| 機動戦ガンダムSEED LYRICAL |
『フリューゲル』のシートに座るカケルと、『レイジングハート』のシートに座るなのは。
2人は大人用の大きなシートに座ったり、それぞれにシステムを立ち上げる。
ユーノがなのはの肩に乗り、首にしていた紅い玉をコンソールにある窪みにはめ込むと・・・・・・
<stand by ready. set up.>
システム化された音声がコクピットに響くと、計器類に次々と光が灯り、
自動的にOSの設定を高速で書き換えていくと、シートなどもなのはに最適なものへと調整された。
「え? え? これってどうなったの?」
「レイジングハートにはその名と同じ、特別なシステムが内臓されてあります。パイロットを登録し、
パイロットであるあなたと情報をリンクすることで、常に最適な判断を導き出し、共に成長していく。
言わばパートナー的な役割を果たすシステムで、これがそのコアになっています」
「それって、私がこの子のパートナーになったってこと?」
「うん。これでもう、この機体はキミにしか動かせない」
「え・・・ええ〜〜〜〜〜!?」
なのはは思わず叫んでしまった。
登録式で登録されて、自分しか動かせないとなると、後で非常にアレになるかもしれない。
そんななのはの現在の心境など知らず、カケルはシステムを立ち上げ、OSを確認する。
「・・・まあ、なんとかなるかな・・・・・・」
機動兵器相手の戦闘などは無理そうだが、ここから出るくらいはできそうだ。
問題としては、コロニー内部で暴れているザフトのMSだが、戦う気はまったくない。
降参してMSを渡せば、子供なので殺される事はないだろうと、その程度の打算だが、
最悪の場合、この状況での戦闘すらも考えていた。
とりあえず、まずはなのはに通信をしてみてから考えることにしよう。
「高町さん、聞こえる?」
「あ、神威くん、聞こえるよ」
両機のモニターに相手の姿が映り、とりあえず確認できたことで、それなりに安心感を持ち、
周囲の様子を一見して確認すると、大きなゲートらしきものを見つける。
「とりあえずここから出よう。ユーノくん、あのゲートはどこに通じてるの?」
「一応地上に繋がってるけど、パスかIDがないと開かないんだ。僕はほら・・・こんなだし・・・・・・」
確かにフェレットがそんなものを持っているとは思わない。
まあこのサイズだし、入ろうと思えば通気口を経由してどこでも行けるのだろう。
「どうしよう。他に出口はないのかな・・・・・・」
「う〜ん・・・こうしよう」
「え?」
フリューゲルをゲートの扉の前まで歩かせると、左腰部に装着されている2つの白い柄のうち、
1つを取り出して構えると、ビーム光の刃を発生させ、扉に向かって振り下ろす。
高出力のビームは鋼鉄の扉を簡単に斬り裂き、切断面からは溶けた金属が熱を放っていた。
更に扉に向かって思いっきり拳を突き出させると、扉は音を立てて弾け飛び、
塞がれていた扉を排除すると、通路を確認して振り返る。
「これでよし。行こうか」
「う、うん・・・」
「随分と行動力のある子だね」
「普段はおとなしいくらいなんだけ・・・・・・」
2機は殴り飛ばした扉の後を通り、少し広い通路を進んでいくのだった。
「シートの後に!」
マリューが指示して、MSのシステムの立ち上げを始めた。
「せめてこの機体だけでも・・・私にだって動かすくらいなら!」
まだ出血が止まらない腕をレバーに乗せ、左手で起動ボタンを押す。
計器類に光が灯り、駆動音が徐々に高まり、モニターに明かりが灯ると、外の景色を映し出す。
そんな中、キラは横のモニターに映るもう1機のMSを見やりながら考えていた。
(アスラン・・・アスランがザフトに・・・そんな、まさか・・・・・・)
優しいアスランは戦争が大嫌いで、平気で人を傷つけるような人ではなかった。
だから銃で人を撃ち、鬼気迫る表情でナイフを振り上げた相手が、アスランだとは思いたくない。
次々と起こるできごとに頭がついていけず、呆然としているキラの眼に、
モニターに浮かび上がった文字列が浮かび上がってくる。
「ガン・・・ダム・・・・・・?」
OSの赤く輝く頭文字を読み上げてキラはそう呟く。
ぴくりと指が動き、低いエンジン音を唸り上げさせ、巨大な四肢がぎくしゃくと動き始めた。
機体を固定していたボルトが弾け飛び、爆炎の中を立ち上がる。
鋼色の装甲が炎に照り映り、聳え立つその威容を朱く照らし出した。
祐一の乗り込んだ『ガイスト』と、浩平の乗り込んだ『クラウド』
浩平はシステムを立ち上げると、搭載されていたOSを見て舌打ちした。
「チッ・・・これじゃダメだ」
基本的にできてはいるが、どうやらナチュラル用みたいで、コーディネイターの浩平には、
まったくもって不足で、少し修正改良を加えておく必要がある。
浩平は祐一のガイストを無視して、OSのアップデートを開始した。
祐一はそんなことなど知る由もなく、モニター越しに動かない浩平のクラウドを見ながら、
機体のマニュアルを表示して、基本動作などを確認する。
「シフト・・・レバー・・・なるほど、これならなんとかなるか・・・・・・」
普通ならシステムチェックからするのだろうが、祐一ははっきり言って、そのテの作業は苦手である。
説明書を見たら即行か、見ずに即行主義で、今回は珍しく前者だった。
「浩平・・・・・・!」
祐一はガイストをクラウドに向かって突っ込ませて、右腕で掴もうとした瞬間、
浩平のアップデートが完了して、その腕をヒラリとかわすと、足を払って倒そうとしたが、
祐一は巧みにシフトやレバーを操作して、ガイストは床に腕を立てて、そのまま前宙して踏ん張る。
そのとき、警報が再度流れて、その内容は変化していた。
『ヘリオポリス全土にレベル8の避難命令が発令されました。住民は速やかに最寄の退避シェルターに・・・』
どうやら状況はかなりヤバイ方向に進行しているようだ。
浩平が普通に話を聞いてくれない以上、力ずくで押さえ込むしかないのだが、
機体の制御用のOSが既に天地ほどの差があり、明らかに反応に大きな差を実感した。
武装を使えばあるいはとも思うが、マニュアルでは装備されている武装はビーム兵器、
威力が大きいことなどは子供でもわかり、ヘタをすれば死すらも容易に予測できる。
だからこそ、双方ともにビーム兵器がありながらも使おうとはしなかったのだ。
「なら!」
ガイストは盾を前に翳して、ブースター全開で突っ込む。
クラウドはそれを大きく飛び退いて避けると、そのまま天井をぶち破って外に出て行った。
「逃がすか!」
ペダルを踏んでガイストを踏ん張らせると、浩平のクラウドを追って空いた穴に飛び込む。
飛び出した瞬間に、工場地一帯ごと格納庫は爆発して炎上した。
祐一が周辺の様子を確認すると、レーダーに3つの熱源反応があった。
[ZGMF-1017] [GAT-X105] [TMF-X04]
「確かこっちはザフト製、こっちはどこだ? これはコイツのと同じ形式番号だから、浩平のだな。
あいつ、もうこんなに移動したのか? 急いで追いつかないと・・・・・・」
浩平の機体の反応が、2機の別反応がある場所に向かって、真っ直ぐに高速移動していた。
慌ててそれを追おうとしたが、不完全なOSでは姿勢制御もままならなく、機体が不安定になり、
ただ浮いているのにもバランスが取れずに、コクピットで悪戦苦闘する祐一。
「クソッ! ちゃんと動けよ!」
なんとかバランスを取り、浩平たちの反応のあるポイントに向かう。
だが、やっぱり姿勢が不安定で、浩平のクラウドに比べて全然速度が出ていなかった。
ストライクのコクピットに映し出されているモニターには、外部の様々な状況が映し出されており、
見慣れたヘリオポリスは、見るも無残に破壊されていた。
更に画面の隅に動く人影を見て、キラが声を上げて身を乗り出した。
「サイ!? トール・・・ミリアリア・・・名雪や香里、川澄先輩に倉田先輩・・・あの子達は・・・・・・」
瓦礫の合間を縫うようにして走っていたのは、ゼミの友達や先輩に、今日見学に来てくれた学生達だった。
そして、頭上からは蒼いMSがイージスのもとに降りてきた。
「待たせたな、アスラン」
「浩平、そのMSは?」
「あとで説明する。それより、あっちにはラスティが乗ってるのか?」
モニターに映っているアスランは、辛そうな表情で答えた。
「ラスティは失敗だ。向こうの機体には、地球軍の士官が乗っている」
「ラスティが! そうか・・・・・・」
アスランの表情が全てを物語っていた。
パイロットの中でも、1番陽気で調子に乗りやすいヤツだったが、共にいては楽しく退屈もしないで、
よくみんなの仲裁役を買って出た彼は、もういない。
その通信は、近くでパーツや工場を破壊していたザフト軍のジンにも届いており、
1機のノーマルタイプなジンと、2機の漆黒なジン・ハイマニューバが接近してきた。
モニターにはミゲル、瑞佳、留美の姿が映り、それぞれに怒りや悲しみの表情を浮かべていた。
「アスラン、浩平、あの機体は俺が捕獲する! おまえ達は先に離脱しろ!」
そう告げると、ミゲルはジンをストライクに向かわせる。
ジンの放った76mm重突撃機銃により、ようやくバランスを保っていたストライクが大きく揺れる。
マリューは怪我をおして、懸命にレバーやスロットルを調整しているが、
MSの動きはぎこちなく、安定感がまったくない。
身を乗り出していたキラは、振動によってバランスを崩し、座っているマリューの前に倒れこんだ。
「下がってなさい! 死にたいの!?」
「す、すみません・・・・・・」
何も固定されていないキラにとって、この振動でおとなしくしているのは至難だ。
慌てて身を起こしたとたん、ジンが重斬刀を振りかぶって迫ってきた。
「そんな動きで!」
「クッ!」
マリューは舌打ちしながら、咄嗟にあるスイッチを押す。
すると、ストライクの鋼色の装甲が鮮やかなカラーリングに変色した。
そして、両腕をクロスさせて、ジンの重斬刀を受け止めた。
「なに!?」
これにミゲルだけでなく、浩平達も驚いた。
「どうなってるの、あのMSの装甲・・・・・・」
「ミゲル、戻って! あの装甲・・・普通じゃないわよ」
留美の忠告に従って、ミゲルはジンをストライクから離して、イージスの隣に着地する。
同じXナンバーのOSを解析していたアスランが通信を送る。
「こいつらはフェイズシフトの装甲を持ってるんだ。展開されたら、ジンのサーベルなど通用しない!」
フェイズシフト・・・・・・位相転移システムは以前から理論的には開発されていた。
だが、それを兵器に採用したのはこのXナンバーが初めてだ。一定の電流を流すと位相転移が起こり、
装甲が硬質化してミサイルなどの実体弾をはじめ、あらゆる物理攻撃を無効化する強度を持つようになる。
「ミゲル、一度退くんだ。この2機を持ち帰り、それから対策を・・・」
「おまえ達は先に離脱しろ! こいつは俺1人でやる!」
「・・・わかった。みんな、ここはミゲルに任せて引き揚げるぞ」
「で、でも・・・」
不安そうに言う瑞佳。
確かに性能だけで言うならば、向こうの方が上だろう。
ミゲルの乗っているのは普通のジンで、専用機でもなければ、瑞佳や留美のようにハイマニューバでもないのだ。
「やらせてやれ。ミゲルはラスティの仇をとりたいんだろ」
「・・・うん、わかった。それじゃミゲルくん、機体を交換しよう」
「え?」
「お、おい・・・」
いきなりの瑞佳の提案には、ミゲルを含めて全員が驚く。
「もともと私とミゲルくんのOSは近いものがあったし、こっちの方が性能がいいよ」
「・・・わかった。恩に着る」
ミゲルは言われたとおりに、コクピットのハッチを開くと、同じく出てきた瑞佳と入れ替わりに乗り込む。
瑞佳もミゲルが乗っていたジンに乗り込むと、2機のハッチが同時に閉じた。
そして、ミゲルのジン・ハイマニューバを残して、全機その場から飛び立った。
その光景をなす術もなく見つめるキラとマリューに、機体内に警報音が鳴り、
残った漆黒のジン・ハイマニューバがストライクに再度突っ込んでいく。
「邪魔よ!」
マリューがトリガーのボタンを押すと、ストライクの頭部にマウントされた75mm対空バルカン砲
イーゲルシュテルンが発射されるが、まるで当たらない。
この時になって、キラはようやく気づいた。
(この機体・・・もしかして・・・・・・!?)
バルカンの弾丸が逸れたのは、照準修正が不完全だと悟るが、再び衝撃を受けてその考えが消える。
「ふん! いくら装甲がよかろうと! ・・・そんな動きで!!」
何度も刃を叩きつけられて、後方の建物にめり込むようにして動きを止められる。
「生意気なんだよ! ナチュラルがMSなど!!」
ジンHが続けざまに、コクピット目掛けて重斬刀を振り下ろしてきた。
マリューはそれを避けようと、懸命にペダルやレバーを操作する。
そのとき、キラはコクピットに映るモニターにトール達の姿を見て、
キラは飛びつくようにようにしてレバーを引くと、それに連動してストライクは身を沈め、
ジンHの攻撃を潜り抜けて、そのまま体当たりをする。
流石にその反撃は予想外だったのか、ジンHは態勢を崩して倒れ込む。
「きみ・・・!?」
「ここにはまだ人がいるんです! こんなものに乗ってるんだったら、何とかしてくださいよ!」
キラはマリューを咎めるように叫んだ。
そして、すぐに計器をチャックして、OSの調整画面を呼び出す。
「無茶苦茶だ! こんなOSで、これだけの機体を動かそうだなんて」
「まだ全て終わってないのよ! しかたないでしょ」
「どいてください!」
キラは立ち上がろうとするジンHを見つめながら、マリューに叫んだ。
「はやく!」
その声に驚きながらも、マリューは腰を浮かせてどくと、キラはすかさずシートに座る。
シートの横からプログラム入力用のキーボードを引き出し、素早くキーを叩き出す。
プログラム画面を見つつも、ジンHに対する警戒も怠らない。
「キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定・・・・・・ちっ!
なら擬似皮質の分子イオンに制御モジュールを直結・・・・・・」
ぶつぶつと呟きながら、凄まじい勢いでMSのOSを書き換えていく。
だが、それが終わるのを待っているほど相手はあまくなく、重斬刀を振り上げては、再度迫ってくる。
プログラム画面を睨みつつ、キラは片手でトリガーを持ち、頭部からバルカンが発射され、
今度はジンの装甲に命中して、押し退けるように腕をはね返した。
「なに!?」
「ニュートラルリンゲージ・ネットワーク、再構築・・・・・・メタ運動関数パラメータ更新、
フィードフォワード制御再起動、伝達関数、コリオリ偏差修正、 運動ルーチン接続・・・
システムオンライン、ブートストラップ起動、全システム起動・・・・・・!」
OSを書き換えが終わり、ストライクのカメラアイに新たに光が宿る。
キラはペダルを踏み、ストライクをジャンプさせて鉱山部を目指す。
「なんなんだアイツ・・・急に動きが!」
相手の突然の動きの変貌に途惑いながらも、その後を追ってジンHもジャンプする。
「武器は・・・アーマーシュナイダー・・・・・・これだけか!?」
毒つきながらボタンを押すと、機体の腰部両方から巨大なナイフが射出されて、
それを両手で掴んで構えると、銃弾を回避しながら突っ込む。
「くそッ! ちょろちょろと・・・・・・」
「こんなところで・・・」
ストライクはブースターを全開にして加速すると、銃撃の中を掻い潜り、ジンHに迫った。
「やめろおぉぉーーーー!!」
ストライクの振り下ろした刃は、ジンHの持っていた27mm機甲突撃銃を斬り裂いた。
慌てて飛び退こうとしたジンHに、続けざまに左のアーマーシュナイダーを振り上げると、
その刃先は胸部の装甲を削り、その裂け目からはコクピットの内が見て取れた。
「クッ! あのとき機体を交換していなければ、やられていた・・・だが、機動性ならこっちだって!!」
ジンよりも機動力が大幅に上回っているハイマニューバ。
重斬刀を構え、小振りで隙を作ろうと手数で攻めるが、キラは最小の動作でそれを捌く。
横に払ったアーマーシュナイダーの刃を、ジンHは大きく飛び退くことでかわし、
思ってか思わずか、ジンHはそのまま再び工場区の方まで飛んで行こうとしていた。
「ダメだ! そっちは・・・・・・」
キラも慌ててジンHの後を追う。
このタイミングでは間に合わない。
そう思ったとき、新たな機影が飛来してきて、ジンHにぶつかって弾き飛ばしてしまった。
「な、なんだ!?」
「あれは! まさか・・・X000! なぜあれが・・・誰が操縦してるの!?」
ぶつけられたミゲルだけでなく、ストライクのコクピットのキラとマリューも驚きを隠せない。
空中で静止したその影は、ストライクやイージスやクラウドに酷似した機体で、祐一のガイストだ。
祐一もコクピットでモニター越しに、ストライクとジンHを交互に見つめる。
一通り一見すると、浩平のクラウドがいないことに気づき、祐一は額に一筋の汗を浮かべる。
「浩平はいない。それに、もしかして・・・これってヤバイのか・・・・・・ん? あれは・・・・・・」
祐一は瓦礫の合間にいる名雪達を見つけると、みんなの前に行こうとするが、
同時にジンHも重斬刀を構えて、ストライクではなく、ガイストに飛び掛ってきた。
「まだMSが残っていたのか!!」
ジンHが振り下ろした重斬刀をシールドで受けとめると、祐一は相手に向かって叫ぶ。
「邪魔するなあぁぁーーー!!」
受け止めたシールドで、そのままジンHを弾き飛ばす。
動きこそぎこちないが、パワーなら明らかにジンHを上回っており、
祐一は追い討ちを掛けるように、バーニア全開で突っ込み、体当たりして地表に向かって弾き飛ばす。
「おお〜。だいぶコツがわかって・・・って、しまった〜!?」
最初に浩平に簡単にあしらわれたときと違い、無骨ながら思いどおりに機体を流せたことに喜ぶが、
よりにもよって、弾き飛ばした先に名雪達がいて、その近くでジンHがバーニアを噴かして減速すると、
名雪達の近くに着地して、今度は27mm機甲突撃銃を構えて発砲する。
しかも、ガイストとストライクの両機に向かって交互に発砲している。
銃から排出された弾頭が地面に落ちて、その反動で幾つかが名雪達の近くに転がり込んで、
みんな怯えながら岩陰に身を隠して、カズイなどにいたっては泣いていたりもしている。
「もうやめろ! こんなこと!」
「民間人もお構いなしかあぁぁーーー!!」
ストライクがアーマーシュナイダーを構えて突っ込むと同時に、ガイストも急降下する。
ガイストはジンHの攻撃を受けながらも、まったく怯まずに至近距離まで接近すると、
肩部の柄を掴むと、ビームサーベルを引き抜いて、そのまま勢いよく振り下ろす。
「チィ! そんな動きでやれると・・・・・・」
加速こそ鋭いものの、予備動作から動きが鈍かったので、ジンHはそれをサイドステップで軽くかわすが、
すかさずストライクがジンHの首筋にアーマーシュナイダーを突き刺した。
激しく火花が散り、ジンHのコックピットには異常を告げるシグナルが点灯する。
「なにぃ!? ハイドロ応答無し・・・多元駆動システム停止!? ええいっ!」
ミゲルは舌打ちしながらシート横のレバーを引き、コクピット部分に生じた亀裂から身を乗り出し、
そのまま合間から飛び出すと、上方に向かって飛び去っていった。
その行為の意味するところに、真っ先にマリューが気づいて叫ぶ。
「いけない! そのジンから離れて!!」
キラは言われたとおりに、ストライクをジンHから離れようとするが、少し遅かった。
ジンHはその場で爆発して、何も気づいていなかった祐一のガイストと同様に、至近距離で爆発に巻き込まれて、
その激しい衝撃に呑みこまれながら、2機が逆方向に転倒した。
シートに座っていなかったマリューは、コクピット内で体をぶつけ、気を失ってしまう。
祐一とキラはシートに座っていたので、強い衝撃はあったものの、ちょっとクラクラするくらいだ。
ガイストとストライクは同時に立ち上がり、それぞれに臨戦態勢を取っている。
「 「・・・・・・・・・」 」
祐一もキラも、互いに友達が乗っている機体だとは気づかずに、敵かどうかと警戒している。
ストライクはさっき吹き飛んだときに、唯一の武器であるアーマーシュナイダーを失っており、
残されたのは頭部バルカンだけで、まともに戦闘するには心細すぎる。
ガイストに至ってはOSが不完全で、さっきの攻撃も動きが鈍かったうえに、狙いも甘かった。
どちらも自分が不利と思っているため、まったく動けない。
そのとき、鉱山部のほうから一筋の閃光と、小さな爆発が起こった。
「なんだ!?」
「あれは・・・?」
2人が爆発音のした方を見ると、そこには煙が立ち昇っており、そこから2つの機影が現れた。
祐一もキラも新たに現れた謎の相手に対して、緊張と注意を促すのだった。
そして、現れた2機、フリューゲルとレイジングハートのコクピットでは・・・・・・
「やっと出られたよ〜」
「ここって、工場区から少し離れた鉱山部みたいだけど、こんなところに繋がってたんだ」
「2人とも、あれを見て!」
ユーノが言うのを聞いて、カケルとなのははモニター越しに2機のMSを見る。
そして、モニターには更に、近くの物陰に隠れている人達を見つけて"ハッ"とする。
「なゆ姉・・・それに倉田さん達も、どうして?」
「すずかちゃん! アリサちゃん!」
「あっ!? 高町さん!?」
なのはは友達の姿を目にして、レイジングハートをその場に向かって飛び立たせた。
レイジングハートに搭載されているシステムのおかげで、OSは完璧に調整されているので、
スムーズに加速することができ、不完全なOSのフリューゲルでは、完全に加速負けして追いつけない。
なのはは友達のもとに早く駆け寄りたいだけなのだが、MSに乗っているので、祐一達にはそうは見えない。
完全に名雪達を襲おうとしているようにしか見えておらず、ガイストがレイジングハートの正面に出る。
「やらせるか!」
「きゃっ!?」
ガイストがビームサーベルを構えて、レイジングハートに対して斬り掛かった。
動きこそ鈍いが、祐一が操縦に少し慣れ始めたことと、なのはがまったくのド素人だったことにより、
その光刃は確実にレイジングハートを捉えていたが、ぶつかりそうになった瞬間・・・・・・
<Protection.>
レイジングハートの前方に光の幕のような力場が発生して、その光刃を受け止めた。
「なに!?」
光の幕により、ガイストのビームサーベルを防がれ驚く祐一。
ガイストの動きが一瞬停止し、そこにシールドを構えたままフリューゲルが突っ込んできて、
シールドをガイストに叩きつけ、僅かに間合いが開いたところに拳を叩き込む。
吹き飛んだガイストは、そのままストライクに激突する。
「大丈夫、高町さん?」
「うん。この子が、守ってくれたみたいだから」
フリューゲルがレイジングハートを庇うようにして前方に出る。
ガイストとストライクも立ち上がり、急いで離れて間合いをとる。
「なんとかしてこの場所から離れないと・・・・・・」
「ここでやり合ったら、名雪達に被害が出る・・・・・・」
「神威くん、どうしよう。このままじゃあそこのみんなが・・・・・・」
「話ができれば・・・こうなったら・・・・・・」
カケルは意を決してコクピットのハッチを開けた。
「なんだ?」
「あれは!?」
祐一もキラも、突如開いたフリューゲルのハッチを警戒しながら様子を見ていると、
そこから出てきたカケルの姿を見て、2人は狐に摘まれたかの如く、信じられないものを見たという眼をする。
カケルは開かれたハッチの上に立ち、その両手を上げて動かない。
祐一は複雑な心境のままにハッチを開き、同じ様に身を出して叫ぶ。
「そんなところで何をしてるんだカケル!?」
「え? ゆ、祐兄?」
予想外な相手が出てきたことに、カケルもさっきの祐一達同様に混乱する。
「あっちには祐一が乗ってた?」
「なのは、どうやら2人は知り合いみたいだ」
「じゃあ、私も出て話してみる」
混乱しながらハッチを開けるキラと、決心してハッチを開けるなのは。
4機のガンダムの開かれたハッチの上には、4人の少年少女が向かい合う。
こんな状況なので、姿を晒したのはいいが、どう話を切り出していいかわからない。
少し短い沈黙が流れ、なのはが思ったことを口にする。
「あの〜、とりあえずみんなのところに行きませんか?」
「・・・・・・そうだな」
ひとまず全員シートに座りなおして、少し離れた場所に4機を置き、ハッチから身を出して降りると、
それぞれで顔を見合わせて少し複雑そうな表情でいると、こちらに向かって走って来る人影が見えた。
みんな心配そうな顔して走ってきているのに対して、なのはは友達に笑顔で手を振っていた。
それを見て、カケルも祐一もキラも、心の中で"かなわないな"とか思っていた。
ヘリオポリスの外の宙域では、いまだ戦闘が繰り広げられていた。
出撃したメビウスは、既に全機墜とされ、ムウ、ハヤテ、タツの駆るメビウス・ゼロが3機奮戦していたが、
1機のジンの攻撃が、輸送船のエンジン部を直撃して破壊する。
艦はコントロールを失い、爆発によって生じた慣性に従って、コロニー外壁へと衝突コースを取った。
外壁にぶつかり、爆発する輸送船。
「ちぃ、この戦力差ではどうにもならんか!」
「フラガ大尉!」
ハヤテのメビウス・ゼロがガンバレル・ユニットを展開して、ムウ機に接近したジンを攻撃する。
それによってジンの右腕が砕け、ジンは離脱する。
最後の1機なので、3機で追撃を掛けようとしたとき、レーダーに新たな反応があった。
モニターに映るは4機のMSだが、2機のジンタイプの他のMSは、ムウ達には見覚えはない。
だが、メビウス・ゼロのコクピットには、1機のMSの機体形式ナンバーが表示される。
「X303! 奪われたのか!?」
「もう1機は・・・一致するものがありません。ザフトの新型でしょうか?」
「ああ。あるいはアルカディアのMSかもしれんが・・・・・・」
それにしては2機の形状があまりにも酷似している。
ムウ達はイージスとクラウド、2機のジンタイプがヴェサリウスに向かうのを唇を噛み締めながら、
悔しそうな表情をしながら見詰めるしかなかった。
戦闘の状況はヴェサリウスにも伝わってる。
「オロール機被弾、緊急帰投! 消火班Bデッキへ。コロニー付近のジン部隊、全滅しました」
「オロールが被弾だと? こんな戦闘で? それに・・・全滅!?」
アデスが信じられないといった感じで呟く。
それを聞いて、宙を見るように目をさまよわせていたクルーゼは"ふっ"と笑う。
「どうやら、いささかうるさいハエが飛んでいるようだな」
「は?」
意味がわからずに聞き返すアデス。
そこに、更に別の報告が入ってくる。
「ミゲル・アイマンよりレーザービーコンを受信。エマージェンシーです!」
この報告には、流石のクルーゼも表情を変える。
クルーゼはなめらかな動きで立ち上がると、アデスに告げる。
「ミゲルが機体を失うほどに動いているとなれば・・・最後の1機、このままにしてはおけんな。
うるさいハエのこともある。私もシグーで出る!」
シャフトの中で、ナタル・バジルールは意識を取り戻した。
あたりは薄く煙が立ちこめ、爆発で吹き飛ばされた瓦礫や破片に、血塗れの死体が浮かんでいる。
あまりの惨状に、普段は冷静なナタルでさえ、平常を取り戻すのに時間が掛かった。
「艦は・・・アークエンジェルは・・・・・・?」
ナタルは司令ブースへと飛び込み、身をすくませる。
爆発によって正面のガラスは砕け散り、僅かに点灯する非常灯のみが薄暗い部屋を照らしていた。
散らばる瓦礫の間には、ブースにいた士官や兵士達の制服が無残に漂い、その前方に艦長の遺体を見つける。
「誰か! 誰か残っている者はいないのか!?」
悲痛な叫びを上げ、膝に力が抜けるのを感じた。
「バジルール少尉! ご無事でしたか?」
ふいに背後から聞こえた声に振り返ると、ノイマン曹長が通路からブースをのぞき込んでいた。
「これで全機か・・・だが・・・まだ何か・・・これは!?」
そして、ヴェサリウスから発進する1機のMSシグーをモニターに捉える。
シグーのコクピットには、ラウ・ル・クルーゼの姿があった。
「私がお前を感じるように、お前も私を感じるのか・・・・・・? 不幸な宿縁だな、ムウ=ラ=フラガ・・・・・・」
その口調は滴るような憎悪と、奇妙な笑みを浮かべると共に、ヘリオポリスに向かうのだった。
戦闘後、ヘリオポリスには生々しいまでの戦火の傷跡が残っている。
未だに非常警報は鳴り止まず、工場区から少し離れた公園には、4機のMSが鎮座していた。
フリューゲル、ガイスト、レイジングハート、そして、フェイズシフトの解けたストライクだ。
ストライクのコクピットで負傷していたマリューを、サイやトール達が運び出して、
ミリアリアや香里が、持っていた携帯医療セットで応急処置を施す。
そして、MSに乗っていたカケルとなのはは、親族と友達に絞られていた。
「カケル、なんでMSになんか乗ってたんだ?」
「なのはも、私達がどれだけ心配したと思ってるの?」
「 「あは・・・あははは・・・・・・」 」
「笑ってもダメだよカケルちゃん。ちゃ〜んとお姉ちゃんの眼を見て話すんだお〜」
どうして話したらよいものかと考えながら、隣で同じ様に正座しているなのはと視線を合わせて、
2人とも苦笑いを浮かべると、観念して話すことにした。
もっとも、特に疚しいことがあったわけでもなく、成り行き的だったので、そんなに難しい話ではない。
とりあえず、2人はユーノが喋れる事を除き、一通りの経緯を説明した。
そのユーノはというと、佐祐理と舞が可愛がっていた。
「・・・と、いうわけなんだけど」
「なるほど。それにしても、何で中立コロニーに・・・いや、中立コロニーだからか?」
「なにが?」
「キラが乗っていた地球軍のMSに、俺やカケル達の何処のかもわからないMS。
偶然かもしれないが、どちらも1つのキーワード『ガンダム』で繋がってるんだよ。それに・・・・・・」
形状も同じコンセプトと思えるほどに、見事にほとんど類似しているし、OSがGUNDAMと記されていて、
カケルやなのはのは、渡した人物がガンダムと呼んでいたらしいし、それに浩平や祐一の機体、
形式番号からしてカケルやなのはの機体と同系なのだろうが、明らかに別の場所に保持されていた。
しかも、浩平はそれがあることを知っていた様子だった。
「ザフトは明らかにこれらのMSの存在を知っていたみたいだし、中立だからこそ情報が漏れたのかも・・・
どちらにもいい顔をして知らないふりをしていれば、自分は安全だからな」
「う〜ん・・・それじゃあ、ザフトの人達はあのMSを奪う為に襲ってきたんですか?」
「たぶんな」
すずかの問いに真面目に答える祐一。
「ちょっと、それじゃこのMSを奪うために、またザフトのMSが来るってことじゃない!」
アリサが叫ぶと、その場の全員に緊張が走る。
なにも気にせずにMS見物に洒落込んでいるトール達が羨ましい。
正座を許してもらえたカケルが立ち上がると、なにも言わずにMSを置いてある方に歩き出す。
「カケルちゃん?」
「フリューゲルのOSは完璧じゃないから、今のうちに書き換えとくよ」
もしまたザフトが攻めてきたら、カケルはフリューゲルで戦うつもりなのだろう。
昔のカケルを思い出すと、とても信じられない行動だが、ならばどうするか考えるまでもない。
「キラ、悪いけどガイストのOS、頼めるか?」
「いいけど・・・どうするんの?」
「万が一の準備さ」
祐一の意図を察すると、キラは無言で頷き、2人でガイストの方に向かう。
残ったのはなのはだが、どうしようかと悩んでいると、アリサとすずかが囲み寄る。
「まさか! なのはも戦うつもりじゃないでしょうね?」
「そんなのダメだよ、なのはちゃん」
「うん、でも・・・・・・」
途惑うなのはを他所に、いきなり後ろから銃声が聞こえた。
「その機体から離れなさい!」
振り返ってみると、負傷して気を失っていたマリューが拳銃を発砲したようだ。
携帯用といっても、それなりに反動があるので、その表情は辛そうにしている。
「な、なにをするんですか!?」
「それは軍の最重要機密よ。民間人がむやみに触れていいものではない!」
その場の全員が一斉に不満げな顔になるのを見て、マリューは溜め息をつく。
「みんなこっちに来て、一人ずつ名前を名乗りなさい」
「なんだよ・・・さっき操縦してたのはキラ達じゃんか」
小声でそう呟くトールをマリューはキッと睨みつける。
そして、全員が横一列に並んだら、一番右にいる者に銃を翳し、無言で名乗る事を要求する。
「サイアーガイル」
「カズィ・バスカーク」
「トール・ケーニヒ」
「ミリアリア=ハウ・・・・・・」
「美坂香里」
「北川潤」
「川澄舞」
「倉田佐祐理」
「水瀬名雪」
「神威カケル」
「相沢祐一」
「アリサ・バニング」
「月村すずか」
「高町なのは」
そこまで終わると、意図して最後の左端に移動させたキラに対して銃を向けて睨む。
「キラ・・・ヤマト・・・・・・」
「私はマリュー・ラミアス。地球軍の将校です。申し訳ないけど、あなた達をこのまま解散させられません。
事情はどうあれ軍の重要機密を見てしまったあなた方は、然るべき所と連絡が取れ、処置が決定するまで、
私と行動を共にしていただかざるを得ません」
マリューの言葉に、全員が非難の声を上げる。
「なんで?」
「冗談じゃねえぞ」
「僕らはヘリオポリスの民間人ですよ? 中立なんです! 戦争なんて関係ないんです!」
「あの・・・私達・・・修学旅行で来ただけだし・・・・・・」
「黙りなさい! なにも知らない子供が!!」
マリューの一喝に気圧される面々。
そんな中、ずっと眼を閉じていたカケルが眼を開いて言う。
「中立、関係ない、そんなに世界が優しくない事くらい知ってます。でも、だからって、子供と認めてるのに、
それで銃を突きつけるのって、ちょっと傲慢なんじゃないですか?」
「なんですって?」
カケルの言葉にマリューはその額に銃口を突きつけることで答える。
その行為を止めようとした祐一達だったが、『動かないで』と一喝されて動きを止めてしまう。
銃口が額に密着しているので、なにかの拍子で発砲されたりでもしたら、その瞬間にカケルは死ぬ。
生と死の間際に立たされている割には、意外に落ち着いているように見える。
「この戦争だって、地球軍がユニウス・セブンに核を撃ち込んだのがそもそもの原因でしょ?
別に俺を撃っても構わないけど、撃っても状況は変わらないし、罪悪感を感じるだけじゃないですか?」
まるでマリューの本質を見抜いているかの如く、カケルは平然とした態度で告げる。
その様子には、カケルのことを多少なりとも知っている者は、みんなして驚いている。
マリューも溜め息を吐くと、突きつけていた拳銃を下ろす。
「そうね。それじゃ次の質問に答えてもらいます。あの機体、GAT-X000と隣の2機はどうしたの?
それに乗っていた者は、正直に名乗り出なさい」
「あ、1機は俺です」
「!!」
再び拳銃がカケルの額に突きつけられる。
「あの・・・1機は私です」
「GAT-X000、ガイストに乗ってたのは俺だ」
カケルを庇うようにして名乗り出るなのはと祐一。
「あなた達が・・・そう、なら準備して」
シグーの接近に気づいたムウは、ライフルの狙撃を辛うじてかわして、擦れ違いに背後を取ると、
ガンバレルを展開して、4方から一斉に発射する。
だがその攻撃も、あっさりと回避されてしまう。
「クソっ! 貴様・・・ラウ・ル・クルーゼか!?」
初めて対峙したときから、不思議と相手の存在を感じ取れた。
ニュータイプ的な直感かとも思えたが、あくまで感じ取れるのはクルーゼに限定されていた。
「おまえはいつでも邪魔だな、ムウ=ラ=フラガ! もっとも、おまえにも私がご同様かな!?」
皮肉げに呟き、クルーゼはシグーをヘリオポリス内へと向ける。
それにハヤテとタツのメビウス・ゼロが立ちふさがるが、2機の展開したガンバレルを潜り抜けると、
そのまま2機を気に止めもせずに、そのままヘリオポリスの港口に飛び込んだ。
「しまった!」
「ええーい! ヘリオポリスの中に!」
「逃がすか!」
3機のメビウス・ゼロも、シグーを追って港口に飛び込んでいく。
爆発に巻き込まれ、斜めに傾いたアークエンジェル・・・・・・
アークエンジェルのブリッジにてナタルとノイマンが話していた。
「無事だったのは、艦にいた数名のみです。もっとも、全員が工員ですが・・・・・・」
「状況は、ザフト艦はどうなっている?」
「解かりません。私共も、周辺の状況を確認すのが精一杯で・・・」
ナタルは無言でアークエンジェルのシステムを起動させる。
ブリッジ内に光が灯り、艦の状態を示す画面が表示される。
コンソールやシステムを確認したところ、レッドシグナルが点灯しているのはほんの数ヶ所で、
さして重大な被害はなく、ダテに地球軍の新造戦艦ではないようだ。
「流石はアークエンジェル、これしきのことで沈みはしないか」
「ですが、港口側は瓦礫が密集してしまっています」
たとえ無事でも、閉じ込められてしまったことには変わりない。
ナタルは苦悶を浮かべながら通信回線を開くが、未だに回線にはノイズが走っていた。
アークエンジェルが標的ならば、既に目的は達成されているはずだ。
「まだ、通信妨害が続いている。ということはこちらが陽動・・・ザフトの目的はモルゲンレーテということか!?」
自ら辿り着いた結論に、ナタルは愕然となる。
「くそ!あちらの状況は…『G』はどうなったのだ!これでは何も解からん!!」
苛立たしげに呟くと、そこち通信が飛び込んできた。
『こ・・・X105・・・・・・スト・・・イク・・・地球・・・応答・・・・・・』
雑音混じりの通信が飛び込んできた。
「こちらX-105ストライク。地球軍、応答願います。地球軍、応答願います!」
ストライクのコクピットでは、キラがマリューに指示されたとおりにアークエンジェルとの交信を試みていたが、
電波妨害が激しく、雑音が聞こえるだけで、通信もままならない状態だった。
ガイストはまだ通信機能が使えないし、同じく使えないフリューゲルと、一応使えるレイジングハートだが、
この2機は味方として登録されてないので、繋がらない可能性が高い。
そういうわけで、この3機は指示されも物資が収納されているトレーラを運び出すように言われて、
3機が左右後方にそのトレーラーを持ってやって来た。
「これですか、ナンバー5のトレーラーって?」
通信機能が使えるなのはが、コクピットから確認を取る。
「ええそう、ありがとう」
「あの、私達はこの後どうすればいいんですか?」
「ストライカーパックを・・・そしたらキラ君、もう一回通信をやってみて」
「・・・はい」
頷くと同時に作業を始めるキラ。
祐一、カケル、なのはは万が一のザフト再襲撃に備えてコクピットで待機することになった。
ユーノはしっかり、なのはの肩にその小さな体を預けている。
「大変なことになったね」
「うん。でも、今はできることをしないといけないから・・・・・・」
半ば強制されているものの、みんなできることをしているので、自分だけ投げ出すことなどできない。
外ではMSに乗っていない名雪達が、一箇所に集まって憂鬱としていた。
「警報・・・まだ解除されないんですね・・・・・・」
鳴り続ける警報音に不安げに呟くすずか。
「お母さんやあゆちゃん、真琴はちゃんと非難してるかな・・・・・・」
「秋子さんが一緒なら大丈夫よ名雪。栞は大丈夫かしら・・・・・・」
「そんなことより、早く家帰りてぇ〜」
家族の事を心配しているなか、カズイが無責任に愚痴を零す。
それに対して、舞が無言でカズイの頭部にチョップを落とす。
反論しようとしたカズイだが、もとが気が弱いので、無言で睨まれると、あっさり撃沈した。
「でも俺達はまだいいさ。あいつらは・・・どうなるんだろ・・・・・・?」
地球軍の最高機密を知ったどころか、操縦までしてしまったキラに、
廃棄されたはずの機体に乗っていた祐一、カケルやなのはの機体に関しては、まったくわからないときた。
間違いなく自分達よりも面倒なことになることは間違いない。
この場には4人のうち、最低1人と係わりがあるので、北川の言葉で一気に静かになる。
すると、いきなり上方で大きな爆発音がして、全員が音のした方向に視線を移すと、
コロニーを支えるシャフトを破って、1機のシグーと3機のメビウス・ゼロがヘリオポリス内に入ってきた。
その4機のコクピットには、ストライク、ガイスト、フリューゲル、レイジングハートの姿が映る。
「取り逃したのは1機だと聞いていたが、未確認機が3機もあるとはな」
「4機? 残ったのは1機のはずじゃ・・・大尉!」
「こちらでも確認している。どうなってるんだ?」
予想外の事態に驚くムウ達の隙をついて、シグーは地上に向かって急降下する。
だがそれを阻むように、3機のメビウス・ゼロが突撃して、思わず進路変更するシグー。
その際に巻き起こった突風に、たまらず名雪達は悲鳴を上げ、祐一はそれを見るや、ガイストを飛び立たせる。
マリューは焦りながらも、ストライクに駆け寄ってくる。
「装備をつけて! 早く!!」
「高町さんは下げってて! 俺も行くから」
「神威くん!?」
なのはに下がるように言うと、カケルもフリューゲルを飛び立たせた。
それと同じタイミングで、シグーが3機のメビウス・ゼロをターゲットに捉え、重斬刀で砲身を斬り裂き、
連続して3機のメビウス・ゼロを行動不能にして、接近する2機に向かって突っ込ませる。
「今のうちに沈んでもらう! まずはそちらの2機からだ!」
迫り来るシグーを前に、ガイストに並ぶフリューゲル。
「カケル、今更引き返せとは言わないが、無理だけはするなよ」
「うん。行こう、祐兄」
フリューゲルとガイストは一同にシグーに突っ込む。
ランチャーパックがアジャストされ、ランチャーストライクガンダムが立ち上がる。
なのははその隣にレイジングハートを移動させると、それとタイミングを同じくして、
凄まじい轟音と共に、鉱山の岩盤が崩れ落ち、立ち込める土煙をかきわけ、白く輝く戦艦が現れた。
現れたその戦艦に、全員が眼を奪われる。
「・・・天使の・・・箱舟・・・・・・?」
なのはの呟きは的を射ていたと言えるだろう。
天使の名を冠せし白き戦艦、アークエンジェルがその姿を現した。