一瞥し、改めて動きの止まっていたフリューゲルとガイストを狙う。
「来るぞ!」
「うん!」
迫り来るシグーはライフルのカートリッジを交換すると、接近しながら速射してくる。
OSの不完全な2機では、クルーゼの操るシグーの動きについていけるはずもなく、
腹部、胸部に着弾して、その反動で地表に向かって落下していく。
「まずは2機・・・次だ!」
再度カートリッジをリロードして、下方の2機に目掛けて急降下する。
それを見たマリューは、慌てて名雪達の方を振り向いて叫ぶ。
「伏せて! 早く!」
マリューの指示にしたがって、一斉に身を伏せる名雪達。
年上である舞と佐祐理は、アリサとすずかを庇うようにして覆いかぶさる。
「危ない!」
名雪達の盾になろうとして、レイジングハートとストライクがしゃがみこむ。
クルーゼはお構いなしに攻撃を仕掛けるが、その銃弾を2機は弾き返す。
「チッ! 強化APSV弾でも・・・それにあの特殊フィールド、アレと同じものか・・・?」
PS装甲の予想以上の強度と、発生したProtectionに驚くクルーゼ。
更に驚くべきことに、落下した2機、フリューゲルとガイストも、まったく無傷で立ち上がった。
クルーゼが4機のMSに気を取られていたうちに、アークエンジェルは態勢を立て直す。
「艦尾ミサイル7番から10番まで起動・・・レーザー誘導。間違ってもシャフトや地表には当てるなよ」
艦尾からシグーに向かってミサイルが放たれる。
シグーは上昇しながらシャフトの影に隠れると、追尾機能のあるミサイルはシグーの反応に従い、
立ち塞がるシャフトに次々と命中して、その度重なる被弾に、シャフトを支えるワイヤーが途切れ、
シャフトが分解して、そのまま地表へと落下する。
その光景を目にして、MSのコクピットにいる4人は絶句した。
「じょ、冗談じゃない!」
ストライクは最大の武器であるアグニを構え、コクピットに照準スコープがセットされる。
照準をシグーに合わせて、そのトリガーを引くと、砲身から凄まじいエネルギーが放出されて、
その閃光はシグーの左足を飲み込み、そのままコロニーの内壁に向かった。
コロニーの地表が白熱し、外郭ごと貫通して、コロニーに大穴を空けてしまう。
「こ、こんな・・・」
「コロニーに穴が・・・」
「なんて破壊力だ・・・」
キラ、なのは、祐一は驚愕の声を上げる。
1機のMSがこれほどの火力を持ち合わせている。
キラは自分のしたことに愕然として、青ざめてシートの上で凍りついており、
祐一もなのはも、空いたコロニーの穴に目を奪われて、完全に戦意を喪失させていた。
だが1人、カケルだけは違っていて、凄まじい速さでキーボードを叩いている。
(・・・・・・ジェネレーター再調整・・・スラスターを含むシステムをメインで直結・・・姿勢制御を再設定して・・・・・・
推力はA-6+4、A-12-8・・・これだ! ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定制御モジュールを直結、
ニュートラルリンゲージ・ネットワーク再構成・・・メタ運動関数パラメータ更新、フィードフォワード制御再起動、
伝達関数、コリオリ偏差修正、 運動ルーチン接続、システムオンライン、ブートストラップ起動・・・
全システムを再起動させて・・・・・・よし! これで安定するはずだ)
システムの再起動を確認して、強くペダルを踏み込むと、ウイングスラスターが青白い粒子を放つ。
地を蹴って飛び上がるフリューゲル、その反応と機動力はさっきまでとはまるで違っており、
こちらに気づいたシグーのMMI-M7S重突撃機銃を、掻い潜るように回避しながら一気に懐まで接近し、
ビームサーベルを引き抜いて振り下ろす。
「チィ!」
シグーのライフルを斬り落し、追撃の一撃を放つ。
並みのパイロットならそれで終わりだったのだろうが、クルーゼはシグーの重斬刀で受け止める。
光の刃と鋼の刃がぶつかり合い、エネルギーがスパークする。
「いっけぇー!」
「こ、これは・・・!!」
力任せに押し切った光刃は、重斬刀ごとシグーの右腕を斬り裂いた。
更に下ろしたビームサーベルを払い上げて、そのまま左腕までも斬り裂く。
「クッ・・・! (これほどのパワーを持たせてあるとは・・・・・・)」
いきなり動きが変貌して、予想以上の機動性とパワーを見せたフリューゲルに舌打ちして、
レッドシグナルが点灯するコクピットで、状況不利と判断したクルーゼは、煙を上げながらシグーを離脱させる。
「敵MS・・・離脱していきます」
「着陸する。対地速度合わせ、重力の発生に注意しろ」
着陸したアークエンジェルの甲板に着陸する3機のメビウス・ゼロ。
そして、開かれた発進口に着陸するストライク、フリューゲル、ガイスト、レイジングハート、4機のガンダム。
4機はそれぞれに手に抱えていた者達をそっと下ろす。
そこに艦のクルーと思われる士官達が走って駆け寄ってくる。
コクピットのハッチを開き、降りてくる4人の少年少女の姿を見て、皆驚いた表情で視線を向けてくる。
「おいおい、何だってんだ? 子供じゃないか。あいつらがこれを動かしてたってのか?」
聞こえているが、4人とも聞こえていないふりをした。
明らかに士官達の間に微妙な空気が漂うが、祐一達は友達に囲まれているので、そこまでは漂ってない。
それでもやっぱり、民間人の子供がMSを動かした事実が信じられないのか、ナタルはマリューに質問するが、
マリューはキラ達の方を一瞬見ると、どう話を切り出したらよいか悩む。
そこに、MAから降りたムウを先頭に、ハヤテとタツが歩いてきた。
「へ〜、こいつは驚いたな」
ムウは軽い口調で笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。
「地球軍第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ」
「同じくハヤテ・ツキカゲ少尉です」
「タツ・シマド少尉だよ・・・っと」
ムウ達が敬礼したので、マリュー達も慌てて敬礼を返す。
「第2宙域第5特務師団所属、マリュー=ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル=バジルール少尉です」
その答えに満足すると、一通り士官達を見渡して聞く。
「乗艦許可を貰いたいんだが、この艦の責任者は?」
その言葉にナタルが表情を歪める。
「・・・艦長以下、主だった艦の士官は、皆戦死されました。よって、今はラミアス大尉がその任にあると思います」
「え!?」
その言葉に驚愕するマリュー。
「無事だったのは、艦にいた下士官のみです。自分はシャフトの中で運良く・・・・・・」
「艦長が、そんな・・・・・・」
「やれやれ、なんてこった。ああ、取り敢えず乗艦許可をくれよ、ラミアス大尉。俺達の乗ってきた艦も墜とされちゃってね」
「あ、はい。許可します」
「で、あれは?」
ムウは集まってるキラ達を見ながらマリューに聞くと、
「御覧の通り、民間人です。襲撃を受けた時・・・何故か工場区にいて、私がGに乗せました。
あっち少年の方がキラ=ヤマトと言います。そして、こっちの少年が相沢祐一、X000に乗ってました」
「X000?」
聞かない番号に首を傾げるムウ
「本来は廃棄される予定の機体でした。ですが、なぜか組み上がっており、彼が乗っており、
彼らの活躍でにより、先にもジンを撃退し、コレらだけは守ることができました」
「ジンを撃退した!? あの子供が!?」
信じられないといった感じで驚き、キラと祐一を見る。
更にマリューは言葉を続ける。
「他の2機については、私も詳しい事はわかりません。あの子達も何も聞かされずに渡されたみたいだから・・・」
更に幼い子供の姿に驚くしかない士官達。
そこに、横からハヤテが尋ねる。
「俺達、例のXナンバーの新人パイロットの護衛で来たのですが・・・彼らは?」
「ちょうど指令ブースで、艦長へ着任の挨拶をしている時に爆破されましたので、共に・・・・・・」
ナタルが鎮痛な表情で告げると、ハヤテの顔が重々しく引き締まる。
ムウは肩を落とすと、キラ達の前まで歩いていくと、物珍しそうに見つめる。
キラは思わず身を退き、祐一はカケルを守るように前に立ち、同じ様になのはの前にアリサが立って睨んでいる。
やれやれといった感じで微笑むと、ムウはさらっと言った。
「君達、コーディネイターだろ?」
その言葉に、その場の空気が凍りついた。
誰もが次の言葉を待ち、緊張が走る中、キラと祐一は同時に返事をした。
「 「・・・・・・はい」 」
返事をしたとたんに、控えていた兵士達が一斉に銃を構えた。
これは戦争の縮図『コーディネイター VS ナチュラル』を現している。
たとえ相手が子供であろうと、地球軍はコーディネイターならば情け容赦なく撃つだろう。
そして、その銃口は当然、同じ様にMSに乗っていたカケルとなのはにも向けられる。
その頃・・・・・・未だヘリオポリスの周辺を航行するヴェサリウスとガモフ。
ヴェサリウスのブリッジでは、今後の対策が議論されていた。
モニターに映し出されている、ストライクとジンHの戦闘の様子が映し出されている。
素早い動きで、ジンHを追詰めていくストライク、その様子を見ながらクルーゼは言う。
「ミゲルがこれを持ち帰ってくれて助かったよ・・・・・・でなければ、いくら言い訳したところで、
地球軍のMS相手に機体を損ねた私は、大笑いされていたかもしれん」
コーディネイターにとって、ナチュラルに遅れを取るなどは、最大の屈辱にして、恥じるべきことだ。
例え相手が新型だったとしても、ただそう告げただけでは評議会は納得しないだろう。
それでも、モニターに映し出されたストライクの動きの急激な変化を遂げ、更にガイストが現れ、
ぎこちない動きであるにも関わらず、ストライクと共同してジンを討ったように捉えられる。
その様子を、敗れたミゲルを含め、アスランや浩平といった各パイロットが見詰めていた。
「オリジナルのOSについては、君らも既に知っての通りだ。7機目の機体も似たようなものなのだろう。
なのに何故、あの機体だけが動けるのかは解からんが、このまま放っておくことはできない」
クルーゼの言葉に頷き返す一同。
「捕獲できぬとなれば、今ここで破壊する。戦艦もな。侮らずにかかれよ」
全員が敬礼する。
「ミゲル、オロール、長森、七瀬は直ちに出撃準備! D装備の許可がでている。これをノーマルジンに装備、
ハイマニューバはそのままに、長森にはアルカディアより渡されたイクシードで出てもらう」
「了解しました」
アスランはブリッジから出て行くミゲル達を見送ると、1つの決意を言葉にした。
「アデス艦長、私も出撃させて下さい!」
「なに?」
予想外の言葉に驚くアデス。
「機体がないだろう? それに、君はあの機体の奪取という重要任務を既に果たしている」
「しかし!」
それでも食い下がろうとするアスランに、浩平が肩に手を置いて語る。
「今回は譲ってやれ。ミゲルもオロールも機体を失ってるんだ。ここで汚名を返上できなければ、
この先には笑い者としての末路しか残っていない。その辺もわかってやれ。行くぞ」
アスランはそれでも納得ができず、浩平についてブリッジを出ながら、ある決意をする。
そんなアスランの様子を見ながら、浩平は独り言のように話だす。
「機体のデータも取り終えただろうし、そろそろ実戦テストで性能を確かめるのもいいかもな」
「浩平!」
アスランが浩平の顔を見ると、そこにはおもしろそうに笑う顔があった。
「なんだよそれ!」
北川が銃を構えている兵士達に叫び、香里がそれに続く。
「コーディネイターでも相沢くんやキラくんは敵じゃないわ! さっきの見ていなかったの?
2人は私達を守る為に戦ってくれたのよ! それなのに・・・・・・」
「そっちの2人もコーディネイターなのか?」
ナタルは2人の抗議を無視して、カケルとなのはに視線を向ける。
「いえ・・・私は違いますけど・・・・・・」
「俺も違います」
2人は否定の言葉を発するが、どうやら信じてもらえてない様子だ。
コソコソと2人に対しての疑問の会話が聞こえる。
こんな小さな子供がMSで戦い、ましてや撃退したのなら、それは信用できないのもあたりまえなのだろうが、
こうも敵視された態度と行動に出られては、かなり精神的に参る。
「銃を下ろしなさい」
マリューが命じる。
「そう驚くこともないでしょう?ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの。戦渦に巻き込まれるのが嫌で、
ここに移ったコーディネイターが居たとしても不思議じゃないわ。違う? キラくん、祐一くん」
「ええ・・・ぼくは一世代目のコーディネイターですから」
「俺もそうだ」
一世代目とは、初めて遺伝子改変を受けた者のことで、両親は両方ともナチュラルということだ。
つまりは両親の意思により、コーディネイターとして生を受けさせられたことで、そんな訳だから、
中立のコロニーに住んでいるのは、当然といえば当然なのだ。
「いや、悪かったな。とんだ騒ぎにしちまって・・・俺はただ聞きたかっただけなんだよ。
ここに来るまでの道中、これのパイロットになるはずだった連中の、シミュレーションをけっこう見てきたが、
奴等、ノロクサ動かすにも四苦八苦してたぜ。それをあんなに簡単に動かしちまうんだ、やれやれだな」
ムウは肩をすくめると、きびすを返した。
数分後、アークエンジェルに様々な物資が搬入されていく。
格納庫に移動させた4機のMSと、3機のMAの調整と修理が行われていた。
それとは別に、祐一達はアークエンジェル内の部屋に案内されて、それぞれに休息を取っていた。
部屋は男女別に4人ずつに分かれていて、今はキラの部屋に全員が集まっている。
2段ベットの上部にて、壁に凭れながら寝息を立てているキラは、やはり心労が溜まっていたのだろう。
祐一、カケル、なのはに比べて、明らかに戦闘時間が長かったのだから・・・・・・
「この状況で寝られちゃうってのも、凄いよな」
「疲れてるんだよ。キラは俺達よりも大変だったみたいだしな」
大変という意味では、祐一もカケルやなのはも同じだが、銃撃戦にも身を置いていたキラの疲労は計り知れない。
「大変だった、か・・・・・・ま、確かにそうなんだろうけどさ・・・・・・」
「なにが言いたいの?」
カズイの棘があるような言い方に、香里が睨みを聞かせて詰め寄る。
「別に・・・たださ、キラにとっては、あんな事も大変だったって済んじゃうんだな、ってな」
そう言ってキラを見詰める。
それから今度はカケルに視線を移す。
「キラ、OS書き換えたって言ってたじゃん。それっていつさ? その子みたいに、戦闘中にでも書き換えたとか?」
話の矛先となったカケルは、みんなの視線を感じて俯いてしまう。
それから庇うように、名雪と祐一がカケルを抱き寄せる。
そんなのはお構いなしに、カズイは尚も喋り続ける。
「遺伝子操作されて生まれてきたやつら、コーディネイターってのは、そんなことも大変だったで出来ちゃうんだぜ。
ザフトってのはみんなそうなんだ。そんなバケモノみたいな連中と戦って勝てんのかよ、地球軍は・・・・・・」
「・・・そんなにコーディネイター怖いの?」
カズィの呟きに答えたのは、意外にも舞だった。
いや、答えたというよりは、質問に質問で返したと言ったほうが正しい。
カズイは答えず、知らん顔で沈黙を保っていると、今度はアリサが我慢できずに詰め寄る。
「あんた! まさか友達が怖いって言うの?」
アリサの鋭い視線がカズイに突き刺さる。
普通なら、静止する役目であるはずのすずかも、『友達』という言葉が絡むと放っておけない。
「キラさんと祐一さんがコーディネイターだから・・・怖いんですか?」
「・・・・・・・・・」
カズィは答えられずに、気まずそうに視線を逸らす。
(やれやれ・・・大した友情だね。祐兄もなゆ姉も、友達は選ばないと・・・・・・)
祐一と名雪を見上げながら苦笑するカケル。
ほとんどの者が何も言えずに俯いていたが、そんな暗い雰囲気の中でも、気さくな連中もいる。
「あはは〜、佐祐理達はそんな小さいことは気にしませんよ〜。ね、舞」
「はちみつクマさん」
「俺達、友達だろ?」
「あんなことぐらいじゃ、これまでと何にも変わらないわよ」
佐祐理、舞、北川、香里、4人は何を今更、といった感じで答え、祐一と名雪は笑顔で頷く。
「あんなことぐらいって・・・・・・」
カズイが愚痴みたいにその一言を零すと、香里や舞、アリサに"キッ"と睨まれて縮こまる。
友達にも色々とあり、ひたすら信頼する友達もあれば、自分の保身ばかり考えている友達もいて、
どこからどこまでが友達か解らないが、後者であるカズイには誰も助け舟を出そうとはしなかった。
当然と言えば当然で、自業自得である。
アークエンジェルのブリッジでは、マリューがコロニーに連絡を取っていた。
詳しい内容を管制シェルターから聞き、溜め息交じりに通信機を置いて、ムウとナタルに振り返り、
「コロニー内の避難はほぼ100%完了したとのことだけど・・・さっきので警報レベルは9まで上がったそうよ」
「シェルターは、完全にロックされちまったって訳か・・・だったら、あのガキどもはどうするんだ?」
ムウが溜め息混じりにそんなことを聞くと、ナタルが疑問系に返事する。
シェルターが完全にロックされたのであれば、流石にコロニー内に出す事はできない。
それなりに安全が確保できるならいざ知らず、まだ近辺宙域にはザフト艦が待機しているので、
このまま素直に退いてくれるとも思えない、またいつ戦闘が始まるかわからないからだ。
「そうですね。流石にもうどこかに放り込む訳にはいかないでしょう」
「彼らは、軍の機密を見たため、ラミアス大尉が拘束されたのです。このまま解放するわけには・・・・・・」
ハヤテの質問に対して、ナタル軍人としての立場上の答えを出す。
それに対して、ハヤテは難しい顔をする。
「けど、このままヘリオポリスを脱出するなら、派手な戦闘に巻き込まれる。ましてや・・・」
「外で待ち構えているのはクルーゼ隊だ。そう簡単に見逃してくれる相手じゃない・・・」
「ハヤテや俺、大尉のゼロは、さっきの戦闘で使用できなくなってるしな〜・・・」
気楽に言うタツだが、内容は口調ほど楽観的なものではない。
言葉の意味に意気消沈するマリュー達に、ナタルは思いついた1つの判断を告げる。
「ラミアス大尉、脱出にはGの力が必要だと具申致します」
「そうね・・・フラガ大尉」
流石にこうも連続して、民間の子供達に戦闘を強いることはできない。
レイジングハートはパイロット登録で、なのはにしか操縦できなくなってしまったが、残り3機は普通に乗れ、
幸い地球軍のエース級のパイロットが、都合よくこの場に3人揃っている。
マリューの意図を理解したムウだが、残念そうに首を横に振った。
「無理言うなよ。俺達じゃあんなもん扱えないぜ」
あっさり否定されたことに、マリューとナタルは思わず声を上げる。
ハヤテとタツに視線を移すが、2人とも首を横に振って、タツに関してお手上げまでしている。
「あの坊主どもが書き換えたOSのデータを見てないのか? あんなの普通の人間に扱えるかよ」
「不完全なOSは問題外、2機のOSを初期に戻したとしても・・・」
「まず的になって狙われるな。よくて撃墜、悪ければ機体を奪われてしまう・・・・・・」
キラが書き換えたOSは、完全にコーディネイター専用・・・それも極めて特殊なタイプで、カケルが書き換えたOS、
これは機体の反応を徹底的に追及したもので、例えコーディネイターでも、そうそう扱える代物ではなく、
全てを個人専用に設定する事により、ようやく扱えるかどうかの設定になっている。
初期に戻せば、明らかにジン1機と戦っても勝てないだろう。
それでジンHとまがいなりにも互角に戦えたのは、単純に祐一の技量と反応が抜きん出ていたからだ。
ムウ、ハヤテ、タツには、はっきり言って、どの芸当もできそうにはない。
「こりゃやっぱり、もう一度あの坊主どもに協力してもらうしかないな」
「素直に乗ってくれますかね?」
素直にというのは無理だろうが、自分達が生き残るためには、是が非でも乗ってもらわなくてはならない。
マリューは瞳を閉じて、4人のそれぞれの活躍を思い出す。
OSを瞬時に書き換え、ジンHを圧倒したストライク、無造作に放たれる銃弾を完全に防いだレイジングハート、
不完全なOSながら、ジンHの動きについていったガイスト、そして、あのクルーゼのシグーを退けたフリューゲル・・・
この4機の力があれば、この絶望的な状況も切り抜けることも不可能ではないだろう。
閉じた眼を開くと、マリューは強い口調で言った。
「私が説得します」
エゴでしかない。
それはわかっているが、生き残る為にそう決意するマリューだった。
ヴェサリウスから発進していく6機のMS、ジン4機、ジンH1機、イクシードが1機。
ジンには要塞攻略用のD装備が施され、重々しい外見をしている。
先頭を行く瑞佳のイクシードに並ぶ留美のジンH。
「どう瑞佳、イクシードは?」
「反応が敏感過ぎて、怖いくらいだよ。ちょっとしたことにも反応するもん」
アルカディアの機体は、主にNT用に造られている。
勿論、全員が全員NTであるはずもなく、むしろNTの数は極めて少なく、
MSもノーマルタイプ用に性能を落としているが、今瑞佳が乗っているのは、従来のイクシードなのだ。
機動力はジンHと同じくらいだが、反応は数段上で、すぐに癖が付いてしまいそうだ。
「でも、慣れれば良い機体みたいだよ」
並のジンでは、瑞佳みたいなエース級には反応が遅く感じられるのに比べ、反応がよいのは願ってもない。
自分がそれに慣れた頃には、パイロットとして能力が一段と上がったことを意味するのだから。
「よかったじゃない。これもミゲルが瑞佳の機体を壊してくれたおかげよね」
「嫌味か・・・それは?」
瑞佳の機体を壊した事で、ミゲルは散々留美に絞られた。
我慢できずに手を上げようとしたら、今度は顔面に拳を叩き込まれて、返り討ちにあわされた。
よって、必要以上に強気に出られない。
口より手が早い留美のこと、もしからしたMSでも平気で撃ってくるかもしれない。
そうなったらアザどころか、命がなくなってしまう。
その一言も、通信回線をOFFにしてのものだった。
ヴェサリウスからMSが発進してすぐ、浩平とアスランはそれぞれ、自分達の奪取したMSに乗り込む。
2人はコクピットシートに座ると、すぐにシステムを起動させる。
「アスラン、一応聞いておくが、なんであの機体に拘るんだ?」
「おまえには・・・関係ない・・・・・・」
ここまでお膳立てしてくれた浩平に対して、この対応はないだろうとも思うのだが、かといって、
自分とキラのことを言う訳にもいかず、こんな半端な答えになってしまった。
浩平の機嫌をそこねさせたのではないかと、少し危惧するが、浩平は軽く笑うと、まるで自分の事の様に、
「乗ってるのが友達・・・だとか?」
「なっ!?」
浩平の言ったことは的を射ていた。
思わず驚きの声を上げたアスランは、それが拝呈に取られたと思い、"ハッ"とする。
だが、浩平それを確認すると、笑って言った。
「俺も同じだ」
「え?」
「TMF-X05・・・ガイストに乗っていたのは、俺の友達だったんだよ。だから・・・一度見逃した・・・・・・」
「浩平・・・おまえ・・・・・・」
予想もしてなかったことに、驚くアスラン。
まさか自分と同じような境遇にあるとは、正直思わなかった。
まだ乗っているのが友達であると確定してないアスランと、もう確定してしまっている浩平。
「覚悟だけは、しておけよ」
もしまだMSに乗っている場合、戦う事になるのも已む無しになる。
最悪の場合、友達を討つことになるかもしれない。
浩平は言いたい事を言うと、先にクラウドを発進させた。
「覚悟か・・・・・・」
浩平の言った言葉を心に刻みながら、アスランもイージスを発進させる。
ブリッジにクラウドとイージスの発進が報告される。
その報告に驚きの声を上げるアデス。
「何だと? アスラン・ザラと折原浩平がイージスとクラウドで出た!? 呼び戻せ!」
「やれやれ・・・行かせてやれ」
遮るように発するクルーゼ。
「は? ですが・・・」
「データの吸い出しは終わっている。かえっておもしろいかもしれん。Gタイプのモビルスーツ同士の戦いというのも」
クルーゼは不敵な笑みを浮かべて、ヘリオポリスを見詰める。
マリューとムウが祐一達の集まっている部屋に訪れ、概要を話すとキラはすぐさま嫌悪感を見せた。
「お断りします! 僕達をもうこれ以上、戦争になんか巻き込まないで下さい!」
「キラくん・・・・・・」
キラの怒りはもっともだろう。
この場に集まっている子供達全員が、これ以上戦争に巻き込まれることを良しとしていない。
拘束された上に、またMSに乗って戦え・・・冗談じゃない。
こんな無茶苦茶なことを要求されれば、祐一も頭にきて言い放つ。
「あんたらの言ってる事は正しいかもしれない。俺達の外の世界は確かに戦争をしている・・・
でもな、だから俺達はそれが嫌で、戦いが嫌いだから中立で平和なこのコロニーを選んだんだ。なのに・・・」
キラも祐一も、徹底して拒否している。
カケルやなのはは、まだ何も言わないが、好んで戦おうなどとは思わない。
ユーノも地球軍の一方的な要求に、内心信じられないと思った。
(この連中・・・正気なのか?)
好き好んで触れた訳でもないのに、それを理由に拘束され、自分達に動かせないから、代わりに戦えと要求してくる。
そもそもザフトがこのコロニーに武力進行したのも、地球軍がMSを開発していたからだ。
にも拘らず、自分達の非を一切認めず、正論と無責任な正義を振り翳している。
(・・・でも、なのはやカケルを巻き込んだのは、僕達が原因なんだよね・・・・・・)
自分も人の事は言えない、そう思って俯くユーノ。
まだまともに話が纏まっていないとき、通信が飛び込んでくる。
『ラミアス大尉! ラミアス大尉! 至急ブリッジへ! 敵MSが接近しています!』
「なんですって!?」
その通信に顔色を変える一同。
「・・・はぁ〜・・・・・・」
カケルは呆れたように溜め息すると、部屋を出ようとする。
部屋から出て行こうとするカケルが、マリューとムウの間に来ると、マリューが呟く。
「きみ・・・・・・」
「まだ死にたくないし、みんなを死なせたくないから」
カケルはそれだけ告げると、通路を走っていく。
その様子を見て、祐一となのはも駆け出す。
「祐一!?」
「なのは!?」
「カケル1人にやらせられないだろ」
「今は、私達にしかできないことをしないと」
3人が行ったことにより、キラも覚悟をせざる得なくなった。
キラはマリューとムウの間を通りながら言う。
「卑怯です・・・あなた達は!」
「キラくん・・・・・・」
「僕達が戦わなくちゃ、みんな死ぬって言うんでしょ! 僕達しか動かせないからって!」
吐き捨てるように言うと、キラも3人を追って格納庫に駆け出して行った。
浮上するアークエンジェル。
ブリッジに戻り、艦長シートに座ったマリューはすぐさま指示を出す。
「ヘリオポリスからの脱出を最優先とする。戦闘ではコロニーを傷つけないよう留意せよ!」
「んな無茶な」
その指示に不満を漏らすトノムラ。
ナタルも同じ心境だが、艦長の命令な為、あえて今は口にしない。
格納庫では、それぞれ自分に機体に乗り込んで、整備員達が武装の換装や、最終チェックなどを行っている。
時間こそ限られているが、少しででも万全を規していたいといったところだろう。
祐一が乗るはずのガイストのシートには、カケルは座っていて、高速でキーボードを叩いていた。
次々と書き換えられていく画面を見ながら、祐一は素直に関心する。
「速いな・・・おまえさ〜、どこでそんな技能を身に付けたんだ?」
「システム関係のバイト。あれって給料がいいから」
プログラムを製作する仕事は、実力さえあれば年齢は関係無い。
しかもかなり給料がいいので、その為に技能を身に付ける人もそれなりにいる。
イマイチ答えとしては成り立ってない気がするが、この際どうでもいいだろう。
カケルがシステムを再起動させると、再びシステムが立ち上がる。
「これでいいよ」
「ありがとな」
祐一はカケルの頭を撫でてやる。
とてもこれから戦場に赴く者達とは思えないほど、穏やかな雰囲気が流れている。
カケルは昔から祐一や名雪に頭を撫でられるのが好きで、今もそれは変わってないようだ。
「うん。じゃあ、行くね」
「ああ。無理だけはするなよ」
同じくして、レイジングハートのコクピットで待機しているなのはと、何気について来たユーノ。
システムさえ立ち上げれば、あとは全てレイジングハートがしてくれるので、楽といえば楽なのだが、
なのはにしか使えない為、これから先が大変なことになるのは間違いないだろう。
「大丈夫、なのは?」
「うん・・・(でも・・・やっぱりちょっと怖いなかな・・・・・・)」
先程、ほんの少しだが、確かに本物の戦争の戦場を体験した。
まだ幼い少女には、それはあまりにも過酷なものだ。
ユーノもそれを理解しており、少しでも何か、何ができるかはわからないが、その何かの為に同行している。
(僕が巻き込んじゃったんだから、僕が支えてあげなくちゃ・・・・・・)
決意を秘めながらも、どうするべきか考えるユーノ。
ストライクのコクピットでは、キラが新たにアジャストされたストライカーパックを確認する
「ソードストライカー・・・剣なのか? 今度はあんなこと、ないよな・・・・・・」
ランチャーのアグニによって、コロニーに空けられた穴を思い出す。
だが、今度のストライカーパックは、MSの丈を超える実刃とレーザー刃を兼ね備え、
戦艦すらも斬り裂く対艦刀"シュベルトゲーベル"をメイン武装とする接近戦用の武装である。
キラがスイッチを押すと、ストライクのPS装甲が展開されて色付く。
ブリッジのレーダで接近する熱源を察知して、それがモニターに映し出される。
そのジンには大型のミサイルが装備されている。
それを見たムウが驚愕の声を上げる。
「なんてこったい! 拠点攻撃用の、重爆撃装備だぞ! あんなもんをここで使う気か!?」
たった1機だが、どこで爆発を起こしたとしても、それはコロニーに被害を出すだろう。
無論、撃ち込まれたら新造艦であるアークエンジェルとてただではすまない。
更に悪いことに、別方向から外壁を破壊して、本命と思われる部隊が侵入してきた。
「タンネンバウム地区から更に別部隊侵入!」
「Gを発進させろ」
レーダーがジンとは別に、3機の識別信号を感知する。
識別された反応の1つには、奪われたX-303の機体データが表示される。
「1機はX-303、イージスです! それにイクシードが1機、最後のは・・・照合データがありません」
「 「 「 「!!」 」 」 」
ブリッジに重々しい空気が充満する。
「アルカディアの機体・・・それに、もうGを実戦に投入してくるなんて!」
「今は敵だ! あれに沈められたいか!?」
ムウの一喝に気を取り直す。
「・・・コリントス、発射準備。レーザー誘導、厳に!」
「フェイズシフトに実体弾は効かないわ! 主砲、レーザー連動。焦点拡散!」
アークエンジェルの砲身が現れ、主砲を放つが、MSはそれを悠々とかわす。
それとタイミングを同じくして、ストライク、ガイスト、フリューゲル、レイジングハートの順に発進した。
一度散開したあと、ミゲルのジンがイージスの隣に付ける。
「オロールとマシューは戦艦を! アスラン、浩平! 無理矢理付いてきた根性、見せてもらうぞ!」
「・・・・・・ああ」
「任せろよ負け犬」
「負け犬言うな!!」
アスランはストライク、浩平はガイスト、それぞれモニターに映された友達が乗り込む機体を見ながらそう答えた。
「おい! あっちのモニターで、外の様子が見えるぞ!」
トールに呼ばれて、サイ達はそちらに向かう。
その部屋には既に、名雪達やアリサ達が集まって、モニターに釘付けになっていた。
誰もが不安そうに見つめている。
「なのはちゃん、大丈夫かな・・・・・・」
俯き際になるすずかに、名雪は被さるように抱きついて、安心させるように包む。
「祐一が守ってくれるよ。なのはちゃん達も、私達も。だって祐一は・・・」
「祐一は奇跡を起こせるから」
名雪が最後まで言わないうちに、舞がすずかの肩に手を置いて言った。
祐一と深い繋がりがあるだろう名雪達は、多少の不安はあるだろうが、強い信頼を寄せている。
すずかは自分に対して、真っ直ぐな笑顔を向けてくれる名雪に、安心したのか、自然と笑みがこぼれる。
「すずかちゃんは笑ってる方が可愛いよ」
「そ、そうですか・・・・・・」
今度は別の意味で俯くすずかの顔は、真っ赤になっていた。
対艦刀を翳し、レーザー刃を発生させて構えるストライク。
そのストライクに対して、雪辱戦と言わんばかりに、ミゲルのジンが単機で突っ込む。
「そーら、落ちろぉー!」
ミゲルのジンがM69バルルス改・特火重粒子砲を構え、その引き金を引く。
大幅なビームの閃光がストライクに伸びるが、それをキラは簡単に回避行動をとる。
だが、その外れた攻撃は、コロニーを支えているシャフト、それを支えるワイヤー撃ち抜き、
ワイヤーが引き千切られると、支えを失ったシャフトが落下した。
「コロニーに当てる訳にはいかない・・・どうすりゃいいんだよ!」
避ければコロニーが傷つき、かといって、当たってやるわけにもいかない。
考えが纏まらないうちに、ジンは追撃の一撃を放つ。
このタイミングでは回避行動が間に合わない。
ストライクは小型のシールドを翳し、それを正面から受け止めようとした瞬間・・・・・・
「キラさん!」
なのはのレイジングハートがストライクの前方に回り込み、ビームの直撃を受けてしまう。
2機は閃光に飲み込まれて、その姿を消してしまう。
「やったか?」
間違いなく直撃した。
PS装甲もビームなどの光学兵器にはほとんど効果がなく、討ち取ったと思った瞬間・・・
閃光の中から対艦刀を翳したストライクが姿を現し、その一撃を繰り出すが、寸でのところでかわされる。
ミゲルはレイジングハートが盾になったので、ストライクは仕方ないと思いながら、消える閃光の方に視線を向けると、
そこにはProtectionによるフィールドで攻撃を防ぎ、まったくの無傷だった。
「なっ! どうなってるんだ・・・あの機体は?」
これまでに類を見ない防御方法に、驚きを隠せないミゲルだが、迫り来るストライクに気を取り直し、
特火重粒子砲を放つが、今度はシールドで受け止めて、尚も斬り掛かるストライク。
その様子をモニターで見ながら、呼吸を荒くしているなのは。
「こ、怖かった〜・・・・・・」
咄嗟に助けに入ったとはいえ、今思えば無謀極まりない行動に、今更ながら恐怖を感じていた。
「なのは、上!」
「え? ええ〜!?」
「貰ったぁぁーー!!」
留美のジンHが重斬刀を翳して、上方から斬り掛かってきた。
なのはは咄嗟にレバーを引き、紙一重でその斬撃をかわして距離を取ろうとするが、ジンHはすぐさまに反転、
返し刃でレイジングハートを狙うが、その刃をライフルの銃身で受け止める。
「なっ!?」
「巧い!」
「え〜い!」
驚く留美、関心するユーノ、必死のなのはは、そのまま機体の力任せに、ジンHを押し飛ばす。
その様子を見ていたカケルは、目の前のイクシードをなんとかしたいと思うが、それができなかった。
互いにビームサーベルを抜き、交錯するごとにその刃を交え、打ち掛かる。
ぶつかり合うビームサーベルの光がスパークし、2機はゼロ距離でせめぎ合う。
「このパイロット・・・・・・」
「気のせいじゃ・・・ない!」
イクシードの自分と互角に戦える相手に驚く瑞佳と、相手が徐々に強くなる事を確信するカケル。
カケルはフリューゲルを一度退かせて距離を置き、機動性を活かして突撃と離脱を繰り返す戦法をとり、
何度もその光刃を交えながら周囲に気を配っている。
そして、祐一のガイストは、真っ直ぐにクラウドとイージスを目指していた。
「浩平!」
「祐一か・・・」
2機はビームサーベルを抜き、正面からぶつかり合う。
せめぎ合っているガイストの後ろに、イージスが回りこむ。
「アスラン、こいつは俺がやる!」
「だが・・・!」
「おまえはストライクを・・・おまえ自身で確かめてこい!」
浩平の言いたい事はわかった。
アスランはそれを確かめる為にここまで来たのだ。
「・・・わかった」
ガイストに背を向けて、ストライクに向かうイージス。
それを見送ると、浩平は目の前の相手に集中できることになった。
2機は腕を強く前に出して、その勢いを利用して互いに距離を取る。
そして、アスランのイージスがストライクをモニターに捕らえると、ミゲルから通信が入った。
「チィッ! 素早い・・・アスラン、回り込め!」
ミゲルの指示で、ストライクを追うイージス。
ストライクのモニターにはイージスの接近する映像が映り、キラはモルゲンレーテの工場でのことを思い出した。
そして、それはアスランも同じであった。
「あのMSは・・・・・・」
「キラ! キミなのか!?」
アスランは苦悩しながらも、ザフトの軍人として、ストライクをかく乱する。
その様子をモニターで見ていたカケルだが、こちらもイクシードの相手だけで精一杯で、とても援護に行けそうもない。
ビームライフルならばこの位置からでも狙えるが、外してシャフトやワイヤーに当たった場合、
コロニーの崩壊を招いてしまう恐れがあり、今まで使用しなかったが、接近戦だけではジリ貧でしかない。
カケルは急ぎモニターに武装を表示して、この戦況でも使える武装を探す。
「バルカン・・・ダメ、超高インパルスビーム砲は問題外・・・これなら!」
フリューゲルは肩に付属されている装備を掴み、そのまま引き抜くと、先端からビーム場が発生した。
それを勢いよくイクシードに向かって投げつけると、回転しながらビームブーメランとなって飛び行く。
イクシードはそれを回避するが、それこそがカケルの狙いで、光刃はそのままミゲルのジンに向かった。
「ミゲルくん!」
瑞佳の通信と、警報音が同時にジンのコクピットに響き、ミゲルは近づいてくるビームブーメランを避ける。
だが、ビームブーメランはその名のとおり、弧を描いて戻ってくると、ジンの脚部を斬り裂いた。
「なにっ!?」
バランスを失ったミゲルのジンは、その姿勢を維持する事ができず、下方に向かって落下していく。
そして、その先には、なのはのレイジングハートと、留美のジンHがせめぎ合っている場所・・・
それもレイジングハートの真上から、真っ直ぐに目掛けてるみたいに落ちてきた。
「なのは! 上!」
「え? わあっ!」
驚いたなのはは、なんと、レイジングハートのライフルの銃身で、ジンの頭部を殴り飛ばし、
胴体から吹き飛ばされた頭部が、みごとに留美のジンHに直撃した。
あまりにマヌケな攻撃を受けた事により、留美の怒りのボルテージが急上昇した。
「やってくれたわねぇぇーーー!!」
勢い良く突っ込んでくるジンの振り下ろされた重斬刀を辛うじてかわし、なのはの脳裏に一瞬、
先程の戦闘でのフリューゲルとシグーの交戦の瞬間が浮かび、とっさの判断でビームサーベルを引き抜く。
ジンHの次なる攻撃を鮮やかにかわし、下から振り上げた光刃のきらめきが、左腕を削ぎ取った。
「なっ!?」
油断していたわけではなかったが、予想を超えた早業に、一瞬留美は相手の動きを読みきれなかった。
当の本人でさえ、イメージこそはあったが、まさか本当にやれるとは思っていなかった。
「で、できちゃった・・・・・・」
(凄い反応だ・・・やっぱり・・・・・・)
ユーノはなのはにあることを確信する。
ジンHのコクピットでは、留美が悔しそうにレイジングハートを睨み、仕方なしに退却していく。
2機のジンが戦闘不能になったが、ガイスト VS クラウド、ストライク VS イージス、 フリューゲル VS イクシード、
この構造が出来上がっているため、残り全てのジンがアークエンジェルに攻撃を集中しているので、
辛うじて1機のジンを撃墜したようだが、大型ミサイルが発射されて、シャフトに命中する。
それさえも目に入ってないように、ストライクとイージスのコクピットでは、どうしようもない気持ちが芽生え、
それが怒りへと変わると、感情に任せて言葉を発する。
「なぜ・・・なぜキミが!?」
「おまえこそ! どうしてそんなモノに乗っている!?」
同じ様に、祐一と浩平も・・・
「祐一、なんで俺の忠告を聞かなかった!?」
「あんなので納得できるか!? もっとちゃんと話を・・・・・・」
―――― なぜザフトに!? ――――
―――― なぜコーディネイターなのに!? ――――
キラと祐一、アスランと浩平、互いの気持ちは交わる事はなく、コロニーの崩壊が始まった。
轟音を上げながらセンターシャフトが分解し、コロニーの崩壊が始まる。
非常用のシェルターも次々に、救命ポットとしてコロニーから射出されていく。
ヴェサリウスのモニターに映し出されるその光景を見て、アデスは驚き立ち上がって呟く。
「隊長・・・・・・」
だが、クルーゼは反応を示さず、ただ無言でその様を見つめるだけだった。
コロニーが分解し、中の酸素が宇宙へと流れ、コロニー内に乱気流が巻き起こる。
戦闘を行っていた機体は安定を失い、気流に巻き込まれながらコロニー外に吸い込まれていく。
大きな亀裂がストライクの後ろに大きな穴を空け、その穴に向かってストライクは吸い寄せられていく。
「ああ・・・ああーーーー!!」
「キラ!!」
それを追おうとしたアスランだが、巻き上げられて大地により、その進路を防がれてしまう。
気流に流されたストライクを運良くガイストが受け止めるが、そこに大きな大地の塊が飛んできた。
「いっ!」
このタイミングでの回避は間に合わない。
アグニのように、強力な火力でもあれば破壊も可能かもしれないが、両機とも火力はそれほど強くなく、
装甲強度は非常に高いのだが、その衝撃でパイロットまで無事でいられる保障はない。
2人思わず眼を閉じて衝撃に備えたが、2機を襲ったのは、塊の衝突による衝撃ではなかった。
そう、2機に激突するはずだった塊は、フリューゲルとレイジングハートの砲撃により砕かれていたのだ。
その反動で機体が流され、2機はそのままコロニーの外へと弾き出されていった。
「ああ・・・祐兄! キラさん!」
「なのは、追って!」
「う、うん・・・・・・って、わあぁぁーーーん」
フリューゲル、レイジングハートも次々に気流に飲み込まれ、コロニーの外に弾き飛ばされていく。
偽りの平和は、ヘリオポリス崩壊をもって終わりを告げた。
その先に待つのは・・・はたして・・・・・・・・・